(「上」の続き)
「上」で紹介した「人民内部の矛盾」、これに関して前掲の『星島日報』(2006/01/05)の記事は、
「公式統計によると、内地(中国本土)で発生した比較的大規模な集団的抗議事件は一昨年(2004年)、7万4000件以上に達し、昨年(2005年)はさらに増加傾向にあった」
としています。こうした「人民内部の矛盾」を「妥当に処理」「適切に処置」しなければならない、というのが武警(武装警察)の課題であり使命なのですが、「人民内部の矛盾」は「人民」によるものである以上、これは敵視・撃滅する対象ではありません。武警にとっての敵対勢力というのは別に存在しています。論文から訳出しますと、
目下のところ世界はいまなお不穏であり、各種の矛盾が複雑に錯綜し、平和と発展に影響を及ぼす不安定・不確定要素が依然として存在している。西側の敵対勢力はわが国の西洋化、分化を図るという政治的陰謀を未だ放棄しておらず、様々な手段を通じてわが国に対し浸透、破壊、転覆活動を行っている。
民族分裂勢力、宗教極端勢力、そしてテロリズムを奉じる勢力がわが国周辺の一部の地区で依然としてかなり活発に活動しており、特に「台湾独立」「チベット独立」「東トルキスタン独立」「民主化運動」「法輪功」などの敵対勢力は、手を換え品を換え攪乱活動、破壊活動を行っており、わが国の国家安全と社会の安定にとって直接的な脅威となっている。
……ということで、これが殲滅すべき対象ということになります。ちなみに「民主化運動」とは海外の反体制系組織などのことで、広東省・番禺の太石村で起きた「農民の民主化運動」(村長改選・汚職疑惑究明運動)のように法に則った活動とは別物です。もっとも一党独裁の中共政権ですから、たとえ法に則った活動であっても党にとって都合の悪いことなら容赦なく叩き潰します。太石村事件は正にその好例でしょう。
あるいは、上で「敵」について規定しているので、そのレッテルをかぶせてしまえば相手が「人民」でも殲滅可能となります。「攪乱分子」「破壊分子」「政権転覆分子」などにしてしまえばいい訳で、広東省汕尾市・紅海湾で発生した「12.6」事件にしても、市当局の発表では「少数の『××分子』に煽動された村民が……」ということになっています。
――――
法制あれど法治なし。法律よりも党の意思が優先される国は怖いですねえ。……ということで武警が人民解放軍同様、中華人民共和国よりも中国共産党を優先する、つまり国家ではなく党(中共)に従属する武装組織であることにふれておきたいと思います。再び論文から訳出しますと、
武警は(中略)党中央、中央軍事委の指示と胡錦涛主席の武警部隊建設に関する一連の重要論述を思想的・理論的な武器とし、部隊建設における重大な現実問題を真剣に解決しなければならない。
……と、武警が国家ではなく党に従属するという原則が示されます。さらに、
「永遠に党と人民の忠実なる衛士たること」との要求を断固貫徹し、思想・政治建設の強化に力を注ぎ、部隊が一貫して党中央と中央軍事委の指揮に従うことを保証しよう。永遠に党と人民の忠実なる衛士たることは、武警部隊が新世紀・新段階の歴史的使命を履行する上での根本的保証である。
……と畳み掛けます。「党と人民の忠実なる衛士」ときましたが、ここには国家のニオイがしません。「人民」は「国民」に等しいのかどうか私にはわかりかねますが、例えば中国国籍を有する李さんや張さんが「人民」かどうかを判定するのはあくまでも中国共産党であって、中華人民共和国政府ではないでしょう。
――――
(武警は)党の絶対的指導を永久不変の警魂とし、「軍隊の非党化、非政治化」及び「軍隊の国家化」などの誤った観点の影響を断固排除して、党が思想・政治・組織の各面から部隊をしっかりと掌握することを確保し、広範なる官兵が断固として党中央と中央軍事委の指揮に従うことを確保しなければならない。
(武警は)終始一貫して党の基本理論で官兵を武装し、党の路線・方針・政策と重大な決定を以て部隊の思想と行動を統一するよう部署しなければならない。
……ここまで来ると「武警は党に従属する組織」というだけでなく、「武装警察」とはいえ実質はやはり「警官の制服を着た軍人」なんだなあ、という印象が強くなります。
