いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

砂漠の夜の物語

2008年02月09日 17時58分21秒 | 俺のそれ
(架空のお話ですので、実在のものとは何ら関係ありません)


ある大国があった。「ベスプッチ国」と呼ぶことにしよう。
かつて、この国で油田を発見して巨万の富を築いた人々がいた。石油事業を支配するものたちは、ダメジャーと呼ばれていた。しかし、その事業は斜陽産業となっていった。それは、もっと安く掘れる国々がどんどん登場してきたからだ。そこでベスプッチ国のダメジャーの人々は考えた。今後世界戦略をどのように考えたらよいだろうか?

一つの答えが出された。
ベスプッチ国内での石油掘削事業は諦めて放棄することであった。その為に必要なことは、他の有力な業種に転換してくことだった。そこで、石油の流通ルートの支配力を高め、販売で儲けようと考えた。最大の産油国である「アラババ国」との親密な関係を維持し、石油生産はアラババ国、流通はベスプッチ国として役割分担し、アラババ国には他に産業らしい産業などなかったので、儲けたお金の多くをベスプッチ国に投資してもらうことだった。当時、アラババ国以外で外貨を多く持っていたのは、大陸の工業大国「カイザー」と、島国「ジパング」などだった。

この石油流通支配は、よい時期も若干はあったのだが、その後次第に頭打ちとなっていった。価格支配力が低下したからだ。ベスプッチ国は再び世界戦略の見直しを迫られることになった。原油価格が暴落した状態では、流通販売からの巨額の利益獲得を続けるのが困難だった。しかも、アラババ国以外にも生産量の多い国々は登場し、世界の供給能力は十分あったので、原油価格が上がっていくことは急には期待できなかった。アラババ国を始めとする産油国のお金は、次第にベスプッチ国に向かわなくなっていった。

ベスプッチ国は、きっとやつらのせいだ、と思った。ちっぽけな島国の、セコセコ動き回り、小賢しく金を稼ぐネズミどものことだ。あいつらが稼ぐようになってから、ベスプッチ国の全てがうまくいかなくなったんだ。ヤツラを叩いておかねばならない。何としても、やつらの持ってる金を奪い取らねばならない。大体、ベスプッチがジパングを作ってやったようなもんなのに、何故ヤツラの方が金を稼ぐんだ。許さん。

ベスプッチは怒り、ジパングはいつもズルをしてるんだ、ルールをもっと厳しくしようと言った。為替も卑怯だからといって、急速な切り上げを求めた。ジパングは急激な通貨高となって、不況になった。が、それも束の間、不死鳥のように舞い戻ってきたのだった。くそっ!
ベスプッチは何とかせねばならない、と必死で考えていた。世界の覇者は俺さまだ。負け犬のジパングになど、デカイつらをさせてたまるか。

世界の大きな出来事を観察すると、いくつか重要なことがあった。ジパングでは泡沫現象が起こった。アラババの周辺国では幾度目かの戦争が起こったが、これはベスプッチにとって、幸運となったのだった。
そういえば、昔ペルシャ界隈で戦争が起こったときにも、石油流通支配はウマミが大きかった。アラババ国にも大きな利益が舞い込んだ。そうか、これは何か使えるかもしれない…。

ジパングのやつらの自動車が悪いんだ、あとは電子・電気製品だ。これを封じれば、ヤツラの稼ぎの多くは吹き飛ぶはずだ。ベスプッチはそう考えて、貿易に関して改善をジパングに求めた。更には、壮大な計画を考え出した。

アラババ国のような石油を売る国が原油価格が上がると多額の金が入るが、それを俺たちが運用して稼げばいいんじゃないか。ジパング国の泡沫現象を見たろ?バカじゃないかと思えるが、あれが人間の本質なのだ。世界中の人々に夢を見させてやればいいのさ。もう一つ、昔からせっせと投資していた連中がアラババ国の近所にいるんだが、彼らは大金持ちだから旅行の時にも料理人まで連れて行くのだ。彼らの稼ぎは原油でアラババ国とほぼ同じなんだが、何が決定的に違うかといえば、「膨大な金が余っている」ことと、世界中に投資運用して稼いでいることだ。これだ。これが成功のカギなんだ。

世界中で最も金をたんまり持ってるのは、ジパングのやつらだ。彼らの持ってる金を呼び込むんだ。これからは、投資だ。金融の技術でトロい連中から掠め取ればいいんだ。そうか、ようし…まずは…為替だな。地獄に落としてやるぜ!

