日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 ちょっと意外です。

 ●李登輝氏が5月31日から来日予定。
 ●石垣市長が尖閣諸島上陸の意向表明。
 ●「右翼団体」が新手の「歴史歪曲教科書」出版を目指す。

 という、これなんて役者揃い過ぎな大ネタが3つ、電波系基地外反日紙『環球時報』の電子版「環球網」に4月7日、ズラリと並びました。……というのは前回お伝えした通りです。

 となれば翌4月8日は紙媒体の『環球時報』でお披露目だ……と思っていたら、あにはからんや。三大ネタのいずれも紙面を飾っていませんでした。『環球時報』を系列下におく『人民日報』(党中央機関紙)、胡錦涛の広報紙『中国青年報』(共青団機関紙)、人民解放軍の機関紙『解放軍報』も、また然り。ネットでは大手ポータルをはじめ全国各地のニュースサイトで転載されまくっているのですが、これは一体どうしたことでしょう。

 この3つの大ネタのうち、李登輝氏の件は8日において続報も論評も出ていません。残る尖閣と歴史教科書の一件はどうかといえば、尖閣問題については香港の親中紙『大公報』が掲載した「麻生首相は北朝鮮とか尖閣を掲げて国民の目を外交問題に逸らす肚だ」といった内容の論評を国営の新華社通信に次ぐ官製通信社・中国新聞社が中国国内に配信し、これを大手ポータルのニュースサイトが転載しています。

 ●「中国新聞網」(2009/04/08)
 http://www.chinanews.com.cn/hb/news/2009/04-08/1635934.shtml

 ただし、この記事の主眼は、

「麻生首相は内政での失点を挽回すべく、国民の目を外に逸らさせようとしている」

 という点に置かれていて、その具体的なアクションのひとつに尖閣問題を挙げているだけで、中国曰くの領有権争いをテーマに据えた文章ではありません。

 ――――

 で、この記事を別とすると、8日に出回った関連記事は2本。まずは牽引役を務めている「環球網」が共同通信電を引いて報じたものがあります。「石垣市長が魚釣島上陸の意向表明」の件についてなのですが、これは、

「中国の抗議を恐れず」

 という見出しの一部が目を引く程度で、内容に目新しいものはありません。

 ●「環球網」(2009/04/08/07:10)
 http://world.huanqiu.com/roll/2009-04/426141.html

 その中であえて注目するとすれば、この記事の転載先のひとつに「国際在線」(中国国際放送局ウェブサイト「CRI online」)があったという点でしょうか。外交部をはじめ党・政府系の機関やメディア(機関紙)のいずれもスルーしている中で、唯一官製色の濃いメディアといっていいでしょう。

 ●「国際在線」(2009/04/08/10:29)
 http://gb.cri.cn/27824/2009/04/08/541s2478783.htm

 もう1本は尖閣問題と歴史教科書をひとまとめにした記事で、上海紙『東方早報』によるもの。これは下のように8日付同紙(紙媒体)にも大見出しで掲載されており、また記事の分量と内容の詳細度も十分で、非常にヤル気を感じさせます(笑)。江沢民の牙城である「上海」の新聞ということと関係があるかどうかはわかりません。




http://epaper.dfdaily.com/dfzb/html/2009-04/08/node_18.htm


 記事は全体の四分の三が今回の石垣市長による尖閣上陸意向表明の経緯について詳しく書かれており、最後の四分の一で歴史教科書に言及。「尖閣」を大見出しで掲げ、文末に「歴史教科書」の写真を配するという心憎いレイアウトです。

 質・量ともに「環球網」版をはるかに凌駕するものとなっているうえ、ネットをやらない層への訴求効果を狙ったという意味で紙媒体での露出という点に留意しておきたいところです。

 ●『東方早報』(2009/04/08/01:53)
 http://www.dfdaily.com/node2/node23/node220/userobject1ai162552.shtml

 これを転載した主なニュースサイトは、

 ●「新浪網」(2009/04/08/01:53)
 http://news.sina.com.cn/c/2009-04-08/015317563994.shtml

