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意味のない防衛計画~「クラスター爆弾」について(追記)

2008年05月31日 17時16分28秒 | 防衛問題
世の中には、自分の都合しか考えられない人間がいる。本物のアホかな、と思わないでもない。が、無駄だと判っていながら、名目上だけの理由で絶対に必要だ、と主張するのかもしれない。

何度も言うが、「日本上陸」という作戦は、現状ではほぼ無意味である。

防衛計画はゲームじゃない

真剣に上陸作戦を敢行すると仮定して、それは一体何を目的としているのか?
地下資源が欲しいの?(笑)
ちっぽけな島国の領土が欲しいの?
それとも、日本民族の殲滅?
日本人の奴隷化?

そりゃまあ、世界征服を企む単独国家が登場するかもしれないから、そういう場合には「征服」という形で日本くんだりまで遠征(笑)してこないとも限らないわけだが。それは、どこの国ですか?その他の国々を「押さえ込んで」、なおかつ日本征服の野望を抱く国とは、どこでしょうか?そんな超大国みたいな存在が、現実にありますかね?もし、現時点で「ある」という主張をされるのであれば、実例を挙げてもらえればと思いますな。
あるとしても、唯一候補になり得るのは、「アメリカ」だけだ。他の国ではそこまでの遂行能力はないのでは。


日本上陸が行われるには、
①海上及び航空自衛隊の戦力はほぼ全滅
②制海権及び制空権が掌握されてしまう
③国際関係の枠組みが機能しない
④国際的制裁などの効力がないか、発動されない

みたいなことになっていなければならないだろう。
②と③に関連してだが、「在日米軍はほぼ壊滅」し、その後も米国は戦闘に参戦しない、という場合なら、強力な軍事力を持つ国が侵攻を試みるかもしれない。或いは、④にも関連するが、日米同盟があっても米軍は戦闘には参加しないとか、多国籍軍のような国際間の援軍が全く期待できないとか、そういう状態でなければ、日本周辺海域で継続的に制海権を維持し続けることは困難であろう。日本が海空の戦力をほぼ喪失してしまう、というのは、そういうことだ。在日米軍も海空戦力をほぼ失っているか、戦闘に参加しないという場合だ。米軍が参戦するとなれば、国際間の協力関係は残されていると考えられ、他の国々の援軍協力を得られる可能性は残されるであろう。敵軍は、こういった戦力をほぼ全部排除し続けなければ、制海権や制空権を維持できない、ということに他ならない。在日米軍以外の別な戦力が投入されても、それらを全部排除できない限り、日本上陸などという作戦は実行できるわけがないのである。

果たして、こんなことが実行できる能力を持つ国なんてあるだろうか?
たとえ日本上陸を実現できたとしても、国際関係上で経済制裁を加えられたり、禁輸等措置を取られたりするだろうから、そうした経済活動の影響を受けずに済む国でなければ不可能である。ある国家単独であらゆる経済活動を維持でき、生産能力等も全て維持可能でなければ、国際社会から弾き出されてもいいよ、なんてことにはならないだろう。それとも諸外国が「日本占領を容認する」というような特殊な状態が有り得る、という意見があるかもしれないが、そんな想定はほぼ意味がないだろう。

日本人が邪魔なので単純に日本殲滅を考えるのであれば、上陸する必要なんてない。核爆弾でも核ミサイルでもぶち込めばいいだけだ。わざわざ「上陸」なんていう面倒な方法を選ぶ必要性なんかないだろう。


日本上陸という事態は、ほぼ非現実的である。もしも、「こうすれば日本占領が可能である」というシナリオが出せるのであれば、それを実際に提示してもらいたいね。そして、上陸部隊に対し、「クラスター弾の威力を発揮だぜ!」といのがどういう場面なのか具体的に示せるはずであり、それがあるが故に「MLRSを配備しておかねば大変なことになる!」というような意見が出るのでありましょうから。そこに至るにはどれだけの仮定条件をクリアしなければならないのか、ということが判るでしょう。それらが全て成立して初めて可能なことでしょうからね。



クラスター爆弾に関しては、既に述べた>容認する必要性は今のところ感じない


産経の記事が笑えた。

専守防衛に空白 クラスター爆弾全面禁止合意 12ページ - MSN産経ニュース

(一部引用)

 だが、専守防衛という、国土防衛力を著しく阻害する“戦略”を信じる日本の場合、クラスターの使用は海空自衛隊の装備がほぼ全滅、敵が着上陸侵攻を仕掛けてくる、いわば本土決戦の時。運用は次のように“最終兵器”としての重要性を帯びている。

 《襲来する敵に湾内遠方、次いで水際でクラスター攻撃。それでも、敵の一部は上陸に成功する。だが、上陸地点には地雷原がある。敵が地雷原を前に前進をやめれば、味方火砲・戦車が攻撃するから、敵は動きを止められず、地雷のない地点に移動・集中する。実はトラップ=ワナで、味方火砲・戦車が移動地点を狙い集中攻撃する》

=====

この想定を考えたのは誰なんだろうか、と思うけど。アホだな。
MLRSから発射されるクラスター弾は「本土決戦の最終兵器」って、本気で思っているんだろうか。

本土決戦なんて、先の世界大戦の時にさえ「できなかった」じゃないですか。実質的には、沖縄戦だけでしょ。現代ならば、本土決戦が可能だ、とでも?
まあ、元寇の時には確かに「本土決戦」だったみたいだが(笑)。

本気で本土決戦ということになれば、日本は焦土と化しているでしょ。地方都市も含めて、都市部はほぼ瓦礫の山でしょうね。そうまでして「本土決戦」を選ぶと?それは無理じゃね?そうなってしまう前に、第二次大戦の時と同様、降伏するんじゃないか?


