同人戦記φ(・_・ 桜美林大学漫画ゲーム研究会

パソコンノベルゲーム、マンガを創作する同人サークル

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一年くらい前の小説を発掘【律氏】

2012年09月29日 | 短編小説



 ニートというものをやっていると、突然目の前が真っ暗になる時がやってくる。個人差にもよるが五年目か六年目。それはキリスト教というところのアセンション、つまり昇天というものだ。肉体は腐った生ゴミの匂いを放ち始めるが、精神は次のステージに上ることが出来る。それは性的快感からも、経済至上主義社会からも解き放たれ。
 そして、願いを一つ叶えることが出来る。


「――――君に訪れた有余涅槃の時。さぁ、願うがいい。消滅の時はすぐにやってくる」


 僕は、時間を戻して欲しいと言った。高校時代の初恋の時。
 春に戻してくれ。桜が舞い散っているあの時に。
 最初で最後の恋、と決めていたから。
 彼女を助けたい。
 ――僕は走っていた。学生服がはだけているのも気にせず、ただひたむきに走っていた。胸が苦しい。走るのが久しぶりすぎて腿の筋肉に電気を送る所作がわからないのだ。右左だったか、左右だったか。両方だったかな?
 でも、この頃の僕はすごかった。全力疾走してもあまり体にがたが来ていない。スーパーマンだ。僕はバレー部のエースで、頭は丸坊主で、体からは生ゴミの匂いなんて出してなかった。エロゲとか、ロリとか、下乳より横乳なんて言ってなかった頃なのだ。
 清潔感のある汗の臭い。すごい男性ホルモン。
 コールドスリープするならこの時の僕で。そんな清廉潔白な僕は、彼女に追いついた。
 まだ夕焼け空が沈んでない頃だった。どうにか間に合ったらしい。
「有村さん」
 それは一つ先輩の有村先輩。女子バレー部で部長だった。背ぇ小さいのにいつも強気で、でも誰よりも打たれ弱くて、ショートカットがめっちゃ似合ってる人。笑顔がとても輝いている人。
「焼津君? どうしたの?」
 有村先輩は市民体育館に向かおうとしていた。
「俺、先輩のことが好きでした!」
「……え?」
「先輩、俺に部長のこと相談してくれましたよね。めちゃくちゃ嬉しかったっす。んでもってめちゃくちゃ悔しかったっす」
「……ごめんなさい」
「いえ。でも、最後に俺、先輩を救いたいっす」
「え? 焼津君。どこに?」
「――先輩は何が起きてもそのままでいて下さい。そんな先輩にネバーフォーリンラブ!」
 走り出した俺は、ぽかんと立ち尽くす先輩を見て、僕はヨッシャとガッツポーズをした。十数年未練たらしく妄想していた決め言葉だ。絶対に言ってやる、いつか。ずっとそう思っていたのだ。
 ――言えた!
 有村先輩に。
そして僕は有村先輩を思い浮かべて涙を浮かべた。走るのをやめた。どっかの家の石塀を殴る。涙が溢れてきた。あの時もそうだった。先輩が死んだと聞いたあの日。先輩の笑顔が見れないと聞いたあの日。この世界をぶっ壊してやろうとか思った。できなくて教師に叱られ、親に叱られ。僕は大人が嫌いになった。ずっとこのままでいるんだ。先輩と同じ中学生のままで。
でも、そんなことは無理だった。
僕は体育館に着いた。中から光が漏れている。誰かいるのかキュッキュというシューズと床がこすれる音がしていた。
「部長!」
「ん、焼津じゃないか。どうしたんだ焼津? お、自主練か。よし、一緒にやるか」
「先輩」
「ん?」
 そのバレーボールを持った好青年、我が弱小男子バレー部を県北の優勝まで導いた稀代の主将は、爽やかな顔で笑っていた。この顔に騙された女の子はいくらほどいたのだろうか。
 僕はまず殴った。
「リア充は死ね! 爆発しろ!」
 は? と言う顔で床に尻餅をついた部長。
バレーボールがコロコロと転がっていく。
「そっか、ははは、そうだよな、この時代にはないよなそんな言葉」
 でも、構わなかった。いつの時代だってリア充は敵であり、憎むべき相手なのだから。
 俺は尻餅をついたままの部長を見下ろす。
「あんたさ、有村先輩のことどう思ってた?」
「有村って、女バスの? いや」
「別に何とも思ってなかったんだろ。……俺はあんたがわかんねえよ。学校では好青年でよお、裏では不良グループと連んでクスリとかレイプとかしまくりなんだろ!」
「……なんでお前がそれを。いや、違うんだ、有村」
 部長の手には携帯電話が握られていた。十数年前のまだPHSから切り替わったばかりの頃の折りたたみでもない携帯電話。どこかへ連絡しようとしてる。きっと不良グループだろう。
「ざけんなよ」
 蹴り飛ばす。すげえ、俺ってこんなこと出来たのか。感心。
「俺は童貞でよ、どうすりゃこの差埋まるんだよ。一回くらいおっぱい揉みしだきたかったぜ。……俺、有村先輩に言っちゃったんだよ、部長のことが好きなら告白してみればいいって」
「焼津。お前、クスリきめてんのか、なんかおかしいぞ」
「やってねえよ」
 俺は近所の中華料理屋のキッチンから拝借してきた良く切れる文化包丁を取りだした。
「お、お前、本気なのかよ」
「ずっと前から本気だよ。あんたが警察に捕まって無けりゃ、殺ろうと思ったさ。もう十数年前のことだけどな」
 
 ――そして、俺は硬直が始まってきた部長の体を、十数年前、有村先輩が身を投げた市民体育館の最上階ベランダから投げ落とした。部長はごつんと潰れた。……なんだか眠くなってきた。体が重い。

 目を覚ますと、そこは暗かった。
 俺には二つの記憶がある。中学生の時に捕まり少年刑務所送りにされた記憶と、ニートとして鬱屈な人生を歩んでいた記憶だ。どちらも真実である。だから、あの時「俺が殺しました」と自供した。
 ――でもこれで有村先輩を助けることが出来たんだ。
 俺はそれだけを胸に秘めて、これから暮らしていくだろう。
 社会の檻に閉じ込められるのと、刑務所に閉じ込められるのじゃあまり大差ないしな。
「八十五番」
 そう呼ばれて返事をすると、ガラスが挟まれた面会室に通される。
 生ゴミみたいな匂いは出ていないか、無精髭は無いか、そんなことは気にしなくても規則正しい生活を送っているから大丈夫だ。対人恐怖症でもなくなった。あの世界でのことは夢か何かではないかと最近では、そう思うようになった。
「また来たんですか」
「うん」
 にこりと笑ったその微笑みはどこか中学生時代の面影があって、とても輝いていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ちょっと暇つぶしで、昔どんなものを書いていたのか探していたら見つけた掌編の小説です。更新が滞っていたので上げてみました。
この時に比べて今の自分が変化しているところと言えば、いよいよ追いこまれてきた、人生的に。ちょっと本気にならないといけないですね。
夏期から秋期の境目とあって、これから始まるアニメが楽しみということもありますが、それを語る場はどこかにあるでしょう。
最後に、ハヤテのごとく32巻で、とあるキャラが言っていた名言を載せたいと思います。僕は「漫画」と言う単語を「小説」と置き換えて読んでました。


「非常識な夢が常識的な方法で叶うと思うな
 怖れを抱いて夢を下方修正するな
 人の顔色を覗って漫画を描くな
 努力しろ。努力とは、迷い無く自分を信じるためにするものだ
 有象無象の言うことに耳を貸すな
 雑音にいちいち心を揺らすな
 孤独を恐れて光にすり寄るな
 他人の物差しで自分の大きさを測り直すな
 味方がいなくなっても気にするな
 ざわめく声が大きいならもっと大きな声で黙らせろ
 世界の中心はここだと教えてやれ
 
 ――ねじふせろ すべてを

 それがお前の目指している漫画家だよ」

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まどマギSS 《神名あすみという魔法少女が生まれるトキ》 【律氏】

2012年08月19日 | 短編小説
不幸と幸福は均衡が取れているはずだ。それがわたしに唯一残された希望だった。

 夜の風が 花嫁のベールを被った少女の頬を静かに撫でる。
 神名あすみ。
 自分の名前の由来について興味が無い彼女だったが、どんな漢字を当てるのか興味があった。
「明日見」だろうか「愛純」だろうか。
 ふっと笑ったあすみは、銀色のボブカットを揺らした。人気の無いレンガ道に立ち、無言で遠くを見つめている。
 レンガ道の歩道と車道を分ける白線は剥げていて、脇に立つ街灯はちかちかと弱い。
 そこは少なくとも、小学生の女の子が一人でいていい場所では無かった。
「わたしは不幸だ。だから、幸せだ」
 ぼそりと呟くと、ぼやけた空間の中に入っていく。
 そこは幻影の中とさえ比喩できる、魔女の世界だった。

「神名さん! ちょっと待って」
 あすみが振り返ると、担任の吉名先生が慌てたように駆けつけてきた。
 放課後になってすぐ教室を抜けたせいで、まだ誰も廊下に出ていない。
 ただ笑い声だけがうるさく響いていた。
「明日の三者面談。神名さんだけ出てなかったから。親御さんは何時くらいに来れるかしら」
 あすみはランドセルが重くなる気がした。
「……明日は無理です」
「じゃあ、明後日とかどうかしら? 一応、一週間は予備日で取ってあるの」
「……ごめんなさい」
 あすみが口ごもりながら答えると、口を閉ざしていた吉名先生はあすみの腕を掴んだ。チュニックの袖をまくり上げる。そこには包帯が巻かれていて。
 あすみは驚いて、飛び退いた。
「神名さん、それ」
「……なんでもないです」
 突発的にそう言い残して吉名先生に背を向けたあすみは、廊下を走って昇降口へと向かった。
 誰にも見つからないように、ただ走った。

 家の近くにある神社の境内に上がる石段に、あすみは座っていた。
 目の前の通りは夕暮れですっかり赤く染まっており、行き交う人々はあすみを気にしない。
 膝の上にランドセルを置いてその上にあごを乗せたあすみは、そんな町の景色に目を落としていた。
 このまま時が止まってしまえば良い。
 そんな幻想に取り憑かれていた。
「帰りたくないな……」
「その願い、叶えてあげようか」
 あすみがふと漏らした呟きに返事があった。
 石段の脇に映えた草むらからだ。
 あすみはギョッとして、体を強ばらせた。
 がさがさと茂みが揺れ、やがて小さな動物がぴょこんと跳ねて姿を現した。
 見たことも無い小動物だ。
 待てよ……言葉を喋っていた?
 あすみの脳裏に疑惑が迸ったとき、真っ白な小動物は真っ赤な目であすみを見上げたまま、二の句を継いでいた。
「ボクはキュウベエ。ボクと契約して魔法少女になってくれたら、その願い叶えてあげるよ」
 空耳では無かった。
 その頃になると、あすみも喋る小動物の存在を納得していた。自分の耳の中に響いているのは確実にこの小動物の声なのだ。
 小動物は自分を指して「キュウベエ」と言った。
「キュウベエ?」
 返事をする代わりにくしくしと頭を掻く姿は、ネコ大のハムスターだ。見ているだけで癒やされるような。
 あすみは驚嘆して弾んでいた気持ちを一度落ち着けると、キュウベエの言葉を反芻した。
「願いを叶えてくれるって」
「ボクと契約してくれたらね」
「どんな願いでも?」
「どんな願いでも」
 キュウベエの自信ありげな声に気圧されてしまったあすみは、くすくす笑った。久々に笑った気がする。
 まだ癒えていなかった口の中の傷が疼いた。
「そんなの嘘。どんな願いでも叶うなんて」
「嘘じゃ無い、キミにはその素質がある」
「素質」
 ずっと、あすみは願っていた。
 母と父が別れてしまったあの時。
 ――もう一度三人で笑えるようになることを。
 母が二度と目を覚まさないと知らされた時。
 ――白い布を取り払って、母が起き上がってくれることを。
 そして、今……。
 しかし。
「でも」
 あすみはいつからか願うことをしなくなった。
 未来を夢見ることも、過去を慈しむことも、現在を生きることさえ。
「ありがとう。ばいばい」
 暗くなっていく空を見つけたあすみは、そろそろ帰らないと怒られてしまうと思った。夕食を作らねば行けないのだ。義兄や義父の弁当の準備もしなくてはいけない。
 とにかく、帰らなくては。
 あすみは神社の階段を下り終わって振り返る。キュウベエはもういなくなっていた。
 本当はいなかったのかもしれない。

