アリヂゴク・・・・アリヂゴクが棲める床下

2009-07-01 18:29:12 | 建物づくり一般

[註記追加 7月2日 11.53][註記追加 7月2日 22.01]

上の写真は、私の住まいの床下。正確に言うとベランダ下。
ベランダには、先端:写真の束柱の位置:から右手に1尺5寸ほどまで軒が被っている。
写真は、先ほど、雨が上がってすぐに撮ったもの。

屋根には雨どいを設けていないから、地面に直に雨だれが落ちる。この部分には「雨落ち溝」がないので、落ちた雨水は、写真のように、束柱の位置あたりまで浸みてくる。写真では、地面の色が変って写っている。

しかし、そこから先、床下の奥へは水は浸みてこない。雨が降り続いても、ひどい土砂降りのときでも、これはほとんど変りない。
その証拠が、一面の噴火口。アリヂゴクの巣である。雨の最中でも、エサになる虫が通るのを待ち受けている。床下と外の境のあたりを虫がよく通るからである。
だから、床下の奥に行くとアリヂゴクの巣も少なくなる。アリヂゴクは、ウスバカゲロウの幼虫。
画面が小さいので見えないかもしれないが、礎石のすぐ左側の噴火口の上に見える黒っぽい点は、食べられたあと放り出された虫の殻である。


一般に、床下は湿気ると言われている。
たとえば、「住宅金融支援機構(以前の「住宅金融公庫」)」の「木造住宅工事仕様書」には、「床下は、地面からの湿気の蒸発等により湿気がたまりやすい・・・」と解説があり、「ベタ基礎」以外の場合は「防湿用のコンクリートの打設」または「防湿フィルムの敷詰め」とすることを求めている。

この解説にある「床下の湿気理論」について、かねてから私は疑問を抱いている。
いったい、「床下の地面からの湿気の蒸発」というけれども、そもそもその「湿気」はどこから地面に来るのだろうか。
普通の土地であれば、「雨がかからない場所」「水が外から流れ込まない場所」の地面は、水分:湿気がなくなり乾燥するのがあたりまえ。「水源」が断たれるのだから当然である。

「雨もかからず、水も流れ込まない」のに地面が湿気るとすれば、それは、そこで水が湧いていたりする場合に限られる。

たとえば、水田を埋め立てる。
水田というのは、もともと水のたまりやすい場所につくられる。多くの場合、地下水位が高い。言ってみれば、少し掘れば水が出る。そういう場所は、埋め立てて地表は水田ではなくなっても、地下はまったく変っていない。
そのため、こういう場所は、いまのような季節、つまり梅雨時などに、霧が発生しやすい。
筑波研究学園都市のなかを車で走っていると、早朝や夜、突然霧の中に入ってしまうことがあるが、たいていそこは池や水田を埋め立てた場所。
地面が水温に近くなっていて、そのため、あたりの空気も冷える。しかもあたりの空気には湿気が多い。そして霧が発生する。

では、普通の土地で、床下をコンクリートを打設したりフィルムを敷き詰めると、どのような事態が起きるだろうか。
床下の地面は、陽が当らないから、その温度は屋外の地面よりは低い。コンクリートやフィルムの表面温度も、地面の温度と同じになっているはず。
そこへ、床下の地表温度よりも暖かい湿気た空気が入り込むと、どうなるか。コンクリートやフィルムの表面に結露するのである。
夏の朝、雨も降らなかったのに、舗装道路が濡れているのも同じ現象。

そうならないようにと「断熱材(保温材)」をコンクリートやフィルムの下に敷きこめばよい、と考える人がいる。そういう「仕様」もある。
しかしそれは、「断熱材」の「断熱」の語に惑わされている証拠。どんなに厚く「断熱材(保温材)」を敷こうが、地温になるまでの時間がかかるだけに過ぎない、だから、コンクリートやフィルムの表面は地温に等しい、ということを忘れている。

私の住まいは緩い傾斜地に建っているので、基礎は独立基礎にしてある。一定の高さまで底盤の上にヒューム管を立てコンクリートを打った基礎。その上に土台を流してある。ゆえに、床下はよく風が通る(床下は、かがんで歩ける高さがある)。
ただ、ベランダ部分は、写真のように基礎を低くして「束立て」にしてある。

空気が湿気てくると、ときに、この基礎の表面:ヒューム管の表面が濡れてくることがある。結露である。
しかしそのとき、地面は多少いつもよりは湿気た様子だが、乾いていることには変りはない。だから、アリヂゴクも健在。
このことは、地温の低い地面は、暖かい湿気た空気がきても、湿気を吸収してくれることを示している。コンクリートやフィルムのように結露はしないのである。地面には「調湿機能」がある証拠。

   註 地面が湿気を帯びても、暖かい湿った空気が去れば、
      ふたたび地面は乾燥に向う。
      これが調湿機能。土壁も同じ。
                [註記追加 7月2日 11.53]

だから、どうしても床下に空気が淀んでしまう「布基礎」の場合は、「布基礎」に囲まれた地面をコンクリートやフィルムで被うことは、床下に結露水をためることになり、湿気防止にはかえって逆効果だ、というのが私の理解。
同じ理由で、私は「ベタ基礎」は使わない。地耐力が小さくても、別の手立てを考え、床下地面を確保する。

なぜ「住宅金融支援機構(以前の「住宅金融公庫」)」仕様が「常識」になってしまったのだろうか?
「礎石建て(石場建て)+足固め」方式の時代、やはり床下は、アリヂゴクの天国だった。

