ネオコンはトロキストなのだという話をこの間書いたところだったけど、夕べアメリカのオールタナティブ系でかなり実力もあり元気もあるサイトを見ていてら、コメント欄で、で、一体全体ネオコン勢はなんであんなにロシアを嫌うのか、マジで、なんでなの?という質問があって、それに対して100個ぐらいアメリカ人が考える理由が思い思いに書き込まれていてなかなか興味深かった。
これ自体、今のアメリカを物語るものがある。アメリカの外交方針のロシアいじめは異常だ、これは一体なんなのだと不信感を持つ人が結構いるということ。
で、その中で、なんでだろうね、Max Shachtmanあたりに聞いてみるしかないんじゃないのみたいコメントがあった。
意味深。そこでちょっと雑感を書いてみようと思い立つ。
Max Shachtman は、ネオコングループが強い影響を受けていると言われる人。このへんはブッシュとネオコンの話で一次話題になったけどその後下火になった案件だわ、思えば。
Shachtmanとかその他何人かのアメリカ人の軌跡を見ると、パット・ブキャナンが、海外でやたらにレジームチェンジのためのアラブの春的、カラー革命的運動をやってるやつらに憤慨して、
「アメリカのコミンテルンを連れ戻せ」
といった意味は、実に比喩ではないことがわかる。ただわかる。
アメリカ製コミンテルンを連れ戻せ
私も最初はわからなかったが、だんだん見ていくと、要するに、ざっくり言えばこういうことなんだと思う。
■ スキーム
話は1900年頃。ロシア人、ユダヤ人、ポーランド人等々当時ロシア帝国の範囲内にいた人々をアメリカに移民させ、アメリカにコミュニズム、労働運動的なものの基地ができる。Max Shachtmanも、1905年に当時ロシア帝国領だったポーランド地域からニューヨークに移民した人。
ロシア国内動乱が続く。
1917年 革命成功!
Max Shachtmanらはトロツキーを支持(彼ら自身アメリカ、ヨーロッパになんやかんやと行っている)
ボルシェビキ勢というかロシアというかソ連というか、各国からの介入戦争を終え、もろもろあって、スターリン一党は、ずっと革命やってるとかねーよ、となって、「世界中で革命をしないとソ連はもたいないのだ、永続革命やで」、のトロツキーを追い出す
スターリン、ロシア(ソ連)を強化する
Max Shachtmanら、トロツキーと別れ、反スターリンとなる。
第二世界大戦勃発
Max Shachtmanら、アメリカ国内で様々な市民運動を通じて、まぁなんてか活躍。ずっと反スターリン。
で、この運動を、例えば一国社会主義論がどうしたとか、永続革命論がどうしたとかそういう文言だけに頼ってみていると多分何にもならない。無意味とは言わないけど、でもやっぱりたいした意味はない。
問題は、この流れの中心テーマにはロシアを崩すこと、あるいはロシアをロシア人のものでないようにすることが深く根を下ろしていた、と考えると話がすっきりする。
だからこそ反スターリンというテーマが登場する。ソ連ロシアをまとめあげてナチスの戦争を大祖国戦争にしちゃって、あっさりロシアの伝統に接地しちゃったスターリンが憎い。
しかしそうは言えないから、反スターリン主義みたいな理論みたいななんだか立派な方針みたいなのを拵えて、レーニンからの逸脱がどうしたとか本当の社会主義がどうしたとかいう。過剰な民主主義、自由主義への傾斜もこのへんで仕込まれたのでは?