さらにいえば、武警も軍同様、少将、中将……といった階級があります。階級自体は警察官にもあるでしょうが、少将、中将といった軍と同じ呼称を用いていることからも「制服を脱げば軍人」という本質を垣間見ることができるといえるでしょう。また、
「党の絶対的指導」
「『軍隊の非党化、非政治化』及び『軍隊の国家化』などの誤った観点の影響を断固排除して」
という言い回しは、八一建軍節(人民解放軍の誕生日とされる8月1日)恒例の軍機関紙『解放軍報』の社説そのまんまです。
●兵隊さんが揺れてます。――解放軍報八一社説。(2005/08/03)
――――
ところで今回発表された論文のタイトルは「政治的に揺るぎない人民の模範となるような部隊の建設に努めよう」となっています。これは、
「政治的に揺るぎない武警」
「人民の模範となる武警」
というイメージと実態がともに揺らいでいることを示唆するものといえるかも知れません。実はこの論文、三部構成なのですが、「人民内部の矛盾」とか「敵対勢力」が語られるのは第一部だけで、第二部・第三部は、
「党中央の絶対的指導に従え」
「思想を堅固にせよ」
「部隊の高度な安定と集中・統一を維持せよ」
「大局眼を持て」
……といった内部向けの説教に費やされています。ニュースあるいはトピックとしては共同電などの伝える「人民内部の矛盾」云々が重視されるでしょうが、タイトルと内容からいえば、この論文の重点が第二部と第三部に置かれていることは明らかです。
これまた意地悪な見方をすれば、「党中央の指導に従わない」「思想的に動揺している」「部隊の安定と集中・統一が十分でない」「大局眼を持たない」といった武警が増えつつあることを、武警トップ筋ひいては胡錦涛政権が深刻視していることを暗示しているといえます。「人民内部の矛盾」も問題だがむしろ武警自体の乱れっぷりの方が深刻ではないかと。ここでいう深刻視される「武警」とは個人のことではなく、武警の下部組織、末端組織といったニュアンスです。
「上有政策,下有對策」(中央で決めた政策が地方・末端レベルでは骨抜きにされてしまう)
という現象が、武警においても坐視できない状況になりつつあるのかも知れません。
――――
言うなれば武警も「諸侯」化している、ということです。いや「諸侯」の走狗と化しているというべきでしょうか。具体的には党中央や中央軍事委を疎かにし、地元当局の意を汲むことを専らとしている、全国的な観点という大局眼を持つことなく、地元優先志向に傾く、といったことです。
上海市など特に沿海部の地方政府がデベロッパーと結託して不動産開発で荒稼ぎしましたが、武警も末端レベルで地元当局と利権の面などで一蓮托生(癒着)の関係となっているのではないでしょうか。極端な言い方をすれば、地元当局の私兵同然になっている。実例はいくらでもあるでしょう。
例えば、無茶な土地収用や工場による河川・大気汚染といった環境破壊が地元当局によって隠蔽され、農民の抗議には全く取り合わない。農民の健康や生命なんかより土地売却益や企業からの税収の方が当局にとっては大事だからです。最後にキレた農民が暴動を起こすと、そこで武警さんの出番。時代劇でいえば悪徳商人に飼われている浪人先生のようなものです。
そういうケースが時代劇でなく実際に多発していることは当ブログで再三紹介しているところですが、それも氷山の一角、運悪くバレてしまった事例に過ぎないのでしょう。「12.6」事件における武警の役回りなどは正に悪徳商人に飼われている浪人先生、定州事件の雇われ暴徒そのものではありませんか。
ただ実弾射撃で農民たちを薙ぎ倒してしまったこと、これは私たちの視界外にある僻地だとセオリーなのかも知れませんが、香港の目と鼻の先である広東省、しかも海外メディアが以前から注目していた案件でやってしまったのは勇み足でした。農民も爆弾などを用意して武装していたようですから、緊迫した局面で現場指揮官がつい逆上してしまったのかも知れません(余談ながら、今年は「武装農民vs武警」というシチュエーションが増えそうで楽しみです)。