 ●「網易」(2009/04/08/10:38)
 http://news.163.com/09/0408/12/56CJFJ9C000120GU.htm

 ●「捜狐」(2009/04/08/01:53)
 http://news.sohu.com/20090408/n263251249.shtml

 ●「TOM.COM」(2009/04/08/05:13)
 http://post.news.tom.com/6D000A98856.html?source=TOM_N03

 ……と、大手ポータルが見事なまでに足並みを揃えています。

 ――――

 尖閣問題については、日本でも続報が出ていますね。



 ●尖閣諸島に上陸の意向=文書で外相に伝える…石垣市長(時事ドットコム 2009/04/08/12:23)

 河村建夫官房長官は8日午前の記者会見で、沖縄県石垣市の大浜長照(おおはま・ながてる)市長が尖閣諸島(中国名・釣魚島)に上陸したいとの意向を政府に伝達したことを明らかにした。その上で、河村長官は「関係省庁と対応を検討している」と述べた。

 尖閣諸島は日本が実効支配しているが、中国も領有権を主張している。日中の首脳も参加して12日にタイで開かれる東アジア首脳会議などを控え、波紋を呼ぶ可能性もある。

 上陸の意向は、3日付けの書簡で中曽根弘文外相に届いた。石垣市によると、尖閣諸島への上陸は、固定資産税課税などのための現地調査が目的。大浜市長は、国が認めれば上陸し、調査を実施する意向だ。ただ、上陸が実現すれば中国の反発は必至で、政府筋は「慎重に対応したい」としている。

 ――――

 ●尖閣上陸要望、慎重に対応=外務報道官(時事ドットコム 2009/04/08/18:56)

 兒玉和夫外務報道官は8日の記者会見で、沖縄県石垣市の大浜長照市長が政府に尖閣諸島(中国名・釣魚島)への上陸を要望していることについて、慎重に対応する方針を示した。

 同報道官は、尖閣諸島のうち民有地である魚釣島など4島については、政府が「平穏かつ安定的な維持」を目的に賃借し、「原則として何人も上陸を認めない方針を取ってきている」と説明。「土地所有者の意向や賃借目的などを十分に踏まえて検討する必要がある」と述べた。



 ううむ。国連安保理での北朝鮮問題の扱いや月末に控えている麻生太郎・首相の訪中を考慮して腰砕け、といったところでしょうか。少なくとも『大公報』の論評記事が指摘していたように「麻生は尖閣で国民の目を外へ逸らす」という考えではなさそうです。

 ところが、5月に魚釣島上陸を予定していた台湾や香港の活動家たちも腰砕けになってしまいまして。



 ●尖閣諸島への上陸断念=漁業権訴え「周辺で魚釣り」…台湾団体(時事ドットコム 2009/04/08/16:51)

 【台北8日時事】尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を主張する台湾の民間団体「中華保釣協会」は8日、5月上旬に香港や中国の団体とともに計画していた尖閣上陸を断念し、同諸島周辺での魚釣りにとどめるとの方針を明らかにした。同協会の黄錫麟幹事長が時事通信のインタビューに応じた。

 黄幹事長は、尖閣に向けて出航する計画に変更はないとしたが、「漁民のために、(尖閣諸島周辺海域の)漁場を守るのが目的」と強調。尖閣へは上陸せず、「釣りという平和的手段で漁業権を主張する」とした。日本と中国、台湾が主張する領有権は「政府間の問題だ」として、今回の出航では領有権に関する主張は行わず、日本の海上保安庁の巡視船などから現場で警告を受けた場合は、台湾の領域内に速やかに移動し、「衝突は起こさない」と述べた。

 同幹事長は、同協会が尖閣に派遣する漁船は1隻とし、同協会の会員や香港、マカオの活動家、報道関係者ら計30~40人が同乗するとの見通しを示した。出航日時は5月上旬の波の穏やかそうな日を選び、基隆港沖合約56キロの小島「彭佳嶼」で香港や中国の船と落ち合い、尖閣に向かうとした。

 黄幹事長らは当初、日本が同諸島周辺の監視を強化しているとして、抗議を目的に同諸島に上陸するとの考えを示していた。



 これは時事通信のスクープですね。覚悟を決めて海上保安庁の巡視船の群れの中に突入していく上陸作戦が、何やら「2ちゃんねる」の「大規模OFF」のようになってしまいました(笑)。ポイントが「魚釣島」だから「釣り」?「釣りという平和的手段で漁業権を主張する」という脱力系も「2ちゃんねる」テイスト。

