ひまわり博士のウンチク

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テレビ東京『白旗の少女』

2009年10月01日 | テレビ番組
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 テレビ東京で放送されたドラマ『白旗の少女』を観た。
 普段、めったなことでは自社制作のドラマなど作らないテレビ東京が、開局45周年記念と銘打って、そうとう力を込めた作品だろうと期待して観た。
 天沼小学校では、高学年の児童に番組を観るように指導していたようで、だいぶ前からそれに関連する授業内容についてのプリントが回って来ていた。
 
 『白旗の少女』は沖縄戦の激しい戦闘のさなか、逃げ回るうちに家族がばらばらになり、当時6歳(数え年の7歳)の比嘉富子さんが、一人で米軍の爆撃の下を生き延びる物語だ。
 隠れようと思って入り込もうとしたガマは、すでに先客がいて、食べ物を持たない富子さんは追い払われる。
 お前がいては他の住民の安全が脅かされる、と日本刀を持った日本兵に追い回され命からがら逃げる。
 日本軍の敗北で戦闘が終わり、最後に入り込んだガマの中で出会った老夫婦から、白いふんどしを木の枝に括りつけた白旗を渡される。
 
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 この旗を掲げて米軍の駐屯地に向かう途中の富子さんを、若いアメリカ兵が写真に撮った。
 戦後出版された沖縄戦の写真集にこの写真が掲載されているのを見つけた比嘉富子さんが、この写真は私であると名乗り出たのがきっかけで、様々なメディアでクローズアップされることになる。
 
 『白旗の少女』はその後、さまざまな出版物や記録映画で紹介され、比嘉さんは一躍時の人となった。
 
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 『白旗の少女』は1989年、子ども向けの本として出版された。
 私自身は、当初からこの本については批判的であった。戦火の下を逃げ回っていれば、投降しようとする住民を虐殺する日本兵の姿にも出会っているだろう。また、集団自決する家族との出会いの中で、彼らが何故自決するのか、どんな情報を刷り込まれていたのか、その時にはわからなくとも、成人して後、本を出版する時点ではその意味するところを知っていたはずである。
 本人の意志か出版社の意図かは不明だが、戦争のもとでのかわいそうな少女の物語という、お涙ちょうだいのメロドラマにつくりあげられていることに、とても違和感を感じたのだ。
 
 テレ東のドラマでは、それらをフォローしかけながら、やはり語りきれていない。投降しようとする住民がいて、その直後のシーンで日本兵が「日本人なら大和魂で自決しろ」などと喚いているが、その結果どうなったのかは描かれていない。
 実際には、投降しようとする住民は米軍のスパイとして射殺された。
 亀甲墓(かめこうばか)に逃げ込んだ家族が、手榴弾で自決するシーンはあるものの、何故自決するのか、手榴弾はどこで手に入れたのか、まったく説明がない。
 手榴弾は、日本軍が住民の投降を阻むために、「アメリカ軍に捕虜になれば、女は犯され男は八つ裂きにされる」と脅して自決用にと配ったものだ。
 兵器である手榴弾が、何故一般住民の手にあるのか、重要なことなのにまったく説明がない。
 
 結局、悲惨な逃避行の末、米軍の駐屯地で姉たちに出会ってめでたしめでたしという、中味のないドラマになってしまっていた。
 こんなドラマなら、なにも敗戦から60年以上も経った2009年の今、見せるべきものではないだろう。
 『白旗の少女』の背景も含めて、沖縄戦の真実を伝えるべきだ。
 したがって、沖縄戦のことを知らない子供たちへ向けての入門にはなるかもしれないが、それにしてもいささかお粗末である。
 
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