「熱――ッ」
 味噌汁が床にばらまかれた。
 義兄の叫び声が家中に響き渡った時、あすみの全身から血の気が引いた。
 一家団欒の食卓が一気に気色ばみ。咄嗟に四人掛けのダイニングテーブルから飛び退いたあすみは、壁際まで後ずさりしてぶるぶると震えていた。
「てめぇ! わざとだろッ! 嫌がらせのつもりか!」
 黒縁メガネが似合う真面目一辺倒な義兄は、いつものやる気が無いような顔から鬼のような顔に豹変しており。
 それを咎める父も母もこの家にはいなかった。
「違う……」
 あすみの声を聞いてくれる人なんて、この家にはいなかった。
「殺してやる」
 義兄は最近塾の試験で良い点が取れていないのだという。
 だから、そのはけ口が自分なのだ。
「止しなさい、輝彦。お前の経歴に傷が付く」
 義父のその言葉を聞いて、あすみは悔しくなった。
「なんだ、その顔はよぉ!」
 義兄が叫んだ瞬間、強い衝撃があすみの頭を揺さぶる。
 いつの間にか、床に這いつくばっていた。右頬が痛い。
 見上げると、義母の赤いマニキュアが見えた。吐き気が出るほど真っ赤だ。
 あすみはリビングの扉を見つけた。
駆けだしていた。

 どこに逃げればいい、というあすみの問いは暗闇にぶつかり反響して、やがて返ってくる。
「お父さんのところだ」
 街灯の光を浴びたあすみは藁にもすがるような気持ちで、何かあったら来なさいと言っていた元父のもとへと急いだ。
 集光性を持った蛾のように、ただ一途に走った。
 父の家は意外に近かった。隣町にあったのだ。女子小学生の足で歩いて一時間と少し。
「ここだ」
 何回も何回も復唱して記憶した世界で唯一の場所。
 そこは普通の一軒家だった。住宅街が並んでいる中で埋没してしまうような個性の無い洋式の家だ。
 安堵のため息を漏らしたあすみは、まるで自分の家に入るかのように、インターホンすら鳴らさずにドアノブに手を掛けた。

 ――もうすぐ、わたしは助かるんだ。

 その時、ドアが内側から押し開き、見知らぬ少年があすみの目の前に現れた。まだ小学生にもなっていないような年頃の少年。
 少年は、あすみを見て、きょとんとしていた。
「誰?」
 自分の口から出たと思ったその言葉は少年のものだった。あすみは驚きで声が出せなかったのだ。
 少年は振り返り、家の中に言葉を投げかける。「誰、この人―?」
「誰ってなんのこと?」
「おいおい、ちょっと待ってくれよ。まだ、どこに食べに行くのかも決めてないじゃないか」
 少年の後ろには二人の男女が立っていた。
 女性は知らない。
 男性は、あすみの父だった。
「あすみ……」
 男性はそう言って、立ちつくした。
「どうしたんだ、こんな時間に」
「お父さん……」
 あすみはもう何が何だか分からなかった

 どうして、どうして、どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうして……――。

「……お父さんは、もうわたしのお父さんじゃないの?」
「お前には家があるじゃないか。な、もう遅いんだ、送っていってあげよう」
 見上げると、穏やかな父の顔があった。
 けれどもその目の中には、わたしが映っていない。新しい家族との楽しい思い出しか映っていない。
 お父さんの中には、彼の中には、わたしがいない。
 ――助けてくれる人はもういない。
「嫌、もう嫌、嫌嫌嫌、嫌嫌いやいやいや嫌嫌――ッ」
「おい、あすみ! どうしたんだ」
 彼の手があすみの肩をしっかりと掴み、揺らした。
 あすみは自分でも気付かないくらい取り乱していたらしい。
「いやあ」と父の手を振りほどいたあすみは、「もういや」と首を振って一歩ずつ下がっていった。
「お父さんは幸せなんだね。……あすみは不幸だよ」
 そう言い残してあすみは踵を返し、その幸福な家族から逃げ出した。

 それから、どうやって、どこを歩いたか分からない。
 あすみはいつの間にか、あの神社の石段の下に立っていた。
 雨が髪を伝って落ちて、頬に流れた。
 一歩石段に足を掛ける。そして、ゆっくりと上がっていく。
「……わたしは不幸、なんだ」
 上がっていくにつれて、笑いがこみ上げてきた。
 口の傷が疼いて、腕の傷が疼いて、足の傷が疼いて、指先が震え。
 それでも、あすみは笑っていた。笑わずにはいられなかった。
 自分が不幸である事に。みんなが幸せである事に。
「決心は付いたかい。神名あすみ?」
「キュウベエ、願ったらなんでも叶うの?」
「キミが本気で願うなら、新しい家族を用意することだって、」
 キュウベエの声を遮るように、あすみは言葉を被せた。
「いらない。なにもいらない。だから、みんなを不幸にして。わたしの知ってる人をみんな不幸せにして、わたしよりも不幸にして、キュウベエ」
「それが君の願いかい、あすみ」
 何一つの翳りも無く、むしろ清々しいくらいに、あすみは頷いた。

 それから、どれだけの人が不幸になったのかは知らない。ただ知る限りでは、義父は半身不随になり退院の目処が付かない入院状態で、義兄は受験に失敗し行方をくらませた。義母はわからない。
「キュウベエ。聞いて。昔、お母さんに聞いたことがあるの。人を不幸にした人は自分も不幸になるって」
 月夜の下で、あすみはゴシック的なドレスに身を包み、モーニングスターを握りしめて、あの神社の鳥居の上に立っている。
 その傍らには白い小動物がちょこんと座っていた。
「その通りだったよ、お母さん」

 魔女の世界が開く。
 今日も彼女はそこに飛び込むのだった。


――――――――――――――――――――――――――――

 どうもお久しぶりです。律氏でございます。
 2chのVIPPER達によって生み出された偽魔法少女、神名あすみちゃんのSSです。作り込まれた設定がおもしろくて、ちょっとSSを作ってみました。
 ところで、設定で一番謎だったのが、あすみちゃんは不幸だと自負しているのになぜ絶望していないのか。
 本来ならすぐにでも絶望しているはずじゃ無いのか、ということでした。杏子ほど心が強そうなキャラにも見えなかったので。
 そこで考えたのが、「不幸と幸福の等価」です。
 不幸だからこそ自分は幸福だ、というある意味自傷的な考え方ですが、この矛盾こそがあすみちゃんを魔法少女として存在させているんだと思います。
 
 まぁ結局のところ、
 まったく、小学生は最高(ry
 ということで。
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時間旅行の最終地点 【律氏】

2011年10月05日 | 短編小説


 時間とは、道のりと速さがあれば求められる。いわゆる、中学校でやった計算式だ。時間旅行者とは、つまり、時間という道を旅しているにすぎないのである。
 ――――なんて簡単な話しだったりする。

 夕焼け空には、にじんだ飛行機雲が直線を引いていて。どうやら僕は、懐かしさを感じているらしいのだ。ずっとここにいたいような気さえする。
 公園のベンチの上に。この時代に。彼女のそばに。
 この時代の彼女は、まだ高校生だった。そして、今の僕は四十二歳の中年オヤジ。年齢は変わらないはずだったのに、二十五歳の年の差だ。
 大きな瞳の下にある泣きぼくろが、コンプレックスだと感じていた。僕は、その姿を見るのがとても好きで。良くからかって遊んでいた。
「あの、今日は楽しかったですか?」
「ああ。あのパフェはおいしかったかな」
 この時代にしか存在しない、幻のストロベリーパフェ。
「本当に、未来には苺が絶滅してるんですか?」
 そういえば、君は苺が食べれなくなった時、非常に微妙な顔をして「しかたない。運命ならね」と笑っていた気がする。あの眉の曲げ方は、きっと悔しかったんだろう。
「今のうちにたくさん食べるといい」
「そうですね」
 素直なように、深くうなずいた彼女は、いつか僕に見せてくれたような、白色電灯のような笑顔をしていた。「うわっ、眩しい」こう言えば、君は悪口を言われたと頬を膨らませたものだった。
「未来の話しをもっとしてもらえないですか?」
「君は、僕が時間旅行者というのを信じているのか?」
「はい」
 呆れるくらい純真な子だ。
「そうか。未来は、あまり変わらない。人も世界も。相変わらず、運命を信じたり、現実に目を向けられなかったり、救えない命がたくさんある」
「ロボットとかは、どうなっているんですか?」
「ロボットは、そうだね。僕の生きていた時代には、AIもARも進歩していて、いや、難しい話しだ。それより、僕が質問してもいいかな」
 彼女はきょとんとして、こくりとうなづく。
「僕のことを最初どう思った?」
 僕の真剣な表情に、彼女は異変を感じたのだろう。背筋を伸ばした。
「泣きそうだと思いました。だから、声をかけたんです」
「変な人だとは思わなかったのかい?」
「えっと、たぶん。わかんないんですけどね。おじさんは、私を傷つけないって思ったんです」
 気付いた時に、僕は目頭を熱くしていた。泣き出さなかったのが、奇跡に思えた。
 いや、僕にはもう涙なんて残ってなかったのだろう。そんなものは二十年前に、全て使い果たしてしまったのだから。
「おじさんは、どうしてこの時代に?」
 彼女の瞳は、傾いた。
「…………ある人の未来を守るために来たんだ」
「その人は、おじさんの大切な人ですか?」
「ああ。命よりも、なによりも大切な人だ」
「素敵ですね。その人を守るために、未来からやってくるなんて。ヒーローみたい」
 いいや。僕は、ヒーローなんかじゃない。ただの極悪人だよ。
「さ、もう遅くなってきた。…………帰るんだ」
「え? まだ四時ですよ。それより、もっとこの時代を――――」
「帰れッ!!」
 ひゃと短い悲鳴を上げた少女は、おそるおそるベンチから離れ、小さくお辞儀をすると、逃げ出すように駆けていった。
「…………許してくれ。綾乃」
 僕はラブレターを握って、立ち上がる。
 不意に、とことこと、綾乃が消えた入り口とは違う、もう一つの入り口から誰かの足音がした。
 それは、高校生くらいの少年だった。誰かを探すように、きょろきょろと辺りを見回し、少し落ち込んだようだった。
「綾乃は、ここに来ないよ」
 僕は立ち上がり、驚く表情を見せた少年の目の前に立った。
「西村綾乃はここには来ない。下駄箱に入っていた君のラブレターは、彼女が受け取る前に、僕が抜き取らせてもらった」
「だ、誰だよ、あんた!」
 僕は、背丈もさほど変わらない少年を見おろし、
「君は、今から三年後結婚する。そして、その半年後、君が就職した会社は倒産し、君達夫婦は路頭に迷う。二年間、職を転々とした君は、その頃、とてもイライラしていたのだ。なにが切っ掛けだったのかはわからない。君はついカッとなって投げた灰皿で、妻を殺してしまう。殺人罪で八年間、刑務所で暮らし。それから、君は十七年間、後悔の十字架を背負いながら暮らす。そして、あの事件から二十年後、家庭用のタイムマシンが発売された。君は、何度も時間歩行を繰り返し、彼女が死なない世界を目指した。だが、そんなものはどこにもなかったんだ。そう、どこにも。どんなことをしても、彼女が死ぬ事実は変わらない」
「…………あ、あんた、何を言っているんだ?」
「始めからこうすれば良かったんだ。道を歩く人が、旅をする前にいなくなれば」
 僕は、懐から、サラ金でタイムマシン購入の資金を求め、その余りで買った一発しか銃弾が入っていない黒い塊を取り出す。その筒を、青年の胸に向けた。
「な」
 ――――銃声が鳴り響く。
「ッッッッッッッッッッッうわぁああああああああああああ――――――――――――――」
 風になびく硝煙と、飛び散った血しぶきを浴びて、僕はため息をついた。
 ようやく終わるのだ。ようやく綾乃を救えるのだ。やっと、やっと、やっと。
 青年の声が小さくなっていく。虫の息。
 僕の視界も段々暗くなっていく。虫の息だ。
 ついに、僕は青年の隣に倒れ込んだ。
 青年はもう息をしてなかった。
 僕は消えていく感覚を確かめながら、
「…………………………許してくれ、あや、の」
 そう呟いたのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 相対性理論が崩れるかも知れない? ので、少しSFチックに。
 ジョン・タイタ―の言っていた世界線構造に近いかな。

