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続々・本当に血尿であったのか

2007年05月19日 18時36分55秒 | 法と医療
続・本当に血尿だったのかの記事にコメントを頂戴いたしましたので、記事に書いてみました。


僻地外科医先生

わざわざご回答下さり有難うございます。
いくつか確認させて頂ければと思いますが、ご無理なさらずともよろしいです。


>「血液凝固障害がある場合」にはわずかな静脈損傷から大量出血をきたすことがあります。例えば、ワーファリン(血液凝固阻害剤)内服中に、ごく軽い腹部打撲から巨大な後腹膜血腫をきたした事例が報告されています。

私の記事中には、外傷・出血傾向等の出血をきたす積極的な要因がないものであっても「後腹膜血腫」を生じるという症例の報告を挙げております。何もなくても生じるのであれば、(軽度であっても)外傷があること、ワーファリンを服用していること、という要因があれば尚更血腫を生じるリスクは高まると考えるのは自然です。ご指摘の血腫を生じた症例では、出血はどうなったのでしょうか?やはり止血せずに、開腹手術を行って血管縫合等を行ったのでございましょうか?それとも、出血に気付くことなく、血腫は短時間で増大して出血性ショックで死亡に至ったのでありましょうか?ワーファリンを服用していたのであれば、休薬して日数が少し経過しないと下手に開腹もできなでしょうから、血管損傷部を見つけ出して止血するのは難しいようにも思えます。そうであれば、出るのが自然に収まる(弱まる)のを待つしかなさそうにも思えます。

血管壁破綻(本件争点の損傷も含め)によって出血があること、出血傾向であれば自然止血困難で血腫を生じる可能性はあること、それは当然でありましょうが、非常に短時間の間に出血量が2000以上も出るということは想定し難い、ということを申し上げています。血腫が増大していくに従い、圧迫効果は出てくる可能性はあるので、ジワジワ出るのはあっても「ジャージャー」出るというのはどうなのかな、ということです。

午後6時過ぎに撮影されたCT像に、それほどの大きな血腫が映っていたのでしょうか?もしそうであれば、「出血」として気付けたはずであると思うのですがいかがでしょうか。その僅か40分後には血圧降下が起こっており、この40分程度の間にそれこそ大量に出血したことになるのではないでしょうか?



>>そうであるなら、裁判所が考えた「血管損傷→腹腔内出血→膀胱に入る→血尿」というおよそ非現実的な想定は採用できないでしょう。
 判決文のどこにも上のような想定は書かれていないと思いますが・・・。

これはご指摘のように書いておりませんでした。失礼致しました。
後腹膜腔の出血(カテ挿入で血管損傷させたからだ、というのが裁判所のご意見)とは別な出血原因がないのであれば「後腹膜腔に血液が溜まる→腹腔・膀胱内に見られた出血→尿と一緒に出た」ということを間接的に認めるものだと解釈致しました。判決文中「P19のオ」の辺りに書いてある内容を考えておりました。ただ、裁判所は膀胱内等の出血原因が”他にあったとしても”、「少なくとも後腹膜腔に生じた出血は血管損傷によるものであったと認められる」としていて、他の出血については「余り問題にはしない」ということなのかもしれません。

両側血腫についてはご教示の通りかもしれませんが、やや疑問は残っております(笑)。鑑定ではCT画像について、カテ留置のことでどのように見えるとか色々と判決に出ておりますが、そこで「大きな血腫形成」が問題に上がってきていないことを考えると、恐らく「殆ど映っていなかった」としか思えないのです。正中を越えて左側にも大量に貯留する程、突っついた(?)血管壁から出血があったというのは、どうなんでしょうか、と疑問に思う所以です。ただ、本格的な凝固異常の状態というのがどんなことになるのか、想像もできませんので…



3)の後段というのが、何処なのかちょっとよく判らなかったのですが、被告側がDICを否定していたことでしょうか?判決文のP7の争点5の部分で、被告(病院)側主張でDICではなかった旨述べていたと思います。
その前となれば、テオフィリンのPDE阻害作用は薬理学的にはほぼ肯定的と思いましたが…



