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Obama's 10 Days ~鳩山政権の逸機

2010年04月20日 18時20分25秒 | 外交問題
かえすがえす残念でならない。痛恨の失敗であった。もっと早く気付くべきであった。このミスは、悔やんでも悔やみきれない、取り返しようのないものとなってしまった。


①鳩山政権には、有力な交渉カードは残されていない

率直にいえば、もう挽回チャンスは訪れないであろう、というのが個人的感想だ。既に重要な手札は失われてしまった。
これまでもそうだったが、日本の政治の決断力のなさ、行動力欠如、そうした悪しき体質がここでも顕れてしまった。ギリギリの、時間との闘い、という緊張感が決定的に欠けているのではないのか、としか思えないわけである。結論を出すということの意味を本当に真剣に考えているのか、と訝しく思えるわけである。

迅速、という言葉は、今の日本の政治の中には存在していない。常に、何についても、メリハリなく、漫然と時間を費やすということである。

普天間問題について、日米間の交渉がうまく進められるかどうかというと、これはもう期待できないであろう。米国側がまともに取り合ってはくれないだろう。言ってみれば、鳩山政権の時間切れ負け、ということだ。
万が一、カムバックチャンスがあるとすれば、何も決められないまま惰性で参院選に突入して、偶然にも民主党が過半数と取るとか大敗を回避して踏みとどまり、鳩山政権が維持されるという場合だけであろう。現状では、その望みはかなり薄い。選挙前に退陣であろうと、選挙後に敗北を喫して退陣であろうと、どちらにしても大して変わりがない。交渉テーブルの向こう側に座っている人物は、鳩山であるとは思っていない、ということである。それが、米国側の見方ではないか。

故に、鳩山との直接の会談には応じない、小沢の訪米は求めない、というのが当然の反応であろう、ということである。


②鳩山政権が失ったもの~それは、タイミング

決定的な時期を逃してしまったのが、最大の失敗だった。今からでは、もう遅いということである。麻雀でも、トランプでも、勝負の局面を巻き戻してやり直すことはできない。大事な場面というのを無為に過ぎてしまえば、それは既に終わったということになってしまうのである。

交渉のリミットは、鳩山総理が前から言っていた5月というわけではなかった。それは、鳩山政権とDPJにとっての、自分の都合を考えたタイムリミットだっただけで、相手側にとってはあまり重要ではないものである。だからこそ、見過ごしてしまっていた。

麻雀で喩えるのは、不適切かもしれないが、御容赦願いたい。
ある時点では、オバマ政権はちょっとしたピンチを迎えていた。他の面子3人がリーチをかけていたようなものだったからだ。継続する支持率低下と、高い失業率をはじめとする国内的な不満増大、外交面での成果のなさ、等々、課題山積と言われていたものだ。あの時こそ、最大のチャンスであったのだ。
だが、その時期を逸してしまった為に、日本側の話を聞いてもらえる可能性は薄れていった。オバマ政権は、あのピンチを流局でしのぎ、その後には親の倍満級のアガリに成功したようなものだからだ。

少なくとも、小沢に訪米打診の申し入れをしてきた2月初旬頃ならば、日本側に有利な状況を目指すことはできないわけではなかった。しかし、状況は変わったのだ。3月の医療保険改革法案の成立で、事態は大きく動いたということだ。


③オバマ政権は苦しんでいた

日本の鳩山政権が誕生し、反米的な鳩山総理の論文などが取り上げられるなど、米国にとっては「嫌なテーマ」ということになっていたであろう。だからこそ、オバマ大統領の初来日で「日本との関係」に配慮を見せたわけである。日本の新政権の出方を窺うということもあったろうし、配慮してますよということは示していたわけである。

給油活動が打ち切りになったけれども、あれは「鳩山政権が決めたことだから」受け入れたというものであり、日本国民の「(当初の)高い支持率」というのを警戒していたが故であったろう。

オバマ大統領の訪中の際には、人民元問題には触れず、穏当な外交姿勢で終わっていたわけである。米国債の最大債権者の中国に配慮せよ、とか、日米関係よりも米中関係が大事だ、とか、日中接近は問題だ、とか、米国にとっては有利な立場のものというのはなかったのである。

どちらかと言えば、「オバマ政権は大丈夫か?」という心配が先立つ評価が多くなっていたのではないか。米国内では、例の「ティーパーティ」運動や反オバマ運動、共和党勢力の復活、そして支持率低迷、等々、窮地に立たされることは多かったのである。こういう時にこそ、日本の交渉チャンスだったのだが、無能な鳩山政権はそれを逃してしまったのだ。


④オバマ大統領が時間を稼げた2つの理由

いってみれば、幸運にも時間を買うことができたようなものだ。
手札が悪くて勝負になりそうにもない時にこそ、じっと耐えることが勝負には大事なのだ。大きく勝てなくても、流局とか負けを増やさないように耐えている時間帯がどうしても必要だった。その役割を果たしたのが、「ハイチ」と「トヨタ」だった。米国マスメディアの多くの時間と目が、その2つに向けられることになったのは、ラッキーだった。

