Manaboo 電子政府・電子申請コラム 

電子政府コンサルタントの牟田学が、電子政府・電子申請、その他もろもろ、気まぐれにコメントしてます。

会計検査院による電子申請等関係システムの検査結果、今後の対応を考える

2009年09月23日 | 電子政府の評価
会計検査院が、電子申請等関係システムの利用状況についての検査結果を公開しています。前回(平成18年)の調査結果については、なぜ、電子政府で「一件当たりいくらか」を評価するべきなのか電子政府で天下りを減らすにはをご覧ください。

その内容は、

オンライン利用拡大行動計画に沿った利用の拡大に向けた諸施策の着実な推進を図るとともに、電子申請率が低迷していてシステムの整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していないシステムについては、システムの停止、簡易なシステムへの移行など費用対効果を踏まえた措置を執るよう意見を表示する。

となっています。

会計検査院法第36条の規定による意見表示(平成21年9月18日)
http://www.jbaudit.go.jp/pr/media/kensa/21.html

検査対象は、
21年4月時点で各府省等において運用している電子申請等関係システム65システムのうち、自動車保有関係手続のワンストップサービス等を除いた49システム
となっています。

対象官庁は、17府省等で、
内閣官房、人事院、内閣府本府、公正取引委員会、警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、国税庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、海上保安庁、環境省、最高裁判所

そのうち、次の11府省等
1 内閣、2 内閣府、3 公正取引委員会、4 警察庁、5 総務省、6 財務省、7 国税庁、8 厚生労働省、9 農林水産省、10 経済産業省、11 国土交通省
に対して、会計検査院法第36条の規定による意見表示がありました。

★会計検査院法第36条
会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。


●検査結果の概要

(1)整備・運用経費(上記49システム、17年度から20年度まで):計1080億3064万余円

★経費の多い省庁・ベスト5

1 国税庁(2システム):353億6436万円
2 財務省(5システム):269億5518万円
3 厚生労働省(5システム):65億7664万円
4 金融庁(2システム):64億3682万円
5 総務省(4システム):63億9276万円

※厚生労働省の5システムのうち、外郭団体による整備・運用経費(介護福祉士養成施設等事業報告システム)は、厚生労働省の金額から除外しています。

前回の調査でも、国税電子申告・納税システム(イータックス)の多額費用が目立っていましたが、あまり改善されていないようです。

イータックスは、順調に利用率や利用件数を伸ばしているように見えますが、多額のシステム維持費(国税庁353億円のうち、352億円をイータックスで計上)に加えて、宣伝・利用推進費用(税控除など)を何百億円も使っており、全体の金額は明らかになっていません。

海外では、イータックスよりずっと安い金額で(10分の一ぐらい)、より多くの利用者を得ていることを考えると、国税庁のシステム費用はかなり問題があると言えるでしょう。


(2)電子申請率(全体、20年度):34.0%

★電子申請率の低いシステム・ベスト5

1 政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム:0.0%
1 財務省電子申請システム:0.0%
1 国税庁電子開示請求システム:0.0%
1 農林水産省電子申請システム:0.0%
5 総務省電子申請・届出システム:0.3%
6 汎用受付等システム(内閣府本府):0.4%
7 電子申請・届出システム(警察庁):0.8%
8 労働保険適用徴収システム:1.0%
9 国土交通省オンライン申請システム:1.3%
10 経済産業省汎用電子申請システム:1.9%

※小数点第2位以下は切り捨て。
※政府統計共同利用システムと最高裁判所汎用受付等システムは、全申請件数等が把握できないとのこと。
※総務省が運用する電子政府の総合窓口(e-Gov)電子申請システムに統合されているものもあります。

ほとんど利用されないシステムは、速やかに廃止するのが良いでしょう。

廃止を検討する対象には、各省庁の電子申請システムが統合された「e-Gov電子申請システム」や「自動車保有関係手続のワンストップサービス」も含みます。

驚くべきなのは、各省庁の汎用受付システムの多くが「e-Gov電子申請システム」に統合されたはずなのに、統合後も依然として各システムごとに数億円単位の経費を毎年度計上していることです。

これでは、いったい何のための統合だったのかわかりません。。

これこそ、申請処理業務を標準化して、一つのシステムを共同利用すれば良い話でしょう。


電子政府ユーザビリティガイドラインが策定された現在、使えない・使われないシステムに対して
・多額の費用を追加投資してシステム改良する
・多額の金銭インセンティブを付与して利用を増やす
といった行為は、傷口を広げるだけです。

それよりは、
・使われているものは残して、更なる改良とコスト削減を目指す
・システム統合する場合は、使われているシステムをベースとする
・使われないシステムは停止して、ニーズの高いものに限り再検討する
・再検討や新システムの検討にあたっては、電子政府ユーザビリティガイドラインに従う

といったやり方が良いでしょう。

新政権の英断に期待します


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