 ちなみに私がみた限りでは、中国国内メディアでこれを報じたところはまだありません。くれぐれも、この時事通信電を日本語のまま中国の大手掲示板に投下したりしちゃいけませんよ。そんなことすると必ず日本語のできる奴が現れるやサクサクと訳して糞青(自称愛国者の反日信者)どもを意気消沈させてしまいますから。連中にはもう少し、楽しい夢を見させてあげようではありませんか。

 ――――

 ……と、4月8日の動きを眺めた感想としては、まず李登輝氏来日のニュースで盛り上がっていないことが気になりました。情報が少ないため続報がないということもあるのかも知れませんが、論評記事も出ていません。台湾が対中融和路線の馬英九政権であることと、圧倒的多数派である台湾人の感情に中共政権が配慮したのかな、と感じた次第です。

 尖閣問題については日本も台湾も鉾を収めてしまったので「おやおや」と肩透かしを喰らった気分。中国を交えた三者間での申し合わせのようなものが成立したのでしょうか?ともあれこの形で収まるなら胡錦涛もニンマリ、といったところでしょう。

 ただし、台湾・香港の活動家たちによる上陸作戦が「魚釣島周辺の漁業権を主張する魚釣りOFF」になってしまったこと、また日本政府が石垣市長の魚釣島上陸に消極的であるというニュースはまだ中国国内には流れていない模様です。

 胡錦涛サイドはこの2つのニュースをさっさとメディアに載せて敵の出ばなを挫いてやりたいところでしょうが、『環球時報』や『東方早報』の背後にいる政治的保護者たちは逆に糞青どもが勇み立つような情報を流したいでしょうし、李登輝氏来日についても本決まりなのであれば、ここぞとばかりに李登輝氏個人と日本政府を叩きたい筈。関係部門においては巡視船による東シナ海のパトロール強化が既定路線になっていますから、ええいここでやってしまえ、てな暴挙に走る可能性も捨てられません。

 まあ日本側もまだ石垣市長の尖閣上陸を却下した訳ではありません。そうなる可能性は極めて低いと思われますが、もし石垣島市長の尖閣上陸が実現し、一方で中国のいう「歴史歪曲教科書」が検定を通過すればアンチ胡錦涛諸派は息を吹き返せることでしょう。

 ……いつの間にか政争話になっていますが(笑)、実際そう見えてしまうので仕方ありません。領土問題という真剣なテーマではあるものの、一面ではそれをどう扱うかということで中共上層部が内部で揉めているように思います。どちらも「あれは中国の領土」という見解では一致しているのですが、アンチ諸派は胡錦涛とは真逆に近い手法で臨むことを主張し、それによって対立局面をつくり出し、政権を揺さぶろうとしている訳です。他方面でのチャンバラも行われていることですし。

 ともあれ、まずは反日気運をここまで盛り上げてきた『環球時報』や鮮やかに紙媒体露出を果たした『東方早報』などがこの先どう動くかに注目したいところです。電波系としては『環球時報』と双璧をなす新華社系列の『国際先駆導報』は別の話題でチクチクやっているところですが、『環球時報』のつくり出した流れに加勢して、よりあからさまに動き出すのかどうかも気になります。

 とはいえ実のところ、『環球時報』は獅子奮迅の働きながら、現状は盛り上がっているというよりは不完全燃焼。ネタの割に大手ポータルのニュースサイトなどに出る関連記事の付属掲示板がどこか勢いに欠けている観があって、ひょっとして削除職人への指示出しレベルでも水面下での綱引きが行われているのかな、などとつい邪推したくなります。

 ……まあ、本来なら数日寝かせて様子をみるべき素材ではありますが、ネタがネタだけについ実況したくなり、果たせるかな振り回されてしまう自分が哀しくも滑稽であります(笑)。

 以下は余談として。

 建国60周年記念として行われる中国初の観艦式には、15カ国の海軍艦艇が招待されて参加することになっています。米国はその中に含まれているのですが、日本はお呼ばれされていません。……その非を鳴らす、というのではなく、これって軍のトップでもある胡錦涛の意向を海軍上層部が素直に反映した結果なのかなあ、と考えてみると、どうも疑問に思えてきてしまうのです。





コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (民す党)
2009-04-09 12:45:01
> 領土問題という真剣なテーマではあるものの、一面ではそれをどう扱うかということで中共上層部が内部で揉めているように思います。

日米が、北朝鮮のミサイル発射で、国連決議に強気だったり、次のような事柄が発生しているので、これらの(米国と中国・北朝鮮・イラン)連立方程式を、どう解くかを決められないのかもしれません。(今後、熟成ぐあいの楽しみが増えます。)

(1)米、中国企業幹部に制裁 イラン企業との取引で
http://sankei.jp.msn.com/world/america/090408/amr0904081206015-n1.htm

(2)北朝鮮、米記者2人起訴へ 拘束長期化の可能性
http://www.asahi.com/international/update/0331/TKY200903310050.html

(3)イラン当局、イラン系米国人記者をスパイ容疑で起訴
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090409/mds0904090019000-n1.htm

(4)米市民、北ミサイル阻止へ「軍事対応」57%…民間調査
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090407-OYT1T00816.htm
・米調査会社ラスムッセンは5日、北朝鮮のミサイル発射阻止に向けた軍事的対応を「支持する」人が57%
・「北朝鮮が核兵器を米国に使用する」と懸念する人は73%

 
 
 
これもゲンメイの成果か? (きんぎんすなご)
2009-04-09 19:45:01
NHKスペシャルの大型企画「JAPANデビュー」が始まったんですが、第一回が「アジアの一等国」という題で主に台湾における日本の統治政策を取り上げていたのですが。これがまた民放のワイドショー番組かと思うほど情緒的編集であまりにも酷いデキ。
それも台湾人への取材映像に時折入るNHK取材者と思しき軽薄そうな声付きで程よく反日、自虐史観仕様になっております(苦笑
当時の時代背景をよく知らない人が見たらマジ勘違いするかも…
 
 
 
ご参考まで (sakuya)
2009-04-09 23:40:18
石垣市長の尖閣視察の件ですが、何か裏があるのかも?

きち@石根
問題はタイミング
http://ameblo.jp/disclo/entry-10239069409.html
 
 
 
Unknown (arcadia)
2009-04-10 01:42:45
>>きんぎんすなごさん
その番組、私も見ておりました。
インタビューに登場していた方々達、どの様にN○K側が集めたのか、
かなり気になります(w

>当時の時代背景をよく知らない人が見たらマジ勘違いするかも
この辺、○HK側は意図的に「ソレ」を狙っていたのではないでしょうか?
およそ100年も前の歴史上の出来事なんですから、現在の価値観や理屈などで
判断してはいけないんですが、それを理解出来ない方々もいますからね(溜息

ある場に100人いたとして、100人全員を満足させる事なんて出来ませんよね。
インタビューを受けていた方々にとっては、フランス式に同化政策を採られるよりも
イギリス式に統治された方が幸せだったんでしょうか?

自治を認めて欲しかったという話は理解出来ましたが、それ以外はサッパリでした。
人種や民族の分け隔てなく、全ての人を完全な意味で公平に遇する国家なんて、
21世紀である2009年現在に至っても、世界のどこにも存在していませんよね。

東南アジアの植民地うんぬんなんて件でも「この手の話」は度々出て来ますが、
数百年もの間、世界中で植民地を経営していた欧米各国の話は都合が悪いのかスルーして、
日本だけを悪逆非道の権化としますから、本当にタチが悪いですね。
 
 
 
台湾ブーム再び (piyo)
2009-04-10 02:15:59
番組関係者と話す機会がありましたが、結局制作側に戦後史観以上の考えが及ばず、不勉強のまま思いこみのまま作ってしまったんだなあ、と感じました。
こちらが思っているよりもオツムの程度が低いだけの放送局なのかなあってちょっとガックシ。

せめてこういうモノも見てから台本書いてほしいのぉ。
http://www.youtube.com/watch?v=oXNPrxxuCXg&feature=related
 
 
 
Re: これもゲンメイの成果か? (通りすがり)
2009-04-12 01:27:09
意図的に反日風味の味付けがされてるようですね。
さすがNHKです。
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-716.html
 
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