後腹膜腔の大量出血についてですが、確かに剖検での所見でもここに血液貯留が見られたことは確かであり、この出血原因が「血管損傷であったか否か」ということで、僻地外科医先生も「血管損傷」については肯定、ただし「痙攣時にカテ先で損傷」という判決とは別な原因を想定しておられる、ということですよね(被告側も同じような主張をしています)。
ここが、やや疑問なのです。挿入したカテ先で、若年男性の割と太い血管が破れるものなのでしょうか?DM持ちの年寄りのようなボロボロの血管とかでもないのに、というのが引っ掛かります。カテは体動があっても長期間留置に耐えられるように加工されているでしょうし、それほど簡単に血管壁を突き抜けるのであれば、痙攣だけではなくて、似たような状況―例えばバッキングとか―では毎回危ない、ってことになりませんでしょうか?
6時過ぎのCT像で右側骨盤内に血腫の存在を認めているのであれば、4時45分過ぎ~CT撮影時までに痙攣発作がはっきりと生じている必要がありますが、それは認められません(裁判所認定のごとく、留置したカテ先が血管壁を破るという可能性は少ないのではないかな、と)。もしも特別な血管病変を持たない若年者において、中心静脈留置のカテーテルが血管壁を突き破り出血を生じた例というものがあるのであれば、それは製品としてよほどの欠陥品であるとかの問題になるのではないでしょうか?そういう報告例は複数見られているのでしょうか?

この「カテ先で血管壁を突き破った」という前提を支持する限り、裁判所の言い分の方が有利に思えます。記事の参考文献の記載にもありましたように、後腹膜腔への出血(後腹膜血腫)は外傷や顕著な血管損傷等出血源が明らかではなくとも、そもそも起こってしまうもの、と考えられるのですから、カテの挿入の有無には無関係に生じうるものである、ということは言うことができると思います。

本来無関係な出来事が偶然にも同じ時期に起こってしまうと、それらは何かの関連性を有しているかのようにも見えるのですが、そうとも限らないことは多々あるでしょう。変な喩えですが、町田の立て籠もり事件と長久手町の事件は近い時期に起こっていますけれども、両者には関連性は全くないにも関わらず、例えば「町田で警官射殺に失敗したので、その仇討ちの為に長久手の犯人が犯行に及んだ」「町田の犯人が長久手の犯人に銃を横流ししていた」などというストーリーを考えてしまう、ということです。

本当にカテ挿入で損傷した血管からジャージャー出ていたのであれば、解剖した時の肉眼的所見からも「比較的大きな血管に破綻(損傷)部分があって、そこからの大量出血があった」ということを確認できそうに思えます。ところが、そうではなかった。原因不明に起こる後腹膜血腫のできる様と、とてもよく似ているように思えるのです。もしそうであれば、出血源をマクロ的に確認・同定することは困難である、という特徴も一致しているので、現象として理解でき得るのです。左側にまで広範囲に広がるほどの出血点だったのであれば、かなりの勢いで出続けることになり、そうであるなら肉眼的にもかなりハッキリした血管壁の損傷があるはずではないか、と。


何れにせよ、私のような専門外の人間では限界がございます(笑)。申し上げたいのは、反論する(病院)側の主張が裁判所の考え方を覆せるに足る論拠を持つことが必要なのではないかと思います。
ご面倒にも関わらず細かく教えて頂き、有難うございました。





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2 コメント

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Unknown (僻地外科医)
2007-05-21 12:34:16
>まさくに様

>ご指摘の血腫を生じた症例では、出血はどうなったのでしょうか?やはり止血せずに、開腹手術を行って血管縫合等を行ったのでございましょうか?それとも、出血に気付くことなく、血腫は短時間で増大して出血性ショックで死亡に至ったのでありましょうか?

 私が読んだ事例ではTAE(経動脈的塞栓術)で止血していましたが、これは造影で出血点がはっきりしていたからです。出血点が明確でない場合にはこの方法は使えないことを一応明記しておきます。

>ワーファリンを服用していたのであれば、休薬して日数が少し経過しないと下手に開腹もできなでしょうから、血管損傷部を見つけ出して止血するのは難しいようにも思えます。

 これは誤解でワーファリンにはビタミンK2が解毒剤として働きます(注射剤もあり)。ワーファリン使用中で緊急手術をしなければならない場合にはケイツー投与後、数時間で手術は可能になります。

