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プーチン、アトス山訪問

2016-05-30 03:47:50 | 欧州情勢複雑怪奇

極東ではサミットが茶番化するという、考えようによっては重大な出来事がそれ自体認識されないという奇妙な事態が進行した週末だったけど、エーゲ海ではなかなか興味深いことが起こっていた。

プーチン大統領が、ギリシャを1泊2日で訪問し、2日目にはアトス山を訪問した。アトス山は正教の聖地。

聖地といっても一カ所ぽつんとあるといった場所ではなくて、アトス山全体がギリシャの中で自治権を持っている(アトス自治修道士共和国)。つまり、まだ国民国家なんちゅーものがない時代から修道僧が集った場所で、その後も幾星霜正教の宗教者が1500人+が暮らしている。

 

見えにくいけど、真ん中あたりにプーチンが柱の前に立ってる。これが昔はビザンチン皇帝しか座れない椅子だったらしい。

で、それをロシア国内のメディアではちょっとした騒ぎにしている模様。

しかし、録画されたいたミサの様子を見るに座ってはいないのでは?(いや、最高位のゲストとして迎えられたということを座るというのなら座ったんだろうけど)

この動画の3:05あたり。

https://www.youtube.com/watch?v=0FaFEV5jE2U

聖職者がいろいろお話している時のプーチンは、そこもおそらく昔はエライ人しか立てない場やろうなという場所に立ってはりましたね。そして、教会内の代表者がいろいろお話した後でゲストとしてのプーチンがそれに応答するという式次第だったように見えたけど、そこでプーチンはその場から下がって(1段降りて)、平地で話そうとしたところを、どここから声がかかってエライ人の場に戻って話をしていた。

察するに、皇帝とかそれは俺じゃないし、ってな政治的配慮なんじゃないのかなと思った。
 

■ 正教の保護者

上の動画は、RTがリアルタイム視聴にしていたようなので、合計4時間ぐらい、半島に海から到着するところからミサ、その後の会談等々盛りだくさん。珍しい中味なので飛ばし見しつつもけっこう見た。ハイライトは2時間50分あたりからか。

全編、いや~、もうね、聖なんとかという名前のついた正教の立派な修道者なんだろうと思うんだけど、じーちゃんたち、もうもう、嬉しそうで嬉しそうで、見てるこっちが笑いたくなるぐらいなのが面白い。

じいさんたちもミーハーなのかとか思わず言いたくなるぐらいだった。あ、後半出てくるギリシャの大統領も長年の友人が自宅に来たかのように滅茶苦茶馴染んで、顔を近づけ、身体に触って歓迎してる。つか触りすぎ ^^;  この感じはスラブ的でもあるけど、でも考えてみればこれはギリシャやイタリアの沿岸部、アドリア海側もこんな感じがなくはないわけで、文明の近さを見た思いだったです。

(全然関係ないけど、基本的にアメリカ人は非常に遠くからハロー、の人たちですね。握手をするにもよくよく親しくなければ身体を近づけない。)

さてさて、しかし、このウキウキ感はもちろんおじいさんたちの時ならぬミーハーだけではないでしょう。

だって、そうなんですよ、よく考えれば、現状は正教徒にとって100年ぶりに保護者が復活している、なんですよね。どこあろうそれはロシアのことですよ、もちろん。

ロマノフ朝はずっと正教徒の保護者を任じていたのに、ソ連は宗教ご法度にしてしまった。そこで、正教徒たちは確かにコンスタンチノープルに総主教の座はあったわけだけど、場所によっては周囲を敵に囲まれたも同然だったのだなぁとあらためて思った。

敵というとそれはイスラムかと思う人が多いだろうけど、いいやそれが違うってのが現代のというか中世以来連綿と続くある種の公然の秘密のような気もする。正教徒をこの世でもっとも憎んでいるのはカトリックでしょう、だって。カトリックはなんとかして正教徒の陣地をわが物にせんとあくなき東方攻撃をかけた、または、かけ続けている。

正教会&カトリック教会

 

遡れば、東ローマ帝国を実質的に亡ぼしたのはオスマンというより、ベネチア&ラテン諸国による第四回十字軍だという話もある。つまり、西欧勢はコンスタンチノープルにあったローマ(東とはカトリックからの名称)を略奪して、崩壊させ、勝手にラテン帝国たらいうのを作った、と。

