日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 毎日中国国内メディアの報道に接していると、ときどき、胸の悪くなる記事というものにぶつかります。

 その大半は日本に関する報道や評論なのですが、記事というには余りに悪意剥き出しで、その醜悪さと水準の低さは、「反日」というより「病的な嫌日」というべきものかも知れません。ええ、記者の資質如何ではなく、医学で扱うべき範疇に属するのではないかと。

 糞青が反日サイトでわめくなり、私のようにブログのような場を使って床屋の政談をするのとは違います。公器です。新聞は民度の反映とも言われますが、結局はそういうことなのでしょうか。

 民度民度で一刀両断にするのもどうかと思いますけど、華人圏で仕事をしていて痛感したのは、プロの仕事として認められる水準は、民度に比例するのかも知れないということです。私の属している仕事世界だけでなく、これは多くの業界に当てはまるのではないでしょうか。

 言うまでもなく、「胸の悪くなる記事」というのはそれを書いた記者の資質を疑えば済むことではありません。その記事を紙面に載せることを許したデスクがいて、デスクにそうさせるマスコミの編集方針があって、さらにマスコミにそういう編集方針を選択させる(強要する)政治体制と社会環境がある、ということになります。そういう政治体制や社会環境をとりあえず許容しているのは、やっぱり民度ということになるのかなあ、と思ったりします。

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 前置きが長くなりましたが、実は「胸の悪くなる記事」よりもひどいものがある、ということを言いたいのです。人間なら人格、国家なら「国格」とでも言うべきでしょうが(中国語ではそうなります)、一読すると胸が悪くなることをすっ飛ばして、いきなりその「国格」に呆れて物が言えない、一種絶望的なものを感じさせる記事です。

「ダメだこりゃ」
「これは救いようがないね」

 口に出せばそんなところでしょうか。最近、うっかりそういう記事にぶつかってしまいました。

 ●国内最大規模を称するハッカー組織「中国紅客聯盟」が解散を宣言
 http://news.xinhuanet.com/it/2005-02/18/content_2589594.htm

 『中国青年報』に出た記事を「新華網」が転載したものです。短い記事なので粗く訳してしまいましょう。

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 ●国内最大規模を称するハッカー組織「中国紅客聯盟」が解散を宣言

 国内最大規模、かつ最も古い歴史を持つと称する世界ランキング5位のハッカー組織「中国紅客聯盟」が、このほど解散を宣言し、ホームページも閉鎖した。

 「紅客聯盟」の創始者は公開書簡において、「紅客聯盟」はずっと名前だけの組織で実態がなく、もう存在する必要がなくなったと指摘。また、技術面で「紅客聯盟」を支えていたのはわずか3人に過ぎなかったと明かす一方、メンバーも激情に突き動かれる年齢でもなくなり、以前のような闘志を持てなくなったと表明。また、その活動に触発されたり、また活動内容を新鮮に感じる人もいなくなった、としている。

 これに対し、中国社会科学院新聞/放送研究所の閔大洪・インターネット/デジタルメディア研究室主任は2月12日、「中国ハッカーの熱い時代に終幕――『中国紅客聯盟』解散に寄せて」と題された文章をブログチャイナ(博客中国)に発表。この文章によると、1998年から2002年にかけて、中国ハッカーは海外に対し6回にわたる大規模な集団的攻撃をかけている。そのいずれもが当時の政治的事件を背景にしたもので、愛国主義及び民族主義的気分に基づいた反応だった。

 閔主任の文章はこれについて、「理性の角度からみれば、ハッカーによる攻撃行為の一切は責められて然るべきものだ。だが感情の角度からみれば、中国ハッカーの6度にのぼる攻撃にはいずれも理由があり、『そっちが手を出さなければこっちも手を出さない。だが手を出してきた者に対しては必ず反撃する』という姿勢を強烈に体現したもの」と指摘している。

