日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)




 重慶暴動が終息したと思ったら、今度はデモです。安徽省蚌埠市で22日、地元では最大規模の企業、蚌埠市紡織厰の定年退職者約1万人が市内の大通りをデモ行進しました。――と伝えたのは台湾・中央社ですが、香港『東方日報』の報道が元ネタになっています。

 http://orientaldaily.com.hk/new/new_c57cnt.html

 ただし、実はそれよりも1日早く、反政府系ニュースサイト「大紀元」が比較にならぬ詳しさで報道しているんです。もしかすると『東方日報』の記事もこれに基づいたものかも知れません。

 http://www.epochtimes.com/gb/4/10/22/n697218.htm

 どうして「大紀元」がいちばん早くて最も詳細なのかといえば、「大紀元」はじめ反政府系メディアに評論を提供しているあるコラムニスト、この人がどうやら蚌埠市在住らしく、デモを目の当たりにしたのです。当然のことながら微に入り細に入ったレポートとなりました。

 さて、まずは何のためのデモかという話になりますが、定年退職した工員たちが退職金の引き上げを求めたものだそうです。中国の退職金は日本のようにまとめて支給されるのではなく、年金のように月ごとに支払われます。この工場の工員たちの場合、その額は毎月400~500元。もともとはそれで十分暮らしていけたのですが、ここ1年余りで物価がずいぶん上がったために急に苦しくなった、というより赤字状態になってしまったとのことです。で、退職金を物価上昇に合わせてスライドさせるよう求めている訳です。

 デモといっても定年退職者によるものですし、紡織工場だから女工さんが多いので、ふつう想像されるデモとは一風変わったものだったようです。それでもかなり組織的に動いていたようで、連絡をちゃんと行き渡らせて、22日の午前7時には出発点である同市・勝利路に続々と集合するお爺さんお婆さんの姿が見られたとのこと。それもあれよあれよという間に人数は膨れ上がり、最終的には約1万人に達したそうです。よく見ると板のようなものを各自持参していて、勝利路に着くと場所を選んで腰を下ろしていきます。板はプラカードとかではなく腰の下に敷くためだったんですね。

 なにせ1万人ですから道路は占拠された状態です。少なくとも午前中いっぱいは交通が遮断されたままだったという目撃談(報告者はある程度見物して帰宅したようです)ですが、それってデモじゃなくて座り込みでは?とツッ込むのは慎みましょう。この日は晴天でかなり暑かったらしく、行進するよりマシとはいえ、お爺さんお婆さんの体力ですから烈日にさらされての座り込みだって相当キツかった筈です。

 ところでなぜこの日を選んだかというと、新しくオープンする市場の開業セレモニーが行われることになっていて、そこに温家宝首相が来賓として出席するという噂があったからなんだそうです。「親民総理」といわれるほど庶民派のイメージを持つ温家宝がこのデモを見れば、きっと地元の役所に指示を出して問題解決に向けて善処してくれる筈……という可能性に一縷の望みをつないだ、とまあ、何ともいたましく切ない話じゃあないですか。

 途中、様子見のためか役所の人間が車で乗り込んできたのですが、逆に誰何されると何を慌てたか車を捨てて逃げていったとのこと。重慶の一件があったばかりですから、緊張し過ぎていたのかも知れません。
「大多数の役人は発覚すれば有罪ひいては死刑になるような汚職をやっていて、市民もそれを知っているから役人を内心非常に憎んでいる。役人は役人でそういう市民の感情を常々肌で感じているから、何をされるかと思って怖くなり逃げたのではないか」
 と報告者は書いています。

 重慶の暴動に加え、相手がお爺さんお婆さんということもあるのでしょう。警察も鎮圧に来ることはなく、占拠された勝利路を迂回させるための交通整理の人員を出しただけだったそうです。結局大通りを占拠するだけで終わった「デモ」、温家宝に会うことは出来なかったようです(そもそも温家宝が蚌埠市に来ていたのかも不明)が、3人5人と固まっては社会問題を論じたり幹部の腐敗に憤ったりと、なかなか盛り上がっていたようです。

 とはいえ、地元公安局への事前申請をしていない以上、これは無許可デモあるいは非合法集会ということで、当局がその気になれば、違法行為で逮捕されてしまいます。一見平和的なイベントのようではありますが、かように切羽詰まった行動に出るところまで追い込まれたお爺さんお婆さんたちには、激しい怒りとそれなりの覚悟があったのではないかと思います。


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