DEEPLY JAPAN

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とりあえず過去25年の恐怖時代は終わりつつあるんだと思う

2017-01-05 18:17:55 | 太平洋情勢乱雑怪奇

トランプなんて人が出てきちゃうし大変な時代よね、みたいなことを言っている人がいて、ああ、そういう感覚が主流なのかもしれないけど、多分それって間違いだから、と思ったもののどこから話していいかわからなかったので、ちょっと頭の整理をしてみたい。

多分、「冷戦が終わった」とは恐いことだった、というあたりをキーに考えればいいと思うのよね。

 

「冷戦が終わった」という語によって、私たちは知らず知らずのうちに核の超大国が互いに角を突き合わせる体制が終わった、ということは平和になったのだと読まされていた。

しかし、それがそもそも嘘または紛らわしい、公共広告機構の注意が必要な案件だったということ。

多くの一般人の幸福感をよそに、「冷戦が終わった」のだから、本格的に一極支配をする、と捉えて行為していた人々が実はたくさんいた、という話ですね。

ウォルフォウィッツ・ドクトリンはこの補完行為みたいなものじゃないでしょうか。これが先ではないでしょう。すでにブッシュ父のイラク戦争を見れば、一極型に向かっていたと読むべきでしょう。

要するに過去25年間というのは、ソ連側がサポートしていたり、地理的、歴史的に繋がりのあるところを一生懸命むしって、ひとつひとつを下僕化しようとしていた時代だった。カラー革命も一つの作戦。

で、もっとも深刻なのは核戦略についての欺瞞。

ソ連の後継であるロシアとアメリカだけみればロシアの側の方が多く核兵器を有しています、みたいなことを言う人がいるわけだけど、アメリカはNATO諸国に分散してもたせているという指摘をする人はほとんどいない。それを無視して、アメリカとロシアで比べて話を作るのがいわゆるリベラルメディアの役割で、世界中にいる「核兵器は廃絶すべき」という主張をもった人たちはこのために動員され、要するに一歩一歩ロシアを追い詰める作業に力を貸しているようなもの。

さらに、NATOがミサイル防衛網という名でロシア側からのミサイルを無効化する仕組みをロシアの回りにびっちり配備している。ということは、万一西側がこれ以上突っ込んだ場合には、通常戦力で劣勢にまわるロシアが核を使う確率はそれだけ上がる。また、アメリカの側も昔は防戦のための核という位置づけだったが、先制攻撃を辞さないとう態度に変わった。

ネオコンを代表例に、米軍および米政界の中には常に、核戦争は勝てるという思い込みを持った人たちがずっと存在すると考えられている。

 

■ 極悪人による一極支配

私が思うに、もし、一極支配を志す人たちが、善意にあふれ、人間性にあふれ、苦難を自らが引き受けて各国、各地域の混乱には自ら率先して行動するような人々であったとしたら、一極支配というプランニングもある程度意味があり、そして、世界中の多くの人々にもそれを支持する便益があった。

ソ連さん、ロシアさん、チャイナさん、矛をおさめましょう、という言にも意味があっただろう。

しかし、実際に起こったことといえば、リベラル勢力が折々に、あそこの人権がここの汚職が、ここのレイプがここの殺人がと火をつけて、インチキにインチキを重ねた報道がこれで事件に骨格を与えて、よーしと軍が出ていくという、単なる偽旗作戦の連続でしかなかった。

それにつれて、世界中のグローバル投資家とかいう人たちが戦乱のたびにファンド拵えて儲けてみたり、各国の政権を動かして「民営化」することによって各国の資源、資産を売りものにして、金持ちはさらに金持ちとなり、そうでない人たちは単にその方たちに知らず知らずにお布施をするというスキームに晒されていく。政治的にいえば国家という単位で人々が富を持つというスキームが壊されていく。

この状態は、結局のところ、世界中の数多くの国と地域の一般大衆にとって便益はない。工作のたびに治安が悪化し、メディアが嘘をつく、という事態にさらされ、かつ、それを隠すためには買収された政治家しか上位にいけない、残らないような仕組みだから、国全体をマネージしようという政治家、官僚はパージされる。さらに、本拠地としたアメリカ人にとってもまったく便益がないどころか、紛争のたびにアメリカに対する嫌悪と侮蔑だけが募り、いわゆる軍産複合体と治安機関によるやりたい放題を止められなくなっていくばかり、という事態だった。

また、イランや中国といった地力のある国も、別にいつの時代だってアメリカの下僕を志していたわけでもないので、あんたらがそこまで性質が悪いのなら、そういうことならロシアと組みながら対応しようと考えるのは当然の話だった。

さらに、イラクやアフガニスタンのように意味不明に殺されまくった、破壊対象となった人々も、過去10年以上の惨禍にもかかわらず住民が隅々までメンタリティーが変わってアメリカまたは西側の下僕となる準備ができているとも聞かないので、西側が弱くなれば、それはそれなりに対応していくんだろうという以上のものではない。