>非常に短時間の間に出血量が2000以上も出るということは想定し難い、ということを申し上げています。血腫が増大していくに従い、圧迫効果は出てくる可能性はあるので、ジワジワ出るのはあっても「ジャージャー」出るというのはどうなのかな、ということです。

 これは血液凝固障害に対する誤解だと思います。圧迫効果があっても止まらない・・・というのが重度の血液凝固障害です。で、最初のカテーテルを穿刺してからならば7時間、全身性痙攣が起きてから死亡するまでならば5時間です。仮に1分間に10mlの出血(これは本当にじわじわ程度の出血です)であったとしても5時間なら3000mlの出血になります。しかも出血が進むにつれ、凝固能障害は加速的に進みます。

>午後6時過ぎに撮影されたCT像に、それほどの大きな血腫が映っていたのでしょうか?もしそうであれば、「出血」として気付けたはずであると思うのですがいかがでしょうか。その僅か40分後には血圧降下が起こっており、この40分程度の間にそれこそ大量に出血したことになるのではないでしょうか?

 証拠を見ていないので断言できませんが、血腫は存在していた可能性はあると思います。ただし、仮に出血が分かったとしても手術的に対処できないことはお分かりでしょう。
 また、急激な血圧降下に関してですが、人間の体は急速ではないある程度の出血に対しては末梢血管の収縮などで血圧維持が出来ます。しかし、その血圧維持機構の上限を超えて出血したときに急激な血圧低下を来すことはあります。また、被告側が主張しているように出血性ショック以外の血圧低下の可能性も否定は出来ません。残念ながらこれ以上についてはカルテなどの証拠を見るほかに確認手段がありません。

>3)の後段というのが、何処なのかちょっとよく判らなかったのですが、被告側がDICを否定していたことでしょうか?

 これは「テオフィリンが薬理学的に血液凝固障害を来す可能性がある」という部分に関してです。推論としては説得力があるのですが、証明するには何らかの実験が必要でしょう。テオフィリンにPDE-III阻害作用が本当にあるかどうかも、PDE-III阻害作用がDose-dependentなのかどうかも確定できない状況ですので、こういう主張が裁判で採用される可能性はないと思います。

>ここが、やや疑問なのです。挿入したカテ先で、若年男性の割と太い血管が破れるものなのでしょうか?

 これは透析用のダブルルーメンカテーテルを一度ご覧になればお分かりと思います。あのカテーテルで「力一杯人間に突き立てれば」皮膚は貫通するぐらいの丈夫さと鋭さがあります。ましてや静脈では・・・です。IVH用のCVカテーテルとは訳が違います。
 しかも、完全に突き破る必要はないのです。わずかなピンホールでも凝固能障害があるときにはじわじわと出血することで巨大な血腫を作り得るのですから。

ですから
>カテは体動があっても長期間留置に耐えられるように加工されているでしょうし、それほど簡単に血管壁を突き抜けるのであれば、痙攣だけではなくて、似たような状況―例えばバッキングとか―では毎回危ない、ってことになりませんでしょうか?

 これも普通の状況の透析では問題無いでしょう。極端な凝固能障害があったから起きえたと考えれば特別おかしな想定ではありません。

>本当にカテ挿入で損傷した血管からジャージャー出ていたのであれば、解剖した時の肉眼的所見からも「比較的大きな血管に破綻(損傷)部分があって、そこからの大量出血があった」ということを確認できそうに思えます。ところが、そうではなかった。原因不明に起こる後腹膜血腫のできる様と、とてもよく似ているように思えるのです。もしそうであれば、出血源をマクロ的に確認・同定することは困難である、という特徴も一致しているので、現象として理解でき得るのです。左側にまで広範囲に広がるほどの出血点だったのであれば、かなりの勢いで出続けることになり、そうであるなら肉眼的にもかなりハッキリした血管壁の損傷があるはずではないか、と。

 この部分に関してもピンホール程度の損傷であったとすれば肉眼的に同定できないことは十分あり得ます。そして、そのようなわずかな損傷でも凝固能障害が著しい場合には大出血(長時間かけての)が起きえると言うことです。




 
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有難うございます (まさくに)
2007-05-21 18:37:23
また長くなりそうですので、記事にしてみました。

http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/c3adc1eaf693cfe7319a26c4676d4530

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