梔子の実が色付いているのを、晩秋の頃から見かけることができるようになってましたね。
私の回りでも、ところどころで見かけておりました。
赤い実センサーはそれなりの反応をしてたのですが、写真に撮っても、発表するには物足りないものしか集められなかったので、じっと待っておりました。
先日そこそこのものに出会えたので、紹介することにいたします。
「クチナシ・梔子」アカネ科
初夏の頃、甘い香りを漂わせてくれた白い花には、このような少しユニークな造形をした実が生るのですよ。
ただし八重の花には実がつくことはありません。
実をつけるのは、一重の花の品種のものだけです(今現在の私の知識では、そう把握しております)。
私は子供の頃、梔子の実を食べたことがありますが、ほんのりと甘かったのと、種子ばかりだったという記憶があります。
そのまま食べる文化は、まずないでしょうね。
乾燥させた実は、古来より薬草として、また着色料として使用されております。
近々では、お節料理のキントンの、黄色い色を出すために使ったというかたもいらっしゃるかもしれませんね。
漢名では巵子、または梔子という。
「巵」とは酒など入れて貯蔵する器のことで、「子」とは果実のことをいいます。
果実の形が、酒を貯蔵する容器に似ていることからの命名です。
和名の「クチナシ」とは、「口無し」、熟しても開かない実の状態から名づけられたというのが定説です。
「クチナシ」で検索すると、ほとんどの記事に、そう記されています。
その定説に異を唱えているものがあります。
憶えてくれてますでしょうか?
パソコンに触れられなかった時期に、昔買っていた「積読本」を引っ張り出してきたら、植物関係の本だったって話。
中村浩 著「植物名の由来」も、その一冊です。
そになかで、「クチナシ」の名前の由来について、少々面白いというか、かなり強引な説が展開されておりました。
内容を、かいつまんで説明いたします。
元来、「クチナシ」が「口無し」であるという説に疑問を抱いていた。どう考えても納得できない。
何故なら、この木だけが特に口無しということではない。
裂開しない果実はいくらでもある。
リンゴ、ナシ、モモ、ミカン、サクラ、ビワ、ウメ、スイカ、キュウリ、ナス、カボチャなど、普通の果物はたいてい口無しであり、ムベ、エゴノキ、ガマズミ、クロガネモチ、ヤマボウシ、ヤマモモなども口無しである。
口有りは、ザクロ、クリ、アケビ、ゴンズイ、トベラ、マユミ、ツバキ、コブシ、ツルウメモドキ、マメ類などで、裂開する果実はむしろ少数派である。
なのに「クチナシ」だけが「口無し」とされるのはおかしいのじゃないか?
これには、何か別の意味があるように思える。
クチナシの名を冠する植物をあたってみると、「クチナシゲサ(ゴマノハグサ科)」と「クチナシジョウゴ(イラクサ科)」がある。
このうち「クチナシグサ」は、梔子に実の形が似ていることからの命名なので外す。
「クチナシジョウゴ」のクチナシとは、どんな理由による命名なのかしらべてみる。
「クチナシジョウゴ」とは、もともと「クチナワジョウゴ」と呼ばれていたもので、「クチナワ」とは漢字では「朽縄」、すなわち「蛇」のことである。
ゆえに「クチナワジョウゴ」とは、蛇が好んで食べる草という意味である。
「クチナワ」は「クチナシ」に変化しやすい言葉であろう。
したがって「梔子・クチナシ」も、「クチナワ」が変化した名ではないかと考えられる。
それなら、梔子と蛇とは何か関連するようなことがあるのであろうか?
梔子の木を眺めていても、蛇と関連するようなものは見当たらない。
そこで私は考えた。
梔子・クチナシの古名は「クチナワナシ」ではなかったのか?
