日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 ああ異なる話題をひとつにまとめる苦しさよ。一日で色々なニュースがわらわらと飛び出してくるからこういう標題になるのです。

 ……ただ全く関連がないかというとそうでもないような。例えば、軍部の士気と一種の危機感が高まっているようにみえなくもありません。どこかピリピリしたものを感じます。

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 まあ順番にいきましょう。まずは「テロ」のお話。というか中共当局いわく「テロリストの拠点を潰した」というニュースですね。日本でも報じられています。

 ●中国が独立派18人殺害 新疆ウイグル自治区(共同通信 2007/01/08/20:46)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=MRO&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2007010801000357

 【北京8日共同】中国新疆ウイグル自治区当局は8日、同自治区警察が5日、「東トルキスタン」独立派の訓練基地を攻撃し、18人を殺害、17人を拘束したと発表した。地元当局によるネット新聞「天山網」が伝えた。

 中国政府は、同自治区を中心とする東トルキスタン独立派を「最大のテロの脅威」と位置付け、2001年の米中枢同時テロ以降、取り締まりを強化しているが、一度に十八人も殺害するのは異例。(後略)

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 つい先日中国語の勉強させてもらった共同通信がマトモに仕事をしています。どこが?っていうと、中共当局いわく訓練基地を潰された「テロ組織」を、

「『東トルキスタン』独立派」

 としていることです。事件そのものも「警官側1死1傷、『テロ組織』側18死17捕、押収武器わんさか」と大がかりなんですけど、これは結構重要な気がします。……いや、1月8日の第一報から現在に至るまで、中共当局は警官隊が殲滅した訓練基地の主を「恐怖分子」(テロリスト)とかテロ組織と位置づけ、それに徹しているからです。

 組織名は「東突伊斯蘭運動」(略称「東伊運」=東トルキスタンイスラム運動)だそうですが、共同電の通りこれは本来「東トルキスタン」独立派とみるべきでしょう。ところが関連記事に一通り目を通してみたところ、このグループに対し分離・独立を掲げた勢力への呼称である、「分裂主義者」は一切使われていません。

 まあ国際社会へのアピールなんでしょう。中共当局は李登輝さんや陳水扁さんらを「分裂主義者」呼ばわりしていますが、「東伊運」も分裂主義者扱いにすると、

「おっ中国には新疆ウイグル自治区にも独立運動が存在しているのか」

 という印象を強めてしまいます。そうすると中共は内部の独立運動家たちを潰したことになり、どうも聞こえが悪いし、民主や人権にうるさい国から水を差されかねない。だからことさらに耳障りを帯びない「反テロ行動」と強調することで、外から余計な邪魔が入るのを避けたのだと思います。

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 この治安当局による攻撃が行われたのが1月5日で、私の知る限りの第一報は8日の夜8時半です。たぶんこのタイムラグは僻地で発生した事件だから、というだけの理由ではないでしょう。炭鉱事故なんかだと速報されますからね。

 公安部の発表によれば警官が1死1傷とのことですが、本当に18名も殺害したのなら、装備などから考えるに武警(武装警察)の仕事でしょう。内乱鎮圧用の「警官の制服を着た軍人」という武警ですが、人民解放軍と公安部に両属する形なので、公安部から「警官1死1傷」と発表されても筋は通っています。

 報道では武警ではなく「民警」(人民警察=普通の警官)となっていますけど、これも対外的印象を意識したものではないかと思います。日本だってテロリストの基地を急襲するなんて特殊なミッションなら警察の特種部隊ひいては自衛隊を動かすでしょう。

 ●事件の第一報(新華網 2007/01/08/20:35)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2007-01/08/content_5580446.htm

 ●公安部報道官による発表(新華網 2007/01/09/11:33)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2007-01/09/content_5583031.htm

 2005年の「12.6事件」(広東省汕尾市)では突撃銃で農民を乱射したくらいですから、機関銃や装甲車やヘリも使われたかも知れません。いやー攻撃ヘリっぽいものを持っているんですよ新疆の武警は。「新華網」に写真付きで戦闘訓練の模様が活写された記事が出ています。救難訓練と腰砕けにならなかったあたりに血しぶきを浴びた現場の昂然とした気分を感じます。