 しかし、まさか、自分が生きているうちにこんなことが起こるとは、という感じです。この勢いで、超弦理論や、統一理論の研究を進めていきましょう! がんがれ、CERN! 全世界の物理学者! ホーキング先生!


 境界線上のホライゾンが、けっこうおもしろかった。どこか懐かしい気がすると思ったのは僕だけ?
 H×Hのクラピカ役、みゆきちの声がかっこよかった! 
 キャスト変更の是非はともかくとして、みゆきち最高!
 
 ところで、ロリ枠はいずこ?
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深夜のバイト 【律氏】

2011年10月02日 | 短編小説

 前回までのあらすじ
 タクシーの相乗りという手段を初めて取った井出氏は、隣りに乗った郵便配達人から小包を受け取る。四畳一間のボロアパートの自室に帰った井出氏は、その小包を開けてびっくり。その中から現れたのは、切り取られたちょんまげだった。添えられた手紙には「房総半島にて待つ」とだけ知らされていた。範囲が広すぎる! と叫んだところ、ウルサイヨ! と蟹のような頭をした、ディストピアからの使者が現れる。「頭が鳴門海峡のような侵略者から未来を救って欲しい」と言われた。ちょんまげを片手に、引き出しに片足を突っ込んだ井出氏だったが、「未来とあたし、どっちが大事なの?」という、空鍋を持った彼女が現れ。井出氏は命の危機に!


 平日午前二時のスリーオフ。
 店長もいなくなり、先輩のバイトもいなくなったこの狭い屋内で、バイトを始めてからまだ二ヶ月の後輩と二人きりになった。
 俺が深夜のバイトを始めたのは三年前、ニート脱却を図るためだ。後輩も同じような境遇だったらしく、自分の名前のように親しみがあるという、このスリーオフに人生の再起を託したらしい。
 結果、俺達は晴れて、母親に「ごみくず」と言われずに済むようになったのだった。
 何をすることもないので、俺は何気なく、レジ裏たばこを整えていた。
「せ、先輩、まずいっす! 宇宙帝国が地球王国に宣戦布告しました!」
「うるさい! 俺は、今、マルボロの整理に忙しいんだ。ああ、ほら、セブンスターと混ざっちゃったじゃないか」
「先輩、なんで包装開けちゃったんですか! 全部ばらばらじゃないっすか! 区別付くんですか?」
「付くわけ無いだろ!」
「じゃあ、どうすんですか! 全部買い取りですよ」
「燃やしちゃえ」
 俺は、レジ横に置いてあった百円ライターで、コンビニの壁に火を付けた。
 すると、火は天井まで一気に燃え上がり、大炎上となった。一歩遅れて、炎は床に到達する。なんとか、たばこを燃やすに至った。
「ふぅ、これで証拠隠滅完了だぜ」
「先輩。隣のガソリンスタンドに、火が燃え移りました」
「なにッ。そんな馬鹿な……」
「どうします?」
「逃げるぞ!」
 俺と、後輩はなんとかスリーオフから逃げ出した。
「伏せろ!」
 間髪入れず、鼓膜を突き破るような大音声と共に、大爆発が起きた。
「………………百円ライターが、ここまで威力の大きなものだったとは」
 このネタを旧ソ連軍の残党に売れば、金になるかも知れない。
「先輩、その子は誰すか?」
「その子?」
 見ると、俺は誰かを掴んでいた。どうやら、あのコンビニにはお客さんがいたようだ。眠っていたコンビニ店員の意識が無意識に働き、お客さんを連れ出していたらしい。
「君?」
「…………あの、お助けいただきありがとうございます」
 まじまじと見ると、俺の手に繋がっていたのは、真珠のような白い肌の少女だった。大きなくりくりとした瞳が、フランス人形を思わせる。
「わたしは、地球王国第一王女、フランソワ・ローゼンクロイツ。地球にいるという宇宙帝国魔王を倒そうと出てきたのですが、極度の方向音痴でレジまでたどり着けませんでした」
「そ、そうか、それで姿が見えなかったのか」
 なかなかお茶目な人だ。
 俺は、一目で惚れてしまった。
「はい。しかし、どうしても、このスーパーカップが欲しかったんです」
 王女の手にはスーパーカップバニラ味が握られていた。
「しまった。アイスのスプーンまで爆発に巻き込まれてしまった」
「このくらい、王家に伝わる奥義を使えば。行きます。《バニシングアクト》」
 そう言って、王女はアイスの蓋も開けずに呑み込んでしまった。
「す、すごい」
「へっちゃらです」
 その時、冬の凍えるような風に乗って、うっはははは――――という笑い声が聞こえた。
 俺は、その声のする方向に顔を向ける。
「どうした後輩?」
「後輩ではない」
 王女が咄嗟に身構える。
「その声は」
「そう、コンビニ店員の後輩というのは仮の姿だ。この星を偵察するためにな」
「…………こ、後輩」
 俺は、後輩と過ごした何日かの記憶を思い巡らせた。こんな頼りない俺に、敬語まで使ってくれた、いい奴だったのに。
「じゃあ、今までのお前は全て嘘だったのか……?」
「当たり前だ! 誰が貴様のようなニートに敬意を表すか! 身の程を知れぇ!」
 髪の毛を割って角を生やした後輩は、伸びた爪の間に放電のようなものを迸らせた。それを手の内で圧縮する。それは、雷が着地する大地を射貫くように、俺の胸に激突した。
 まるで、あばらの全てをおられたような激痛を感じ、一瞬、心臓が停止した気がした。
 だが、狭窄していった視界が、ふいに回復していく。
「…………王女様?」
「大丈夫です、店員さん? ……良かった。王家に伝わるリザレクションを使ったんです」
「ありがとう」
「い…………いえ」
 すると、急に息を荒げた王女様が倒れ込んできた。なんだか辛そうだ。
「王女様!」
「だ、大丈夫です。王家の秘術も二つも使ってしまったので、ちょっと体の自由が利かないだけです。一時間ほどじっとしていれば、回復します。――それより。……………………魔王は名前を呼ばれると、死にます。………………ど、どうか世界を、世界を救って下さい」
「やはり知っていたのか、王女め。くくく――――だが、そいつにそれを教えても無駄だぞ。地球では、山田太郎と名乗っている。王女もこの俺の本当の名前はわかるまい」
「うう…………むね……ん………………」
「王女様! 王女様ぁあああああ! ――――くそ、後輩! 許さないぞ」
「許さない。許さないか…………くくく。じきに、俺の連絡を受けた帝国軍が地球に攻め込んでくる。だが、その前に俺がこの星を滅ぼしてしまうがな」
「後輩…………お前は、本当にそれでいいのか? バイトもうやらないのか? ニートに戻ってもいいのか?」
「ニートはお前だけだ! ニート先輩!」
「元ニート先輩だッ!」
 ニート先輩なんて失礼すぎるぞ!
「………………たしかにこの二ヶ月楽しかった。だが、俺はこうするしかないんだ。いずれ、人間は宇宙に進出する。そして、あらゆる星を支配して、スペースデブリをまき散らすだろう。だから、ここで終止符を打つしかないのだ」
「他に方法はないのか?」
 魔王は、さっきよりも大きなプラズマを発生させた。それは、駐車場のアスファルトをはぎとり、大地に亀裂を走らせる。
「俺は、お前を大切な友人だと思っていた。これからもずっと、こんな馬鹿みたいな日々を送っていくものだと思っていた」
「…………先輩……」
 不意に魔王の手の中のプラズマが萎む。
しかし、首を振った魔王は、プラズマの勢いを取り戻させて、それを掲げた。
「………………店員さ、ん…………逃げて」
「王女様……。そうはいかないんです。俺は、この後輩に一言言ってやらなきゃいけないんです」
 そう。それは、バイトの先輩として、友人として。
「後輩――――いままで、サンキュー、な」
「ッ! せ――――――せ、先輩。……ニートのくせに英語ですか」
 すると、後輩の体が淡く発光し、シャボン玉のようになって溶けていく。
「…………俺が、スリーエフに努めるようになった理由、話しましたよね」
「名前のように親しみがあるって――――まさか」

 スリーオフ→ 三オフ→ 三休→ サン休→ サンキュ…………。

「先輩、今までありがとうございました。楽しかったす」
「――――ああ、俺もだ。小学校ぶりに出来たトモダチだった。楽しかった」
 半分以上消えかかった顔でにこりと微笑んだ後輩は、瞳を動かして、王女を見る。
「王女様。約束して下さいっす。宇宙の平穏を乱さない。出したゴミは自分達で回収する、と」
「…………ええ、約束します」
「よかった」
 バイトの休憩室で見せるような、穏やかな表情をした後輩は、ついにひとかけらも残さずに宙へと消えていった。
 

 ――――――――。
「今日から、お世話になります」
 深夜のコンビニバイトは、眠気との格闘だ。たばこを整頓でもしてないと、目蓋が勝手に降りてくる。ひどく退屈な単純作業だ。
「先輩は、もう六年もここのバイトを続けてるんですね。やっぱりここのコンビニに、女王様がお忍びで来るからなんですか?」
「ちげえよ。ただの噂だ」
 まぁ、コンビニはここしか知らないからって、たまに一般人の格好で来てるけどな。
「じゃあ、なんで?」
「――――友達探しだ」
 俺は、たばこのカートンを整理しながら、答えた。
「え? ニートみたいなこと言わないで下さいよ」
「元を付けろよ」
「え…………あ、いらっしゃいませ」
 深夜なんだから、挨拶しなくてもいいのによ。
「あの、たばこ下さい。マルボロ」
「あ、はい。カートンですか?」
「いえ、バラで」
「あ、はい。一パックですか」
 今日入ったばかりの新人は、かなりてきぱきしていた。常にサボることと、たばこを解体することだけを考えている俺とはえらい違いだ。
 あいつも、こんな感じだったかも知れない。
「いえ」
「へ?」
「マルボロ、一本でお願いします」
 俺は耳を疑い。カートンを整理していた手を止めた。
 少しにやつきながら、おもむろにパックを開ける。
「って、先輩なにやってるんですか!」
 なにもやってねえよ。普通だろ、こんぐらい。
 ――――な?
「マルボロ一本どうぞ」
 


