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対北朝鮮制裁決議と解かれていく南北成立過程

2017-09-12 12:46:13 | アジア情勢複雑怪奇

北朝鮮の核実験強行に対して国連安保理は制裁決議を採択した。

国連安保理 新たな北朝鮮制裁決議を全会一致で採択

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170912/k10011136021000.html

9月12日 12時13分

核実験を強行した北朝鮮に対して国連の安全保障理事会は新たな制裁決議を採択し、アメリカの国連大使は核・ミサイル開発を断念するよう呼びかけましたが、これまで制裁決議を無視してきた北朝鮮の今後の出方が焦点です。

 

で、既に昨日から流れていた通りの内容みたいだ。つまり、原油の全面禁輸だのなんだのという完全に北を追い詰める恰好の話はなくなって、基本的に貿易制限はかかるがエネルギーの輸入にキャップを設けて(現行の半分ぐらい)、枯渇はしないが余裕もないという感じにする模様。北朝鮮の原油の大部分は中国が供給しているので、中国の意見が通ったと言えるでしょう。

これを、米の国連大使は、「トランプと習の間の強い絆がこの国連制裁案の交渉において重要な役割を果たした」と言っているそうだ。実際、中国が仕切った提案といっていいと思うので、トランプは押されたわけだけど、それでもこの収集をアメリカ主導でやったような感じにさせてもらっているという点で、米と中が仕切ったとも言える、かな。

http://www.zerohedge.com/news/2017-09-11/united-nations-unanimously-approves-new-sanctions-north-korea

Nikki Haley said that the sanctions will target $1.3 billion in North Korea revenue. The US ambassador to the UN added that the "strong relationship between Trump and Xi played a key role in negotiating the new UN sanctions",

 

で、結果的には、米国は戦争を望んでいない、とか言い出しているわけで(笑)、まぁ最初からみんな知ってたって話ではあるにせよ、こうやって話をまとめて行った中国の国連大使の劉結一氏の見せ場みたいな感じがする。

で、劉氏は、早速、米国は自分が約束した北朝鮮政策を組み入れるよう希望する、とがっちり立場を表明。

すなわち、平壌のレジームチェンジを求めない、北朝鮮政府の崩壊を求めない、朝鮮半島の再統一の加速化を求めない、38度線を超えた北側で軍事行動をしない、という内容だと環球時報にあった。

Liu expressed the hope that the United States would incorporate into its DPRK policy its promises of not seeking a regime change in Pyongyang, not seeking the collapse of the DPRK government, not seeking acceleration of reunification of the Korean Peninsula and not sending its military north of the 38 Parallel. 

http://www.globaltimes.cn/content/1065983.shtml

 

このラインはもちろん、中露が提案したいわゆる「ダブルフリーズ」の路線に沿って話が展開しているとみていいでしょう。ダブルフリーズ、二重の凍結とは、北は核、ミサイルを追及しない、その代りに米韓は大規模演習を凍結する、というもの。

この間に、ドイツのメルケル首相がイラン方式がいいんじゃないかという話を投げてきたことも、この騒動の一つの収穫だったと思うな。私は前にも書いたけど、この方式で行くしかないだろうと思っている。

で、この間の騒動でもっとも大事だったのは、アメリカは単独攻撃しない、という形を国連安保理を通して確定させた、ってことじゃなかろうか。アメリカは現在ヘイリーを出してきているところを見てもわかる通り、オバマ政権以来ずっと一貫して、異常な国連軽視姿勢を取っている(だからバカを出す)。それを逆手にとって、アメリカを国連の決議の枠に引き戻したということさえできる気がするな。

 

それはともかく、1カ月前にも同じことを書いているけど、日本の報道でこの中露提案がほとんど見えないというのは、どうしたものか。いや、拒否するならするでいいけど、基本的に話はどう流れているのかを国民に知らせる意味はあると思うのだが・・・。

北朝鮮問題:二重の凍結と「お前が折れろ」

 

日本の現在はひたすら、北に向かって「お前が折れろ」を推進する係で、その間にアメリカは中国と交渉する。韓国はその間、プーチンと心の通いあう瞬間みたいなものを持っちゃって、外野からは、そうだよね、戦争でなんか解決できるわけないものねと結構なエールをもらってる。

本当に何かを象徴するようないい写真を撮ったもんですね。

 

■ ほどけていく南北朝鮮成立過程

あと、北朝鮮危機が長引くにつれ、朝鮮戦争がどれだけ酷い戦争だったかが知られるようになり、特に、犠牲者の多くが北朝鮮だった(戦争の成り行きから当然だが)ことから、そりゃアメリカにおいそれと頭さげたり膝を屈するいわれはないよな、みたいな感じが静かに共有されていっている点も今後にとって重要だと思う。

さらに、それを解く過程で、南北朝鮮がどうやって成立していったかが整理されていっている。

なんとなく、ここが一気に突破された感じがする。

ブルース・カミングスの凄惨な朝鮮「内戦」

つまり、朝鮮戦争といえば北側がだしぬけに、野望で南下した、だからアメリカは南を防衛したのだ、偉いだろう、逆にコミーの北朝鮮は敵だ、みたいな冷戦時代の正史があって、カミングスなんかはそこを超えるのが大変だったわけでしょ。だからある種の「歴史修正主義」とか呼ばれていた。

だけど、(主流メディア以外で)現在あちこちで読む記事を読むと、第二次世界大戦の終結時や、あるいは日本の統治を嫌った朝鮮の人たちがソ連側に行っていて、その人たちが主体になって北を形成し、ソ連軍が満州の日本軍を破った後当然ソ連の後ろ盾をもらうが、北は結構しっかり軍の訓練を受けている人たちもいたもんでソ連は1946年に引き上げている、一方南にはそういう主体はなかった、云々とかいう流れが上手に整理されていたりして、南北の成立過程がわかるようになってきた流れは確実にあると思う。

