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レンタカー会社の賠償責任

2008年06月11日 00時13分40秒 | 法関係
今、色々と報道されているアキバの事件ですけれども、意外な視点では、思いもよらぬ責任を問われることがあるようです。


アーケード暴走:トラック貸した会社に責任 仙台地裁判決 - 毎日jp毎日新聞

(一部引用)

 仙台市青葉区のアーケードで05年4月、トラックが暴走し7人が死傷した事件で、死亡した同区の女性会社員(当時44歳)の遺族が、トラックを貸したレンタカー会社「ニッポンレンタカーサービス」(東京都)とアーケード内歩道を所有・管理する市に計7710万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、仙台地裁であった。潮見直之裁判長は、市への請求を棄却する一方、同社に計6410万円の支払いを命じた。

 トラックは同社が大友誠治受刑者(41)=無期懲役が確定=に貸していた。遺族は、会社は自動車損害賠償保障法に基づき「運行供用者」としての賠償責任があると主張した。

 判決で潮見裁判長は、会社は(大友受刑者の)携帯電話番号も知っており、運行供用者にとって必要な「運行支配」が失われていたとは認められないと指摘。賠償責任に関して会社側に「具体的・現実的な予見・回避可能性があった」ことを必要条件とするのは、被害者保護の観点から妥当ではないとの判断を示した。そして、落ち度のない被害者側に事故の損害を負担させるより、運行に関与しうる会社に負担させることが公平であるとして「引っ越しに使うと偽装され貸したもので、運行供用者にあたらない」とする同社の主張を退けた。

=====


恐るべき判決ではあります。
レンタカー会社は、犯行を知り得る立場にはなかったとしても、賠償責任を負わされてしまう、ということになってしまいます。

・携帯電話番号を知っているから「運行支配」は失われていない
・「具体的・現実的な予見・回避可能性があった」ことを必要条件とするのは妥当ではない
・運行に関与しうる会社に負担させることが公平

判決全文を読んだわけではありませんが、これが通用してしまうとなれば、「法的責任」などという話ではなく、単純に「被害者が可哀想だから、会社が金を払え」ということを無理矢理にこじつけたかのような判決では。

そりゃ、被害に遭われた方々は何の落ち度もなく被害を受けていますので、可哀想ですよ。何とかしてあげたい、というのも、気持ちとしては当然そうです。それは判ります。しかし、法的責任がないものについてまで「法的責任」を認め、賠償を当然とするのは、法を曲げているのではないでしょうか。

この論理は、例の「薬害肝炎一律救済」という横暴と殆ど一緒なのですよ。
具体的、現実的な予見、回避可能性がなくとも、コトが起これば賠償せよ、ということですからね。実質的には過失がないとしても法的に責任を認定され、賠償させるという考え方は、そもそもオカシイです。それは、例えば「犯罪被害者救済」のような制度を整備するべきというような問題であって、具体的に過失がないにも関わらず、「会社が払えるだろ」という理屈で払わされるというのは、公平でも何でもありません。明らかに、法の前では「不平等」ということが明確になっているだけです。法の不公平、ということなんでしょうか。

もしもレンタカー会社ではなく、友人知人などが貸した場合にも「貸した人間の責任だから、払え」と言うのでしょうか。犯罪に用いられることが予見できた、というようなことがないのに、賠償せよ、と?
会社ならば払えるかもしれませんが、個人であれば払えないでしょう。それでも、貸した人間に責任があるのだから、払え、と?


包丁で殺人が行われたら、包丁製造会社か販売していた会社が払うべき、という論理なのでしょうか。パンストで絞め殺されたら、パンスト製造会社か販売会社が賠償責任を負え、ということでしょうか。

ここまで来ると、法の暴力としか思えないですね。


今回の事件でも、犯人はレンタカー会社でトラックを借りており、しかも驚くべき偶然(全国に多数あるから?なのかも)ですが、同じニッポンレンタカー(営業所は別)みたいです。これまで通りであるなら、多分今回事件でも訴えられるでしょう。レンタカー会社だけではなく、歩行者天国にしていたのが警察か区なのか判りませんが、管理者は訴えられることを覚悟しておいた方がいいでしょう。


新人弁護士の勤め口さえままならないご時世らしいので、どんな無理な訴訟であってもやってくる人はいるでしょうから。それに乗っかる裁判所もどうかしていると思うのですがね。
可哀想だから、という理由だけで賠償を命じられる方の立場にもなってくれ、と思うでしょうね。




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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おはようございます (まっつん)
2008-06-11 07:30:36
ご無沙汰しております。