 「中国紅客聯盟」は2000年12月31日に成立し、一時は会員数が8万人を突破。その65%は大学生で、責任者は今年21歳になったばかりだという。

 http://news.xinhuanet.com/it/2005-02/18/content_2589594.htm

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 上述した通り、この記事はまず『中国青年報』で掲載され、それが「新華網」に転載されました。いつも触れていることですが、『中国青年報』といえば共青団(共産主義青年団・ユース共産党のようなもの)中央の機関紙であり、共青団系列の人脈に連なる胡錦涛総書記の、いわば広報誌。記事ひとつひとつに胡錦涛が目を通してはいないでしょうが、胡錦涛の意に沿わない記事はまず掲載されないでしょう。それを転載した「新華網」は国営通信社・新華社の電子版です。

 そしてこの記事。ハッカーの行為を全否定することなく、むしろ肯定しているかのような印象を与えます。共青団中央と国営通信社という看板を背負っている以上、これは記者の価値観のみによるものではありません。記事文中に「中国紅客聯盟」という名前が出て、その活動に中性的ないし好意的な評価を与えたことは、「中国紅客聯盟」が事実上お上公認の民間組織となったことを意味するものです。もっとも組織自体は解散してしまいましたから、この記事はお上による解散へのはなむけ(今まで良く頑張った、というお褒めの言葉)ということになるのでしょうか。

 問題は、この記事が閔主任の「中国ハッカーの熱い時代に終幕――『中国紅客聯盟』解散に寄せて」なる文章から引用して、このハッカー組織が6度にのぼる攻撃を行ったことを認めていることです。これって遅ればせながらの「犯行声明」じゃありませんか?そして共青団中央(胡錦涛系列)と国営通信社はこの記事で「犯行」を半ば評価している。これは一体どうしたことでしょう。

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 「6度にのぼる攻撃って何?」という疑問については、基本的に中国ハッカーに好意的なスタンスに立っている閔主任の「中国ハッカーの熱い時代に終幕――『中国紅客聯盟』解散に寄せて」が画面写真つきで詳しく説明してくれます。

 実は『中国青年報』-「新華網」と転載された上の記事には、この閔主任の文章そのものへのリンクも張られています。全く至れり尽せりです。そのリンク先も「新華網」内です。要するに、国営通信社は閔主任の文章を掲載している以上、その内容を否定していない、または肯定している、ということです。もちろん文中で言及される「6度にのぼる攻撃」も含めてです。

 ●「中国ハッカーの熱い時代に終幕――『中国紅客聯盟』解散に寄せて」(閔大洪)
 http://news.xinhuanet.com/newmedia/2005-02/18/content_2590831.htm

 「6度にのぼる攻撃」は下記の通りです(攻撃対象国/年次/抗議内容)。

 [1]インドネシア(1998年・現地華僑排斥暴動)
 [2]米国(1999年・在ユーゴ中国大使館誤爆事件)
 [3]台湾(1999年・李登輝氏が「二国論」を発表)
 [4]日本(2000年・南京なんたら事件に関する最高裁での敗訴など)
 [5]日本(2001年・小泉首相の靖国神社参拝)
 [6]米国(2001年・米偵察機と中国戦闘機の接触事件)

 ――――

 実は「中国紅客聯盟」の解散については2月8日に香港の親中紙『香港文匯報』が報じたのを目にして「おやおや」と思いました。「サイバーテロを容認するんかい>香港の親中勢力」というところです。

 ところがそれから10日ばかり経って、今度は胡錦涛筋(中国青年報)と国営通信社(新華社)がこの有様です。改めて言わせてもらいます。

 中国はサイバーテロを容認するんかい。それじゃテロ支援国家と同じだな。

 ……実際には容認どころか褒めてさえいる訳ですが。

 ――――

 さてチナヲチのオタとしては、なぜこの種の文章がこの時期に出てきたのか、ということを考察する必要がある訳ですが、はっきり言ってよくわかりません。

「中国の事象に無理に整合性を求めてはいけません。わからないところはわからないでいいんです」

 という大学時代の恩師の言葉に従うまでです。

 ただ国内向けのメッセージだろうなとは思います。「サイバーテロを容認」なんて文章、外国には恥ずかしくて見せられたもんじゃないでしょう。

 国内向けであれば、尖閣諸島に対する日本側のアクションに何ひとつ対応できない中国政府への国民(というより糞青)の批判を、少しは鎮静させようとしたものでしょうか。胡錦涛としては保釣運動(尖閣奪回運動)の民間組織が現場へ船を出すようなことは避けたいところでしょうから、そういう動きは断固として阻止する代わりに、先にこの記事で機嫌をとっておこうとするものでしょうか。……あるいは国内向けでさえなくて、実は胡錦涛自身の鬱憤晴らしだったりして。

 やっぱり、よくわかりません。



コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-02-21 01:41:48
国内向けとしてもいいんでしょうかね、これ。

もしかして「テロリズム」って言葉の訳に誤差が

あるのでしょうか?



