木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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差異化要因その1

2006年10月10日 | 商品コンセプトとは(コツツボ)
<アマダナの商品>


◆商品の差異化要因<その1>
230:【デザインのコツ・デザインのツボ100連発!】第30発 商品企画

こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

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 先週から、「ものづくりデザイン道場」の受講企業を一社ずつ訪問しています。そのおかげで、筑波エクスプレスや世田谷線に乗ることができました。鉄っちゃん(鉄道マニア)ではありませんが、いろいろな電車に乗れるのは、ちょっとうれしい。

 「ものづくりデザイン道場」での私の担当は「デザインの心・技・体」の「技」、コンセプト作りですので、講義の内容の詰めもかねて、しばらく商品コンセプトの話をしていこうと思います。商品コンセプトは、次の10項目が一般的です。

1) 商品の存在理由 (なぜ、今必要なのか?)
2) 差異化要因 (今までの製品とどこが違うのか?)
3)ターゲット設定 (誰がどこで買い、誰が使うのか?)
4) ニーズ設定 (使う人が求める機能は何か?)
5) シーン設定 (だれがいつどこでどう使うのか?)
6) 企業理念の確認 (なぜ、作るのか?)
7) シーズ設定 (どのように作るのか?)
8) 販売ルート設定 (どのように売るのか?)
9) 商品構成 (どのような商品にするのか?)
10)デザインコンセプト (どのようなイメージにするのか?)

今回は、「差異化要因(今までの製品とどこが違うのか?)」について考えてみます。


差別化と差異化

「差別化」と「差異化」

言葉の遊びのような感じもありますが、「差別化」と「差異化」はなんとなく同じ意味で使われているみたいです。「差別」と「差異」と書くと判るのですが、「差別」では優劣をつける、「差異」には、優劣ではなく、違いをつけるというニュアンスがあります。

 そういう意味では、最近のコンピュータや家電製品のいわゆる陳腐化戦略は、昨年のモデルより今年のモデルのほうが優れていることを強調するわけですから、商品の「差別化」をしているといえそうです。

 ちなみに、「陳腐化戦略」は「差別化戦略」の別の言い方で、今年のモデルよりも昨年のモデルは陳腐だと思わせるような宣伝方法をいい、「差別化戦略」を皮肉った表現です。

 やはり、差別化や陳腐化は、大企業の戦略だといえます。

「差異化要因 (今までの製品とどこが違うのか?)」

 と、私がわざわざ、「差異化」を使ったのは、優劣をつけるというよりも、他との違いを強調する要素が重要だと考えているからです。



差異化とマーケティングフレーム

 では、中小企業にとって、商品を差異化するのはどうすればいいのか?どのように他社の商品と違いを出せばいいのか?

 新規機能や、進んだ性能の製品をどんどん開発していくことだけが、差異化ではありません。

以前、マーケティングフレームについて簡単に説明したことがありますが、一般的に以下の四つのフレーム(4P)があります。4P/製品・価格(中間卸)・流通・販売促進というフレームで、ほとんどの企業の主要業務を分類できます。4Pは現在の産業の基本構造になっています。

Product(プロダクト):製品の性能・デザインはよいか
Price(プライス):価格は適正か
Place(プレイス):顧客の手元に届く流通はあるか
Promotion(プロモーション):販売促進・顧客は製品を知っているか

 差異化を考えるときに、この四つのフレームにあてはめて考えれば、他社製品との違いを検討することができます。

●Product(プロダクト):製品の性能・デザインはよいか

 性能で新規性がないか?もしくは、性能で他社と差別化が難しいのであれば、使いやすさや美しさ(デザイン)で差異化が図れないか?

●Price(プライス):価格は適正か

 価格で差異化が図れないか?安いだけでなく、商品の高性能や希少性など勘案して、価格設定ができないか?

●Place(プレイス):顧客の手元に届く流通はあるか

 既存の技術を使って、新しい市場に展開できないか?

●Promotion(プロモーション):販売促進・顧客は製品を知っているか

 インターネットを使って、顧客とのインタラクティブ(双方向的)な情報交換によっていままでと違う顧客との付き合い方が構築できないか?


プロダクトとプライスでの差異化

リアルフリートの「アマダナ」ブランドは、プロダクトとプライスでの差異化を図ったよい例です。

アマダナは家電製品のブランドで、電卓から扇風機、掃除機、電子レンジ、オーディオなど総合家電メーカーと同じようにさまざまなジャンルの商品を販売していますが、うまくプロダクトとプライスでの差異化を図っており、顧客の獲得に成功しています。

●Product(プロダクト):製品の性能・デザインはよいか

「美しいカデン」を謳い文句にして、いままでの家電製品とは一線を画したシンプルモダンデザインの外観デザインで、差異化を図っています。

アマダナは、すべての製品デザインをたった一人のデザイナー(建築家鄭秀和)に任せ、その製品デザインを気に入った人達だけが購入してくれればいいと考え、その人達のためだけに生産を行うというビジネスモデルを構築しました。

市場の二〇%のユーザに八〇%の満足感を与えるのではなく、一%のユーザに一〇〇%の満足感を与えることを目標にした製品デザインで、差異化を具現化しています。

●Price(プライス):価格は適正か

アマダナは、五年十年と同一デザインの製品を同一価格で販売し、製品の修理保障期間を通常の2倍以上の15年にして、少数の顧客だけを対象に生産していることから、生産数量が少なく、製品は割高です。

 電卓が5000円、キッチンタイマーが8000円もします。

 それでも、その価格で買ってくださるお客さんは、シンプルモダンな外観デザインや保障期間や10年以上同一デザインで売っていくというアマダナの思想に納得し、その価格が適正だと感じて、買ってくれます。

 実は、アマダナはPlace(プレイス)でも、Promotion(プロモーション)でも新しい試みをしており、それらは、製品デザインのおしゃれさに較べるとずっと、泥臭い地道な作業をしています。それでも、アマダナの戦略の基本は、その外観デザインでの差異化と価格の設定にあるようです。



 デザインのコツツボですので、企画の話よりも、デザイン実務の話を中心に進めていたのですが、やはり、企画の話は避けて通れないみたいです。しばらく、企画寄りの話をしていきます。

 でも、極力デザイン実務に近いところから攻めていこうと思っています。


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