日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 さあ賑やかになって参りました。吉林省吉林市の化学工場でドカーンと爆発事故が起きたと思ったら、それによって松花江が汚染されロシアも緊張する国際問題に。続いて黒龍江省の炭鉱事故で死者171名の大ヒット。化学工場爆発事故→松花江汚染に関しては吉林市の副市長が自殺したりもしています。

 さらに今度は河北省唐山市でまたまた炭鉱事故。死者はすでに74名を突破し、どこまで伸びるのかはまだ不明。何たって行方不明32名とかいう話ですから。「YAHOO! JAPAN」のトップページにある「トピックス」に、

「汚染問題、吉林副市長自殺か」
「中国炭鉱事故 歯止めかからず」

 という見出しが出てしまうほどですから皆さんお待ちかねの展開?相次ぐ炭鉱事故やら闇炭鉱やら地元幹部の官民癒着に吠えていた安監総局(国家安全生産管理監督総局)の李毅中局長は、マスコミ露出が増えていまや時の人です。

 その李毅中、黒龍江省の炭鉱事故と松花江汚染への対応を督戦すべく現地にいたのですが、今度は河北省で炭鉱事故と聞いて唐山市へと急行です。この調子では全国ツアーになるかも知れず、いつ北京に帰ることができるのかはわかりません(笑)。

 他にも河南省の炭鉱で四十数名が閉じ込められてもう一週間、という現在進行形の事故も起きています。ああ長春でも炭鉱事故、ただし死んでも7名ですから李毅中は来てくれそうにありませんね。あと忘れてならないのは鳥インフルエンザ(H5N1型)、広西チワン族自治区で感染者第4号(10歳の女子児童)が御登場です。……と思ったら遼寧省からは第5号、ただしこちらは10月に発病して先月下旬に全快・退院とのこと。ひょっとして隠蔽?

 でもそれだけではないんですよ。やっぱり見物するなら事故より事件でしょう(笑)。……て笑っていられないのは前回の「武装警察が農民に発砲」事件ですが、その続報は後回しにして、まずは勝利油田での大規模陳情事件。リストラされた労働者数千人が決起して事務所ビルを占拠です。

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 ●『明報』2005/12/06
 http://hk.news.yahoo.com/051205/12/1jam7.html

 ●『太陽報』2005/12/06
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051206/20051206021638_0000.html

 他に『蘋果日報』(2005/12/06)などもこの事件を報じていますが、中国国内メディアはスルーの御様子(笑)。元労働者たちは解雇当時の扱いが不当だったとして事務所ビルのロビーに座り込み、経営陣との対話を求めているのですが応じてくれる気配なし。

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 決起側の人数も数千名から4000名、1万余名、2万名と諸説あり、しかも事件発生から12月5日時点ですでにまる一週間というのですからただ事じゃありません。事件は会議室じゃなくてロビーで起きている訳ですが、もちろん現場の周囲には武装警察が出動して外部からシャットアウト。ただ武力衝突はまだ起きていないということです。

 ただこの事件はリストラされた労働者たちが受けた扱いが「不当」だったのかどうかはちょっと疑問です。元労働者たちは勝利油田の経営が悪化した際にリストラされたもので、解雇時に補償金として2万元を一括払いされています。ところがその後、原油価格急騰などにより一転して好況となった勝利油田に対し、「そんなに景気がいいならもっと寄越せ」と騒ぎ出したという経緯があるのです。

 決起側は
「地元政府も元の職場も面倒をみてくれずに貧困へと追い込まれた。これに対処しないと調和社会の実現に不利益なことになる」という構えを示していますが、こんなところにまで「調和社会」が浸透しているとは胡錦涛も嬉しいことでしょう(笑)。

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 この事件は親中紙『香港文匯報』も昨日(12月8日)報道しました。それによると騒ぎは12月2日に発生し、陳情者数百名が事務所ビルの廊下などに座り込んで経営陣との対話を求めているとのこと。解決されたとの報道がないので事態はまるまる一週間ということになります。

 元工員の勝利油田に対する陳情はしばしば行われており、2003年には1万人規模のデモまで起きたそうですが、陳情としては今回が最大規模。決起側は秩序維持のため自ら「糾察隊」を組織しており、先走った仲間がオフィスに暴れ込んだりすることのないよう一同を監視する一方、飲食物を差し入れる係もいるなど長期戦にも動じない構えです。