この現場指揮官も責任を問われて刑事拘留されたと発表されていますが、その後は音無しですね。汕尾市当局が庇い、それを広東省当局が保護しているのでしょう。「親民路線」を掲げ、「調和社会の実現」を目標とする中央の胡錦涛政権がそれに介入できず、せいぜい武警トップに説教調のかような論文を発表させることしかできないのですから全くお笑いです。乱れています。
――――
上下に分けた長文なのにとりとめのない内容になってしまい申し訳ありません。とりあえず原題の「武警も動揺している模様。」は撤回しておきます。この実態は動揺なんて高級なものではありませんね。とうとうバラけてしまったというか地金が出てしまったというか、本卦帰りしたという観があります。これもまた中共による統治システムが軋み始めていることの証左ということになるのでしょう。
| Trackback ( 0 )
|
|
いや、私もそう思います。元々切れ味なんざないのですが、こういうときは往々にして体調が悪いものです。たぶん旧正月前で忙しいので疲れているのでしょう。
本業にしても副業(連載コラム)にしてもそういう波があります。特に副業の場合は現地のBBSで叩かれているのを見ると凹みます(笑)。結構な原稿料をもらっていますし、読者もお金を払ってくれていますから。でもイチローのような安打製造機でも毎試合ヒットを打っている訳ではありませんし。こんなもんです。
まあ当ブログに関しては、願わくば内容にはあまり期待しないで下さい。所詮は娯楽ですから、私自身はこれで心が休まれば(ついでに少し中国について勉強できれば)それでいいと考えています。でもわざわざ読みに来て下さる皆さんには駄文ばかりで申し訳なく思います。
御本家旧ソビエトでは、共産党内部、そして正規軍幹部の粛清に遍く本領を発揮し、見事にも露帝国軍上が
りの幹部将校の2/3を殺害したと伝えられます。
書類等の証拠は見付かりませんでしたが、WWII緒戦で同じ穴の狢であるナチス・ドイツ国防軍にこてんぱんにやられたその事実が証明しています。
その後、ナチス敗色が濃くなってからポーランドに赤軍が大挙雪崩込んだ際に、スターリンの指示の元 NKVD は有名な「カチンの森」事件を引起します(奴らの脳内ではこっそりやってバレてない積りだったらしい)。
# NKVD は露人にも異民族にも等しく苛烈でした。
支那では「文化大革命」が歴史的に上に相似したイベントだったのかなと思いつつ、御家人さんの以下の文で溜飲を下げました。
☆言うなれば武警も「諸侯」化している、ということです。いや「諸侯」の走狗と化しているというべきでしょうか。
武警、グッジョブです。
後は、お定まりの 1. 内部統制厳格化 2. 造反者続出 3. 粛清の嵐という支那の正当な手順を踏んで頂くばかりかなと。
ところで御家人さんは、90年代に話題になった『中国射撃ツアー』には、参加された事がありますか?
いまでも武警はWJですよ、但し北京では偽装Noも多くなりましたが(例:4月の反日デモの時はクルマの中身の人たちが明らかに武警なのに通常Noのクルマが多数見かけられた)。。。軍関係&地方Noのお上りお偉いさん御用車とともに北京市内では乱暴運転の代名詞なので地元プロドライバーからは嫌われ者です(笑)。まあ最近はペーパー(というより不正取得?)の女性ドライバーの周りを見ていない天然運転の方が北京の渋滞に拍車をかけていますが。。。。
鎮圧されておとなしくなっちゃったんでしたっけ?
違法マッサージや賭博は、武装警察管区でやり放題です。
武装警察管轄内に警察は入れません。ほとんどヤクザです。
【北京7日共同】7日の新華社電によると、中国甘粛省中部の地方裁判所で6日午前、農民の男(62)が自爆し、裁判所長や地元の共産党幹部ら5人が死亡、22人が重軽傷を負った。5人の中には自爆した男も含まれているとみられる。
<中略>
中国では土地収用などについて不満が高まっており、各地で警官との衝突も起きている。
しれっと「各地で警官との衝突も起きている」なんて日経も書くようになったんですねぇ。
統治システムがきしんでなかった時代があるのかって感じですね。
元だって侵略国ですし。
現代は、いくらシナが乱れても、だれも植民地統治してくれないから、
いつまでもだらだら人々が苦しんで死んでいくだけ...