ちなみに向こうではテロリズム(サイバーテロ)っ

てなんて言うんですか?
 
 
 
Re:Unknown (御家人)
2005-02-21 03:57:16
Unknownさん、御指摘有り難うございます。



サイバーテロは大袈裟でしたか?的確な標題があれば改題しても構いません。



テロリズムの中国語は「恐怖主義」、テロ活動は「恐怖活動」、テロリストは「恐怖分子」です。



サイバーテロの中国語は知らないです。



>国内向けとしてもいいんでしょうかね、これ。



私見ですが、中国国内向けならこの記事は問題にされないと思います。逆にこれで溜飲を下げる国民が結構いるのではないでしょうか。

 
 
 
一個のことを変えるのには全部をかえる必要がある-の法則 (バカボン)
2005-02-21 08:21:52
旧ソ連にも同じく、一個のことを変えるのには全てを変えなければいけないという法則があります。すべての巨悪の中の小さなあやまちは実は深く全体に根ざしており、全てを変えなければ一つのことが変わらないのです。



救いようがないのですが、その中で生きている人にとっては本当にどうしようもありません。



同じ人間だと考えないこと以外に方法が無いと思います。
 
 
 
電脳恐怖活動 (1読者)
2005-02-21 08:26:15
お早うございます。



 外交の行き詰まりが露になり、ここにきて諸々を整理しようと必死なのでしょうか。



 新華網の記事で2+2についての不快感の表明があったかと思うと、あっという間に国務院への汚職追放に檄が飛んでます。矢継ぎ早です。



 内も外も、あっちもこっちもと、もぐらたたき状態。本当にこの状態で政策遂行が可能なのかと思ったりします。



 想像以上に締め付けを急いでいると感じます。行き過ぎも出そうです。



 そんな中で炭鉱事故の続報が無いのが気になります。人づてで解放軍が出ているようだと聞いておりますけど。何か聞き及んでいるでしょうか。
 
 
 
追加 (バカボン)
2005-02-21 08:35:46
私も中国人や旧ソ連人を使って小さなビジネスをしていますが、両方とも話しになりません。ビジネスが一から分かっていないんです。仕事が終わっています。民度でしょう。両者ともプロパガンダをまともに受けてしまっていて、使い物にならず、壊れたロボットを動かしているような感じです。蹴っ飛ばして直ればいいですが、だめです。



とにかく、上の層が薄いんです。学生に知識階級の卵みたいなのが見えないんです。日本だったら、有名大学に行けば、グループで固まっているような知識層にあたりません。まあ、これは私の印象ですが。客観的に物事を見れて、国際レベルでも恥ずかしくない層、これがなかなか見当たらないんですね。



「病気は治るが馬鹿は死ぬまで直らない」、これが真実を表した日本の諺だったことを発見したのです。
 
 
 
訳の分からない国 (90)
2005-02-21 19:11:21
司馬遼太郎か何かにあったのですが、昔2.26事件を起こした将校が、事件前に自分たちの上官である大将のところへ行って、「○○どうした!」とか呼び捨てで叫ぶと、その大将は叱るどころか「若い者は元気じゃのー」とへつらったそうです。

「新華網」の記事にも同じ印象を持ちました。若者に対してけじめのない仲間意識で馴れ合っているという感じです。中国の場合は経済的発展が幼児のような自我肥大を起こしてこんな記事を書かせたような気がします。



胡錦涛は関係してなくて、反対派が胡錦涛に対する鬱憤晴らしに書いたものじゃないでしょうか。



いずれにせよみっともない記事です。
 
 
 