 ●『香港文匯報』(2005/12/08)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512080014&cat=002CH

 不景気から一転しての好況にリストラされた工員が「そんなに景気がいいならもっと寄越せ」というのはムシが良すぎるように思うのですが、解雇後に再就職できないなどして生活が困窮する者も多く、そのケアを解雇者たる勝利油田と地元政府に求めているというのが実情でしょう。放っておけばその組織力からして恰好の火種になりそうです。

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 そして広東省・汕尾市で汚職疑惑のある土地強制収用・発電所建設に抗議する農民デモ隊に武警(武装警察=準軍隊)が実弾射撃を行ったという事件の続報です。「実弾射撃」より「突撃銃で掃射」の方が適切かつ扇情的なようでもあります。

 親中紙を除く今朝の香港各紙(2005/12/09)がこの事件を報じているのですが、まず重要なのは中共政権に迷いめいたものがみられ、突発した戦慄すべき事態に動揺している観があることです。結論がまだ定まらず、目下のところ扱いに困っているというところでしょうか。

 それを如実に示したのが昨日(12月8日)開かれた外交部の報道官定例記者会見です。事件について記者が質問したところ、「そんな事実はない」と斬って捨てるかと思われた秦剛・報道副局長、

「具体的な状況はまだわからず、状況把握に努めているところだ。公安部報道官に問い合わせてもらいたい」

 と言葉を濁したのです。その一方で、

「中国は法治国家だ。こうした問題については、法律と法規に則って処理が行われる」

 と強調してはいます。もちろんこの部分、定例会見を収録している外交部の公式サイトをはじめ「新華網」(国営通信社の電子版)など中国国内メディアでは全てカットされています。

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 実は前回紹介した『星島日報』(2005/12/08)の記事に「汕尾市党委員会書記(市のトップ)や汕尾市長が現地で陣頭指揮した」という部分がありましたが、あれを読んで私はちょっと驚いたのです。広東省当局ならともかく、汕尾市のトップ風情にあの状況下で実弾射撃を許可する権限があるのか、ということです。

 発砲時点で省当局が絡んでいないことは前回の『香港文匯報』(2005/12/08)の取材で明らかです。現場の一触即発たる張り詰めた雰囲気に頭に血がのぼってしまったのか、大胆な決断をするものだなあと思いました。

 外交部報道官の煮え切らない反応は、事件が日本を含む海外メディアにより全世界へと紹介されてしまった以上、もはや事件の存在そのものを否定し切れないからでしょう。あとは当局側が殺戮に及んだ大義名分が必要になりますが、国際社会でのイメージも考慮するなどして、それがまだ結論に至っていないのだと思います。

 似たケースとして6死48傷の定州事件がありますが、あのときの襲撃側は雇われ暴徒。それでも市のトップなどが更迭されています。今回は「官」である武警が手を下しているのですから、より大がかりな処分が当局側に下されても不思議ではありません。そのあたりをどう収拾したものか、と中央が迷っているところなのでしょう。

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 もっとも、中共政権が逡巡している間にも続報がどんどん流出していきます。しかも現場は香港メディアの地盤というに等しい広東省。記者たちは現地に赴いて、いまなお多数の武警が突撃銃を携えて村の内外を固め、装甲車なども配置されて外部者の進入を封じているのを目撃しています。香港の地上波局「TVB」のクルーは村内に入ろうとして一時拘束され、始末書&自己批判書のようなものを書かされて釈放されました。

 村内の電話やインターネットは全て封鎖されており、いち早く村外に出た農民たちも取材の約束をキャンセルしたり、一種のパニック状態で何を聞かれても「知らない、俺は何も知らないんだ」と首を振るばかり。村内に残った者も自宅で息をひそめ、警官隊が踏み込んでくるのではないかと怯えているそうです。ただ、CATVの「有線電視」が村民のひとり陳沢氏への取材に成功しています。

 事件発生時、陳氏は甥の林怡兌氏(26)と現場にいたのですが、武警の発砲でたまたま陳氏の前にいた林氏が2発の銃弾を受けて倒れ、陳氏が抱き起こしたときにはすでに息がなかったそうです。林氏は2カ月後に結婚を控え、準備のため上海から戻ってきていたところでした。