かわいそう。
武装警察 国内向けの軍隊
武警は世界では準軍隊扱い。
武警と兵器開発の予算が軍事費不透明の二本柱
こんどが黄河汚染、見た目分からん。
http://news.google.com.hk/news?ned=hk&ncl=http://www.takungpao.com/news/06/01/07/ZM-507978.htm&hl=zh-TW
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060107-00000206-yom-int
>農民と、王強・同法院長、陳興栄・同県共産党委員会副書記ら計5人が死亡、23人が重軽傷を負った。
けっこう派手な事件のようですね。
本年もブロッグを楽しみにしております。七草粥はお食べになりましたでしょうか。
思うと漢源暴動からはや1年以上が経ち、中国を統治する政府、中国共産党が酷く病的であることが知れ渡った一年であったとしみじみ思います。そして年末から今にいたるまで病気は悪化の傾向しか見られず、支離滅裂、恥も外聞もない、ただ力があると信じ国内国が問わず当り散らしている様は、これがあの広い国土を統治している党であるのかと眼を疑わずにはいられません。
地金が出たという言葉の通り、本質的にお行儀が悪い人たちだとは思ってはいたのですが、それを隠す演技がここまで下手糞だと何も言いようが無いというところかと。
今年もとても気になる中国です。
xyz> 違法マッサージや賭博は、武装警察管区でやり放題です。
xyz> 武装警察管轄内に警察は入れません。ほとんどヤクザです。
と楽しい話をコメント投稿して頂いてますが、一つ教えて下さい。
武警管轄区域は一般警察管轄外なのでしょうか?
例えば、フランスには都市を主として担当する国家警察と地方を担当する国家憲兵隊(名前は兎も角、実体は警察組織です)の二種が有り(他にも警察組織は有ります)、お互いのシマは犯しません。
武警と一般警察(正しい用語かどうか判りませんけど)の管轄はどのように分かれているのでしょう。
ご存知だったら教えていただけませんか?
今年も楽しみにしておりますので、可能な範囲で頑張ってください。
なんか今の時代って、ソ連崩壊や天安門の時に感じたような、世界が音を立てて動いている様な感覚を強く感じます。
日本の政治経済の状況も10年前と比較すると隔世の感がありますし。
中国だけでなく、人類社会のあり方そのものが大きな転換点を迎えている気がしてなりません。
さて中国の話題ですが、農民の自爆に続いて新年早々さっそく暴動が来ましたね。↓
■中国の重慶で労働者と警官が衝突・香港紙報道
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060107STXKG029307012006.html
あるいは安禄山・史思明みたいな「都督」「諸侯」のほうが先なんでしょうか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060108-00000006-jij-int
もちっとエスプリというモノを効かせてくれなきゃイヤン、中共ったら。鮮人どもを見習いなさい。
JMM最新号によると、アメリカでは炭坑に取り残された12人の命に全米が固唾を飲んで一喜一憂していたそうです。
http://ryumurakami.jmm.co.jp/recent.html
中国と比べると同じ人類社会なのか~!!と言うほどの違いがありますね。
今年も中国から目が話せません。
いやこれは何とタイムリーな。最近寝る前にクルクス戦車戦の本を読んでいるのです(笑)。ところで武警の話ですが、ここまでバラけてしまうと、内部統制厳格化は難しいかも知れません。そもそも中央の統制力が減衰したためバラけたのでしょう。いまや地方当局との癒着構造が形成されてしまっているようですし、「12.6」事件に中央が介入して汕尾市や広東省当局から処罰者を出せないでいるのもその「中央の弱体化=諸侯台頭」の一例でしょう。最終的に処罰者が出るかも知れませんが、もう1カ月以上経っていますから時間がかかり過ぎています。結局どっちに転んでも、中央の威信に傷をつけることになるでしょう。
