大福 りす の 隠れ家

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彼女達 第20回

2012年01月20日 23時06分27秒 | 小説
第1作 『僕と僕の母様』 全155回 目次ページ


                                             


『彼女達』


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彼女達 第20回



「え? またどうして? こんな小さな子がいるのに」 思いもしなかった返答だ。

「うん。 もう疲れたの。 私一人で子育てして ダンナは全く関与せずなのよ。 昔はそれで良かったかもしれないけど 今はどこも夫婦で子育てしてるじゃない? それにそれだけじゃないし。 ま、言いかえれば価値観の違いになるのかな」

「価値観って・・・。 離婚する人はよくそう言うけど 結婚して何年になるの?」

「もう9年位かな」

「9年も一緒にいたら 今更、価値観も何もないでしょう」

「ずっと我慢してきたの、でももう限界」 

「限界って何が?」 どうにか説得できないものかと 志乃が聞いた。

「ダンナは私達より一回り上なんだけど 最初はその差からの知識を尊敬できたのよ。 でも今は考え方も何もかも違う事に気付いたの。 他の家庭と違いすぎるのよ」

「他の家庭と比べるのはどうなのかしら その家にはその家の良さがあるでしょう?」

「良さなんてないわ。 表立っての男尊女卑まではいかないけど 心の中では私を馬鹿にしてるし 今時の家庭なんて あるまじきって考えてるのよ。 尊敬なんて飛んでいっちゃったわ」

「・・・そうなの」 自分は結婚をしていないのだから 自分には分からない事もあるだろうし 尊敬が無くなった人間関係は 修復が難しいのであろうと それ以上の言葉は控えた。

「ねえ、秋美と連絡取ってるの?」 真紗絵が急に言い出した。

「うううん、 卒業してからは誰とも連絡を取ってないわ。 仕事も慣れなくて忙しかったし、今はこんな状態だし」 溜息混じりだ。

「お局様の不倫ね」 からかうように 真紗絵が言った。

「なんてこと言うのよ!」 からかわれていると分かっていても 反応してしまう志乃。

「冗談よ。 ねぇ、秋美どうしてるのかしら」 組んでいた腕を テーブルに置いた。

「真紗絵は誰かと連絡とってたの?」 そう言った途端 ジュースを飲もうとした舞のコップが倒れかけたのを 慌てて支えた。

「あ、ごめん。 舞!ちゃんとコップを持たなきゃダメでしょ!」 少しヒステリックに舞を叱った。

「ごめんなさい」 ちゃんと ゴメンナサイが言える子である。

「ちゃんと持ってたよね。 コップが大きいから 持ちにくかっただけだよね」 志乃がションボリしている舞に声をかけた。

舞の姿を見て 溜息をついた真紗絵。 その姿を見た志乃が(子育てに疲れてるのね) 心の中で呟いた。

「えっと、何の話してたっけ?」 話を戻そうと 真紗絵が志乃の方を見ていった。

「真紗絵が誰かと連絡を取ってたかどうかよ」 

「あ、そうそう。 私も誰とも連絡を取ってなかったわよ。 短大の時は短大の友達とずっと遊んでたし、その後すぐ結婚したし」 

「そうなの、みんな一緒なのかなぁ。 秋美って、確か専門学校だったわよね」

「そう、そう。 未だにあのお父さんの箱に入れられてるのかしら」

「鉄の箱入り娘だもんね」 二人で大笑いをしている。

「秋美にも逢いたいわ」 真紗絵がそう言うと

「そうね、連絡してみようか?」

「今?」

「うん。 電話番号覚えてるから かけてみない?」

「え? 電話番号を覚えてるの?」

「あの時 毎日って言うくらい電話してたから 完全に覚えてるわよ。 かけていい?」 鞄から携帯を出した。

「うん、ピアノの発表会が こんな展開になるなんて思ってもみなかったわ」 真紗絵の顔が意気揚々としている。

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