ダーウィニズム論集 (岩波文庫)八杉 竜一岩波書店このアイテムの詳細を見る |
☆明治日本の行方を決めたダーウィニズム。「自然淘汰」と「優勝劣敗」、「生存闘争」といった言葉が、「富国強兵」・「殖産興業」の正当化の理論として活用されたようだ。
☆しかし、「自然淘汰」は「選択」のことであり、「優勝劣敗」や「生存闘争」は「市場の競争」のことでもある。
☆ダーウィンの思想を「イズム」として、イデオロギー化した明治近代国家日本だが、日本だけではなく、ダーウィンの思想の受けとめ方は、世界中で、様々に変容して流れている。
☆その流れの中で、本書に収められているJ.デューイの「ダーウィニズムの哲学の影響」という小論は重要だ。現代日本の社会学者や思想家に影響を与えているプラグマニストであるリチャード・ローティにつながる、つまり「プラグマニズムの系譜」の原点がデューイに他ならないからだ。
☆そしてまた、二クラス・ルーマンのシステム論は、ダーウィンニズム的であることもわかる。
☆それにしてもダーウィニズムVS啓蒙主義・宗教という設定で、後者を切り捨て、明治官僚近代は突き進んだ―その基本的流れは今も続いており、2006年に教育基本法が改正されたことを機に、それが明白になった―のだが、どうもこの設定が教条的過ぎたきらいがある。
☆ダーウィニズムと啓蒙主義・宗教は、実は新たな次の道を切り開く。どちらかではなく、新しい道。そのイノベーションを探るヒントになるのが本書である。
☆啓蒙主義・宗教を切り捨てる極端な進化論的発想だけでは、人間も組織も国家も成長・発展しないというパラドクス。これを解くカギは何か。今まさにそれが求められている。