父からの駒

2021年10月10日 | 短歌
父の晩年のある日、たまたま将棋のことが話題になったことがあった
そのさい、父は押入れから小さな桐の小箱を取り出してきた。言葉少なに、持っていてくれとそれを手渡してくれた
それが将棋の駒であることはすぐに分かった

父は少年のころ、将棋のプロを目指したことがあったらしい
寝ても覚めても将棋のことで頭の中はいっぱいだったのであろう。はた目には、ノイローゼのようにうつるようなことがあったのかもしれない
心配した母親から将棋への道を閉ざされてしまった

後年いつのころからか、父の手元に将棋の駒があることは知っていた。それもかなり高級なものであるらしいことも
誰かと実戦をするという様子もなかったので、あるいは老後の趣味のつもりで入手して、そのままになってしまったのかもしれない

いま藤井聡太・ニ冠が竜王戦に挑んでいる。その彼は詰将棋への研鑽で力をつけたとのことである
三冠を目指す彼が、きょうは一勝を挙げたと報じられた。こんなときに、父から譲り受けた駒のことを思い出す

明日は詰将棋の本を広げて見ようか。父から譲り受けた小箱は本棚のすみにある
中の駒を手にすれば、親不幸をしてしまった父への供養になるかもしれない、そんな思いで・・・

◇ 父からの駒 ◇
父からの駒に目がゆく
一勝を挙げし聡太の
報じらるれば
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