「カントリー・スタイルのギターに興味があるんだけど、何から聴き始めればいいのかわからない」という悩みを抱えている方、今回ご紹介する The Hellecasters はいかがでしょうか。John Jorgenson, Jerry Donahue, Will Ray というカントリー・リックを知り尽くした三人のテレキャスター・マスターが繰り広げる超絶ギター・インスト・ミュージックです。かなりロック寄りのアレンジなので「ベタなカントリーは苦手」という方でも抵抗なく聴けるサウンドだと思います。またロック・スタイルのギターにカントリー風のリックを持ち込みたいというギタリストさんにもお薦めです(笑)。まずはそんなキャスター軍団の三人を軽くご紹介っ!
バンドのブレーンでリーダー的存在の John Jorgenson はカントリーのみならず幅広いスタイルのギター・プレイを身につけた天才肌のギタリストです。本作ではカントリー・テイスト溢れるプレイの他に、ディストーションの掛かったギターを引っ提げ、ときにはハード・ロック・ギタリストを彷彿させるアグレッシヴなソロを聴かせてくれます。また様々な楽器を弾きこなすマルチ・インストゥルメンタリストとしての顔を持ち、その実力を買われ、Elton John のバック・バンドを務めていたこともあります。ちなみにその時期、ツアー・メンバーの一員として来日も経験しているので、もしかしたらご存知の方がいるかもしれませんね(笑)。元々、彼のことは The Byrds の Chris Hillman 率いる The Desert Rose Band で知った口なんですが、当時はこんなに多才なミュージシャンだとは全く知りませんでした(笑)。
Jerry Donahue に関しては、先日、ソロ・アルバムを紹介しましたので、まずはそちらを参照していただければと思います。異なる弦を異なる方向に同時にベンドしたり、とにかく人間技とは思えない究極のリックを数多く修得した惑星一のベンダー男です(笑)。多分この人、普通の人より指が一本多いんだと思います(爆)。
Will Ray についてはそれほど多くを知っているわけではないんですが、小型スライド・バーを使った独特のカントリー・リックはどのソロにおいても個性が際立っていますね。またベンダー・ギターの名手でもあり、他の二人に引けをとらぬテクニックの持ち主であることは一聴して明らかであります(笑)。
Michael Lee Firkins のようなスタイルに憧れている方は Will のプレイに多くの共通点を見出だせるのではないでしょうか。
では早速アルバムの方に話を移したいと思います。まず最初に目に付くのは、ジャケ買い確率0%のチープなジャケットでしょう(笑)。しかしダマされてはいけません。中身はホンモノです! あとデビュー作のはずなのに何故かタイトルが "The Return Of The Hellecasters"(笑)。「前にどこかでお会いしましたっけ?」って感じなんですが、これっておそらく "HELL" にかけているんでしょうね。「地獄から舞い戻ったキャスター軍団」みたいな・・・(笑)。
オープニングの "Highlander Boogie" からグルーヴ感たっぷりのカントリー・ロックです。本人達にとっては挨拶代わりの軽いジャブなんでしょうけど、すでにスーパー・リックと化してます(笑)。ちなみにタイトルには "HIGHLANDER" が入っていますが、ケルトっぽさは微塵もございませんので・・・(笑)。さあ、何でもありの HELLECASTERS ワールド、本領発揮はこれからですよ~(笑)。まずは
Henry Mancini の名曲 "Peter Gunn"。何と粋な選曲なんでしょう(笑)。僕にとっては Blues Brothers ヴァージョンのイメージが強い曲ですね~。カバーといえば松崎しげる、もとい
The Gypsy Kings の "Passion" なんかも演っちゃってます(笑)。これがまたネオクラ系ギタリストのアルバムに入っていそうなスロー・バラードに料理されているんですが、John 曰く Jeff Beck を狙ったそうです。確かにそう思って聴けば Jeff が入っているかも~(笑)。"King Arthur's Dream" と "Menage: The Beak/The Claw" は Jerry のソロ作に収録されていた曲のリメイク。後者のオリジナルは言わずと知れた Jerry Reed です。John 作の "Back On Terra Firma " はほとんどメロハーのインストみたいですねぇ(笑)。他にも Will お得意のカントリー・スウィング "Hellecaster Stomp" や Roy Buchanan に捧げられた Don Gibson の名曲 "Sweet Dreams" など、アルバム全体に漂う「好き勝手に楽しみました!」って感じの遊び心が最高です(笑)。