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 作中のスリーオフと、大手コンビニエンスストア、スリーエフとは何一つ繋がりがありませんので、あしからずご了承ください。

 僕は映画だと、レオン、バックトゥザフューチャー、ジュブナイル、モスラシリーズが好きです(語れるほどではないですが)

 レオンみたいな、かっこいいロリコン主人公を書きたい! なんて思ってます。
 
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どこかの道上 【律氏】

2011年09月25日 | 短編小説

 こうして、見上げていると、夕映えの空がとても懐かしく思える。具体的な思い出は見えてはこない。ただ、懐かしいという思いだけが、心筋を圧迫して息が辛い。
 背中に敷いた砂利が、重い体をやけに刺してきた。とはいえ、もう、痛みも感じなくなっていたが。
 ここはどこだろうか? ――ここは、どこでもいいのだ。世界のどこかだろうから。
 春から、ある場所を求めて、旅をしてきた私だった。
 だが、きっとそこはどこにもない。どこでもない場所なのだ。
 だから、私はついに地べたに寝転んでしまった。
「おじいさん。こんなところでなにをしているの?」
 転んでいると、耳元でささやくよな声が聞こえた。
 それは、昔なじみだったりっちゃんの声に似ていた。少し鼻に掛かった幼げな声。幼げな声のまま、最後の時を迎え、旅だった。
 臨終の際、りっちゃんは「家に行きたかった」と語ったという。
 娘夫婦と暮らしていた家ではなく、子供時代の思い出が宿る、ぼろっちい一戸建て。りっちゃんはそこへ行きたかったというのだ。何をしに? もしかしたら、遊びたかったのかも知れない。今までの人生を振り返って、それをはにかんでみたかったのかも知れない。
「君は? …………ふふっ、その尻尾は狐か狸の類か? 獣のくせに人語を操るなんて」
「僕は野良犬だよ。森の中で育った野良犬。おじいさんは?」
「ただのじいさんだ。名前なんて無いよ」
「じゃあ、おじいさん。ここへは何をしに来たの?」
「何をしに、か? さぁ、私にもわからないな。ただ」
「ただ?」
「ちょっとした散歩のつもりじゃったんだ」
「散歩をしに来たの?」
「違う、違う。もっと長い散歩だ。終わりは最初から見えていたはずなのに、ここへ来るまでに色々とありすぎて、見失ってしまったんだ。あるいは、散歩をしていることを忘れてしまったのかも知れない」
「おじいさんの散歩は終わってしまうの?」
 ああ、悲しそうな声だ。
 りっちゃん、そんな顔をしないでくれ。
「終わる……のかもしれない。でも、私は道になる。こうして道になるのだ。散歩をしている人の足に踏まれる。――景色になる。誰かが誰かを思う風景の一部になれるのだ。――生まれ変わることではない。私の散歩は、こうして終わってしまうのだから。生まれ変わるなんてあり得ないよ。これから戻る場所もない。どこかへ行くわけではない。散歩の終着点は、みな、どこかの道なんだ」
「おじいさんは、それで幸せなの?」
「いいや。幸せなんてことはないさ。学生時代に愛の告白をしておけば良かったと思っているし、妻子を持てば良かったとも思っている。犬のラピュタには、タマネギを食わせてすまなかったと思っている。異世界を旅してみたかった。飛行機のパイロットになりたかった。北京ダックを食べてみたかった。ああ、後悔は止めどない。じじいになっても、未練たらしいものさ。――なぁ、野良犬くん、君は私の言葉を聞いて、まだ散歩を続けようと思うかい?」
「散歩はしないよ。家に帰らなくちゃいけない。そんな暇はないさ」
「あはは、違いない。さ、家に帰るんだ、そろそろ雨が降る」
「そう? わかった。おじいさんも早く帰らないと」
「そうだな…………」
 冷たくもない、温かくもない雨が頬に落ちる。
 少し苦笑してみたくなるくらい、不器用な稲光が森のどこかに落ちたのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


その昔、僕は詩人になりたかったんです。
僕が小説家を目指しているそもそものきっかけです。
ですから、僕は小説を書く時、もっとも恐れているのは第三者の目です。だって、詩はそもそも他人には理解できないことを、なんとかして言い表そうとしたものですから。一文一文が「意味不明」と詰られていることを思うと、怖くて夜も眠れません。


今回は、小説というより詩です。
小学生の頃は、小説と詩の区別が付かず(今も、だったり)こんな中途半端なものばかり書いてました。
初心忘るべからず、ということで。


しかし、このクールの変わり目は切ないですね。
番組表に「終」の文字を見つけるたびに、うわぁこのアニメも終わるのかぁ、って呟いてます。
始まりがあるものには、終わりがあるということで。

秋は、どんなロリっ娘が出てくるのかな~
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黒猫が秋を吸い込んでいった 【律氏】

2011年09月12日 | 短編小説

 やわい夜風をこすりつけると、少し肌が拒絶を示した。きっとまだ体が季節の仕様になっていないのだ。
 それは、きっと春が来るよりも待ち遠しく、そして、切ない、冬の訪れ
 ねえ夜の散歩に出かけようよ。そう言ったのは、今、コンクリート塀の上を歩いている一匹の黒猫。
 そこは、私の舞台とでも言うように、リズムを奏でるような足の運び方だ。
「なぁ、どこに行くんだ?」
「もうちょっとだよ」
 にひひと意地悪っぽい笑顔を見せた青い目の黒猫は、俺にしか見えない化け猫の少女だった。ある日、いつの間にか、俺の脇にいたのだ。離れろと言っても聞かない意地っ張り、しょうがないので、それからずっと一緒にいた。
 まるで字引に記されていくように、あいつの仕草を、定義づける作業が進んでいく。多くの思い出と共に、あいつの表情が俺の脳裏に焼き付いていった。言葉を交わさなくても通じ合える程度には、字引は完成していた。
 それならわかるだろ、今、あいつがした表情の意味を――――。
「どうして、お別れなんだ?」
「…………私、悲しい顔見せたっけ?」
「笑ってたよ。微妙に左右の口角の上げ方が違ってただけだ」
「それだけでわかっちゃうんだ。悲しいね」
 黒猫は、すごいね、とはやし立てることはしない。
 町が眠っているから、悲しいねと小さく呟いた。
「ついった~。ここだよ、君と私が出会った場所」
 近所の公園。小さな頃は、よく遊んでいたものだけど、あの鉄棒が窮屈になった頃から、訪れなくなった場所。
 黒猫は、ホップステップ、と錆びた電灯が照らす、人工的な日だまりの下に着地した。
 向き直ったあいつは、物理的にも手の届かない場所に行ってしまったことを見せつけるように、じっとこちらを見つめている。かすかに尻尾を揺らしながら。感情豊かな耳は垂れていた。
「ここで、俺達は出会ってたのか……?」
「ごめんね。私、ネコだったから言えなかったんだ。だから、人間になったの」
「…………俺は昔」
 ここで、痩せこけた一匹の黒猫と出会ったことがある。
「あの時はまだ子供だったから、ただの気まぐれだったんだ。野良だから、ただそれだけの憐れみで」
 エサをやったり、毛布をやったり。最後まで面倒を見なくてはなんて、思ってなかった。
「あなたがいなくなって感じたのは寂しさ。だけど、それ以上に楽しい思い出が胸の中で暖かかった。だから、いつか言わなくちゃって思ってたの」
 風が吹いたのだろうか、木の葉が散っていき、それでも俺は瞬きをしなかった。
 人の気持ちも知らずに、あいつは大きく息を吸った。秋の気配を全て吸い込もうなんて、虫が良すぎる。まだ、こっちは冬支度なんて出来てないんだから。
「ありが――」
「言うなッ……それ以上、言うな」
「………………へぇ! 泣いた顔なんて、初めて見た。君には涙なんて無いと思ってたよ」
「――……ぁぁ、俺もだ」
 どこかの道ばたに落としてきたものだと、ずっと思っていた。探すにも当てがないから、見つけようともしなかった。かといって交番に届けるわけにはいかなかった。
「お前のせい…………だ、から、な……」
「いいよ。どんな形であれ、君の中に私が残ってくれて嬉しい」
 くそ、瞬きなんかするな、俺! 生理現象? 知ったことか! 瞬きなんかしたら、こいつは、俺の前から……。
 霞んでいく視界が、一瞬、夜を取り込んで暗くなった。
 次の瞬間には、そこに人の気配はなく。誰それの家の軒下に潜り込んでいるだろうネコの気配なんてあるはずがなかった。もはや、ここには俺しかいない。

 ――――助けてくれて、ありがとう。

 その日以来、秋は一気に深まり、冬が目を覚まし始めた。
 今でも思ってしまう。あいつは幸せだったのだろうか、ということを。
 それを、思い出の中の彼女に問いかけてみるのだが、いっこうに答えは返ってこなかったのだった。
 


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 どちらかと言えば、僕のスタンダードな作風はこれです。
 やっぱり、こういう作品を書いていると、気分がスカッとしますね。
 まぁ、オナニー小説なんて言われても仕方ないことです。

 まぁ要するに、ロリ百合が最強ってことですよ!

 では、みなさん作業頑張って下さい
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日常 SS 【律氏】

2011年09月06日 | 短編小説
『日常 SS』


 今日はゆっこの家で、パジャマパーティー。
 夕食の餃子をゆっこの部屋で食べ、その後、他愛もないことを散々駄弁った。
 午前二時。
 私達は、布団の中に潜り込む。
「それじゃ、電気消すよ」
「うん。おやすみ」
「……おやすみ」
 ――消灯。
 すぐに二人の寝息が聞こえた。
 しかし、私は眠くなかった。最近の徹夜で体が眠ろうとしてくれなかったからだ。
 でも、まあ、一人だけ起きてるのもアレだし。焦らず眠ろう
「これ………………」
「ん、どうしたの、ゆっ――」
「セイヨウカボチャだ!」
 なんだ寝言か。それにしても、大きな寝言だなぁ。
「まったく、ゆっこは、眠っててもゆっこなんだから」
 まったく、もう少しで眠れそうだったのに。
 それじゃあ、今度こそ、スリープインザナイト。
「……ゆうしゃ…………ほうかい」
 まいちゃん? え、なに? 今の寝言? ってか、勇者崩壊したの?
 まいちゃんの夢の中では、何が起こってるの?
「対」
 続いてた――?
 え、でも「対」ってことは「VS」ってこと? ってことは、勇者ホウカイって名前だったんだ。なんだ、よかった。危うく世界が一つおじゃんになるところだったよ。
「まおう…………しょうめつ……」
 究極のカードだよ! 消滅しちゃったよ、魔王!
 いや、魔王ショウメツ?
「対――」
 あ、まだ続きが――。
「セイヨウカボチャだ!」
 なんでだよ! なんでゆっこが横入りしてくるのさ! ってか、なんで二回繰り返したのさ!
 もうっ、まいちゃんも納得したみたいな顔してるじゃん。カード決まっちゃったよ。
 セイヨウカボチャ参入だよ!
「違う。これ…………豆板醤だ」
 どんな間違いしてんだよ! カボチャと豆板醤って、似てるとこ一つもないよ! むしろ、辛みと甘みのハーモニーだよ! 新たな味の発見だよ!
「…………とうばんじゃん……ひめ」
 姫だったよ! 豆板醤、姫だったよ! もういいよ。超展開いらないから。勇者が魔王倒して終わろう。
「は…………ラスボス」
 ネタバレかよ! ま、そもそも、もう展開とか気にしてなかったけど、魔王と勇者がいっこうに現れないんだけど。どんな世界観なのさ。
「ん? 豆板醤じゃない? カッパ?」
 どういう繋がりしてんだよ! もう、豆板醤が何だったか思い出せないよ! もはやゲシュタルトだよ!
「は…………兄さん」
 誰のなんだよ! そのカッパ、誰の兄なんだよ!
「…………魔王……の」
 魔王かよ! 予想外だよ! 色々と予想の斜め上空だよ!
「…………売ると高い」
 もう売っちゃえよ! 魔王の兄、売っちゃえよ!
「買い取れません」
 買い取ってやれよ、そこは!
 あ、いや。でも、まぁ魔王の兄だもんね。しかたないかも。
「………………そこをなんとか」
 粘った! 意外に粘ったよ、この子。
 たぶん無理だよ、まいちゃん。だって、魔王の兄だもん。
「きゅうりがありません」
 まさかの食糧事情だった!
「………………生えます」
 カッパから? 自給自足にもほどがあるよ!
「じゃんけんで勝ったら、買います」
 いきなり運勝負だな!
「………………嫌」
 拒否かよ! 散々粘ってたあれはなんだったんだよ! ほら、なんかゆっこ悔しそうな顔してるよ? 譲歩したあげくに向こうから拒絶されたから、ゆっこ泣いちゃいそうだよ!
「お願い勝負して」
 耐えかねて、あっちからお願いしてきたよ! まいちゃん、勝負してやんなよ。

