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シロクロネクロの感想レビュー(ライトノベル)

2011年02月09日 18時45分36秒 | ライトノベル・小説
電撃文庫のラノベ、『シロクロネクロ』(多宇部貞人先生原作、木村樹崇先生イラスト)が発売中です。
第17回電撃小説大賞<大賞>受賞作ということで、発売前から注目されていたラノベ読みの方も多いのではないかと思います。

表紙はメインヒロインの高峰雪路。
赤い糸ならぬ白い糸(ライン)で主人公の由真と繋がっている辺りがなんだか微笑ましい感じですね。

お話的には、善い屍霊術師=シロネクロである雪路に由真がゾンビとして生き返らされるところからスタートする、変則的ボーイ・ミーツ・ガール展開です。
普通なら、ある程度生前の日常風景を描写してから死亡→ゾンビ化という感じになりそうなところですが、掴みの部分から悪い死霊術師=クロネクロの操るゾンビ達に囲まれて絶体絶命&バリバリの戦闘へとシーンが繋げられていくので、物語にグイグイと惹き込まれる好演出だったと思います。

オビに『死んでもいいから“えっち”したい!!!』と書かれていることもあり、エロネタ方面にもニヤニヤ展開が待ち受けていそうな気配が濃厚でしたが、ゾンビとしての再生能力の鍵を握るのがエロへの欲求という設定が、潔いというか漢らしいというかw
その癖、その欲求が達成されて未練が無くなってしまうと、あっさり昇天してしまうからエロ禁止!という、青少年のリビドー生殺し設定が、うまく世界観に説得力を与えつつも物語の方向性を調えていってくれた感じですね。
難解な用語や設定を乱用せず、とても分り易くて面白い作品として仕上がっているので、非常にとっつきやすいと思います。

カラー口絵の段階では、金髪お嬢様属性のソファイアも加えた、女の子2人との共同生活で萌えエロ展開がメインになるのかな~と思っていましたが、クロネクロ側の美幼女キャラである瑠衣と由真との触れ合いが、やがて意外な真実を運んで来て…と、中だるみしがちな日常イベントは押さえ気味にして、丁寧に本編を見せていくスタイルがテンポの良さを生み出していたと思います。

文字通り、血で血を洗うどころか、内蔵や脳漿までぶちまけられる猟奇スプラッタ要素もアリなバトルは、本来ならかなり陰惨な雰囲気になってしまうところだと思いますが、脳天気でエロ妄想たくましい由真のキャラクターと、明るい絵柄のイラストのお陰で、むしろイメージはかなり明るめ。
ゾンビの不死性をうまく取り入れた行動を織り交ぜつつ、ノリが良くて笑いどころもある独特の戦闘描写となっているので面白かったです。

で、そんな雰囲気のバトルに慣れさせた後、終盤は逆にシリアスで真摯な想いのぶつけ合いで魅せる、王道の熱血展開がこれまた熱い!
直前の重要ネタバレで涙腺崩壊させられた後、というカタルシス感もあり、いろんな感情の相乗効果でゾンビでなくても脳汁出まくりですわw
由真のゾンビパワーの源→エロという本作の基本設定をしっかりと反映したクライマックスのオチもバッチリですし。
しかし、あのイラストはラスボス戦としてはどうなのw
良い意味で、他に類を見ない斬新さであったことよ。

序盤は説明不足に思えた部分も、実は後から判明する要素に対する婉曲的な伏線であったりと、最期まで読むとなるほど~!と思える様にそつなくまとめられているのが上手かったです。
まずは冒頭のバトルを一気に読ませて、中盤で世界観を掘り下げつつ、意外性のある展開で燃え&萌えだけでなく泣きまでフォローしてくれるので読み応えがありました。

今回の騒動には一区切り付いたものの、まだまだシロネクロとクロネクロ全体の対立は根深そうですし、完全な蘇生を目指すといいう方向性も明確ですから、2巻以降の展開にも大きく期待できそうですね。
あとがきの後に描かれた短編にも、『彼ら』のその後への興味を上手くそそられましたw

大賞&金賞&銀賞の5作品以外にも、既にアニメ化されたorアニメ化決定が発表された人気シリーズも大量に同日刊行ということで、いつも以上に激戦区なイメージとなった2月の電撃文庫ですが、既存の作品に負けないパワーを持った作品が登場したということで、たくさんの方にオススメしたいです。
流石、大賞を取っただけのことはあるな~!という感じで大満足でした。
他の4作品の方も楽しみ。


気になった方は、是非チェックなさってみてくださいませ。

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