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貸金業の上限金利問題~その2

2006年04月23日 13時41分12秒 | 社会全般
最近ある貸金業のビジネスモデルには、最初の30日間の利息は無料、というのがあるそうですよ。これって、短期の借入には、「旨みがない」ということと一緒ですよね?要するに、「長く貸して、ダラダラと利息を取り続けるのがいい」ということですよ。安易な個人は、ついつい借りてしまって、利息がどのくらいのレベルで取られるかなんて考えられないんですよ。犯罪の発生動機としてもよくありがちですよね、消費者金融に借金を多額に抱えている、っていうのは。公務員の犯罪にも、時々あるくらいですから(笑)。


ありがちなパターンとしては、何かのイベントやアクシデントによって、急にお金が必要になって、いくらか借りてしまうのですね。分かり易い例で言えば、車のローンを抱えていて、何とか返済を続けていたけれども、事故で修理費用がかさんだ、とか車検・自賠責が払えないとか。で、その時にちょっとまとまった額を借りてしまう、と。すると、その借金の分を支出削減できれば良いのですが、ところがそうはいかないのですよ。金がないのなら車を手放せばいいじゃん、と思うでしょ?でも、「不便だから」とかの理由で、それも出来ないのですよ。どうにかこうにか返済しながらも、またちょっと足りなくなって借りてしまう。こうして、いつまで経っても元金は減らない。そればかりか、利払い負担はどんどん増大していくので、意志が弱ければ、遂には「自転車操業」が始まってしまうわけです(まるで政府の負債みたいですね、笑)。何社からも借り入れることになる、と。


それと、貸金業者たちは、借り手に対しては精神的障壁となっている敷居を低くしておく必要があるわけです。なので、まず「ちょっとツマンでもらって」おく必要がある、ということですね。証券会社の昔の営業みたいなもんですよ。株取引に対する「躊躇い」を緩和する為に、もうちょっと取り組みやすい金融商品で「釣り」を図っていたのと似てるんですね(今は多分違ってきていると思いますけど。一般の初心者たちが積極的に株取引を求めているらしいからね)。はまりやすい借り手というのは、多分、少額での返済に成功すると「次もうまくいくはず」と思って、借りてしまう。その精神的誘惑に勝てないのです。そして、あれこれと手をつける。気がつけば、何社にもなっている、と。自己の返済能力の限界となっていたとしても、自分ではそれを自制できないのですよ。そうでなければ、多重債務には陥ることはないでしょう。


痛みに対するモルヒネのようなものですよ。痛いので「使いたい」と本人は願うわけです。使えば「楽になる」と。その一時期はそうですね。しかし、何度も使い続けると、段々鎮痛効果は落ちてくる。もっと増量を希望するようになる。頻繁に使いたくなる。そういうようなものですね。
「返済が迫る」→「返す当てがない」→「借りる」→「楽になる」ということです。楽になった後で、返済の為の我慢という今まで以上の苦痛(借入額が増大しているので、それ以前よりも苦痛は当然大きくなる)を受け入れられれば返済可能かもしれないが、これはかなり大変です。一時的にでも「楽になる方法」を、既に知ってしまっているからです。


通常、手術後やガンなどで痛みがある場合、患者本人が鎮痛を希望する時に、点滴などに組み込まれた鎮痛剤を自分で使うという方法があります。モルヒネなども当然使われることが多いハズです。このような方法は、patient controlled analgesia と呼ばれます。ボタンを押すと、一定量の鎮痛薬が流し込まれるわけです。それで「楽になる」という仕組みなのです。しかし、この方法には危険性もありますよね。モルヒネを使いたいからといって、安全量以上に患者本人がボタンを押してしまえば、意識障害や呼吸抑制などの重大な副作用が発現するかもしれないのです。患者自身に「自制」を求めるのは「困難である」ということなのです。そこで、そのような事態を防ぐ為に、実は、PCAサーキットに予めルールが組み込まれています。単位時間当たり一定以上の投与が行われた場合には、それ以上流れない、という安全装置のようなものです。これであれば、いかに自制できない患者がいてボタンを頻回に押したとしても、モルヒネは一定量以上流れることはありません。「lockout」という安全の為のルールによって、患者が危機的状況に陥るのを防ぐことになります。


しかし、借金はどうでしょうか?自制が困難な人々に対して、一切介入するな、というのは、「ルール無用」ということですよ?介入が不必要なのは、貸し手も借り手も正しい判断や経済学的合理性が満たされており、完全競争市場のような場合だけなんじゃないですか?貸し手の方が圧倒的に有利な状況では(法令や金利についての知識等で隔たりは大きく、借り手を騙す事も可能というようなレベル)、市場のルールだけでは改善は無理だと思いますけど。


そうであるならば、患者は「自制がきかない人たち」(が大半であろう)という厳しい前提(実際にそうかどうかは別です)を置いて、「lockout ルール」を予め設定するしかなく、その意味では上限金利水準を下げることが、結果的に不良債権化する確率の高い層を排除することになるのであれば、残りの優良な借り手保護となり得るし、最終的には貸金業界でなともな業者たちが生き残れるという選別も進むのでしょう。社会的にはその方が望ましいと思われますね。


あと、借り手側にも「後ろめたい」ことがあったりして、どこかに相談したり家族に知られてしまうと困るという状況は考えられ、それは例えばギャンブルにつぎ込むとか、不倫相手に貢いでるとか、キャバクラ通いをしてるとか、高級ブランド品買い漁り病(そんなのないけど、それに類すること)とか、そういった何かがあると、コッソリ内緒で資金調達しようとしたりして、嵌るんだろうな、と思いますね。そうなれば、ヤミ金業者等から厳しい取立てに遭っているとしても、中々それを打ち明けるところまでは行けないかもしれないですよね。そもそも意志の弱さがあったりするので、借金をたくさんする訳ですから。


ヤミ金の事件認知件数増加というのは、違法取立てをある程度取り締まられるようになってきたこととか、借り手側にも多少知恵がついてきたこととか、大手消費者金融の利用などに利用者たちがシフトしたこととか、幾つかの要因が考えられると思います。かつてのように「脅して」取立てというのは社会問題化しやすい環境になって(テレビなどもよく取り上げたりしてた)、闇金は営業が苦しくなってきたようですよ。ヤミ金業者の実態を詳しく知る訳ではありませんけど。で、そういうヤミ金崩れたちは何をしたかと言えば、「オレオレ」ですよ。今で言う「振り込め詐欺」グループにシフトしていったんですね。この点でも、上限金利の引き下げは、貸金業界の不良業者をある程度排除することが可能になると思えますね。仮にヤミ金業者は減っても、貸出残高が減るかどうかというのは、確かに判らないのですけれども。




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