そんなカントリーという枠に捉われない自由な作風がウリの本作であっても、やはりキラー・チューンとなるとブルーグラスのスタンダード "Orange Blossom Special" のカバーがベストではないでしょうか。何だかんだと王道のカントリー・リックはこういう曲でこそ一番映えますよ(笑)。ちなみにこの曲は「特別急行列車」という邦題を付けられたこともあり、まさに「走りだしたら止まらない! すべての駅は通過駅!」ってくらいの疾走チューンなんですよね(笑)。僕の邪推かも知れませんが、DREGS の超絶カントリー・チューン "The Bash" の元ネタも実は "Orange Blossom Special" なんじゃないかなぁと思っています。この曲の持つフィーリングが "The Bash" と凄く似ているんですよね。実際、多くのアーティストがカバーしている定番スタンダードで、Mark O'Connor も自身のアルバム "The New Nashville Cats" で取り上げていました。こちらもかなりの強力チューンに仕上がっています。
話が横道に逸れました(笑)。HELLECASTERS 版の "Orange Blossom Special" についてでしたね。いやぁ、何というんでしょうか。正直、そこらのメタル・バンドにも負けないくらいのハイパー・テンションで突っ走っています(笑)。何てったって冒頭からいきなり疾走感煽りまくりのディレイ・トリックで攻めてきますからねぇ! ちなみにこのテクニックはアルバート翁も得意としています。ダブル・ストップと絡めると難易度低めの割に凄く格好良く聞こえるので興味のある方は是非研究してみてください。楽曲はほとんど三人のソロで成り立っていまして、とにかくこれが圧巻なんです(ニヤッ)。まず先陣を切るのは John Jorgenson。のっけからメロディアスなタッピングをビシッと決めてくれます。こういうフレーズをさりげなく入れてくるところが John のセンスの良さなんだよなぁ(笑)。続くは本作のハイライトである Jerry の超ロング・ソロ。カントリー・ギター史に残る名演といっても過言ではないでしょう! Eric Johnson や Steve Morse の数段上を行くスーパー・カントリー・リックの嵐でございます。縦横無尽のベンディングやレッド・ゾーン突入の高速ロールを始め、留まることを知らぬパッキパキなソロが豪快に炸裂しています。このカッコ良さはまさに卒倒もんでしょう(笑)。それにしても、よくもまあこんなに次から次へと色んなフレーズが飛び出してくるもんです(笑)。ただただ感心・・・。さあ、まだまだ続きますよ~。普通、こんな常軌を逸したベンダー星人のあとにソロを弾こうなんて誰も思わないと思いますが、3rd ソロの Will がこれまた鬼神のテクニックの持ち主なんですわ(笑)。Jerry とはまた一味違うクキクキっとしたアタックの強いピッキングとフニャフニャっとしたスライド・プレイを交えたカントリー・リックが持味です。今更ながらですが、彼のソロ作をチェックせねばと痛感いたしました(笑)。ぶっちゃけ、カントリー・ギターに興味がお有りなら、この一曲のためにアルバムを買っても損はないと思いますよ(笑)。
・・・とこんな感じで記事をまとめようと思ったんですが、もう一曲だけお気に入りがありました(笑)。ヘルキャスターズ劇場の最後を締める "Hellecasters Theme" です。ちょっぴりシンコペーションの効いたウエスタン調のメロディが西部のガンマン風でカッコイイんですよ。沸き上がるカーテンコールに応える三人の姿が目に浮かぶようです(笑)。ちなみにこのアルバム、最後の最後に一瞬だけちょっとしたイタズラが仕込まれています(笑)。
書きたいこと大体書けたんでスッキリしました。それにしても今回は長いなぁ・・・(笑)。
The Hellecasters Official Website:
http://www.hellecasters.com/
"The Return Of The Hellecasters" アルバム試聴(amazon.com)
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