D9の響き

Guitarを肴につらつらと・・

The Arrival of Victor Feldman('58)/ Victor Feldman

2008-12-28 22:24:02 | steely dan-connection
前回、Victor Feldman(ヴィクター・フェルドマン)の名前が出てきたので、彼に纏わるちょっと面白い作品を紹介しておきましょう。
彼の初リーダー作“The Arrival of Victor Feldman”というのがそれ。

フェルドマンは'34年4月7日ロンドン生まれのイギリス人だそうです。
・・実は私、彼をヤンキーだと思い込んでました。
幼少の頃、5歳でまずドラムから入り、9歳でピアノを覚え、14歳でヴァイヴを制覇し、大学ではティンパニと音楽理論を専攻。
・・マルチミュージシャンのイッチョ上がりちうわけです。
'55年に渡米して制作したこの作品・・だから“The Arrival”となった訳ですな。

バリバリのバップジャズ作品ですが、なんと、ベースにあのScott LaFaro(スコット・ラファロ)が参加してるんです。
当然ながら、まだBill Evans(ビル・エヴァンス)に起用されるずっと前で、彼自身もフル・アルバムへの初参加作品になるようです。

personnel:
Victor Feldman(vibraharp,pf)
Scott LaFaro(b)
Stan Levey(d)

ベーシストのラファロは'36年4月3日ニュージャージー州ニューアーク出身の生粋のヤンキーでした。
フェルドマンとは歳が近かったこともあったんでしょうね。
演奏を聴いていても、凄く楽しげでリラックスしながら熱いランを聴かせてくれます。
面白いのは、既にこの頃にあの独特のシンギング・ベースともいえるようなメロディアスなランが確立されてるということ。
・・しかも、速いし、コードヴォイシングをかなり意識したランです。
エヴァンス期ほどのアウト・ランや、バッキングの深みなどはまだ息を潜めてるような感じではありますがね。
'61年に25歳の若さで亡くなってますが、生きていればどれだけ音楽シーンを変えていただろうかと、空しく想像してしまいます。

ドラマーのレヴィーは'26年4月5日ペンシルバニア州フィラデルフィア出身ということで、皆より上の世代だったようですが、元々Dizzy Gillespie(ディジー・ガレスピー)と関係が深かったあたりから、フェルドマンに繋がったんじゃないかと思います。
'05年に79歳で亡くなったそうですが、Miles Davis(マイルス・デイヴィス)などジャズ界の大御所達とも幅広く繋がってたドラマーだったようです。

tracks:
1.Serpent's Tooth
2.Waltz
3.Chasing Shadows
4.Flamingo
5.S'Posin'
6.Bebop
7.(There is No)Greater Love
8.Too Blue
9.Minor Lament
10.Satin Doll

初リーダー作ながら、オリジナルは3曲のみ。
ヴァイブとピアノが半々って感じでしょうか。
リード楽器が入れ替わってもさほど違和感がないのが不思議です。
曲によっては曲中で楽器をチェンジしながら演ってるのもあったりします。

フェルドマンのヴァイブは、Gary Burton(ゲイリー・バートン)のような華やかさはありません。
でも、楽しげで明るい音に満ちています。
なんか暖かい感じといいましょうか。
聴くだけしかできない楽器なんでうまく言い表せないのがもどかしいのですが、気持ちよい音なんですよね、ホント。

マイルスの#1やガレスピーの#6、エリントンの#10なんて定番も演りながら、それぞれの曲が大きく印象を変えないのが不思議といいましょうか。
マイナー系の曲でも、楽しく感じてしまう音なのが面白いといいましょうか。
・・分り安いんでしょうね、きっと。

ショパンのノクターンなんかをアレンジした#2なんてのもあったりします。
で、やっぱ、最高に分り易い#10が一押しということで、よろしくです。

今回、フェルドマンのことを色々調べていて気が付いたのですが、彼は'87年に53歳の若さで亡くなってたんですね。
'74年のこの作品から'80年“Gaucho”まで40代前半の脂が乗った一番良い時期をSteely Dan(スティーリー・ダン)の連中と共に過ごしていたということになりましょうか。
知らなかったこととはいえ、実に残念な事実です。


今回この作品をじっくり聴いて、フェルドマンという男がDonald Fagen(ドナルド・フェイゲン)らに深く信頼された音楽家であったということが、凄く理解できるような気がしました。
人柄が創る音楽性というのも、案外重要なのかもしれませんね。


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