 陳氏は甥を急いで病院(汕尾人民医院)に運び込んだのですが、一発が心臓を貫通しており即死状態だと医師に説明されました。駆け付けた林氏の母親とフィアンセは林氏の変わり果てた姿に泣き崩れ、ショックで昏倒したといいます。

 病室のベッドには右胸を撃たれたものの一命をとりとめた村民の唐氏(30)が横たわっており、

「奴らは続けざまに100発か200発ぐらいは撃ってきた。俺はそれでやられたんだ。気がついたらやられていた。まさか撃ってくるとは思わなかった」

 と力のない声で語っていました。唐氏によれば、武警は事前に警告射撃をすることなく、いきなり村民たちに発砲してきたそうです。

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 死傷者の多くは東洲衛生院、汕尾人民医院と旭輝慈善医院に収容されたといわれます。汕尾人民医院の当直者によれば、事件当夜に重傷者2人が運び込まれました。一人は腹部に、もう一人は鎖骨と臀部に被弾していましたが、連夜の手術によって一応容態は安定したそうです。……どうやら香港メディアは村内に入れないとみるや機敏にも病院を当たって回り、前述した陳氏や唐氏のコメントを引き出したようですね。

 とはいえ、情報封鎖と地元当局の取材拒否により、死傷者の正確な数はまだ把握できていません。現場に放置されている死体もあり、行方不明となった者のいる家族は身元を確かめに行きたいものの、出て行って撃たれるのが怖くて家から出られないそうです。

 現在のところ死者は少なくとも8名、負傷者20数名、行方不明者約40名とされていますが、これも確かな数ではなく、行方不明者も連行されたのか逃げたまま戻って来ないでいるのかは不明とのことです。

 不明といえば、事件の発端も未だ謎のままです。現時点においては、

 ●警官隊と対峙していた農民が手製爆弾で武警を攻撃して3名が死亡したため、武警がやむなく反撃に転じ、実弾射撃に及んだ。
 ●村民が手製爆弾を用意して建設中の発電所を爆破しようとしたため武警が鎮圧に出た。
 ●武警が主導的に鎮圧行動に出た。

 ……という3バージョンが流布されているそうです。

 ――――

 今回の事件をいち早く報じた反体制系ラジオ局「RFA」(亜洲自由電台)も村民・劉氏との接触に成功しています。

「あの夜から戻って来ない奴がいるんだ。あの夜の9時ごろ、弟が撃たれたと聞いて助けに飛び出したまま、どちらも帰って来ないままだ。家には奥さんと11歳になる子供がいるよ」

 と劉氏は語っています。他の村民から得たコメントによれば、死者はわかっているだけで19名。当局は遺体の身元確認を家族にさせないまま、昨日(12月8日)遺体の全てを持ち去って火葬場で荼毘に伏し、海に捨てられた遺体もあるとのことです。この村民は記者に現場取材を求め、

「家に来てくれれば何でも力になる。俺は死ぬのは怖くない。東洲人民の正義のためだ。今年でもう50になるから、死ぬのは怖くないんだ」

 と話したそうですが(携帯電話でも使ったのでしょうか)、武警が厳重な警戒態勢を強いているため、記者はそれが果たせないのです。1989年の天安門事件の正確な死傷者数いまなお不明であるように、今回の事件も闇に葬ろうとしているのでしょうか。

 地元の汕尾市当局はどうやらその肚でいるようですが、事件がこうして海外に報道されている以上、広東省当局や中央政府は別の対応を迫られざるを得ないでしょう。相次ぐ炭鉱事故や河川汚染、それに勝利油田事件や今回の流血の弾圧。……いずれも胡錦涛政権が掲げてみせた「調和社会の実現」という目標がいかに空虚なものであるかを嘲笑っているかのようです。

 なお流血の弾圧についていえば、今回は海外メディアの可視範囲内で起きた事件だから報道されたという幸運を思うべきです。そうでない場所で似たようなことが頻発している可能性が決して低くないことを、私たちは覚えておくべきだと思います。

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 ●『明報』(2005/12/09)
 http://hk.news.yahoo.com/051208/12/1je6s.html

 ●「RFA」(2005/12/08)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/12/08/china_rights_clash/