さらに、そことはと別に、冷戦後1990年代のクリントン政権の時に北朝鮮問題を解決しなかった、契約を履行しなかったのはアメリカだという話も語られている。これはアメリカの中で根深い批判として生きていた模様。

しかし、まだ日本の平壌宣言に関するものは見ていない。これはこれでへんな気がする。いや、出てこられても困るんだが(笑)。

が、しかし、日本の中で閉じこもった話ではないことは、田岡さんの言からもわかる。

ここで書いた話。

「北朝鮮と戦争をやるなら向こうで」

この動画。

北朝鮮挑発の愚、シリア攻撃の不可解〜タカ派の平和ボケ

 

問題点を再掲すると、田岡さんはこんなことを言っている。

平壌宣言がそのまま履行されていれば核開発を北が止める話なわけだから、当時、日本の外交はすごいじゃないかと言われていた。が、それを止めた人たちがいた。

それについて、田岡さんたち、アメリカの情報機関や軍の人たちとリアルに付き合いのある日本人は質問を受けたものだ、と。それは、概略、

日本の右派は核拡散条約を脱退して核を持とうとしている、そのためには北が核を持つことがきっかけになる。ところが平壌宣言で核を止めるといっている、そこで拉致問題を騒ぎ立てて北朝鮮に核武装させようとしているんじゃないか、と彼らは疑っていたと思う、とおっしゃっている。40~42分ぐらいのところ。

 

とうわけで、日本にとって良い状況とは到底思えないが、折からの

知ってはいけない――隠された日本支配の構造/矢部宏治

あたりの話と重ね合わせると、要するに解かれているのは日本の敗戦から戦後日本の形成までの話でもあるわけで、解かれるのは結構な話だわ、と私は思ってる。自分で解けたらもっとよかったわけだけどね。

 

■ オマケ

そういえば大事なキーパーソンに一度も言及していなかったが金大中氏こそ文在寅氏を生み出す母体みたいなものなわけでしょうね。

2000年6月、金大中、金正日の間で615共同宣言

2002年、金大中、息子の不始末で失脚して、2003年~2008年がノムたんこと盧武鉉が大統領に。

wikiを見たら、

「2006年6月に北朝鮮を訪問する予定であったが、北朝鮮のテポドン発射問題によって取り消された。」とあった。

そして、金大中、盧武鉉を乗り越えて文在寅がいる、と。

この間、日本では、

2002年9月が平壌宣言と拉致事件の問題化、安倍ちゃんの勃興。

ここに「誰かが不幸にも北朝鮮に要求したわけです…」by プーチン が入る、と。

2006年9月までが小泉政権、次が2006年月から2007年8月まで第一次安倍政権。

次が福田さん、麻生さん、民主党。ここで最初と最後が全然違う党みたいな展開があって、次に2012年また安倍ちゃん。

アメリカは、ブッシュ8年、オバマ8年。

アメリカのブッシュが、ノ大統領を異常にコケにしていたのは記憶している。そして日本の自民党まわりの初期ネトウヨみたいな人たちがこれをとても喜んでいたのも覚えている。だから、アメと日本が(それぞれ一部であるかもしれないにせよ)これらの太陽政策路線を組んで潰そうとしていたことは間違いないでしょう。

こうやって考えてくると、過去16、7年、ずっと南北対話をぶち壊すことが日本の政策の柱だったってことなんだろうか。満洲国の寿命より長い年月だわ。

で、小泉訪朝というのは、おそらく南朝鮮を出し抜くためだったということなのか。つまり、南北朝鮮が、多分中露の暗黙か明示的か知らないけどある種の了解を得ながら行われていたところを、そうはさせじと日本が主体になるべきと出て行ったのが小泉で、しかし、ここにある種のクーデターもどきの勢力がいて拉致問題のクローズアップで意味不明なまでの北朝鮮との疎遠化が始まった、と。小泉がそれを知っていたのか否かは今のところ不明。

(前から書いてますが、拉致問題を解決するなら国交を樹立した方がやりやすいのに国民が別の方に誘導された。あれはまったく不自然。誘導があったという以外にない)。

よくよく考えると、実に壮大にムダなことをしていたように思う。そしてこのために、ずっとヘイトを作り出し、意味不明な日本素晴らしい運動をやっていたのだとしたら、そのダメージは、南北が融和して地域が共に発展していった時よりも、ずっと大きなものだったと言うべきでしょう。dignityは買えないんです。


 


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2 コメント

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韓国の『ミンスク輸入と売却』 (ローレライ)
2017-09-13 06:18:40
世界中でロシアしか作っていない『戦艦空母』だが危ないタイミングで金泳三大統領はミンスクをロシアから1994年輸入した。『1994年の第1次北朝鮮核危機。北朝鮮は93年に核拡散防止 条約(NPT)を脱退した』騒動の時金泳三大統領は『クリントンの北朝鮮爆撃を断った』このタイミングで輸入し『研究後』1997年に韓国は中国に輸出している。
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ミンスクが生きているってのがなんとも (ブログ主)
2017-09-13 09:04:55
ローレライさん、

ミンスク持ったからって強くなれるってもんでもないですが、でも、ソ連はスクラップとして売ったものが今もまだ中国のミリタリー公園で姿を留めているというのは、なにかこう、これは象徴なのかと思わないでもないですね。
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