ベスプッチはジパングに為替で大きな相場を仕掛け、大損害を与えることに成功しました。これが「金融鎖国」から開国を迫る黒船となったのです。ジパングは強い外圧によって、「金融創生期」とかいう変なスローガンを掲げ、ベスプッチの要求を次々と呑んでいきました。運用資金が100で1%の手数料なら1が懐に入るが、100万運用なら1万を、100億運用なら1億ゲットできるからな。ジパングのやつらはトロいから、こっちの言いなりだ。楽ショーだぜ。

投資で稼ぐ、これが最強だ。その準備は整った。
しかしながら、これまで金を回していたアラババ国では、原油価格の停滞などや貿易不振などで経常収支が6年間でわずか2回の黒字でしかなく、ベスプッチに回すべきお金が生み出されていなかった。ジパングのやつらが金を出してこない限り、投資で稼ぐのは難しいのか…?さっさと金を出せよ、ネズミ野郎!

ベスプッチは考えました。過去に原油価格が上昇したのは、パパが頑張っていた頃だった…、そうか、戦争だ。戦争があれば、きっとアラババにも金が入ってくるようになる。戦争が必要だ。

ベスプッチは戦争を始めました。
すると予想通り原油価格は上昇を始め、アラババ国は経常収支が連続黒字へと回復しました。その黒字幅は年々拡大するに至ったのです。更に、大食漢のチャン国がどんどん経済成長をするようになって、もっと原油価格は高くなることになったのです。原油を輸入に頼っていたジパングはとても困りました。

ペルシャで勝手に石油を増産されたり売り出されたりしようものなら、迷惑を蒙るのはアラババ国だ。何としても、アラババとの約束を守ってやらねばならん。それに、6つの加盟国からなるGAG諸国に与える原油からの利益、彼らの資金提供を受けて投資で手数料を貰えるシステム、彼らの資金を増大させもっと手数料を稼げるシステム、大国ベスプッチに相応しい効率的で生産性の高い仕事だ。勝つ人間は常に勝ち、勝ち続けることが大事なのだ。富が富を生む。これが資本主義なんだ。トロい連中は搾取されるがいい。無能な連中は、必死こいて汗水垂らして穴でも掘ってりゃいいんだ。金が金を連れて来る。世界の勝者はほんの少数でいいんだ。ベスプッチとGAG諸国が勝てればそれでいいんだ。その他の貧乏人どもは、毟られてろ。ネズミ野郎もな。
正しい者が勝つのではない、勝った者が正しいんだ!


ジパング国には、どういうわけか昔からの戒めみたいなものがあって、むやみやたらと相場に手を出すな、とか、蓄えをしておけ、とか、長年の家訓だの言い伝えだのがあったそうです。その真実性がどうなのか、科学的なのか、というようなことは誰にも正確には判りませんが、人間の長年の経験則のようなものであろう、ということらしいです。そうして大過なくこれたのかもしれません。ベスプッチに金融開国を迫られ実際に開国したものの、他の国々と比較して相場にお金を持ってくる人の数は少ないみたいです。それは性格なのか国民性なのか判りませんし、昔の教訓のお陰なのか判りませんが、かつて大きな被害に遭ったせいもあるのかもしれません。今までのところ、ベスプッチの狙い通りにはいかなかったようです。しかしジパングがいつまでそれを続けられるのか判りません。



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