 ●『星島日報』(2005/12/09)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1209eo06.html

 ●『太陽報』(2005/12/09)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051209/20051209022210_0000.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051209/20051209022210_0000_2.html



コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )



« 官民衝突で武... 業務連絡。 »
 
コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-12-09 10:54:49
「中国は法治国家だ。こうした問題については、法律と法規に則って処理が行われる」

「中国は法治国家だ。こうした問題については、法律と法規に則って処理が行われる」

「中国は法治国家だ。こうした問題については、法律と法規に則って処理が行われる」



.......プッ
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-12-09 12:37:54
>「中国は法治国家だ。こうした問題については、法律と法規に則って処理が行われる」

敢えて宣言しないとならない辺りに、

連中自身も”それが不足”している自覚があるんでしょうねぇ(笑)。

(日本や欧米諸国が「(自国は)法治国家だ」なんてワザワザ言わんでしょうに…)
 
 
 
Unknown (大丈夫?)
2005-12-09 13:03:37
中国人民武装警察部隊

http://zh.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E8%AD%A6



うーん、市レベルにそこまで権限があるのだろうか?
 
 
 
おーい、朝日の諸君 (近江源氏)
2005-12-09 15:55:24
 おーい、朝日の記者さんたち、あるいは共同通信の通信屋さんたち、ここのブログ読んでるかい?

 自己嫌悪に陥って鬱病になりそうなので読んでない、ってかい。分かる分かる、その気持ち。だけどもう社会の木鐸のジャーナリストなんて大口だけは叩かないように、黙ってろよ。

 香港では親中新聞まで報道しているそうじゃないか。だから日本の親中さんらも書いていいんじゃないの。でないと将来、なんで報道しなかった、信用ならない奴らだ、なんて人民解放軍憲兵隊にしょっ引かれたりするよ。
 
 
 
A日新聞はどっちを優先報道かな?(笑) (Unknown)
2005-12-09 17:47:08
なんか、まだ騒いでますねぇ(笑)。



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「戦犯を崇拝」と非難=過ち是正を要求-中国外相

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051209-00000075-jij-int

日中韓外相会談などを拒否した理由に関して「ある一国の指導者が戦犯を崇拝しており、行うことはできない」と述べ、小泉純一郎首相による靖国神社参拝を強く非難した。

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・・・よっぽど海外メディアの気をそらせたい程の”何か”が

あったんでしょうかねぇ?(笑)
 
 
 
中央公論で (名無し)
2005-12-09 19:26:35
良いブログだと紹介されてました。

これから楽しみに読ませていただきます。
 
 
 
東洲鎮 (福建)
2005-12-09 23:51:54
google.chにてでググってみたら・・・

ttp://www.google.com/search?hl=zh-CN&newwindow=1&q=%E4%B8%9C%E6%B4%B2%E9%95%87&btnG=%E6%90%9C%E7%B4%A2&lr=

いっぱいヒットしましたが、寂しいことにこちらからでは見られませんね。(当然ですか) かなり近場での出来事ですが、なんのニュースもありませんし、現地人の友人達も知らないそうです。

昨日のアルジャジーラのニュースを見せたら「捏造だろう」だって(笑)
 
 
 
みなさんコメントありがとうございます。 (御家人)
2005-12-10 00:24:15
ちょっと忙しくてレスを付けられず申し訳ありません。汕尾市の事件については夜間の出来事のため流出映像には期待できないと思います。その代わり病院に収容された死傷者の写真が香港紙に出る可能性はあるかも知れません。

 「RFA」の報道で村民が語ったように、遺体は全て当局側によって持ち去られた模様です。反体制系ニュースサイト「大紀元」(gb)には、遺体の身元確認をさせてくれと居並ぶ警官隊に跪いて乞い願う村民たちの姿を写真&ムービーで見ることができます。

ttp://www.epochtimes.com/gb/5/12/9/n1148284.htm

 白装束の村民がいたり、多くの村民が線香を手にしているのが印象的です。生きていても行方不明で連絡がとれないままというケースもあるのでしょうが、その数からすると死者は数名どころではないように思います。

 
 
 
Unknown (名無し)
2005-12-10 01:38:45
労働者の暴動は、天安門のソレとは質が全く違いますしね。それこそ死活問題でしょうし。

 
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