「――――痛ッ」

 物理的! まいちゃん、寝ながらデコピンって物理的だよ!
 でも、寝ながらデコピンって……本当は起きてるんじゃ……。
「なかなかやるわ、ね。私の左肩の十字傷をピンポイントで抉るなんて」
 ………………ってか、こいつら、本当は起きてるんじゃ。
「………………姫の敵」
「それは、第六天魔王のちか、ら」
「…………売ると高い」
「買い取れません」
 ………………
 …………
 ……


 ぱちっ。
 明るく照らされた部屋の中、壁に掛けられていた時計は、深夜三時を示していた。
「ああぅ、どうしたの。みおちゃん? 電気なんて付けて」
 一人の少女が、電灯のスイッチを人差し指で押さえながら、顔をうつむかせている。
「あはは、まいちゃん。さすがだわ。ぜんぜん動じてないよ」
 無邪気な笑い声と、安らかな寝息がこだました空気は、突如引き裂かれる。

「なんでや――――ねん!」

「うッ」
 一人の少女が放ったそのツッコミは、言葉にしたら言い切れない思いの丈を、全て詰め込んだものだった。
 もしかしたら、これが本当の意味でのツッコミであり、本来ツッコミのあるべき姿なのかもしれない。
 エンド



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 シュールギャグって、ゲシュタルトだね、もはや。
 こんな小説作って、頭をヒヤシンスだよ、もはや。

 ってなわけです。日常だったら、フェっチャンか、はかせだな。麻衣ちゃんがくせ者です。
 今夏最大の思い出は、タンクトップ美幼女の肩甲骨チラでした。肩甲骨って魅惑的だよね。
 では、皆さん、残暑でも頑張っていきましょう。

 ……シナリオ終わんねえぇ

 

 
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ゆるゆりSS 【律氏】

2011年08月23日 | 短編小説


 赤みを帯びた髪をお団子にしている、中学校に上がり立ての少女、赤座あかりは、元気な女の子。
 学校でも有名な良い子。良い子の代表。良い子の代名詞。良い子と言ったら、この子。
 ある日、そんなあかりの下に、小包が。
「なんだろうこれ?」
 クロイタチ宅急便で届いたそれ。要冷蔵というラベルが貼られている。もしかして蟹かもしれない。
 そういえば、結衣ちゃんのとこにも蟹が届いたって言うし、なんてことを思いながら。
 あかりは、その発泡スチロールの蓋を開けた。
 ――思えば、この時、どうしてそんなことをしたのか? なんで、お母さんが帰ってきてから開けなかったのか。自分にもわからなかった。
「う」
 その中に入っていたもの。それは蟹だった。蟹に間違いなかった。
 だが、足一本とは……。
 これは、誰の嫌がらせなのだろうか? 誰かが主人公の座に嫉妬して? まさか?
「おい、もっと喜べよ」
「だ、誰?」
「俺だよ。発泡スチロールだよ。――実はな、俺は、魔術師マーリンの弟子で。この世界にやってきた魔王を倒してくれる魔法少女を探していたんだ」
 あかりには理解不能だった。発泡スチロールが喋っている……。
 そもそも口はどこなんだろう。探してみようかな。
 でも、もし、万が一にでも見つけてしまったら、夢に出てくるかもしれない――それは嫌だなぁ。
「俺は、お前の願いを叶えてやった。だから、今度は、お前の番だ。さ、俺と契約して、魔法少女に――」
「ま、ま、ま、魔法少女だっってぇえええ」
 玄関のドアが、うめき声を上げそうなくらい、勢いよく開かれた。ノブに手を掛けていたのは、目をキラキラと輝かせている少女だった。
 その目と同じくらいの輝きを放っている金髪を、腰ほどに伸ばしている。
 彼女は、あかりの一年先輩、年納京子。
 どうやら、遠くから走ってきたようだ。
「はぁはぁ、魔法少女だって? あかり?」
「え、京子ちゃん?」
「どこ? どこ? あかり! どこにミラクるんがいるの?」
「えっと、ミラクるんじゃなくって、その発泡スチロールが――」
「ぐわはああああああああああああああああ」
 突然の断末魔だった。
「「あ」」
 京子の足下には、踏みつぶされて真っ二つに割れている、発泡スチロールがあった。
「あ……、あかりの蟹の足!」
 あかりは、転げてしまった蟹の足を拾った。
 一本だけだけど、なんだか嬉しそうだ。
「よくぞ、我が正体を見破ったな。小娘ども、かくなる上は、こうしてくれる」
 発泡スチロールが膨張した。
 もしかしたら、湿度か、何かの条件でそうなるのかもしれない、というような膨らみ方ではない。自ら爆発でもしようか、という膨らみ方だ。
 中から、光が漏れてきた。
「ぶっはっはっは! これで、おしまいだ」
「そうはさせない!」
 発泡スチロール大自爆の、強い光に包まれた。
 その時、京子の前に人影が立った。
 クリスマスツリーの先端にあるような星を付けたステッキを振るう。そのステッキから、青白い光が放たれ。爆発を封じ込めた。
「愛と正義の魔女ッ子ミラクるん、華麗に登場! 二人とも。大丈夫?」
「あれ、ちなつちゃん。どうしたの、その格好?」
 あかりの同級生、吉川ちなつが、魔女ッ子ミラクるんの格好をしている。
 もしかして、この前、無理やり着させられたことで、目覚めてしまったんだろうか?
「ほっ――――本物の、ミラクるんだあああああ」
「そう。私は、この世界に現れた、魔王を倒すためにやってきたんです。この発泡スチロールのようなものは、魔王の化身。本体もどこかにいるはずなんだけど。あの魔王は、少女から魔力を搾り取ろうとしていたから」
「うおおお。本物だ!」
「ちょっ、何するの! 離して下さい」
「ミラクるん~」
 抱きついた京子と、ミラクるん(?)の反応を見ていたあかりは、首を捻った。
「もう、やめてって言ってるじゃないですか! 京子先輩!」
「うおぉぉ、ミラクるん~」
 ――あれ? ちなつちゃんだよね?
「おーい、あかりーいるー? って、なにやってんの、みんな」
 また玄関が開いて、京子と同級生の船見結衣が現れた。
 ミラクるん(?)に顔を近づけている、京子を見て苦笑いを浮かべていた。
「あ、ゆいちゃん、どうしたの?」
「ああ、そうだった。実は、蟹がさ」
「蟹?」
 その時、蟹の足が、あかりの手の中でもぞもぞと動いた。
「え?」
 あかりの手の内から逃れた蟹の足は、結衣の頭上に飛んでいき。
 大きなタラバガニに変化した。ハサミを結衣の首筋に付けた。
 結衣は、ひぃ、と短い悲鳴を上げる。
「結衣ちゃん!」
「結衣先輩!」
 無意識に踏み出そうとしたミラクるん(?)の手首を、京子の手が取る。
 振り返ったミラクルン(?)に向かって、京子は首を振る。
「ダメだ! ミラクるん。今行ったら、結衣が危ない」
「でも、どうしたら」
「こんな時こそ、あかりの力を使うんだ」
「え、あ、あかり?」
 ――も、もしかして、主人公にしか使えない強力な力が! そうだよね。主人公なのに、こんな扱いひどすぎるもん。きっと、なにか、特別な力が。
「うん。わかったよ。あかり、結衣ちゃんを救えるなら、なんでもする!」
「良く言った。さすがは、あかりだ」
「それで、あかりの力って?」
「あかりの持つ特別な力。それは――『存在感の無さ(ノーイグジステンス)』! その力は、かつて魔界を滅ぼしたと言われているほどの、強力なもの。自分の存在感の無さを、うつしてしまう能力だ。さぁ、行け、あかり」
 自信たっぷりに人差し指を立てた京子。
 だが、あかりは首を振る。
「無理だよ! 存在感がないのって、能力じゃないもん」
「ええい、時間がない。ミラクるん、そっち持って」
「はい」
「「せーの」」
 右と左から足と手を持ち上げられたあかりは、抵抗も出来ずに、そのまま投げられる。
 さながら、ボーリングのようだった。
「あ、あかり、主人公なのにぃいいいい」

 ――って夢を見たんだ。
 ここは、旧茶道部を占拠して作られた「娯楽部部室」。
 いつものメンバーが暇をもてあまして、机を囲んで、談笑していた。
 そして、昨日見た夢のことへと触れる。
 京子が、そんな夢を発表したのだった。
「おい、京子。本当だろうな、それ?」
「なんで、結衣先輩が蟹に襲われるんですか!」
 呆れ顔の結衣と、頬を膨らませたちなつ。
 気にするなと、京子は、ひらひらと手を振っている。
「まぁまぁ、夢の話しだし。でも、ミラクるんのちなつちゃんは可愛かったなぁ――――って、あかり?」
 部室の端、座敷童のように体育座りをしていたあかりは、膝に顔を埋めながら、
「あかり、主人公だもん。――存在感がないのは、特別な力じゃないもん!」
 ぐすりと目頭に涙を湛えたあかりは、顔を伏せる。
「ああ、すねちゃった。おい、どうするんだよ、京子」
「え? あたしのせい?」
「そうですよ。京子先輩が変な夢を見るから悪いんです!」
 むーと納得しなかった京子だった。
 だが、あかりの様子も気になってしまう。
 しょーないかー、と口付いた京子は、おもむろに立ち上がって、
「あかり。気にすることはないって。ほら、あかりは、個性がないのが個性みたいなとこあるじゃん。……って、違う違う。ほら、こっちで遊ぼ」
 差し伸べた京子の手を、雨の日の犬のような目でじっと見る。
 と、そっと掴んだ。
「うん」
 あかりは立ち上がって、みんなの元に帰る。
 そんなあかりを迎えてくれるのは、みんなの笑顔だった。
 あかりは、もう二度と京子ちゃんにそんな夢を見させないように、精一杯目立とう。そう思ったのだった。

 ぽとり。
 ――――立ち上がったあかりの足下には、蟹の足が落ちていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 百合成分ゼロなのです。サーセン。
 ってか、京子の一人称って何だっけ? 適当に書いちゃったけど……。

 いやぁ、あかりのキャラは動かしやすい。むしろ、動かさなくて良い?
 今度、上げるとしたら、日常のシュールギャグを実験してみたい。

 読んでくださった方には感謝です。ありがとうございました。 
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ロックスターに、俺はなる! 【律氏】