「ナシ」とは「梨」であるが、普通の果物としての「梨」ではなく、木になる果実の一般名として受け取れる。
例えば、「アズキナシ」「ヤマナシ」「サルナシ」等、梨とは似つかぬ小粒の果実に、「ナシ」という名がつけられている。
「クチナワナシ」は変化して「クチナシナシ」になるが、「ナシ」が重複しているので「クチナシ」になったのではないか。
つまり「クチナシ」は「口無し」ではなく、「朽梨」ということになる。
「朽梨」とは「朽縄」の「梨」、すなわち「蛇梨」という意味だと思われる。
ゆえに「クチナシ」とは「口無し」ではなく、「蛇は食べるが人間には食べられない」というような意味だと思われる。
いかがでしたか?
納得できる結論でしたか?
前半部の、裂開する果実のほうが少ないという記述は、納得できます。
なのにこの植物にだけ、特別「口無し」という意味の名前がつけられたのか、おかしいんじゃないかというあたりまでは。
その後に展開される記述は、なんだか強引な力技のように思うんですがね。
梔子・クチナシの古名は「クチナワナシ」ではなかったのか?
この飛躍には、オイオイって、突っ込みを入れてました。
古名?
それを持ってきた根拠がわからないです。
そもそも古名って、あったのですか?
結論の「蛇梨」には、あんぐりです。
何も蛇まで持ち出さなくても、とね。
「蛇は食べるが人間には食べられない」という記述は、あきらかに嘘ですからね。
この一文を読んだあと、大笑いしちゃってたんです。
学者先生が、こんなに言葉をいじくり回していいのかよ。
こんなこじつけが通るのなら、何でもありなんじゃないのかよ。
あなたが所属している世界は、言った者勝ちの世界なんですかってね。
ところがですね、こんなことになってましたよ。
今回この「クチナシ」についての記事を書くに当たって、改めて検索してみました。
Google検索のトップに、「Wikipedia」の「クチナシ」の項が出ているのですが、その記事のなかに、本日私が取り上げた「クチナシ=クチナワナシ」説が掲載されていたので、またまたびっくり。
このWikipediaの記事の引用は、あきらかに「植物名の由来」からだと考えられます。
かなり怖い気がしてます。
Wikipediaで「クチナシ」を検索した人が、この先「クチナワナシ」説を広めていくことになるんじゃないかって。
この手の情報、確かにあるんですよね。
間違っているものが勝手に一人歩きするってことが。
個人がやっているサイトから収集する情報は、大したものじゃないくらいに考えていないと、とんでもない結果を招くことになるかもしれません。
ただね、今回のWikipediaの「クチナシ」についての内容は、出典がわかっているだけに、怖いと思います。
私が以前アップしたおちょぼ口たちは、ずいぶん数が減っていました。
取ったのはヒトか鳥かはたまた?
「朽梨」説、前半はうなずけますが後半は確かに強引(^^;)
「朽梨」なんて書かれちゃうと発酵臭がしてきそうです~
ほぉーWikipediaにもこの説が載っていたのですか。
ネット社会での情報はあっという間に広がるだけによけいに怖さがあります。
本に載っているものでも鵜呑みは危険とは、情報というのはよくよく心して
見極めないといけないものですね。ムズカシイよぉ
クチナシの実がたくさん付いてるものを、昨年は見たぞ、っていう記憶のもと、青山墓地でゲットした画像です。
ただ今年は、昨年ほど大豊作とはいきませんでした。
明らかに鳥に食べられらた痕跡が、あちこちにみられました。
「クチナワナシ」「朽梨」「蛇梨」は、かなり強引ですよね。
ポージィさんの賛同をいただき、安心しました(笑)。
Wikipedia、かなり信頼の高い情報が多く、これまでも参照させてもらってますが、「クチナワナシ」説が堂々と記載されていると、うん?となってしまいました。
ネットだと、間違った花の名前でも、検索すると出てきた経験もありますし、(自分も含めて)間違った情報を載せると、それが一人歩きする怖さがあるんですよね。
新聞だってTVだってそうですけどね。
ましてや人間の噂話など、まんま信じると、大恥じをかくはめになります。
拙いブログとはいえ、今や発信者でもあるので、心して、正しい情報をキャッチできるよう、日々気をつけないとと、言い聞かせております。
この先も、もし誤情報がアップされていましたら、ご指摘くださいね。
お願いいたします。