
第二次世界大戦後も「国益のための戦争」「戦争のための戦争」をやり続けて来たアメリカは、たくさんの貧しい若者たちを戦場に送り、世界中に多大な犠牲を強いて来ました。
その代表的な戦争の一つに、ベトナム戦争があります。
ベトナム戦争は1960年から75年まで、アメリカの植民地主義に反対する北ベトナム・南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)とアメリカおよび南ベトナム政府との戦争です。
アメリカはこの戦争を当初、その戦力差から「せいぜい数週間でケリがつく」と豪語していました。ところが、15年以上にもおよび、結局アメリカの敗戦で幕を閉じることになったこの戦争は、周辺諸国も巻き込み大きな被害をもたらすことになったのです。
当時アメリカ軍が使用した枯れ葉剤などの化学兵器は、その後奇形児を多発させるなど、戦争が終わったあとも被害を拡大させました。
アレン・ネルソンさんは、20歳の時、海兵隊員としてベトナムに行き、勲章を四つももらって英雄になりましたが、それは貧しい彼とその家庭を豊かにするためには、なんの役にも立ちませんでした。
軍隊によって洗脳され殺人者に仕立てられたネルソンさんは、除隊後も通常の暮らしに戻ることができず、家族からも見すてられてホームレスになっていました。
そんなある日、街で出会った高等学校時代の同窓生ダイアンから、学校で子どもたちにベトナム戦争の話をしてくれないかと頼まれました。
一度は断ったものの、ダイアンの熱心な薦めに加え、送られて来た子どもたちの手紙にも心を動かされたネルソンさんは、ダイアンが教師として勤務する小学校をたずねることになりました。
話し終わって質問を受ける段になったとき、ネルソンさんは衝撃的で運命的な質問を、一人の女の子から受けることになります。
一番前に座っていた、小柄な女の子でした。その子が手をあげると、ダイアンがさしました。
女の子は利発そうな顔立ちをしていました。
彼女はさっと起立すると、こう言いました。
「ミスター・ネルソン」
女の子はまばたきもせず、わたしをまっすぐに見つめると、たずねました。それは、わたしにとって運命的な質問でした。
「あなたは、人を殺しましたか?」
だれかにおなかをなぐられたような感じがしました。
わたしの体はこわばり、重くなり、教室の床にめりこんでいくような気がしました。
(『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』より)
その後、アレン・ネルソンさんは、アメリカや日本の各地を回って、戦争の体験を人々に語る活動を続けて来ました。
アレン・ネルソンさんは昨年暮れから体調を崩し、「多発性骨髄腫」と判明、頭部追う生活を送っていましたが、日本時間の26日(現地時間25日)ニューヨーク市内の病院で亡くなりました。61歳でした。

「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか」
アレン・ネルソン 著
講談社 発行
アレン・ネルソンさんが自ら語る戦争についての衝撃的な告白と、生い立ちが書かれています。
小学校の高学年以上から読める本です。
格差社会を作り、貧しい若者を戦場に送る軍国主義のシステムは、現在でも変わりません。
日本でも、派遣切りで仕事を失った若者に、自衛隊の魔の手が伸びていると聞きます。
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