つまり、悪人による一極支配は、軍事力で一回倒せば相手は自動的に下僕になるという思い込みに問題があったというべきなんじゃないっすかね、など思う。

 

横道にそれるけど、この様子は、日本の陸軍の大陸における無数の工作とそれに続く武力の行使を思い出させる。ぶっちゃけ、彼らが考えていたのは大陸東岸全体の経済支配なんだろうと思うわけですよ。だからこそ数限りなく軍票を刷りまくって支配地を「こっち」の経済圏に入れようとしていた、と。(シベリア出兵時にも出るときから軍票出してますが、このことは、日本はこの兵力投入を短時日の、治安維持目的の限定的な武力行動以上のものとして想定していたことの傍証だと思う。)

で、その方策として、まず武力で一発、次に占領地の宣撫工作をやって、軍票をまく。しめしめ、と思うわけだけど、次から次から抵抗されていく。また、武力→宣撫工作、傀儡樹立、みたいなことが続く、と。

そう、ネオコン/リベラル介入主義者の行動のプロトタイプは実に関東軍にあった、と言っていいと思う。

 

■ 多極バランス型の方が安全だった

ということで、ここ数年起こったことは、ロシアが復活してきたことを受けて、まず核戦略的にパリティー(同等)の状態を回復させて、それら一極支配支持派、つまり、ネオコンとリベラル介入主義者に無理を悟らせる、というか、無理だという状態を見せつける、ということなんだと思うんです。

トランプとプーチンが、相次いで、俺らは核大国だと宣言しているのは、この構図を回復させる宣言なんじゃないでしょうか。大声でそれだそれだとは言わないでしょうが。

ネオコンを人一倍警戒しているポール・クレイグ・ロバーツは、レーガン政権時代の経済補佐官だから、この時代に入り込んできたネオコンを直に知っている人。彼は数か月前、多くの人はロシアとアメリカの新冷戦だとかいうけど、冷戦に戻れるなら戻りたい! と叫んでいた。この意味は、冷戦は注意深く管理された体制だったんだ、ということ。これはパット・ブキャナンも同じ見解。

冷静時代の大統領も政治家も、ソ連をあしざまに罵り、あっちもアメリカをあしざまに罵って、互いに危険なことをしていたわけだが、両方とも最終的な対決にならないようあちこちで注意深く管理していたんだ、と言っていた。

まぁだから、この人とかブキャナン、はたまたコーエン教授、この時代のイギリス、アメリカの駐ソ大使なんかはみんな同じことを考えているんだと思う。自分たちは冷戦を終結させることで、誤作動やら誤解に基づいてさえ核戦争に至る可能性のあった時代を終わらせたと思ったのに、違ったと。もっと危険なことになった、と。

そしてその結果として、ネオコンとリベラル介入主義者という無軌道で無責任なハイエナ連中にロシアを食わしただけでなく、世界中の多数の地域が混乱に落としいられられ、殺され、収奪されている事態となり、アメリカはアメリカで911によって、ほとんどファシズム体制の入口に立たされた。

今のアメリカの反エスタブリッシュメントのモードは、国民によるこの25年に対する否定だと思う。

 

ロシアのプーチン大統領が1年前、ドイツの「Build」紙とのインタビューで、過去25年間の西側の取り組みの間違いをいろいろ指摘していたのだが、それを受けてインタビュアーの方が、あなたたちの方にも間違いはあったのでは、と尋ねた。するとプーチンは、

「ありました。私たちは、自分たちの国益を強く主張できていませんでした。最初からそうすべきであったのに。そうしていれば世界全体はもっとバランスの取れたものとなっていたかもしれません。

Vladimir Putin: Yes, it has. We have failed to assert our national interests, while we should have done that from the outset. Then the whole world could have been more balanced. 

http://en.kremlin.ru/events/president/news/51154

と言っていた。

これはつまり、ゴルバチョフ、エリティン時代にソ連を無効化するかのような行動を放置したことによって、バランスが一気に崩れたことを指しているんだろうと思う。プーチンは当時東ドイツ駐在のKGBの人だから余計に、あの崩し方は問題だったという当事者としての印象または各方面の作為が見えていたのかもな、とかも思ったりもする。

 

■ まとめ

・冷戦終結とは、一極支配を許すといったも同然だった

・一極支配は、内部から崩壊する(誰もチェックしない体制だから自堕落に陥る)

・現在私たちが見ているのは、一極支配妄想主義者による内部崩壊である

 

と、こういうことだと思う。

 

■ オマケ

なぜ日本の言論環境があさっての方向を向いたままなのかというと、冷戦が終わった意味を、我が方の勝利と捉えたドイツに次ぐ最大手だからじゃないっすかね。だから、それがそういうことじゃないと言われても、もはや取返しがつかない。ってか、見たくない、知りたくないって感じ? どうなっていくんだろうか。わかりません。

 


 

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麻田 雅文
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応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)
呉座 勇一
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7 コメント