 ●武警ヘリの戦闘訓練
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-01/09/content_5582571.htm

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 他にも新道の開通で新疆ウイグル自治区の奥地のパトロールが強化されたとかいう「おめでたいニュース」、そして殉職した警官の葬儀が行われたという「泣かせるニュース」が「新華網」に出ていました。

 何だか天安門事件(1989年)直後、鎮圧にあたった人民解放軍の部隊をトウ小平が慰問したり、学生や市民の反撃を受けて死傷した兵士の死体・負傷者映像を「事件の真相」と題してテレビで流していた(悪いのは「暴徒」という意味)のを思い出してしまいました。

 ●新道完成で辺境部のパトロール強化が実現(新華網 2007/01/09/11:10)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-01/09/content_5582869.htm

 ●殉職した警官の葬儀(新華網 2007/01/09/11:33)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2007-01/09/content_5585116.htm

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 このうちお葬式のニュースは殉職した警官を「黄強同志」と呼び、公安部が「革命烈士」という称号を贈ったと伝えています。へえー黄強さん共産党員だったのかと思いつつ続きを読んだら、

「新疆公安庁党委員会は黄強同志を中国共産党党員と追認し、また一等功を授与した」

 とありました。つ、追認 !? ……これは殉職者を急いで党員に仕立て上げたということなんでしょうか?だとすれば物凄いパワープレイ!ですけど、わかるような気もします。

 従来の反日色を薄めて、

「民衆のため愚直に激務をこなしたため病死した党幹部」
「公に殉じた警官」
「社会主義栄辱観」

 ……といった刻苦奮励&風紀粛正テイストを志向しているようにみえる胡錦涛型「愛国主義教育」にとって、今回の殉職は確かにぴったりの素材です。でも必ず共産党員でなければならないのですね(笑)。


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 お次は「粛清」のニュースです。先日ふれた「党中央紀律委員会第7次全体会議」が1月9日に開幕し、初日から胡錦涛・総書記が重要演説を行いました。党のイベントですから肩書きも「国家主席」ではなく「総書記」が優先されるのです。

 ●切腹ではなく斬首?陳良宇の罪状は予想以上とか。(2007/01/05)

 そうです。この会議で陳良宇の処分が決まりそうだ、それも予想以上に罪が重そうだという親中紙『香港文匯報』の特集があったばかりなので注目の集まるイベントです。

 その陳良宇の一件で累が及んで失脚するのではとみられているのが、上海閥の現役トップクラスのひとりである黄菊・党中央政治局常務委員。

 年初から公の場に登場せず「やっぱり?」と考えていたところ、1月5日に北京で開かれた中央企業責任者会議に出席したので(1月7日に報道)健在ぶりをアピールか?と思ったのです。

 ところが、その黄菊が今回の重要会議には出ていません。

 胡錦涛の重要演説記事の冒頭に並んだ出席者は呉邦国、温家宝、賈慶林、曽慶紅、李長春、羅幹。会議の進行役は呉官正で胡錦涛が演説ですから、党の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の中でお約束のように唯一、黄菊だけが欠席していることになります。

 心電図ピー状態でしょうか。

 ●胡錦涛の重要演説(新華網 2006/01/09/20:33)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/09/content_5585119.htm



「下」に続く)




コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
一党独裁 (643)
2007-01-10 21:50:03
「革命烈士」っていつまで革命をやってるんでしょうか、あの国は。もの言えぬ死者に対してむりやり党籍追認ですか。共産党の唯我独尊ぶりというか異常さがよくわかります。
 
 
 
Unknown (御家人)
2007-01-13 06:22:48
>>643さん
 党籍追認については念を入れて恩師に記事を示して確認したところ、「あなた何言ってるんですか、そんなの昔からありましたよ」と一笑に付されてしまいました。でも文化大革命当時ならともかく、21世紀になっても平気でそれをやっているという神経はやはり異常としかいえません。

 ちなみに恩師によると、文革期にリンチなどで殺されたりした人の名誉回復が進められた際にも死者に「党籍を贈る」ということが行われたそうです。一種の供養なのかも知れませんが、いよいよ浮かばれないように思えてなりません。
 
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