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“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕の感想レビュー(ライトノベル)

2010年07月25日 21時02分35秒 | ライトノベル・小説
角川スニーカー文庫のラノベ、『“菜々子さん”の戯曲(シナリオ) Nの悲劇と縛られた僕』(高木敦史先生原作、笹森トモエ先生イラスト)が 8月1日に発売予定です。
(追記:無料公開は予定通り終了し、現在は文庫版が発売中です。)

現時点ではまだ発売日になっていないのですが、本作品は7月23日16:00~8月3日16:00までの期間、なんとWeb上で全文が無料公開されています。
約300ページという大ボリュームなので、読み応えは十分かと。

表紙にはメインヒロインである菜々子さんが描かれているのですが、優しそうな表情と妖艶な表情のどちらが本当の彼女なのか、気になるところですね。

お話的には、小学生時代のとある事件の真実を解き明かすために、菜々子さんが主人公の坪井君に当時の状況と己の推理を語って聞かせる…といった展開です。
実は、話はそう単純ではなく、もうちょっと特殊な事情と状況の中でそれを行うという事自体が見所となっていたりもするのですが、それは読んでのお楽しみということで。

第13回学園小説大賞《優秀賞》作品である本作ですが、内容的には日常ドタバタやら萌えやらではなく、硬派なミステリー系作品なので、そういうのが好きな方には特にオススメ。
読み物としての伏線を利用した動機的な辻褄合わせに終始せず、状況や証拠を利用しながら犯人と思しき人物の心理を分析したりして、論理的に推理を組み立てていく様子が本格的で好印象でした。
もちろん、推理小説ジャンルの中で本格ミステリーとカテゴライズされるもの程詳細なアリバイ崩しや突飛な発想が必要とされる難解な内容ではありませんが、既に起こった事件を振り返る&その合間に別のエピソードが挿入されて、物語の謎を解く鍵となるという見せ方が上手く、続きが気になって最後まで読み進めてしまうパワーのある作品でした。

元々、萌え絵で釣るよりも文章力で勝負するタイプの作品ですし、詳細は避けますが、『絵がないことが結果的に演出に役だっている部分もある』ように感じられたので、イラストが非公開だったことはそれほどマイナスではなかったと思います。
本音を言えば、キャラのイメージを補完する意味でもせめてカラーイラストの部分は一緒に公開して欲しかったですが、そこは文庫版を買った人の特権ということで我慢するしかないかなと。

発売前に全文無料公開という形態は、ライトノベルのみならず文章メディアとして斬新ですし、今後も色々な試みがなされることに期待したいですね。
ただ、作品の内容としては結構渋め&実際読みはじめないと伝わりにくい部分も多いので、一般的なライトノベルのイメージからは少々外れていたかなと。
それをラノベっぽく無くて嫌と思うか、ラノベというジャンルが持つふところの広さが感じられて良いと思うかは分かれそうに感じました。
逆に言えば、普段ラノベを読まない読者層にもアピールする力は十分にあるかと。

小学生時代の事件を描く作品なので、子ども特有の陰湿で残酷ないじめが描かれていたり、そこに性的な内容が含まれていたりする辺りに、人によっては生理的な嫌悪感を感じる場合もありそうですが、学校という閉鎖的な社会環境の中での人間関係については、誰もが多かれ少なかれ共通する体験を持つところでもありますし、インパクトや説得力的な面では唸らせられるものがあるかと。
個人的にはそこが重すぎたので序盤が辛かったですが、100ページを越えて坪井君のある事実が明かされたあたりから一気に引き込まれました。
流石にスロースターター気味ではありましたが、序盤がイマイチかな~?と思った方も、ひとまずはそこまで読んでみて頂きたいかと。

最後の最後まで読むと、おお~!と思える良質なミステリー作品なので、真相を知った時のカタルシス感はなかなかのものがあるかと。
菜々子さんのキャラについては十分に個性づくられているので、単巻で綺麗にお話がまとまってしまったのはちょっともったいない気もしましたが、新しい事件を舞台にした次回作が出るなら、また読んでみたいですね。

システム的には、フルスクリーン表示や拡大縮小、ページ移動などについては十分読みやすかったです。
Twitterに感想を連動させるという実験的な試みも、目新しさがあって面白そうでした。
実際には、ネタバレが怖かったので試しませんでしたが、作品の新しい発表形態としては色々と可能性を感じますね。
いろいろな制約はあると思いますが、全文完全掲載にこだわらず、人気シリーズのSSや、最新刊の導入部分を多数閲覧できるようにするなど、他のバリエーションも採用されたりしていくと面白そうかなと思います。


気になった方は是非、チェックなさってみて下さいませ。

“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕 公式サイトはこちらから

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2 コメント

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Unknown (水琴桜花)
2012-09-02 23:14:56
はじめまして。感想、楽しく読ませていただきました。
『“菜々子さん”の戯曲』は、ラノベだと思って油断していたら、なかなか唸らされる展開でしたね。こういう作品から、ラノベの層が広がっていけばいいなと思います。

発表したころは、形態にもこだわっていたのですね。Twitterの連動とか、今にしてみるとけっこう先駆けてたなと感じました。

それでは、失礼しました~。
>水琴桜花様 (gurimoe)
2012-09-04 11:23:52
・コメントありがとうございます。
最近はどのレーベルでも公式HPでのお試し立ち読みが充実してきた印象ですし、あまりラノベを読んだことのない方や、興味と時間はあるけどお金のない学生さんにも読んでみようというキッカケづくりの機会が増えて良いことだと思います。
個人的には、本屋さんで新刊の立ち読みをすることには否定的なので(だって綺麗な状態のものを買いたいじゃないという理由ですがw)発売前にチェック出来るのはそういう意味でもメリットがあるかと。

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