2011年08月07日 | 短編小説

 ――――俺は、ロックスターを目指す男、グレン。
 ロックスターを目指すには、ロックな生き方をしなければいけない。
 俺は、家を出た。無一文で飛び出した。
「衣食住なんて、そんな非ロックな生き方、ロックンロールじゃねえぜ」
そう言って、親に別れを告げた。
しかし、現実は考えているほど甘くはなかった。

家を出て、一週間。
俺は、ノラネコのような生活をしていた。
神社の軒下では、ノラネコにすら小馬鹿にされた。大けがを負ってしまった。まさか、奴らの爪があそこまで凶悪なものだと知らなかった。
たぶんボスだろう、大きな猫に重い猫パンチを食らった。
「待ってよ、オーバーキルだよぉ」
 そう叫んだ記憶がある。

「グレンさん」
 俺は、猫との死闘の後、総合病院を訪れていた。
初診と言うことで、三時間も待たされてしまった。
「二番で先生がお待ちです」
「はい」
 ナースのお姉さんに案内された通りに、眼科の角を曲がり、耳鼻科を通り過ぎた。
そこにあった「2」と書かれた引き戸を開ける。
「来たようだね、グレン君」
「あんたは誰だ」
「私は医者だ」
 医者は白衣を着た、俺よりも若いかもしれない女性だった。青ブチのメガネの奥には、妖しい煌めきが照っている。
「そうか、医者か。医者がなんのようだ!」
「君は、ここに何をしに来たんだ!」
 無論、治療だ。
そんなこともわからないのか、医者のくせに。
「まぁ、閑話休題だ。率直に言おう。君は、あと三時間の命だ」
「なんだと」
「ノラネコの爪には細菌がたくさんいるんだ。残念だが、もう君を治す手段はない」
「なんだと」
「そこでだ、一つ提案がある。君は、ロックな生き方をしたいらしいな。その命、地球のために使ってみないか? 今、世界は破滅の危機に瀕している。宇宙から小惑星イトカワが、地球を目がけて飛んできているのだ」
「なぜ、イトカワが」
「はやぶさばかりが注目されて嫉妬したらしいのだ。自分も擬人化されたかった、萌えっ子フィギュア化されたかった、と」
 イトカワのやつ、地球に突っ込むなんてバカなことをォ。
「わかりました。俺の命、ロックに散らせてみせます」
「やってくれるか。では、このNIZT爆弾をイトカワに設置してきてくれ。亜光速ロケットはこちらで用意する」

 3、2,1――――。
地球を離れたロケットは、俺を乗せたまま、亜光速に突入した。
周りが、極度に圧縮されたように見える。
「グレン君。聞こえるかい?」
「はい」
「よし。とりあえずは打ち上げ成功だ。こちらの指示通りに行動してくれ」
「わかりました。ドクター」
「むっ、そろそろ到着するな」
 ロケットが進路を変えたことがわかる。
おそらく、小惑星の周りを回っているのだ。
ドンッという衝撃と共に、ロケットのエンジンが止まった。
「ドクター、イトカワに着地しました」
「では、爆弾を設置してくれ」
「ラジャー」
俺は、ロケットから出て、黒い箱『NIZT爆弾』を設置する。
「ドクター、爆発させますか?」
「まだだ、まだ早い」
 爆発を待つ必要がどこにあるのだろう。俺は、そう思った。
だが、きっと、医者は考えなくてはいけない問題があるのだろう。倫理とかな。
「――――ぐ――グレン――さん」
 声が聞こえた。小さな少女のような、可憐な声だ。
 誰かが、俺を呼んでいる。
「誰だ! ………………まさか、イトカワ、お前なのか」
「――グレンさん、私が色々と迷惑をかけてしまったようで――すみませんです」
「すみませんって……、お前は、地球に一矢報いるために、衝突しようとしたんじゃないのか?」
「違います。天体の運行は、私の意思ではどうにもなりません。きっと誰かが操作したのでしょう」
「……誰か?」
「はい。ですから、わたしはここで、自爆しようと思います」
「だ、ダメだ! 俺は、お前が地球に衝突しようとしていると聞いてきたのだ。地球のみんなを守るために。しかし、お前が原因じゃないのだとしたら、俺はお前を救いたい」
「いいんです。わたしが、自爆すれば、地球の皆さんは救われるんです」
「いや、何かあるはずだ。……お前を救うための方法が」
「もう時間がありません。早く、わたしから脱出して下さい」
 俺は首を振った。
「ダメだ!」
 俺は、NIZT爆弾を地表から外した。宇宙空間に向かって投げる。
NIZT爆弾は、宇宙の彼方に消えた。
「俺が、お前の軌道をずらす!」
「ダメです。危険です」
「もとより、俺はもう長くないんだ。お前を助けることが出来れば、それがなによりロックなんだよ」
 俺は、ロケットに乗り込む。エンジンを再点火させる。
「行くぜえええええええええええええええええええ」
 ロケットの先端をイトカワにぶつけた。ロケットの推進力で、イトカワの軌道をずらすのだ。
「グレン君。何をしているんだ!」
「ドクター、俺、自分なりのロックを見つけました。守りたいと思ったやつを、命がけで守ることです」
 通信機を握りつぶす。
「ロックだぜええええええええええええええええええええ」
 視界が霞む。
もうちょっとなんだ、頼む、俺のロック魂。最後に力を見せてくれ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……お……ぉ……」

 ――イトカワ、お前に会えてよかったぜ。

「グレンさん、やりました! 軌道がずれました。グレンさん……? グレンさ――――ん」

 地球――――総合病院。
「作戦は失敗です。ですが、イトカワは、地球にぶつかる軌道をずれました」
 大きな猫が、医者に向かって結果を報告した。
 椅子に深く座って、背を持たれていた医者は、深くため息をついた。
「いい作戦だと思ったんだけどなー。NIZT作戦。つまり、日本以外全部沈没作戦」
「グレンという若者に、猛毒を仕込むまでは成功だったんですけどね」
「イトカワを、地球にぶつかる軌道まで誘導するのも成功したのになー」
「あとは、イトカワを爆発させて、その隕石によって、日本以外の国が全て沈没すればよかったんですけど」
「人生うまくいかないなー」
「今度は、ロックとか、バカみたいなこと言い出さない奴を連れてきましょうよ」
「しかし、バカじゃないと、この作戦バレちゃうしなー」
「そうですねぇ」
「それより、総理大臣になんて言おう。人選ミスでしたって言うかー」
「ロックが悪いと言うことにしましょう」
「そうだな。まあ、今夜は、星空観察でもするか」
 目頭を揉みほぐしながら、医者は、バルコニーに出る。天体観測が好きな医者専用の受診室には、豪華なバルコニーがあったのだ。
「星って綺麗だな。あ、流れ星。綺麗だなー」
 それは、どんどん近づいてくる。
「ほ、星? いや、あ、あれは、NIZT爆弾!」
グレンの放ったロックの魂は、日本を壊滅させるほど、大きな星(スター)だった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 夏っていいですね。
 白いワンピースとか、麦藁帽子とか。
 ……危うく付いていきそうになってしまった。

 しかし、小さくてかわいいものは、触れるよりも、遠くから目を細めて見ましょう。それがロリっ娘への接し方の所作です。
 そして、妄想。少女を悪漢から救い出して、そこから始まるラプソディー。名前を告げずに去るところまで想像できれば、中級者。
 それが前世からの許嫁であったというところまで想像できれば、上級者です。
 気をつけて欲しいのは、彼女たちは、絶対に触れられない存在であることを自覚することです。妄想するのみです。
 いいですか、ロリっ娘は、NOタッチ! NOリターン! ですよ。

 ――僕らが憎むべきは、児童ポルノ禁止法ではなく、少女達を脅かす悪い大人達なのです。

 以上です。
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ヌイグルみ同好会 【律氏】

2011年08月04日 | 短編小説


 ここは、とあるメルヘンの世界。
 午後のティータイム。紅茶を飲みながら、ヌイグルミを愛した少女は思いました。
 ヌイグルミこそが正義である。それ以外は全て敵だ。こうなったら、この世の生きとし生けるもの全てを抹殺しよう。この偉大なヌイグルミの力で。


 ――ヌイグルミ帝国。
「アイル、ヌーイグルミ様。アイル、ヌーイグルミ様」
 帝国には、朝十時に王室前の広場に集まり、王座にいる総帥(ヌイグルミ)を拝めなければいけないという決まりがある。
 今日の総帥は、クマのヌイグルミだ。昨日はネコのヌイグルミだった。
 総帥は毎日替わる。全ては、少女元帥の気まぐれだった。
 ――くそ、なにがクマのヌイグルミだ……。バカにしやがって。なんで、あんなものに従わななきゃいけねえんだ?
 帝国の敷く圧政に耐えきれなくなった青年がいた。ひろしだ。目深に被った青い帽子が、トレードマークだ。
 ともかく、こんな政治はごめん被るぜ。
 朝会も終わり、家に戻ると、宝箱からトカレフを取りだした。
「よし。このソ連軍が開発した自動拳銃で、クマのヌイグルミなんてイチコロだぜ」
 家を出るとき、母さんに引き留められた。
「これを持って行きなさい」
 小さな袋に入ったそれは、おいしそうな団子だった。
「母さん。まさか、これはきびだん――」
「ホウ酸団子よ。鼠退治したときの残りよ」
「オーケーだぜ。じゃ、行ってくるよ」
 ひろしは、城塞に向かって歩き出した。
 家から出て、数分。公園に通りかかったとき、イヌにあった。
「おお、うまそうな団子だ。それをくれたら、お礼にこれを上げよう」
「それは、89式小銃。イラク派遣の時、自衛隊が使っていたというあれか」
「その通りだ」
 ――ひろしは、89式小銃を手に入れた。
「では、その団子をおくれ。くれたら、君に付いていってもいい」
「そうか。では、あげよう。取ってこい」
 団子を一つつまみ出した。投げる。
 イヌの本能だろうか。イヌは団子を追いかけて、茂みの中に駆けていった。見えなくなる。そんなに遠くに投げたつもりはなかった。だが、イヌはとうとう帰ってこなかった。
「む。急がないと日が暮れてしまう。急ごう」
 商店街に差し掛かると、サルが現れた。
「お、その団子うまそうだな。それをくれたら、これをやるよ」
「それは、軍用拳銃シェアNO1のコルト社のリボルバー」
「そうだ。コルトパイソンだ」
 ――ひろしは、コルトパイソンを手に入れた。
「さぁ、くれよ。その団子。くれるなら、ついていってもいいぜ」
「そうか。では、あげよう。取ってこい」
 つまみ出した団子を、本屋の脇に生えていた木に向かって放り投げた。
 サルは、木を上る。がさがさと木の葉の中に隠れた。そして、ぽとりと落ちてきた。
 なるほど、これが猿も木から落ちるというやつか。
「む。急がないと日が暮れてしまう。急ごう」
 ひろしは、ついに城塞までやってきた。この門をくぐれば、クマのヌイグルミがある。
 ――よし。
 気を引き締めていると、キジが飛んできた。
「おや、その団子おいしそうですね。それをくれたら、これをあげましょう」
「それは、無反動砲と、ロケットランチャー、両方の特性を持つと言われているパンツァーファウストⅢ」
「その通りです。ジープにも搭載可能ですよ」
 ――ひろしは、パンツァーファウストⅢを手に入れた。
「では、いただきましょうか。その団子を、いただければ、お供いたしましょう」
「そうか。では、あげよう。取ってこい」
 団子を投げる。キジは飛べると思って、少し高く投げすぎてしまった。城門を越えてしまう。
「――しまった」
 その時には、もう遅かった。団子を追いかけたキジは、上空で撃たれてしまったのだ。
「くそぉ、よくもキジをおおおおおおおおおおお、許すまじ」
 ひろしは、パンツァーファウストⅢを構えた。
「――ふぅぁいやあぁ」
 ものすごい爆風と、鼓膜を揺さぶる爆発音。煙が風にながれる。城門は壊れていた。
「キジ、お前のおかげだ。お前の死は無駄にしないぞ」
 怒りに燃えたひろしは、殺戮の限りを尽くした。最後には、敵が怖れをなして逃げていくほどだった。
 まさに、ここは戦場。そう、ひろしは、一人で帝国に戦争を仕掛けたのだ。