以降の西側における共産主義、社会主義者たちがおしなべて反スターリン主義をベースにしているところを見ると、この派の影響力がどれだけ強かったかを示しているようにも思う。
で、これはソ連(ロシア)とは関係がないわけですよ。反スターリン主義は明らかにアメリカ製じゃないですか、だって。
ということは、以降の各国の社会主義、共産主義運動に関わった人々は、みんなしてアメリカ由来の思想ってかプロパガンダに乗ってたって話? 第四インターナショナルとかもろにそんな感じに見えるんですけど。
■ ウクライナ騒動との相似
共和党の反共主義は、対ソというより、実のところこれら国内のもじゃもじゃを禁止する狙いだったのではなかろうかという気もする。
しかし、ロシア潰しの文脈は使えるので、反共主義として世界中に輸出した、と。
よく考えると実に厚かましい。自分らでクーデータを仕掛けに行って一瞬成功したと思ったらスターリンに実権取られたので、スターリンを倒せと世界中に指令してみた、という感じ。
あれ、何かに似てる。
そう。2014年にウクライナで起こったことと実によく似てる。自分たちでウクライナという国家を使ってそこを略奪することでクリミアを取って、すなわちロシアの黒海基地を取り上げて、うしうしと思っていたら、プーチンにカウンターかけられた。
怒って騒いでる。きっとこれからは、反プーチン主義とかいう思想が出てくるのか(笑)。
■ アメリカこそコミンテルンを清算すべき
でさ、よくよく考えると、トロツキーその人というより、トロキストという仮面をかぶったロシア略奪派がアメリカに存在するって話なんだよね。
しかも、スターリンは、最初はボルシェビキ集団の一人だったけど、ポーランドによる侵攻の後、まずロシア再建だがね(一国社会主義)、と言う立場を取った以上、もはや永久に革命だ~みたいな理論家連中とは手を切ったわけ。だいたい1929年と言われているけどそのへんからロシアは共産主義運動にとって労農が政権を取ったという意味である種の聖地だったかもしらんが、動きの中心地じゃない。
中心地は、実にアメリカにあった。
この人たちは一般にトロキストと呼ばれるが、よく見ればトロツキーとも決別しているんだから、シャクトマン主義とでも言うべきじゃないかという気がするけど、なんせこれらの人たちが根深くニューヨーク周辺に残り、民主党に合流していって、最終的にレーガン政権の時に一気に共和党に潜り込んで、そこで新保守主義(ネオコン)たらいう名前に変わった、と。
でさ、ブキャナンじゃないけど、マジでこのへんの現代のコミンテルンともいうべき人たちが世界を不穏にしてると思う。彼ら的には理想の状態になるまで革命だ、なんだろうけど、現地人にしたら迷惑三昧ですよ、まったく。
ソロスの話もだいたいこのへんと同じ。オープンだの自由だの民主主義だの言ってるけど、表でそれをスローガンにして、実際には後ろから手をまわしてクーデータもどきに一気に流れを変えて、必要なら暴力を使って、そしてメディアにそれを確定させる。ここ重要。
アメリカこそコミンテルンと決別すべき。
(しかし、これら表面の動きをしている人々は当然のことながらスポンサーの動向に引きずられる。スポンサーは、あそことったらリターン高い、資源略奪できちゃう丸もうけ! とか、債務奴隷が必要だとか、はては、中央銀行を国営化するとか抜かしやがる、潰してやれ、とかいうオーダーを出す。)
■ ポーランド要素
で、今後のお勉強のためのメモとして。
これらの運動においては一般にユダヤ的だとみなされてきたと思うしそれはそれで間違いではないんだろうけど、でも、ポーランド要素として考えてみることもできると思う。
Max Shachtmanは、1905年に当時ロシア帝国領だったポーランド地域からニューヨークに移民した人なんだけど、ロシア革命もどきの参加者ではポーランド人出現率はかなり高いんじゃないかと思う。
ポーランドは1795年以来分割されていたので1919年のウィルソンの14箇条で独立を果たすまで国としては存在してない。流れから考えて、そして結果から考えるに、ポーランドはつまり世界支配構想の一環としてロシア侵略拠点として作られた、みたいな感じなんじゃないっすかね。
(ドイツ軍がロシア帝国領ポーランドに侵攻してポーランドの秩序を破壊したのでそれを戻すのではなくて、西側から見れば前進したところを確保した、ということ)
だからこそ、独立を果たすとほとんど同時にソビエト侵攻を開始する。
日本は極東方面からいわゆるシベリア出兵を行っているので、東西からロシア分割を志していたともいえる。わたし的にはこのへんが最後の難関って感じだと思うんですよね。日本でシベリア出兵について言及する人が非常に少ないと書いたけど、西洋史の方も戦間期のポーランドの動向は無視されがち。
(むしろ、戦後のある時から歴史は1939年のモロトフ・リッベントロップ協定からとさえいえるような妙な歴史観が形成されている。この場合、ポーランドが両方から攻められてかわいそうでした、という感情から入るので、ポーランドがそこまでの20年間にどういう状態だったのかが無視される。
これがつまり反スターリン主義として形成していった一派の集大成なんだろうな、とか思う。で、これはイギリスにとっても都合がいい。)
■ まとまらないまとめ
いや、全然まとまらないんですが、ずらっと並べて考えると、私たちが20世紀の歴史として教わってきたことにはかなりの部分プロパガンダが含まれている。というか、世界支配志向のアメリカコミンテルンが作ったnarrative(物語)に、適宜事実がはめ込まれている、って感じ。
私たちはこれを断ち切る必要がある。そうでないと自国の歴史もわからなくなるし、誰かが作った話に乗っかって誰かを憎んだり殺したり(戦争)しないとならなくなるとうことは奴隷になるということ。しかも、この場合王が匿名というとんでもない仕組みなので、責任は自分持ち。バカげてる。
もう一つ。
ボルシェビキによる「革命」というのは要するにレジームチェンジのこと。しかも外部勢力が引き金を引く。
これと社会を整えるために必要だった労働状況の改善、人権の保護等々の話がごっちゃになったのは本当に惜しまれる。
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