   註 コメントで防湿シート、防湿コンクリート(ベタ基礎)の
      床下の「実態」を撮った写真を紹介いただいています。
      山本大成氏のコメント「防湿シート」内からアクセスできます。
      それは、茂木豊彦氏のブログの記事です。
      結露するはずだと予想はしていましたが、
      これほどまでとは思いませんでした。
      是非ご覧ください。驚愕的です。
                     [註記追加 7月2日 22.01]

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盤ぶくれ (ARAI)
2009-07-01 20:51:19
 私の住むあたりでは、盤ぶくれという現象があります。地面が隆起することがあるのです。住宅向けの対応としてはダブルに配筋したベタ基礎が推奨されているようです。
 盤ぶくれの原因は地下の細菌・温度の上昇などだそうですが、一説によると、住宅や道路舗装により、十分な水分が地下にいかなくなることも引き金になっているそうです。もしそうだとすると、このケースでは礎石建てや独立基礎、ベタ基礎でない布基礎では盤ぶくれを誘う可能性もあります。
 懸崖造の堅牢さの記事:
http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/8915597538ec25b018ec8f9c6dc52e1d
http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/ead04d8374506816c5a8b9813b3bdfba
から考えれば多少の隆起に対応できるので、
法律が許せば独立基礎で高床にして盤ぶくれが起きたらその後に調整する、という手もありそうですが、現状では法律が許さぬような気もします。先生はどのようにお考えでしょうか。よろしかったらばお考えをお聞かせ下さい。
 以下、不適切でしたら掲載取りやめ(勿論、全文でも)あるいは文面変更をお願いします。
 以前、「けんちく茨城」でも先生の記事で床下のアリジゴクの話を読んだ記憶があります。以前はPDFファイルがダウンロード可能だったようですが、現在は見当たらないようです。現在、あるいは以前より、閲覧不可なのでしょうか。
返信する
防湿シート (山本大成)
2009-07-01 23:46:15
 ご無沙汰しております。
 数度コメントさせていただいたこともある三州の瓦メーカーのものです。

 床下での防水シート使用について、新潟でシロアリ駆除をしていらっしゃるtoyoさんのBLOGで何が起こるかを最近写真付きで見た記憶があります。

防湿シートに反対する理由:シロアリ屋の独り言:So-net blog
http://siroari.blog.so-net.ne.jp/2009-06-12

 この方は様々なシロアリ被害の現場を見られた中でやはりベタ基礎について否定的で、これについても何本も事例写真付きの記事があります。

 以上、ご紹介したいと思いコメントさせていただきました。

PS.
 なかなかコメントが出来ずにいますが、毎回の記事楽しみに読ませていただいています。(非常に勉強になります。)
 今後とも宜しくお願いいたします。
返信する
シロアリ屋の独り言 (茂木豊彦)
2009-07-02 00:06:27
大変参考になりました。
床下業者の経験として、おっしゃることに
全面的に同感です。私の経験でもベタコンや防湿シートは逆に湿気を呼ぶことは間違いないと思います。なんだか嬉しくなったのでコメントさせていただきました。
返信する
盤ぶくれ? (筆者)
2009-07-02 16:39:03
「盤ぶくれ」という言葉に初めて接しました。
土木用語のようですね。
その場合は、粘土層の下に、水を多量に含んだ地層があり、表面の粘土層を掘って取去ると、押さえが効かなくなって水圧で押上げられる現象のことのようです。
お話の「盤ぶくれ」は、これとは違うように思いますが、どうなのでしょうか。

地盤が不陸を起こしたとき、一般には独立の基礎は不利と考えられていますが、必ずしもそういうことはない、と考えています。要は「地形(地業)」次第なのではないでしょうか。

古代の礎石が、底面が平面でなく先細りに加工しているのには訳があるようです。
それにヒントを得たのかどうかは分りませんが、軟弱地盤のための「独楽(こま)基礎」というのがある、と先日教えてもらいました。
返信する
山本さま、茂木さま へ (筆者)
2009-07-02 16:44:01
コメントありがとうございます。

写真を拝見しました。
学者・研究者や設計屋さんは、そして多くの工務店さんは、こういう実態を知らないのでしょうね。

現場は強い。
「現場からの発想」「思考」が求められている、そう思います。
「机上の発想」、それに基づく「指示」は、不要です。
返信する
ありがとうございます  (ARAI)
2009-07-02 20:08:14
 ご回答どうもありがとうございます。「地形(地業)」次第とのこと、納得いたしました。
 ご推察どおり、私の話にある「盤ぶくれ」(福島県いわき市の「盤ぶくれ」)は通常の「盤ぶくれ」とは異なります。程度は通常のものよりひどく、要因も通常とは異なるそうです。次のページによれば生化学的要因もあるようです。
http://www.youta.co.jp/column.html
 大工さんの経験では、盛土よりも切土の方が盤ぶくれしやすいそうです。細菌が活動するなどのきっかけを与えてしまうのかも知れません。
 以前、記事になった白水阿弥陀堂などは全くなんともないのですから、昔の人は盤ぶくれなど起こらぬ場所を吟味して建てたか、対処法を知っていたのかも知れませんね。あるいは、現代は建てるべきでないところに建てているというべきかも知れません。
 独楽基礎、調べてみました。古くからの礎石や玉石、栗石のアイディアを現代に活かしたという気もします。このような工夫は面白いと思いました。

 
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