なんか、このへん今の the West の行動に本当に似てるなぁとか思えて笑えないような笑っちゃうような気もする。


■ アイデンティティーの崩壊を防ぐ

といって、別にロシア連邦は現在宗教帝国を作ろうとかそんな無茶は考えてないと思います。いや、逆に、アトスの側が、ギリシャ国内でもずっと自治的な場所だから、このままロシア皇帝に保護願いを出す、とか言い出しかねない勢いがあったかも、って感じだったし、そうしたら、では俺もとかいってアンティオキア(シリア)、アレキサンドリア(エジプト)がこれに続くとかなったら物凄く面白いだろうなとは正直思いました(笑)。今回は、ベネチアがクリミア支持してるし、もうあれか、エーゲ海同盟か、とか考えるのも面白い。同盟組んだからには敵は誰? イエズス会だろうねやっぱり、とかもう妄想が止まらない。

 

そういう面白い話はおいておいて、ロシアはなぜ正教の強化に拘ってるのか。

それは、自国、自民族のアイデンティティと運命にとって重要であるからのみならず、ロシア周辺の諸国民のアイデンティティー復活の契機になればいいな、って感じじゃないですかね。

the West という集団の戦略の一つは、対象地域の民族を誰が誰だかわからなくさせることによって、彼らが集団で自らを守るといった行動に出ないようにすることなんだろうなとか思うわけです。そのための契機はショック&オーの場合もれば、内側から崩すカラー革命モデルの場合もある。公共心、正義感を失わせて利害にしか興味をもたせなくする、個人の利益だけでいいんだわ、etc.。これをやっていっても、もし全体が平和ならそれでいいともいえるけど、the West の場合は結局一極支配というとんでもないアイデアを隠さなくなっちゃって全地征服を試みているわけだから、諸国民の行きつく先は精神の奴隷化しかないわけですね。

で、それを巻き戻すには歴史や文化を思い起こさせる以外ないな、ってなことをロシアを中心としたAチーム(ナチスチームでないチーム)が考えていることなんじゃないのかなぁ~とか思ってみてる。

去年の終わりに、ロシア政府がイランに非常に重要なお宝をプレゼントしてましたよね。

これこれ。

ロシア、イランにコーラン最古の手書き文書を贈る

これもそういう趣旨なんじゃないでしょうか。イスラムといえばジハードだのISだのを作って彼らを狂わせている奴らに、それそのもので反抗しても説教してもどうもならんので、イスラム指導者たちは自分たちの文化圏をしっかり考えてくださいよ、ロシアも応援しますから、ってな態度を取ったものと思います。

トルコも、エルドアンとその一党には手打ちする要素はゼロだぜとハードコアな姿勢で臨んでますが、最初っから、トルコ人はロシアの隣人であるという態度を崩してないのも同趣旨じゃないっすかね。

ロシアのやろうとしていることはシリア危機より大きかった


 

■ リスク

考え方として私は非常に良いと思ってますが、しかし、アメリカ政府にそれがわかるのかってのが問題。いや、わからないんでしょ。あの人たちは文化的感応力ゼロですから。ahistorical(非・歴史)の人々だし。お宝と見ればいくらになるのかとマネーに置き換えちゃう人たちですから。だからここがリスクといえばリスク。

だから、そことガブリ四つをしないで、諸国民の自覚を促して変化の方向に目を向けるってどうですか、とsuggestしてるってことじゃないでしょうか。今後のことは誰にもわからないけど、なにせ、現在の信用貨幣っつか銀行詐欺ってのかにすぎないものに寄りかかりすぎた体制、すなわちグローバリズム一辺倒とうのがこのまま誰にとっても満足できるものとして存在可能であるとは到底思えない。
 

■ 文明の衝突

冷戦後、文明の衝突なる本が出てきて、そこでイスラムを敵視する契機になったみたいなことが一般に言われているけど、私はこの本の著者ハンチントン氏は、西欧文明 Western European Civilization (the West という政治概念ではない)を保持したかったんだろうなぁという意味においてアンチ・一極支配だったってことじゃないのかなとかしばしば思う。各文明はある、そしてあり続けるだろうという立場だから。

 

いずれにしてもセルビアは救われるべき。(大カト風)


 

 

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1 コメント

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『聖教世界のチャンピオン』 (ローレライ)
2016-05-30 06:24:08
プーチンが『聖教世界のチャンピオン』になったと言う話。『ギリシャ首相』のチプラスも座れない『チャンピオンの席』。
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