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オバマ、ネオコンの証明

2016-05-27 23:51:11 | 太平洋情勢乱雑怪奇

オバマ大統領が広島を訪問するというので過去1カ月ぐらい日本の主要紙は幾度となく大騒ぎをしていた。

私はオバマ大統領が大統領になって幾何もない頃広島を訪問したいと希望しているみたいなことを言った時から、これはつまり日本の右派が盛り上げた核保有へのあくなき情熱を消し去るために設定されたアジェンダだろうと思った。

つまり、日本人に核なき世界こそ望ましいともう一度確認させようということ。

その後、当時は私も全然しらなかったのだが、日本は核弾頭にして4000発分程度のプルトニウムをため込んでいたそうで、その上ミサイル技術もあるから技術的にはほぼ保有といっていい状態にあることを知った。しかしそれらは日本の公式の立場からは逸脱し、日本が署名した各種の条約にも明確に違反する。つまり、イスラエルの一歩手前みたいな感じになっているのが現在の日本なわけですね。

だから、2018年に期限を迎える原子力協定を更新するのであれば、一定の整理をつけないとならないって話が同時に進行している。

ということで、まとめていえば、要するに、これでオバマのミッションの一つはコンプリートしたってことでしょうね。

このへんでまとめたこと。

核サミット終了

 

■ 一人の人間オバマ

それはともかく、オバマの演説。全文がDaily Mailに載ってたので読んだ。

Text of Obama's speech at Hiroshima Peace Memorial Park

http://www.dailymail.co.uk/wires/ap/article-3612791/Text-Obamas-speech-Hiroshima-Peace-Memorial-Park.html#ixzz49rv7ZHif

 

一読後の感想としては、学力優秀な高校生の作文のようだな、ですね。

広島に来て思うのは、人間を素晴らしいものにしている言語や技術といったものがこのような恐ろしいものを生みだすのだ、ということです。遺跡や何かの発掘物でもわかるように人類は昔から戦争してる、闘争してる。この闘争するというマインドセット(ものの考え方)を変えないと争いはなくならない。私たちは同じ人間なのです。

みたいな。

みたいなじゃなくて、基本構成はホントにこんなです。

で、その一方で、今日も今日とてアルヌスラ(アルカイダのシリア支部)はトルコの支援を受けてシリアになだれ込み、ウクライナのキエフ政権では狂ってるとしかいいようのないリーダーなる人の狂ってるとしかいいようのない言辞をみんなで賛美するという恐ろしい状況がある。

これらはみなオバマ政権の時間内で起きたことで、オバマ政権が別の方針を取ればこうはならなかったことですよ。

が、オバマの演説からは自分がそういう重要なポジションに立っているという認識がゼロ。

つまり、この作文は一人の人間として被爆者の悲しみを受け止めます、以上の意味はないということなんでしょう。
 

■ オバマ、ネオコンの証明

しかし、さり気に恐ろしいところもある。どう考えても世界に不安をもたしているのはカオス帝国アメリカなのだが、そんなことは微塵も考えておらず、自らも一人の弱い人間であるかのような立場から結論を引き出す。

…(中略)私たちは様々な制度や条約を作って戦争を避け、最終的には核兵器の存在を取り除けるようにしてきた。

しかし、各国間の侵略的行動やテロ、腐敗、残虐、抑圧といった行為からみれば、私たちの仕事はまったく完了していないことがわかる。私たちは人が悪をなす能力を除去できないこともある。であれば、私たちが形成する各国と同盟は、自分たちを守るための手段を保有せざるを得ない。

Still, every act of aggression between nations, every act of terror and corruption and cruelty and oppression that we see around the world, shows our work is never done. We may not be able to eliminate man's capacity to do evil. So nations and the alliances that we form must possess the means to defend ourselves.

 
これはつまり、冷戦パート2宣言みたいなものでしょう。または、日本よ、ロシアや中国の核に怯えなさい宣言みたいな感じ。
 
まぁ、全体としてオバマのミッションは歴代の大統領と同様日本をアメリカの基地として使い続けることなので、そこが確保できるならこのぐらい言ってもどうせ現状かわらんからいいか、みたいな感じか。
 
現状はだから、別に変化はないと思いますよ。しかし、それはそれとして・・・。
 
オバマはこの8年間、一再ならず「ブッシュよりネオコンだ」と言われてきたけどこれもその例ですね。で、考えてみればそれは当然そうだったわけですよね。だって、ネオコンはトロキストで、アメリカのトロキストの陣地はもともと民主党ですから。
 
特徴は何かというと、
・善悪で分ける →  自分たちは善なので相手は悪
・達成するまで頑張るのだ  → 永続革命論
 
ってところでしょう。
 
自分たちは1兆ドルという巨額の費用をかけて現在アメリカの核兵器をアップグレードする計画を練ってるとか、ロシア国境に兵を常駐させようとしたりミサイル防衛網もどきを無理くり作って核のバランスを壊そうとしてるという、異常な挑発状態にあるアメリカという現実はまったく無視。なぜなら、自分たちは善だから。
 
これに対して、トランプは、deal、dealと言ってるでしょ。これは取引しようということ。このまま行ったら俺もお前も困るな、だったらここで手を打とう、とか、これだと俺もいいけどお前もいいよな、よしこれで手を打とう、という思考様式が顕著。
 
こういう人は相手を100%悪とは想定しない。相手も主体者だという認識があるからこそ取引できる。相手を eliminate(除去)できるとは考えない。ここ大事。
 
いやぁ、オバマの任期が残り少ないことは人類にとって朗報ですね。まだ油断ならないけど。
 
前から何度も書いてるけど、オバマは自分がどれだけ危険なことを言ってる、しているかわかってないという批判がアメリカ国内でたびたびあるのはこのへんだったんだなぁとあらためてここ数年の悪夢が走馬灯状態です。
 
2014年にミアシャイマー教授が指摘していたことは、実はジョークでもなんでもなくて、実に実に根深い思考様式のことだったんですよね。これこれ。
 
一国スーパーパワーになってからのアメリカの政府、政策決定者たち、つまりワシントンにいる人たちは、自分たちはbenign hegemon(善意の、または良性の、覇権国)だと頭っから信じ切っており、自分たちが他国に言うことは、彼らが従うに決まってると思ってる。世界には問題がある、それは彼らが従わないこと、みたいな調子だと。

世界をアメリカが見る通りに見るのが当然だという幻想が本当に広がっているんですよ、とミアシャイマー氏が真顔で語り思わず笑いを誘う。
 
 

 

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1
ジョン・ミアシャイマー スティーブン・ウォルツ彦
講談社

 

戦後政治を終わらせる―永続敗戦の、その先へ (NHK出版新書 485)
白井 聡
NHK出版

 


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2 コメント

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『刀狩り』 (ローレライ)
2016-05-28 03:19:18
アメリカ以外の『刀狩り』を広島の犠牲者に誓う、異様な外交行脚であった!『アメリカはベトナムにも日本でも謝罪はしない』とイランラジオ。
返信する
美しいような国 (ブログ主)
2016-05-28 04:16:19
でもオバマはいい人だというイメージで終了できるので、日米関係的にはこれでいいんでしょう、多分。

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