 ――そして、最上階。
 開かれた空間。帝国全土が見渡せるほどの、開放的なバルコニーがある。家具は少ない。床に敷かれた絨毯の上には、椅子に座らされていたクマのヌイグルミがあった。
 ――やっと見つけた。
「昨日だったらお前を殺そうとは思わなかったさ。日が悪かったと観念しな」
 ひろしは、笑顔を崩さないクマのヌイグルミに、ゆっくりと近づく。こめかみに、トカレフの銃口を当てた。
 引き金を引こうとしたその時。
「観念するのは、あなたよ」
 鈴の音のような透明な声がした。
 真後ろに気配があった。首を回して見る。
 そこには、ウサギのヌイグルミを抱えた、少女が立っていた。プラチナブランドの髪と、意志の強うそうな青い瞳。
 片手で、デザートイーグルを構えていた。
 ひろしは、銃を床に落とす。
「出会い方が違かったら、食事にでも誘ったんだがな。少女元帥」
「ヌイグルミを撃とうとする奴なんて、お断りよ」
「はは。残念だ」
 一瞬の隙を突いて、ひろしは、腰に隠してあったコルトパインを取り出した。
「死ねええええええええ」

 だが、ひろしは撃たれた。

「お、お前は、イヌ……」
 少女の背後で、拳銃を構えていたのは、今朝会ったイヌだった。
「お前がなぜ……」
「残念だったな。私は、帝国親衛隊執行部隊、通称SSVTが一人、イヌだったのだ」
「しかし、お前は団子を食べたはず」
「ふふ。考えが浅いな。食べんよ。なにせイヌだからな。よし、と言われるまで、食事には手を付けないのさ」
「ば、ばかな」
 冷たい鉛が体の中にある。イヌの放った凶弾だろう。くそ、こんなところで……。


 終わった。やっと終わったんだ。
 イヌは安堵のため息をついた。
「イヌ。ご苦労様でした」
「いえ、少女元帥様。今回は、諜報部が情報を掴んでくれたおかげです。しかし、惜しい友を二人も失いました」
「彼らのことは、丁重に葬ってあげましょう」
「しかし、その帝国自爆装置を起動させなくてよかったですね」
「ええ」
「なるほどな」
 イヌは、まさかと思った。たしかに弾丸は、胸を抉ったはず。生きているはずがない。
 そこには、死んだはずのひろしが立っていた。こちらを見てほくそ笑んでいる。
「なぜだ……」
「残念だったな。俺は、ただの人間じゃねえ。いや、人間じゃない」
 ひろしは、目深に被ったトレードマークの帽子をはぎ取った。
「お、お前は……」
 イヌは愕然とした。ひろしの頭には、ネコのような耳があった。獣の耳。いや、ヌイグルミの耳。
「そうさ、俺はネコのヌイグルミだ。ネコのひろし。猫ひろしだ!」


 ひろしは、腰に隠してあった89式小銃を取りだした。連射した。
「がっはははははははははははははははははははははははははははははははははは」
 弾が切れた。
 辺りは静寂に包まれる。もう誰も息をしていなかった。
「猫を総帥にすればよかったんだ。クマなんかを総帥にするから」
 ひろしは、帝国自爆スイッチを拾い上げた。
 最後にもう一度、帝国を見渡す。
「ヌイグルミの国か。いい国だったのかもしれない」
 スイッチの感触は、柔らかなものだった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 人生の迷子です。
 推敲をしてないので、誤字脱字があったら申し訳ないです。
 あと、物語が破綻してるのは、仕様です。
 なんか、萌えを書きたい。
 ああ――ダリアン。ダリアン。ダリアーン。
 あ! 湯音が本命です。 


 アンチ・マテリアル・ライフルが欲しい。今日この頃。

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魔王と勇者と姫と妹 【律氏】

2011年07月16日 | 短編小説


 ――――世界は、魔王の手に落ちた。


 そんな手紙が届いたのは、ちょうど、十五回目の誕生日の明くる朝だった。
 俺は、いつもの日課で新聞を取りに行った。その時、この茶色い封筒を見つけたのだ。
 焼き印に記されていたのは、真正マハト王国のエンブレム。三本の剣が、悪魔を貫いている絵柄の紋章だった。かつての大戦が、この三本の剣によって、終結したことを物語っているらしい。
「……タスケテクダサイ、ユウシャヘ、ヒメヨリ、だと」
 しかし、エレムは勇者ではなかった。きっと郵便屋が間違えたのだろう。だから、民営化をするなとあれほど。
「こっちは忙しいんだよ。魔王なんか知ったこっちゃ無い!」
 エレムは、しがない木こりだったのだ。
 今日も、木を切りに行かなければいけない。
「妹の身代金を稼ぐためだ」
 ある日、妹は、小鳥たちと山で遊んでいた。そこに突然現れたクマさんによって、誘拐されてしまったのだ。そして、現在、俺はそのクマさんに身代金を要求されている。払うまで、妹は解放してくれないらしいのだ。
 だから、俺は、今日も山へ出向く。金を稼ぐために。妹を救うために。
 山に到着してから、何時間が経った頃だろうか。夢中で木を切り倒していた俺は、ふと集中力が途切れた。空腹だということに気づいた。そういえば、もう太陽も真上だ。
「ふぅ」
 切り株に腰を下ろした俺は、唐草模様の風呂敷包みから、アルミホイルで包まれたおにぎりを取りだした。
「これが、あいつの握ってくれた、最後のおにぎりか。もう一年以上経つけど、あいつは元気かな?」
 誘拐された日の朝、妹が俺のために握ってくれたおにぎり。
 俺は、がらにもなく、感傷に浸っていた。
「へっ、こんなことをしている場合じゃないな。早く食べて、仕事に戻らなきゃ。そして、身代金を作って、あの悪党から妹を解放しなくちゃ」
 アルミホイルから取りだして、おにぎりを口元に持ってきたとき、ふいに突風が吹いた。
「うわっ」
 突風は、おにぎりを吹き飛ばした。手元から離れたおにぎりは、ごろごろと転がっていく。
「しまった、おにぎりが穴に落ちた!」
 その穴は、べらぼうに底が見えなかった。もしかしたら、底なしの穴なのかもしれない。だが、俺に迷ってる暇はなかった。勢いよく、その穴の中に飛び込んだ。
 穴は徐々に狭まっていく。
 これ以上狭まったら、つっかえてしまうと思った。だが、奇跡が起きた。すぽんと、向こう側へ抜けたのだ。
 向こう側は、暗色系のカーテンで部屋の壁が覆われている広い屋内だった。壁際に沿って、あらゆる動物の剥製が整列させられている。何とも不気味な部屋だ。俺は、冷や水を浴びせられたような錯覚を覚えた。気味が悪い。
「貴様! 誰だぁ!」
 野太い声。
 光源の当たらない暗闇に誰かがいる。シルエットが見えた。
「貴様こそ誰だ! ――そして、ここはどこだ?」
 俺は、まるで記憶喪失者のような言葉を吐いていた。ここがどこなのかが知りたい。俺は、奴の返答を待った。
「我が名は、クーランデルマーグ三世。世界に圧政を敷く魔王だ」
 光源の当たる場所へと、出てくる人影。
 真鍮の鎧をまとい、見上げるほど大きな男だった。爪と牙は、わずかな部屋の光源を反射させていた。身の丈は、俺の倍以上はある。
 そして、はっきりとわかった。
「お前は、まさか……」
「そうだ、お前の妹を誘拐し、お前に身代金を要求している張本人だよ」
「やはり、そうか。クーランデルマーグ三世。略して、クマさん!」
「その名前で呼ばれるのは久しぶりだ。まだ、俺が野生の熊だったときのあざなだ。しかし、俺はもはや魔王。格の違いを見せてやる!」
 俺は、クマさんの毛深い腕から逃れるために、回転受け身をした。しかし、受け身はよけ技ではなかった。蹴りを脇腹にもらう。
 ひどい激痛で、意識がもうろうとした。
「これでトドメだぁ!」
 そんなクマさんの勝利を確信し高揚した声が聞こえた。
 そのとき、目の前に落ちているおにぎりが見えた。妹が一生懸命握ってくれたおにぎり。そう、一年前のおにぎり。
 俺は、無我夢中で手を伸ばして掴んだ。頬張った。
 すると、世界がかすんでいく。かびのにおいと、砂利の味が混じり合い、なんともいえないハーモニー。俺は、これを知っている。そうだ、これこそ、あいつのおにぎりの味だ!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 俺は、出来るような気がした。クマさんを倒せるような気がした。クマさんを倒すんだ。
 飛びかかって、クマさんの腰に手を回した。
「あ、てい」
 投げ飛ばす。
「うわわゎゎーああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 クマさんは、強固な石壁をぶち破り、青空の彼方へ飛んでいった。
 クマさんは去った。俺は、あれほどの強大な敵を倒したんだ。虚脱感と達成感にさいなまれる。空を見上げた。クマさんが通過していった開け放しの天窓から、レンブラントの描いた名画のような、淡い光を感じる。
「……終わったのか」
 そう、終わったんだ。
「お兄ちゃーん」
 妹の声がする。振り返ると、ポニーテールの小柄な少女が駆け寄ってくるのが見えた。妹だ。
「妹! 元気だったか?」
「うん。平気だったよ」
「どうやって、ここに?」
「あの、お姉ちゃんに助けてもらったんだ」
 妹は、人差し指をたて、背後の暗闇を指さした。
 クマさんが開けた穴から光が漏れる。その光に当たり、人物像があらわになった。白い長髪の、大人の女性。静かなほほえみをたたえながら、近寄ってくる。
 俺は、どうやら一目惚れしてしまったらしい。
「い、妹を助けてもらったみたいで」
「いえ、お礼を言うのは、こちらですわ。よくぞ、魔王を倒してくださいました。ありがとう、勇者様」
「まさか、あなたは、姫様」
「はい。かっこよかったですよ。勇者様」
 そうか、そうだったのか。これが運命というやつか。
「あははははっは――――ん? ぶくわゎああああ!」
 視界がかすんでいく。
 もしかして、俺、死ぬのか?
「お、お兄ちゃん。どうしたの、なんで倒れるの?」
「し、心配するな、妹。きっと、ただの食あたりだ。お前の握ったおにぎり、おいしかったぜ。……姫様。こいつのことよろしくお願いします」
「……勇者様!」
「達者で暮らせよ、アディオ……す……」
 かすむ視界の中で、俺は、誰よりも愛しい、我が妹に触れた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


お久しぶりです。
出不精ですみません。サークルに顔を出せずすみません。生きていてすみません。
今期はロリっ娘いっぱいで嬉しいな、とか思ってすみません。ダリアンとか、湯音とか、詩緒とか。ジャスティンマイハート!
ピングドラムと、シュタゲのダルに注目してます。

先日、調べていたんですが、Aカップって、トップとアンダーの差が10センチくらいなんですね。意外に、あるんですね。

あの、皆さん、暑いですが熱中症に気をつけて、作業頑張ってください。
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幸福を祈ること【律氏】

