早速、予想通りの展開となってきたようだ。
>http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM22060_S2A121C1FF1000/
米ファンドが韓国政府を提訴 「韓国銀の売却巡り損失」
2012/11/22 20:40 (2012/11/23 1:30更新) 記事保存
米投資ファンドのローンスターが21日、韓国政府を相手取り、世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)に仲裁を提訴した。韓国政府が22日に明らかにした。ローンスターは2012年の韓国外換銀行売却に関連し、韓国政府の対応により損失が発生したなどと主張しているという。
ローンスターは2003年、ベルギーの子会社を通じて韓国外換銀の株式50%超を取得した。その後、売却を試みたが、韓国政府の承認が得られずなかなか実現しなかった。最終的には12年に売却手続きを終えたが適切なタイミングを逃したとしている。
今回は韓国がベルギー・ルクセンブルクと結んだ投資協定を根拠に、企業などと投資受け入れ国との間の仲裁を手掛けるICSIDへの提訴に踏み切った。売却承認の問題に加え、韓国外換銀の売却に伴う韓国政府の課税措置に対しても異議を唱えている。裁判は通常3年程度かかるという。
提訴は12年に発効した米韓自由貿易協定(FTA)に一定の影響を与える可能性がある。米韓FTAにも紛争解決手段としてICSIDの活用が盛り込まれている。政府の判断が制約されるのを問題視する立場から、見直しを主張する声が韓国内にあるためだ。
12月の韓国大統領選挙でも最大野党・民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)候補は同規定を中心に米韓FTAの再協議を主張。与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補は再協議には否定的で、スタンスが分かれている。(ソウル=小倉健太郎)
=========
日本では、甘く考えているTPP推進派たちが多いと思う。
本当に危険なことを多くの国民は知らないのだ。
今回の韓国での事件は、簡潔にまとめると次のようなことである。
・ローンスター(投資家)が03年に韓国の銀行株式取得(銀行買収)
・投資家は株式売却を申請したが、政府承認を中々得られず
・12年に売却完了したが、機会喪失により損失を被った
・12年3月に米韓FTA(Korus)が発効
ここでのポイントは、FTA発効以前の政府対応に過失があるとして、過去の行為に遡及して損害賠償請求がなされる、ということである。ローンスターの売却予定期日が不明なのであるが、過去のある時点、例えば07年12月が売りたい時だった、とすると、その実行には承認申請から承認が得られるまでの時間に拘束される、ということになる。その承認が得られなかったことが、ローンスターの本来得られていたであろう利益(例で言えば、07年12月に売却しておけば、今年に売った価格よりも○○ドル高かったはず)を失った、すなわち投資家に韓国政府が損害を与えた(=政府の政策の失敗等)ということで、ICSIDに提訴したものであろう。
つまり、ISDS条項の危険な所は、このような「過去への遡及」ができてしまうことだ。条約締結がたとえ今年で、受けた損害が数年前であったとしても、その当時に得られたであろう利益を賠償せよ、ということで提訴されるのである。
こうした危険性については、既に過去のブログ記事で書いてきた通りである。
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/c100afdda44a6460eabc610b0e6b1650
例示したのは、貸金業子会社設立に伴う損失というものだったが、条約発効以前の過去の投資分に遡及して請求される、というのも同じであっただろう?
そして、政府の対応にまずさがあった、と主張できるなら、賠償請求対象となるのである。
TPPというのは、単なる「自由貿易」とか「関税撤廃」とか「農業問題」なんていう生易しいものではない、ということだ。
そういうことを、真剣に考えていないし、分かっていない。
>http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM22060_S2A121C1FF1000/
米ファンドが韓国政府を提訴 「韓国銀の売却巡り損失」
2012/11/22 20:40 (2012/11/23 1:30更新) 記事保存
米投資ファンドのローンスターが21日、韓国政府を相手取り、世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)に仲裁を提訴した。韓国政府が22日に明らかにした。ローンスターは2012年の韓国外換銀行売却に関連し、韓国政府の対応により損失が発生したなどと主張しているという。
ローンスターは2003年、ベルギーの子会社を通じて韓国外換銀の株式50%超を取得した。その後、売却を試みたが、韓国政府の承認が得られずなかなか実現しなかった。最終的には12年に売却手続きを終えたが適切なタイミングを逃したとしている。
今回は韓国がベルギー・ルクセンブルクと結んだ投資協定を根拠に、企業などと投資受け入れ国との間の仲裁を手掛けるICSIDへの提訴に踏み切った。売却承認の問題に加え、韓国外換銀の売却に伴う韓国政府の課税措置に対しても異議を唱えている。裁判は通常3年程度かかるという。
提訴は12年に発効した米韓自由貿易協定(FTA)に一定の影響を与える可能性がある。米韓FTAにも紛争解決手段としてICSIDの活用が盛り込まれている。政府の判断が制約されるのを問題視する立場から、見直しを主張する声が韓国内にあるためだ。
12月の韓国大統領選挙でも最大野党・民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)候補は同規定を中心に米韓FTAの再協議を主張。与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補は再協議には否定的で、スタンスが分かれている。(ソウル=小倉健太郎)
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日本では、甘く考えているTPP推進派たちが多いと思う。
本当に危険なことを多くの国民は知らないのだ。
今回の韓国での事件は、簡潔にまとめると次のようなことである。
・ローンスター(投資家)が03年に韓国の銀行株式取得(銀行買収)
・投資家は株式売却を申請したが、政府承認を中々得られず
・12年に売却完了したが、機会喪失により損失を被った
・12年3月に米韓FTA(Korus)が発効
ここでのポイントは、FTA発効以前の政府対応に過失があるとして、過去の行為に遡及して損害賠償請求がなされる、ということである。ローンスターの売却予定期日が不明なのであるが、過去のある時点、例えば07年12月が売りたい時だった、とすると、その実行には承認申請から承認が得られるまでの時間に拘束される、ということになる。その承認が得られなかったことが、ローンスターの本来得られていたであろう利益(例で言えば、07年12月に売却しておけば、今年に売った価格よりも○○ドル高かったはず)を失った、すなわち投資家に韓国政府が損害を与えた(=政府の政策の失敗等)ということで、ICSIDに提訴したものであろう。
つまり、ISDS条項の危険な所は、このような「過去への遡及」ができてしまうことだ。条約締結がたとえ今年で、受けた損害が数年前であったとしても、その当時に得られたであろう利益を賠償せよ、ということで提訴されるのである。
こうした危険性については、既に過去のブログ記事で書いてきた通りである。
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/c100afdda44a6460eabc610b0e6b1650
例示したのは、貸金業子会社設立に伴う損失というものだったが、条約発効以前の過去の投資分に遡及して請求される、というのも同じであっただろう?
そして、政府の対応にまずさがあった、と主張できるなら、賠償請求対象となるのである。
TPPというのは、単なる「自由貿易」とか「関税撤廃」とか「農業問題」なんていう生易しいものではない、ということだ。
そういうことを、真剣に考えていないし、分かっていない。