ネイサン・ダニエルとダンエレクトロ小史(6)

2019-10-08 19:10:43 | Dano Column
最初期のモデルを除き、すべてのモデルに搭載されたリップスティック・ピックアップ、リラがモチーフとされている優美な曲線を持ったロングホーン、コカ・コーラのボトルを逆さにしたようなコーク・ボトル・ヘッド、当時は決して希少材ではなかったブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)を使用したフラットな指板、腎臓やアシカのような形をしたバイオモルフィックなピックガード、アルミニウムのナット、ボリュームとトーンが二段になったスタックノブなどといった外見上のことから、ネックの仕込み角を調整できるティルトシステム、弦を面でとらえる特殊なブリッジにより、音のサワリを実現したエレクトリック・シタールなど、その独自性は多岐にわたり、単なる初心者向けの低価格ギターとかたづけることのできない創意工夫に満ちている。
 
ダンエレクトロのギターのデザインは時系列でとらえれば、シングル・カッタウェイ(Uシリーズ)からダブル・カッタウェイ(ショート・ホーン)へ、そしてホーン部がより鋭くなった(アンプ・イン・ケース・モデル)というように、おおむね進化論的であるとみることができるが、形態学的にとらえれば一九六三年につくられ、徹底的に単純化され、直線的な形状を持つPro1を原型(Urdano)としたメタモルフォーズととらえることもできる。

ダンエレクトロが製作したモデルで最も売れたものはギターケースにアンプを組み込んだアンプ・イン・ケースといわれるものである。これこそが、ジョゼフ・N・フィッシャーが望んだギターであり、ダンエレクトロはその要望に見事にこたえたのであった。

初心者向けのギターはスチューデント・モデルと呼ばれる。ギブソンやフェンダーをはじめとするギターメーカーはプロやアマチュアのミュージシャンではない少年たちをターゲットに、ネックが短く、ボディも小ぶりなギターを製作するようになっていた。シルバートーンやエアラインといったブランドで販売されているギターもそういうものであった。ダンエレクトロが製造するギターも当然のことながら初心者の少年たちをターゲットにしていたのである。

のちにジョゼフ・フィッシャーは Tales of a Dinosaur と題されたエッセイを書いているが、その中で、ネイサン・ダニエルのことを「発明家であるが、予算の厳しい制約について理解していた」と言い、二人の共同作業が非常にうまくいったことを回想している。
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