全国学力テスト―その功罪を問う (岩波ブックレット)志水 宏吉岩波書店このアイテムの詳細を見る |
☆全国学力テストについて、その歴史的経緯が非常にわかりやすく、まとめられている。イギリスやスコットランドのケースも興味深い。
☆そのうえで、全国学力テストの必要性の有無について、4つの視点から考察している。
1)実態把握の視点
2)教育評価の視点
3)説明責任の視点
4)競争主義の視点
☆しかしながら、この視点はもともと悉皆調査の必要のないものばかりで、はじめから全国学力テスト不要論の視点である。というよりも政策としての全国学力テストの批判である。
☆だが、子供1人ひとりの学力形成のためのデータはどうするのであろうか?これは悉皆調査の方が有益なのではないだろうか?まぁこれも何も全国学力テストという方法が唯一というわけではあるまい。
☆大きな物語や国のイデオロギー不要な時代には、やはり時代錯誤の産物ということか。端的に、税金70億円の有効活用とはいえないかもしれないのは確かかもしれない。
☆てな感じで読み終えてしまう。すると大事なポイントが見落とされることになる。全国学力テストとOECD/PISAの差異についてである。世界標準というモノサシが全国学力テストには不足しているということだ。
☆それは恐ろしいことに、学習指導要領が世界標準でないという証明なのだが、そのことについては文科省側の学者は本当に触れない。禁忌なのか・・・。
☆言論の自由の制約、思考停止の目的が隠ぺいされているリスクについて、なぜ学者は語ろうとしないのか。志水教授は「学力を育てる」(岩波新書)では、きちんとそれを論じている。ただし、PISAとは結び付けていない・・・。教育学的には思考の広がりや深さを論じているが、それがこと学習指導要領の話になると、ピタリと止まる。
☆全国学力テストは学習指導要領に基づいて作られているから、実際は全国学力テストは学習指導要領問題なのである。世界標準のモノサシに到達しないドメスティックな基準で子どもたちを測ることこそナンセンスだという議論はできないということか・・・。