しかし、これは本当に酷い判決です。
常軌を逸脱しています。

こんなのがまかり通るとは・・・。
おかしな判決は多々ありますが、最近ではダントツで異常な判決ですよ。
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Unknown ()
2008-06-11 23:22:07
まぁ、最高裁までもつれ込むでしょう
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Unknown (まさくに)
2008-06-15 17:36:43
>まっつんさん、ろさん

コメント有難うございます。
こういうのを是正するシステムがないのは、ちょっと問題なのではないかな、と。

>最高裁まで…
何でも上まで持ってこられたら、最高裁も辛いでしょう(笑)
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Unknown (Unknown)
2008-06-18 15:44:20
レンタカー会社が今回の「借主の事情」を知っていたかどうかが問題でしょう。たとえば借主が身分を偽っていたり、偽らなくともその身の上を貸主が知ることができなかったのであれば不当だと思います。
個人で貸す場合を例に挙げられていますが、この場合個人の信用があります。
個人的に信用がある人物には車を貸し、たとえば盗癖があるわ、喧嘩をするわ、当て逃げするような友人には個人の良心に基づいて車を貸さないと思います。
しかしそういったことを知りえなかったのであればちゃんとそのことを情状酌量するのは必要だとは思いますが。
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無差別殺人を (まさくに)
2008-06-18 22:31:14
計画しているというようなことを知ることのできる人は、極めて少ないのではないかな、と思います。
レンタカー会社であっても、個人であっても、「まさか、そんなことに車を使おうとは…」ということではないでしょうか。確かに貸す以上責任はある、ということはあっても、その「責任」の範囲をどこまでも広く取られてしまえば、手も足も出ないわけです。
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Unknown (Unknown)
2008-06-18 23:45:31
責任の拡大解釈の危険性については同意です。
こんなもん一旦認めてしまえばどこまでも行かれてしまいますからね。昔の連座制という悪制に戻ってしまいます。
裁判資料を見ていないのでなんとも…ですが、訴状に「レンタカー会社は損害に対して云万円支払え」と書くからには、一定の立証責任が訴えた側にはあるわけで、更に判決がそれを認めた、というからには何か証拠があったのでしょう…。憶測の形になってしまいますが。
今回の判断が妥当であったか否かは多分他のコメントのように上まで縺れると思います。
細かい内容については資料を調べていないので何とも書けなかった意味の無いコメントになってしまいましたが。
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Unknown (まさくに)
2008-06-19 19:56:44
>立証責任

報道記事から判る範囲ですが、立論としておかしいです。
運行支配はケータイ番号を知っていればOK、予見・回避可能性は抽象的でよく原告側が「回避できたハズ」と主張すればOK、ということですので。

これはほぼ全件、ということになるでしょう。レンタカーの手続時に住所・氏名・電話番号・免許証番号などは必要になりますので、ケータイ番号を書いてしまうと「運行支配は失われていない」と裁判所に認定されてしまいます。
更に、予見できた、とか回避できた、という主張を抽象的にでも言うことができれば「回避できた」という原告側主張が通ります。例えば、「ケータイに電話するなどして運行状況を確認することもできたハズ」みたいな主張でもいい、ということでしょう。

つまりは、賠償責任からは逃れる術はありません。ほぼ全部当てはまってしまいます。それはそうです。裁判所が「可哀想なので会社はお金を払えるんだから、払ってあげなさい」みたいに、どんな主張であろうとも認めてあげよう、という意図だからでしょう。
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Unknown (Unknown)
2008-06-20 04:51:50
それは裁判所の資料を見てみないとなんとも…です。
ただ原告側がレンタカー会社に請求をした訳ですから裁判書メインのマスコミ発表だけではよく分かりませんね…。
ただこれが確実に通るとレンタカーでも警察の身元確認、照会システムのような物が導入されるかも。
例えば懲役以上の前科があれば貸さない、とか。
とにかく会社側も判断が確定するまではどうにもならないでしょうが。
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Unknown (Unknown)
2008-07-07 13:51:15
裁判官の顔がみたい域に入ります。
過去の判決でも稚拙かつ非論理的で
世の中を悪くする要因をつくる判決ですね。
レンタカー会社には最高裁まで行くぐらいに根性入れて、
是非判決を覆してほしいものです。
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確か判決確定みたいですよ (まさくに)
2008-07-07 19:41:20
チラッとニュースで見たように思いますが、双方とも控訴取り下げで判決確定、ということらしいです。
恐らくアキバの事件が発生したので、影響があったのではないかと思います。
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