1月に起こったハイチ地震の後からは、オバマへの酷評時間は減ることになったであろう(これについては、タイガーも少しは貢献してくれたのかもしれない)。そして、2月以降には「トヨタ」炎上の点火に成功した。

オバマ大統領は時間を稼ぎ、その間に「やるべきこと」を進めて勝負手が入るのを待っていた。あれほど弱々しく存在感が薄かったCOP15と比べて、核サミットの時のオバマ大統領は、まるで別人のように主役の座に返り咲いていたのだった。


⑤オバマ政権は恐らく「核サミット」から時間を逆算して準備した

3月末か4月くらいに核サミットを開催する予定というのが組まれていたであろうから、そこからタイムスケジュールを組んだに違いない(プラハ演説から約1年で成果を出そう、という決意、ということであろう。ノーベル平和賞を受けた人間―殊に世界最強指導者たる合衆国大統領―としては、それくらいの覚悟を持ってやるのが当然ということなのだろう)。
最大の目玉は、ロシアとの新条約交渉だったろう。これを何としても合意に漕ぎ着け、核サミットで米国のリーダーシップを最大限に発揮しようというのがオバマ政権の狙いであったろう。従って、ロシアとの交渉が3月中にまとめる必要性があったはずである。これが一番の目標と言えるだろう。

もう一つが、あの医療保険改革法案だった。最大の難関であったので、リスクは大きいことは判っていた。失敗すれば、オバマ大統領の求心力は失われ、政権自体が死に体となりかねない。だからこそ状況分析を何度も繰り返していたはずだ。

そこで、一計を案じたのが、反対派勢力の切り崩し・取り込みということであろう。中でも、効果があると思われたのは、共和党議員とか割と強硬派の民主党議員の賛成票を増やす、ということであろう。その方策として、2つが浮上したのではないか。

一つは、対中強硬姿勢を打ち出すこと、であった。目の前の最大の問題としては、やはり人民元問題ということになるだろう。
オバマ大統領は、昨年の訪中時とは違った姿勢を、急に見せ始めたのである。
2月には、台湾向け武器輸出、ダライ・ラマとの会談強行、といった具合である。3月には、人民元の為替問題にも触れるに至ったわけである。これらの外交姿勢でポイントを上げるのは、国内支持アップとか対外的な関係性の問題というよりも、「切り崩すべき下院議員たち」向けにとられた「一種のポーズ」であった可能性がある。極端にいえば、他の人たちがどう思うか、なんてことはどうでもいいのだ。医療保険改革法案での賛成票になるなら、ほんの一時期の関係悪化など挽回可能であろうという判断が働いたとしても不思議ではない。

もう一つは、「トヨタ叩き」である。
経常赤字や高失業率という点からすると、かつての日本車叩きというのが思いだされるわけで、不満の「はけ口」としても有効ということになるわけだ。特に、共和党地盤だとか、貿易政策に口出ししてくる民主党の中の強硬派なんかには、効果が期待できるのではないか、ということである。
そうした計算が働くとしても不思議ではない、ということになるだろう。

この絵を描いていた人間がいたとすれば、それはもう「やられたな」って感じ。単なる偶然なら、オバマ大統領の運を呼び込む力は本物、ということだ。常人では考えられないような「強い引き」だ。ポーカーなら、ここで、この札が来るかというような強運ということ。麻雀なら、激ヅモ、である。


⑥ロシアと中国に何を約束したのか

オバマ政権に転機が訪れたのは、ロシアとの交渉が意外にうまく進展しそうだ、という感触を得たからではないか。これは恐らく2月末くらいから3月初め頃にかけて、そういう情勢報告が上がってきたのではないだろうか。

ロシアは、鳩山政権誕生後に日本との関係について新たな何かというものがあるかもしれない、と若干の期待などがあったかもしれない。鳩山の息子がロシアの研究施設にいる、とかいう話題があったくらいだからだ。しかし、鳩山政権の外交無能がここでも遺憾なく発揮され、成果が得られないどころか、1月末の違法操業漁船へのロシア側銃撃事件などでの対処の悪さがあって、日露関係は悪化したと言ってよいだろう。ロシアは日本の方なんて見なくなってしまった、ということだ。

米国としては、こういう時にこそチャンス到来ということになる。交渉進展を図るには好都合だ。イランへの制裁問題というのがあるし、米国としては何とかして新条約の形作りには漕ぎ着けたいという思いがあったであろう。そうすると、例えば「北方領土問題には、米国は一切関知しない、立場も態度も意見も表明しない、日露で直接やっていいですよ」とか約束すれば、ロシアが条約締結に向けて合意を急いでくれなくもない、ということになるわけだ。