なお「私憤」で爆薬 510 kg を爆発させ14死24傷とのことですが、労使紛争絡みとのことですから「私憤」で済まない何かがあったのかも知れません。いずれにせよ新華社電ですから、自爆テロであっても別の理由で取り繕うでしょう。場所も場所、新疆ですから。反体制系ニュースサイトによるフォローを待ちたいところです。
>>唐西古風さん
>AK47……、というよりは56式機槍(?)というべきなのでしょうか。
これは私にはわかりません。ただ香港では軍から横流しされたとみられる突撃銃や手榴弾を使った強盗事件が90年代前半に多発しており、実行部隊も一撃離脱型で(密入境して香港で仕事を終えると小型高速艇で即脱出)、その手並みの鮮やかさから人民解放軍崩れの人間だろうと言われていました。その実話を映画化したのが「AK47」で、少なくとも香港ではこの名称が定着しています。
「中国射撃ツアー」は聞いたことがありますけど、参加したことはありません。香港時代は仕事に追われているか自堕落に過ごしているかという生活だったので(笑)。
>>dongzeさん
何といまでもWJですか。検問を顔パスできるみたいな便宜のためなんでしょうか。確か人民解放軍もHJ(海軍)、LJ(陸軍)、空軍(KJ)だったような気がしますけどこれは記憶違いかも知れません。公安はGAでした(笑)。車の免許はお金を払えば即取得できるそうですね。そういうルポが『中国青年報』に出ていました。
>>てんてけさん
>戦前の日本、明治時代なんかの農民運動って、鎮圧されておとなしくなっちゃったんでしたっけ?
すみません、これは私の手に負いかねます。詳しい方の御登場を待ちたいと思います。
>>xyzさん
おお、現地の空気が伝わってくるようです。ほとんどヤクザ、ですか。公的な「雇われ暴徒」な訳ですね(笑)。
>>侯(How)さん
>>「2006-01-07 20:23:31」のUnknownさん
この事件、次のエントリーで扱ってみました。「官」に対する怨恨を動機とした自爆テロということが明白な点において、この事件はある意味非常に画期的なものだと思います。「官」によって瀬戸際まで追い詰められて進退に窮した「民」がとるべき方法に、新たな選択肢を加えたことになるからです。陳情(上訪)のため北京に出てくる庶民が後を絶たないように、現世に望みを失いかけている人はいまの中国にたくさんいます。類似事件が今後も出てくるだろうと思います。
>>「2006-01-07 18:00:03」のUnknownさん
完璧な統治システムは先進国にもない訳で、必ず不足なり欠点なりがありますよね。その点は中国も同じなのですが、その程度がここ数年で危険水域に入ったというのが私の印象です。改革開放政策以来の20余年についてみても、中共政権にとって現在ほど危険な状況はないでしょう。民主化運動のような理念を掲げた、また主として知識人や学生に限定されたものと違って、「食えない」「生計が成り立たない」「路頭に迷う」といった生活レベルの問題を契機に全国各地の都市や農村で暴動が起きて、一方で一党独裁制につきものの汚職が「官」の側に蔓延しているのです。
1989年の民主化運動では大学生という有機的組織がうまく連携し、それを支援した知識人も紅衛兵時代に培ったネットワークを生かしたことで、瞬く間に全国的なムーブメントとなりました。いまの中共にとって幸いなのは、官民衝突は頻発しているとはいえ所詮は一都市・一カ村限定の散発安打で、有機的な組織や連携がないということです。さもなくば今年いっぱいで政権が潰れてもおかしくはないと思います。
>>大丈夫?さん
>人民解放軍 国外向けの軍隊
>武装警察 国内向けの軍隊
いつもながら見事に喝破なされましたね。脱帽です(笑)。
河川については、いまたまたま旬のネタなので取り上げられて対策が講じられているだけで、実は松花江事件以前からカドミウム垂れ流しとかいった水質汚染が常態だったのではないかと勘繰ってしまいます。
>>1読者さん
明けましておめでとうございます。今年もタダモノデハナイ姿を垣間見せて下さるコメントを楽しみにしています。