2011年03月22日 | 短編小説

 物語を、救おうとする手立てを考えなければいけない。
 真冬の太陽のような外灯と、けれども頬に当たる風は薄ら寒い春先の風で、俺は由美の隣りで、缶コーヒーの湯気に視線を落としていた。あったかいは、嘘で、手で持てないくらい熱かった。
 住宅地の道路の片隅に二人は立つ。
 ああ、これが世界の終わりだったら、きっと一枚絵になるだろうにな。
 俺は、今日が平凡な世界の切れ端であることの詰りを、夜空に吐き晴らしていた。
「物語はその本質、悲劇にしかなりえない」
 由美はそう呟く。
「物語は終わりが来るのだ。出会いというものが、幸せを作るのであれば、別れとは悲劇を生み出すものでしかないのだよ。わかるかい、悠大君?」
「わかんねえな、そこまで考えたこともないな」
 由美は真っ暗な向こうに視線を向けながら、
「今も、今にもこの世界を詰ろうとしている人がいるとする。その人は悲劇の主人公だ。そして、クライマックスも間近、彼は人生最大の絶望と対峙するだろう。そんな時、私は思うのだ。……――ああ、物語を救わねばならない」
「……だが、その物語の中には声が届かない」
「そうだッ。だから、私はそこで物語をやめた」
 悲しそうにしていたはずの由美は、不自然に星を見つめた。
 つられて、俺も見る。
 星は瞬いていた。
「だがな、そこでふと過ぎるのだ。もし、彼が何かの拍子に一発逆転の好機を得たとしたら。それは夢オチで、目を覚ませばうるさい目覚まし時計が鳴っていたら。私はそう思うと急に心が軽くなる。――――良かったぁ、と思える」
 星空の青が急に速度を変えて迫り、透明なゼリーのようにしなやかに揺れた。
 それはきっと見え方なのだ。
 由美が見ている世界。
「小さな幸せは、本当に小さい。だが、どんな悲劇的な状況でもそれを思っていれば、ハッピーエンドは出来上がるのだ、絶対に。そうだろ、悠大君」
 無邪気な八重歯を覗かせて、自論を展開し終えた由美は、息も上がっていてどこか照れていたようだった。
 まるで、ルーベンスの『キリスト降架』を見たような。
「人が幸せを思う想像力は奇跡を起こすのだよ、悠大君」
 世界のしじまにいることさえ忘れるような、ダイアローグの足跡だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 二十分で何か書けるかな、と思い立って書いたものです。
 
 実家に帰っておられる方も多いと思いますが、サークルの皆様はご無事でしょうか?
 こんなことを自分が言うのは厚かましいのですが、無事である方は、どうかコメント下さい。

 皆様と元気でまた会えますように祈っております。
 
 余震が続いているそうなので、ご注意ください。
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新年明けましておめでとうございます【律氏】

2011年01月21日 | 短編小説

 冬の寒さなんてミカンの皮をつけとけばいいんだよ――。
「そんな傷口に塩塗りこんどけみたいな」
「それ、痛そぅ」
 ニス塗りの机にピンポイントで反射する午後11時の太陽は西とも東とも着かずに揺れている。その傍らに映ったのは、西野由紀のハバネロ増量激辛スープに舌をつけたような、どうしようもなく崩れた顔だった。
「民間療法だからな、こんど試してみろよ」
「あたし痛いのイヤだよ」
 冬休み中にクリーニングにでも出したのか、ピンと張った冬服の黒いセーラー服に、年が明けたからってわざわざ新調したわけではないだろうが真新しく見える赤いリボンを結ってある――こいつはそこまで年明け信仰がある奴じゃないから、面倒くさがり屋だし。
 教室はがらんと静寂していた。
「みんな遅いね」
「年明け初登校だってのにな」
「もう、最後なんだね」
「ああ、あと3ヶ月もないか」
「小中高って一緒だったのに、なんだか変な気分」
 西野は机の上に腰を乗っける。スカートの裾がヒラリと揺れてさらりと落ちた。
「別に死に別れってわけじゃないんだからさ。家だって近いし」
「でも、会う時間は圧倒的に少なくなっちゃうよ」
「圧倒的にか?」
「うん。圧倒的に」
 キラメイテなんて降り積もった雪のようで、そんな表現を使いたくなかった――いつかは熔けてしまうから。熔けて消えてしまうから――俺の前から消えてしまう。
 しかし由紀の潤んだ瞳は綺麗で儚くてキラメイテ。
「……それはイヤかもな」
 由紀は唐突に背を向けると腕を顔にこすり付ける。
「なーにがイヤかもよ、湿っぽいよ。まだ三学期は始まったばかりなのに」
 ガタン。
 机が呻き、由紀は教室の床に着地する。
「由紀」
「え?」
 俺はどこかへ歩き出そうとする由紀の手を捕まえた。
「卒業したって、どうしたって、ずっと一緒だ。これからもずっと」
 由紀はしばらく不思議な顔をして俺の顔を見つめていた。
 時が止まる――。
 それは物理的にオカシな現象。そんなことありえないなんて言えないけど、きっとアインシュタインが宇宙項をつけてしまうくらいアリエナイ出来事だったんだ。
 だから、俺は西野の手を離せなかったんだろう。
「うん。ずっと!」
 動き出した時の中で西野は、バカバカしいくらい、その一瞬を愛しむかのように笑った。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  
 雪が解けたら春になるんです、なんセリフを思い出しながら書いた今年、初掌編です。

 なんだかみんな忙しいようでブログには足を運ぶことが出来ないようですが、ボクは大丈夫。だって今年大学辞めて、来年受験しようと思っているので\(^▽^)/
 今、フリーです。今年は勉強しながらラノベを書きまくるぞ。

 今年受験しようと思ってたんですけど、12月まで入院してたのはキツカッタ。なんか一年に二回も長期入院したなんて運が無さ過ぎた。今年は了法寺にでも行って来ようかな……。

 しかし青少年健全育成条例ってなんなんすかね。健全ってなにさ。そんな人が考えた枠に当てはめて育成なんて言われても、そんな生きにくい世界は笑顔を殺すだけですよ。マンガやアニメに救われたという経験がある人はボクだけじゃないはず。
 アニメ見た人が全員犯罪者になるわけじゃないですし、それなら小説や映画、ドラマの模倣犯等なんかだって同じく規制対象になるでしょう。芸術を一つの視点だけで危ない物なんて決め付けるのは良くないデス。
 規制は規制を生むだけですしね。

 それにしても、VitsのCMのアリエルちゃんかわいかったなぁ。
 まだ六歳だって。天才子役の芦田愛菜ちゃんと同じくらいかなぁ。
 あれ、説得力無くなった?
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クリスマスが近いので、短編小説 【律氏】

2010年12月21日 | 短編小説
『猫とクリスマス』


 猫の尻尾の中にはクリスマスが詰まっているのだよ。
 西宮の言葉には真実味があるようで、その実なにも意味がないことがわかる。イルミネーションの駅前を歩く猫を見つめて言うのだ。
 彼女の前には僕とコーヒー。湯気が左右に揺れて、僕の縦じわの刻まれた眉間を隠す。
「クリスマスってなんだよ」
「君は12月25日も知らないのかね」
 やだやだやだね、と言う。
 僕もやだやだ。ふるふる首を振ると、振り返された。
「君はクリスマスがあんな赤服の白髭に詰まっているとでも思ったのかね。あれはただのビール腹だよ。探ったって腹黒しか出てこない」
「サンタクロースをそこまで罵倒すること無いだろ。猫はクリスマスと関係無いしな」
「それこそ、冒涜だよ。猫への冒涜だ。猫はあんなに愛嬌を振りまいて、今日のクリスマスを盛り上げようとしているのに」
「なぜ猫?」
「ん。猫が好きだから」
「お前の好き好きじゃねえか」
 特に尻尾の方がね。
 と。
「とにかくクリスマスは猫に限る。私は猫が好きだ」
「そりゃ、よかったね」
「ところで君は猫が好きかい?」
「どちらかといえば、犬派だな」
「猫の方が好きだろ」
「決め付けんな」
 ここが猫カフェってことを忘れるんじゃない。
 と。
「なににせよ、クリスマスは好きなものと過ごすのが一番さ」
 西宮は言って、足に擦り寄ってきた斑の猫の尻尾を掴む。
 ニャーと牙をむく猫のことなんてお構いなく、頬を寄せていく。
「なぁ、それだと俺もその枠内に入るんだが、いいのか?」
「なんか言ったか?」
「なんでもねえ」
 ため息は季節がら白く濁っている。外に出ればもっとだろう。 
 その中に今の自分の想いを見つけようとして、透かして西宮の笑顔が見えた。
 あまりに無邪気だったのでほとほとからかう気にもなれない。
 今日は、好きなものと過ごすのが一番か。言ってくれる。
 猫の尻尾はぐりゃりと曲がり、西宮をまた笑顔にする。見惚れてしまう。
「もしかしたら、猫の尻尾には本当にクリスマスが入ってるのかもな」
「もしかしたらじゃなくて、絶対なのさ」
 自信を表すように胸を張った西宮の手の中で、諦めたようにぐったりとする猫がもうどうにでもしてくれと言うようにニャーと啼いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ああ、寒い。
 今年は夏、あんなに暑かったのに。今年の漢字『暑』だよ!
 なんだか東京都の条例も通ってしまうみたいで嫌なニュースばっかの年の瀬。
 みなさんはどうお過ごしですか?

 なんだかんだ、もう幾つ寝るとお正月です。
 風邪を引かないように気をつけてください。では。
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月に兎を探して【律氏】

2010年12月11日 | 短編小説
 駅前広場の時計の時針が、月を透かして23時を見る。
 年が明けるまで、もう1時間もない。
「ちくしょう。最後まで面倒かけやがって」
 息が切れてきた。足もほとんど動かない。
 あいつの行きそうなところは大体探した。
 探していない場所といえば、あそこだけ。
「いてくれよ」
 雑踏に捨てられた空き缶と一緒に、雪が寄せられている。
 歯を食いしばり足に鞭打つと、俺はそれを蹴散らし、走り。
 そして、辿り着く。
 小さな神社。
 名前も縁も知らない。
 わかっているのは、ここがあいつと会った最初の場所で、別れの場所ということだけだ。
 “雪が積もっていませんね”
 彼女の言葉が鼓動に重なり、浮かんでは消えていく。
「白兎」
「……慎也さん」
 まるで、かくれんぼだ。
 鬼に見つかってしまったように悔しげな表情を浮かべた白兎は、月を見上げる。
「皮肉ですね。来年は兎年だというのに、私は空へ戻らなければいけない」
 赤い瞳を、濡れた睫を俺に向ける。
「あなたと……別れなければいけない」
「もう一緒にはいれないのか」
「ええ」
 わかっていた。
 だが、口が勝手に動いた。
 白兎はあっけなく言う。それとは裏腹、口元が震えていた。
 俺は雪の残照のような儚かさを見つめた。
 いつまで見つめ合っていたか。このまま、世界が止まればいいのに。唱えれば願いの叶う魔法の呪文があれば、なんでも代えるだろう。
「あ……」
 頬に垂れる涙の雫が光る。
「白」
 村雲に隠れた月は、腕で拭う姿の彼女を消してしまうようで。
 思わず抱き寄せた。
 腕の中で震える体はひどく切なくて。自然と涙が溢れてきた。
「わたし、忘れません」
「俺もだ」
 明くる年まで、あと数分。 
 白兎と別れるまで、あと数分。
「信也さん。最後にお願い聞いてくれますか」
 こくりと頷く。

 二人の影が重なる。
 彼女の背伸びが彼の唇に届く時、月光が照らし出す。
 世界は年を跨ぎ、人の運命は廻り続ける。   



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 来年は兎年ですね。
 ということで、兎をモチーフに。
 ヒロインを雪兎にしようかと思ったのですが、そうするとカードキャプターさくらのあのキャラのイメージがインサートしそうで。

 もうすぐクリスマスですね。
 ま、関係ないですけどね。
 
コメント (2)
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