そうして、3月10日前後には、核サミットまでにロシアとの合意形成はできそうだ、という見通しが立ったのではないかと思われる。これが最大の成果であり、オバマ政権にとっては「攻めのタイミング」到来という転機になったものと推測している。

一方、中国に対しては、台湾問題、ダライ・ラマ会談、人民元問題、というのを突き付けて国内勢力の賛成票へとつなげ、即座にとってかえして中国側に恩を売ることに成功したものと思う。
具体的には、「為替操作国認定」を今はしないこと、米国内の強硬な対中貿易不均衡論派(人民元引き上げ派も当然含まれる)を抑えるからオバマに協力してくれよ、ということ、などであろう。中国側としては、米欧連合が中国包囲網を形成してくるのは警戒するわけで、米国側に若干の協力をするに至ったものと思われる。

中国側の対応としては、たとえばイラン制裁問題への協力、貿易統計で貿易赤字計上、人民元は緩徐な切り上げ同意、沖縄近海の艦隊通過、などである。常識的には、イランの核問題と人民元が焦点となろうが、最後の艦隊通過というのは、中国側の意図とメリットというものが殆どない中で行われており、そういう点でも潜水艦の浮上航行というのが何を意味するか、という点では注目に値する行動だった。
その「何故」こそが、米中連携という視点からみれば、明瞭なメッセージが窺われるわけである。米国にとっての沖縄(基地)、これを正当化するのに最大限の効果を持たせるのが、「中国海軍(艦隊)の脅威」だからである。しかも、浮上航行した潜水艦はキロ級ということのようであり、音響データなどは既知となっているものだから、ということなのだろう。ソブレメンヌイ級にしても、目新しいものではないので、披露しても問題ない、という中国海軍側の判断であろう。

オバマ政権は、こうして中露との交渉で段取りをつけて、勝負に出たものと思われるのである。


⑦「オバマの10日間」

この10日間というのが、いつからなのか、というのは、全くの適当である。個人的な妄想である。が、大体、3月12日から21日の投票結果が出る日まで、という頃であろうと推測している。ここが、オバマ大統領にとっての一番の山場を迎えた局面であっただろう、と。

恐らく票読みはかなり以前から何度も行われてきていたが、正確な数は依然として掴めていなかったのであろう。それでも、上記ロシアとの交渉進展が朗報となり、中国への強硬姿勢は下院議員たちの切り崩しに役立ったはずである。また、トヨタ問題の公聴会という、下院議員たちにとっては華々しいスポットライトを浴びる場面を演出してくれたことは、票を積み上げるのに一役買っていたことだろう。

こうした工作を2月にやってきていたにも関わらず、下院の採決見通しは立っていなかっただろう。外遊(グアム、インドネシア、オーストラリア)日程が16日から入っていたので、その前に決着を目指してはいたものの、勝敗見通しが厳しいという民主党下院議員たちからの報告を受けていたことだろう。採決まで行けるかどうかも不明な状況のままだったはずだ。

オバマ大統領は、演説の中で改めて人民元の為替に言及し、下院議員たちへのメッセージを送り続けたわけだ。13日頃には、ロシアとの交渉がほぼ目途がついて、オバマが直接メドベージェフにお願いをすることで、条約締結はほぼ確実となったことだろう。そう、ここでオバマ大統領は腹を決めたのではないだろうか。

医療保険改革法案の採決に踏み切ることを。

ここからは、猛烈な説得工作をやったことだろう。
連日、缶詰になって、オバマ大統領もスタッフたちも、あの手この手で説得工作を続けていたことだろう。一度延期された(16日から3日間延ばした)外遊日程は、完全に中止にして勝負をかけることにした。票読み、電話、また票読み、の繰り返しだったんじゃないかな。ヘトヘトになるまで、電話したんだろう、きっと。
そうして、遂に法案成立へ至ったのである。


4月はじめの為替操作国認定という書類には、中国の名が書き込まれることはなかった。事前の約束通りだった。
そして、中国海軍の艦艇は日本の沖縄周辺の海をわざわざ目立つようにして通過していった。ヘリの接近というのは、挑発的な態度に出ないと、防衛庁(※4/26追記:これ、防衛省の間違い、ゴメン)が発表しないままにしかねないから、ということがあったが為ではないかな。


これらの出来事の陰で、日本の鳩山政権は米国から捨て置かれただけではなく、中国やロシアからも、ダシの一つとしてしか見られていない、という軽いものとなってしまっているのである。
日本に交渉チャンスがあったのは、米露交渉の結果が出る前までだったろう。せめて、医療保険改革法案が通る前までだった。だが、後の祭りである。

もう進展の得られる交渉は困難だろう。オバマ政権は窮地を脱してしまったもの。米国側には、譲歩するべき理由の多くが消えてしまったもの。中国が米国債を買い続けるつもりとなれば、万が一日本が米国債を売ってきても耐えられる、ということだし。




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