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雇用問題について考える上で

2009年01月20日 13時07分34秒 | 社会全般
大竹先生のブログに基本的な論説が紹介されてします。

大竹文雄のブログ 最低賃金・派遣・ワークシェアリング


必読!です。


で、この前書いた「派遣労働」は何が問題かという記事では、派遣を切られてしまった場合に次の派遣先が用意されるまでの間受給できる保険が必要なのではないか、ということを書きました。

また、こちらの記事では、非正規労働者側には失業給付がないので、労働者側に不利な交渉なのだということを書きました。


さて、上記紹介された論説群の中の、太田聰一氏(慶應義塾大学経済学部教授)の論説中で、脚注6)に次のような式がありました。

手取り賃金 w-te =(1-β)b+β(y-t)
利潤 =(1-β)(y-t-b)

 w:労働者賃金水準
 t:合計社会保険料
 te:社会保険料(労働者負担分)
 y:生産性
 b:交渉決裂時の労働者リターン(失業給付)
 β:労働者交渉力
 1-β:企業側交渉力

ここで、非正規雇用者のような社会保険料がゼロ、失業給付もゼロ、ということであると、t=0、b=0ということになるので、

手取り賃金 w =βy
利潤 =(1-β)y

ということになります。
つまり、労働者賃金水準は、交渉力に依存し、企業側の利潤も交渉力に依存する、ということになります。
では、交渉力を変動させる要因とは何か?
一般的に考えれば、失業率が高くなれば労働者の交渉力が弱まり、逆に失業率が低いと高まるでしょう。労働供給が多い場合にもやはり交渉力は弱まるでしょう。


言うなれば「見せしめ処刑」ゲームみたいなもんです。
例えば、「侵略者」グループと「人質」グループ数人~数十人がいるとします。侵略者が最初に人質サイドには受け入れ難い要求Xをしたとしましょう。人質が要求Xを拒否します。次に、侵略者は「要求を拒むと死ぬ」ということを叩き込む為に人質から数人を射殺しました。すると、人質グループは恐らく要求Xを受け入れるようになるでしょう。更に、侵略者がもっと困難な要求Yを提示した時、人質グループは見せしめで射殺された事実を知っている場合には受け入れる可能性が高いでしょう。見せしめ射殺がない場合には、やはり受け入れを拒否する可能性は高いのではないかと思います。

同じように、リストラとか「派遣切り」などといった雇用調整は「見せしめ効果」があるのであり、企業側の交渉力は増すのではないかと思われます。少なくとも交渉力が対等である時には、β=1/2で労働者と企業は同じ1/2yを手に入れるのですが、β<1/2となってしまうと企業側利潤が多くなるのだ、ということはあるのではないかと思います。

失業給付があることによって、交渉力が弱まった場合でも労働者には利得を生じます。『(1-β)b 』の項が残されるわけですから、βが小さくなれば決裂時利得が大きくなるということを意味しているのです。しかし、失業時の給付がない労働者であると、βが小さくなったとしても b がゼロである限り決裂時利得はないということになってしまうのです。よって、βが小さくなっていても、やむなく賃金水準βyを受け入れざるを得なくなってしまうのです。





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