NOMAD Muvo からスタートした私の MP3 プレーヤー遍歴も今年でちょうど十年目。乗り換えの歴史はそのまま大容量化の歴史でもある。五年前に購入した iPod classic 160GB でひとまずの区切りを迎えたが、これは iPod classic における最大容量がそこで頭打ちになっているためである。残念ながら家のライブラリを丸ごと持ち歩くという夢は叶わぬまま現在を迎える。
しかし iPhone を手にして状況は一変する。ストレージ型の MP3 プレーヤーとは異なるアプローチがそこにはあった。ネットワークを経由して音楽を再生する Audiogalaxy Mobile というアプリ。平たく言えば「インターネットを介して家のパソコンにある音楽を外出先でも聴ける」というサービスである。ネット環境さえあれば長年私を悩ませてきた MP3 プレーヤーの容量制限から解放される。MP3 以外にも WMA, AAC, ALAC, FLAC, ogg といったフォーマットに対応している。
必要となるのは母艦となる Windows マシンあるいは Mac。これにクライアントと通信するためのアプリケーションをインストールする。クライアントは iPhone や Android なら専用アプリ、パソコンならブラウザを使う。利用には無料アカウントの取得が必要だが、これはクライアントと母艦が audiogalaxy のサーバにアクセスする際のアカウントとなる。中継サーバが介入することで細かいネットワーク設定を気にすることなくストリーミング サービスが利用できる。自宅マシンと直接通信するタイプのアプリであればネットワークに関するそれなりの知識を要求されるだろう。
通勤時は予約録音したラジオ番組を iPod で聴いているのでほとんど出番はないが、週末など車で外出する際は iPhone をカーステレオに繋ぎ audiogalaxy 経由で音楽を聴いている。母艦の稼働コストをどう捉えるかにもよるが、聴きたいときに聴けるという安心感は何ものにも代えがたい。ちなみに我が家では Windows マシンをホームサーバとして稼働させているので、母艦の運用が枷となることはなかった。
私にとってはほぼ完成されたアプリだが、最後に幾つか気になった点をまとめておく、
1) 一時停止からのデバイス再接続時に自動再生
再生中にヘッドセットコネクタや Dock コネクタからケーブルを抜いたり、接続先デバイスの電源を落とすとプレーヤーが一時停止する。この状態で再度ケーブルを挿すか接続先デバイスの電源を入れた場合、自動的に再生を開始する機能が欲しい(停止状態からのデバイス再接続時は除く)。これは Tunemark というネットラジオアプリに実装されていて便利に感じた機能。iPhone をカーステレオに繋いで番組を聴いているとアクセサリスイッチのオンオフに連動して再生や停止が行われる。現状 Audiogalaxy Mobile で再生を始めるにはその都度「ロック画面の解除」、「アプリの呼び出し」、「再生ボタンをタップ」という手順を踏まなければならない。
2) MP3 ギャップレス再生の対応
アプリの紹介文には "Gapless playback" と謳われているが、これは一部のフォーマットに限られるようで、MP3 では Lame タグや iTUNSMPB フィールドにギャップレス情報が書き込まれていてもギャップレス再生にならなかった。今後のバージョンアップでビット・パーフェクトなギャップレス再生が MP3 でも可能となることを期待したい。
3) Genres による絞込み
現状は Genres でジャンルを選択するとその配下のトラックがすべて表示される。トラック数が多いと絞込みとしてはほとんど機能しないため「ジャンル > アーティスト > アルバム > トラック」と階層的に絞込めるようにして欲しい。Artists では「アーティスト > アルバム > トラック」と選択できるのでそちらを使えということなのかもしれないが……。