お国の為なら (ひろぽん)
2005-02-21 19:15:39
韓国でも米国の機密漏洩犯ロバート・キムを英雄としてもてはやしてましたね。流石は中華文明圏。





笑えないけど笑ったw

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ほんとどうしようもねぇなw
 
 
 
プロというのは (御家人)
2005-02-22 01:15:42
バカボンさん、コメント有難うございます。



御指摘の点、同感です。プロというのは、結局のところその下地であるアマチュアがしっかりしていて、かつプロへの人材供給源として機能していなければ駄目なように思います。スポーツだけの話ではなく、クリエイターやマスコミの世界もそうですし、ビジネスの世界でもそうではないかと。



ビジネスに携わる人を「プロ」だとすれば、大学という高等教育、その下地である高校までの普通教育が「アマチュア」です。ここがしっかりしていないと、プロになっても非常に低いレベルの仕事で「OK」(これでよし)が出てしまうので、本当に難渋します。当人はそれでいい仕事をやったと思っているので始末に負えません。



私は日本と華人圏のかけ離れた実力差のまん中で板挟みになることが多いので(涙)。……本当に、蹴っ飛ばしてどうにかなるならいいんですけど。

 
 
 
Re:電脳恐怖活動 (御家人)
2005-02-22 01:16:46
1読者さん、コメント有難うございます。



胡錦涛政権はまさに内憂外患といった感じですが、内憂に関してはトウ小平と江沢民の尻拭いをするのが仕事だけに、積み重なった矛盾があちこちで噴出してキリキリ舞いするのは仕方がないですね。それを何とかするのが胡錦涛に与えられた役割ですから。外患についても例えば今回の日米2+2などは、江沢民時代にあれこれやったことへの反動でかくなった、ということになるでしょう。



炭坑事故で人民解放軍出動というのは、反体制系メディアを一巡してみた限りではそれらしいニュースを見つけることができませんでした。中国国内の報道によれば、大惨事の現場では事故処理が進んでいるようです。騒乱めいた事態が発生しているとすれば、むしろ他の炭坑で、事故続きの現状に動揺した炭鉱夫が騒いでいる可能性があるかも知れません。



締め付けは強まっています。私も手綱を引き締め過ぎではないかと思っているのですが、案外今回の「2+2」は、胡錦涛にとっては国民に緊張感を強いる「往復ビンタ」になるかも知れません。逆に党内の足並みが乱れるのかどうか、そのあたりを見極めたいところです。

 
 
 
Re:訳の分からない国 (御家人)
2005-02-22 01:17:33
90さん、コメント有難うございます。



仰る通り、まさに幼児のような自己肥大です。この記事を「みっともない」と思わない感覚、これこそが中共の50年余にわたる愚民政策の発露であり、中国の今後の発展を阻む最大の障壁でもあるでしょう。このままさっさと義和団モードに入ってくれると有り難いのですが(笑)。



>胡錦涛は関係してなくて、反対派が胡錦涛に対する鬱憤晴らしに書いたものじゃないでしょうか。



胡錦涛の広報紙たる『中国青年報』が発信元ですから、反対派ということはないと思います。胡錦涛が反対派に迎合してこんな記事を出させたという可能性はあるかも知れませんが、いずれにせよ胡錦涛の意向に沿ったものだと思います。

 
 
 
Re:お国の為なら (御家人)
2005-02-22 01:18:33
ひろぽんさん、コメント有難うございます。



中国はやることがいつも極端で、「ほどよさ」というものを知りませんね。というよりほどよくまとめることが出来ないんでしょうけど。ハッカーを愛国者扱いとは、いよいよ来るところまで来ちゃったのかなあ、もう止められないのかなあ、という印象です。



クレヨンしんちゃんの事件、呆れて物が言えません。でも日本でこういうニュースが流れることは、日本人の対中認識を正確にする上で歓迎すべきことです。この種のトラブルは嫌になるほど起きていて、被害者はしんちゃんばかりではないですからね。

 
 
 
お忙しいところ済みませんでした (1読者)
2005-02-22 18:28:27
解放軍の件、ありがとうございました。気のせいだとは思うのですが不穏な感じがします。
 
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