漢源暴動が一昨年の出来事になってしまったんですね。私にとっては、かつて自分が実感・体感した中国との違いの大きさ、社会状況の悪化ぶりに戸惑いつつ、様々な事象を追うことで「いま現在の中国」を勉強することができました。
いまも勉強中です。でも農民や都市の暴動、官民衝突、陳情活動(上訪)、それに大学生の間にも小遣い銭に10倍以上の貧富の格差が存在するといった事実は、「みんな貧乏」だった時代が中国観の基礎になっている私にとって、ニュースとして受け入れて処理することはできても、未だに感情では納得し切れない部分があって困ってしまいます。どうしてこんな社会になってしまったのだろう、と考え込んでしまいます。
元々健全な政治制度ではありませんし、ですから私の知る時代にも民主化運動が生起したりした訳ですが、御指摘のように不健全さがより深刻化する一方、それをごまかし、取り繕う演技のために存在している舞台装置自体が壊れかかっているかのようです。
1989年の天安門事件のような上辺だけでない、政治制度や社会全体を丸ごとリセットする時期がいよいよ近付いているのだと思います。リセットされた結果が好ましいものであるという保証はどこにもないのですけど。
>>kenさん
>可能な範囲で頑張ってください。
明けましておめでとうございます。温かい御言葉、本当に心に沁みます。
転換点にある、正に歴史が動いている、という感想は私にもあります。ネットの普及によって世の中の動きがより加速されていることも、事態を際立たせる効果装置になっていると思います。重慶は国有企業解体に伴う労使紛争もあれば、その日暮らし同然の境涯に堕ちた失地農民もたくさん住んでいて、まさに火種満載の街ですね。
一過性の官民衝突ならまだしも、延焼して燃え広がってしまうと収拾がつかなくなると思います。武警の催涙弾程度での鎮圧はまず無理です。当局は非常措置に出ることを迫られるでしょう。重慶は直轄市であるだけに、それが中央の意思を反映したものと受け止められることになります。それがまた新たな反作用を生むことになるかも知れません。
>>きぐつさん
陳勝・呉広ですか。ネットの普及で都市部での情報伝達・情報共有のスピードは桁違いになっている一方、それがあくまでもバーチャルの範囲にとどまるもので、現実に組織化され連携された動きが現時点ではみえてこないので、展開は読みにくいですね。反日騒動でも証明されましたが、反日サイトのような「民間組織」、ああいうネット上の連携を現実社会に持ち込んでもデモひとつマトモに出来ず、プチ暴動になってしまったりしますから。……あ、もしかしてその方が都合がよかったりして(笑)。
>>通行人さん
そうなんです。私も民兵が気になります。不遇をかこっている退役軍人なんかも混じっているでしょうし。もし民兵が従来の指揮系統から脱して、文字通り「民」の側についたら面白いことになるでしょうね。だから「武警vs民兵」だとどちらが強いのか知りたいのです(笑)。
>>T君さん
明けましておめでとうございます。炭鉱事故の件、以前に当ブログでも紹介しましたが、採掘量当たりの平均事故死者数が中国は米国の100倍だそうです(本当)。だから中国だと一喜一憂どころか「珍しくもない」で終わってしまいます。12名程度なら安監局の李毅中局長も北京から督戦に出て来てはくれないでしょう。同じ人類社会ではありますが、石油や石炭のように人間をエネルギー扱いし消費して憚らないところが中国の特色ある社会主義です(笑)。
>>ただ読みさん
私はプロではありません。副業は香港や台湾での中文コラム書きです。原稿料や転載によるロイヤリティーを報酬として得ているので現地ではプロ扱いされていますが、私にとってはアルバイトに過ぎません。日本ではそういう仕事をしていないのでズブの素人。日本語も御覧の通りのお粗末さです。いつも読んで下さっているのならそのことは先刻御承知かと思っていたのですが。
読みやすくて分かりやすいけど、
「なんか最近切れ味がよくありませんね。」
という御結論で宜しいのでしょうか?(笑)
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。