天井の話で、小さな図面を掲載してしまいました。これでは意味がありません。天井を考えるのに絶好な「新薬師寺」と、そのあたりを紹介したいと思います。建物を見なくても、その雰囲気だけでも結構です。一度行ってみてください。
奈良の「春日大社」の南に大社の神苑が広がっています。
この神苑の森のなかの静かな道を南に向って歩くと、小一時間して森が終ります。奥山に向う道を横切り、もう少し歩いた所が「新薬師寺」です。
まわりには志賀直哉の旧宅などもある静かな住宅地で、まだ都市化の波もそれほど及んでいません。古都のイメージが幸いにもまだ残っている一帯です。
「新薬師寺」は奈良時代の建物の姿を今に伝える数少ない建物の一つです。しかも、内部にも自由に入ることができます(「法隆寺・伝法堂」も奈良時代を伝える建物ですが、自由には入れません)。
とてものびやかで、ゆったりとしていて気持ちが静まります。境内は、秋は萩で有名だと言います。なお、「新薬師寺」には宿坊があり、泊めていただくことができるはずです。
奈良は、ご他聞にもれず、大阪・京都のベッドタウンとして市街化がすすんでいますが、幸い、奈良盆地の東のへり:山の辺はまだそれほど影響が激しくありません。この山の辺づたいに南に歩き、三輪に至る道筋(山の辺の道)は、昔よく歩いたものでした(三輪では、秋冬ならば、「三輪素麺:にゅうめん」を食するのが常でした)。
いにしえ人もこういう風景を目にしていたのでしょうか。
山の辺の道沿いには、古墳がたくさんあります。なぜ、この場所に墳墓をつくったのか、それを考えるだけでも楽しい道です。
ここしばらく、歩いていません。もう一度、行ってみたいと思っています。
正面写真は『古寺建築入門』(岩波書店)、内部は『日本の美術65 上代の寺院建築』(至文堂)からの転載です。