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『ロシア人の平和幻想から出た悪夢』 (ローレライ)
2017-01-05 19:03:51
『アメリカトロツキズム十字軍の侵略』は『ロシア人の平和幻想から出た悪夢』であったと言うこと。中国人やイラン人は『お花畑』ではなかった。最近、急に『通貨収粛政策』をはじめたインドもお花畑で危ない!
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平和幻想というか正しさ幻想 (ブログ主)
2017-01-05 19:46:33
いやぁ、そう言ったらロシア人に気の毒ですが・・・。でも、平和というか、世の中にバカはいるだろうが、国のトップレベルにそこまで邪悪なことをする人たちがいるとは信じられない、というのはロシア人が抱える根深い思考習慣かもしれないです。

前にも書いたけど、彼らにはハルマゲドン幻想がない。だから、一気に「一極支配」とか信じる奴らの心性が理解できなかったし、今も半信半疑なんだと思う。人間としは悪いことではないわけですが(笑)。
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異端児 (私は黙らない)
2017-01-06 05:37:53
大統領選直前、知人との政治談議で、「冷戦時代の方が今よりよっぽど平和だった。」と言い放ったら、白眼視された。今、私は全米でも有数の民主党の牙城に住んでいて、まわりは金太郎飴みたいに、マスメディアの論調を繰り返すプチセレブだらけで、うんざりだ。カネもうけ以外に脳が働かない知的怠惰民。もう、この人達と政治談議は絶対しない。孤独だけど、ネット上には、同志がいる。ブログ主さん、いつもありがとう。
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異端っていいじゃん (ブログ主)
2017-01-06 07:00:11
私は黙らない さん、どうも。

冷戦時代の方がよほど平和だったというアメリカ人は結構いるっぽいですよ。でも、わかります。リベラルっぽい、なんとなく私って頭がいい、みたいな人に限ってオフィシャルラインから離れられないですからね。

孤独じゃないですよ。世の中いろんな人がいますから。でも、なんとなく寄り道して気が休まるようでしたら何か書いてくださいませ。こちらこそナイスなフォローありがとうございます。
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ソ連崩壊 (Ha-Ko)
2017-01-06 07:49:03
1990年ごろから、日本だけでなく世界的に、公教育を含む社会保障制度や国際紛争の解決にさいしての正義や公平の感覚が薄らいでいくのを、要するに「右傾化」が進行しつつあるのを感じて、思い遣りとか正義とか公平というような価値観は、ソ連の存在があって支えられていたっていうことかと思い始めていました。それがあまりに一般的なマスコミの論調には反する印象だったので、説明がつかない、納得のいかない思いでいました。
 私の場合は3.11以降、インターネット情報に接するようになり、やはり、そうだったんだ・・・ソ連という存在があったから、弱者に対する思い遣り、社会的正義、公平という価値観を尊重せざるをえなかったんだ・・・そうしなければ、全体が「共産主義化」されてしまうから、冷戦終結後、ソ連という歯止めがなくなってしまったんだと思うようになりました。
 このサイトには比較的最近になってアクセスするようになり、ますます、世界的な潮流が理解できるようになったと思い、感謝しています。今ではまっさきに、更新をまちかねて開くサイトの1つ。
世界的にも数少ないサイトではないですか?まじめに。
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バランスですよね、何事も (ブログ主)
2017-01-07 12:13:39
Ha-Koさん、どうも。

なにか過分にお褒めにあずかったようでこそばいー、って感じもしますが、それはそれとして、何事もバランスなんだと思うんです。

ご指摘の通り、ソ連があった時代には、あっちに負けると各国で資本家(投資家)優位ではなく、社会優位だという発想が強くなってしまうので、ある程度社会政策を充実せざるを得なかったんだろうなと私も思います。このあたりは、実のところ英米の著名な歴史家なんかも既に指摘しているところだったりはするんですよね。

そのあたりまた書いてみたいと思います。
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余りにも日本的な善意の勘違い (宗純)
2017-01-11 14:43:23
記事の内容は概ね賛成出来るものですが、

『また、アメリカの側も昔は防戦のための核という位置づけだったが、先制攻撃を辞さないとう態度に変わった。』
は全くの勘違いというか、話が逆さま。
実は半分黒人のオバマは少しだけ冷静な判断力があったので、今までの危険すぎる核兵器の先制攻撃戦略を変更しようとしたが、みなさんご存知のように、失敗しているが、
これは、任期切れ寸前のレジェンド作りだった可能性もある。
そもそも平和憲法の日本人では想像さえしていないがアメリカは一貫して核による先制攻撃を目指していたのです、

ずっと地獄の釜の蓋の上で踊っていた日本人
2015年03月17日 | 軍事、外交

ソ連の崩壊ですが、これ民間企業なら良くある偽装倒産の可能性があります。
親会社(ロシア)が生き残るために、不良債権(チェルノブイリ)子会社に押し付けて倒産させる手法ですね。日本版ラスプーチンの佐藤優が私と同じようなことを曖昧に主張しているが、この話はやはりタブーなのでしょう。

「東西対立」混迷するウクライナと世界経済
2014年03月06日 | 経済
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