「上陸地点には地雷原がある」って、何都合のいいことばかり言ってんだよ。要するに、この説明文の戦術は、自分の都合だけ考えた作戦だろ。これを信じて防衛作戦を考えるのであれば、相当の間抜けだな。
喩えて言えば(=最終兵器~だな、笑)、将棋で自分の手のことだけしか考えない人、みたいなもんだな。相手の手番があることも、相手がどんな手を指すかも、全くの無視だ。自分の都合だけ考えて、「実はトラップなのだー、王手飛車だよ~ん」と夢想しているのと同じだな(笑)。こういう人の場合には、きっと次のように考えるのだろう。

MLRSを将棋の駒に喩えてみると、「香車」みたいなもんだな。
で、強力な防衛陣地みたいな堅陣を組んで前方を阻み、別にわざと手薄な場所を作っておくわけだ。格言通りに香車が下段から貫いているような筋を。すると、敵軍はうっかり「香車の前に」飛び出してきて、まんまと香車の餌食になる、という寸法だ。
こんなような感じの防衛計画らしい。アホらし。
そんなにうまくいくわけないと思うけど。


湾岸戦争やイラク戦争の時のように、上陸前には敵の拠点なんかを徹底的に潰しておくだろう。日本に侵攻してくる場合でも、大体同じようなものだろう。主要な軍事施設にはミサイル攻撃や空爆が繰り返し行われ、兵器生産施設なども破壊されるだろう。破壊を防ぐ為に予め場所を移動して、隠しておいた陸上戦力がいくらか残される程度であろう。いくら日本には「MLRSがあるんだ」とか言っても、それが配備されている場所に、敵軍がノコノコと整列して上陸してくるわけないだろ。それはバカのやることだ。地雷原があって進路が封じられており、隠しておいた戦車や火砲の配備がしてあって、なおかつクラスター攻撃して下さいねと言わんばかりの配置になって、敵軍が上陸してきてくれる、なんてことがあるかっての。それは、まさに「王手飛車をお願いします」とばかりに、わざわざ相手側がハマってくれないと無理なんですって。そういう手に引っ掛かる人もいるけれど、それはヘボ将棋だから、というだけだろ。本格的に強くなれば、そんなアホな策には引っ掛かるわけがないって。


日本上陸前には、海空戦力喪失、移動できない対空兵器やレーダー基地などもほぼ喪失、空港は全て破壊され使用不能、みたいになっているだろう。日本の上空を戦闘機の護衛なしで輸送機が飛べる程度になるまでは、地上攻撃が繰り返されるであろう。
日本は地形的に大規模上陸を行える地点なんて限られている。専門的にはどう評価されているのか知らないけれども、海岸線からの平地部分が少ないことが殆どだろう。陸地部分の奥行きがない、ということ。海岸との高さの違いが大きく、狭い平地の地点には上陸できない。

どこかの上陸地点が定められたとして、そこに防衛側の陸上戦力を集中配備しておくことは難しい。仮にMLRSが生き残っていて、森林なんかに隠蔽しておけたとしても、上陸してくる海岸線の敵部隊を攻撃可能な地点に配備するのは難しい。たとえそれが実行できたとしても、移動途中なんかに敵の偵察機や衛星に発見されてしまえば、ミサイル等で攻撃されておしまいだ。

「こちら偵察機X、○○地点を鈍重なMLRS部隊がのんびり移動中、速やかに地上攻撃を要請する」
少し後に…巡航ミサイル20発が付近一帯に着弾。更に…
「地上攻撃機及び対地攻撃ヘリにより、敵地上部隊を殲滅せよ」との指令に基づき、残存兵力に攻撃が行われ全滅…
という具合になってしまい、上陸地点を攻撃可能な位置に配備するのがそもそも困難。移動中に発見されれば、意味がない。日本の上陸可能地点を全てカバーできるわけもなく、装備しているとかもバレちゃってるので、予め対策を立ててくるだけだろう。

もし新潟だの千葉だのに上陸(全くの適当です)してくるとしても、上陸地点から半径50km程度の制圧をまずやってくるだろう。
兵器を隠して配備できそうな森林地帯だのには、無差別に艦砲射撃だのミサイル攻撃だの空爆だの、いくらでもやりようがある。それと、上陸前には空挺部隊が先にやってきて、周辺の制圧が行われる可能性が高いだろう。攻撃ヘリや航空戦力の支援を受けた空挺部隊によって、隠蔽しておいた火力の多くが無力化されてしまうであろう。勿論、空挺部隊に抵抗して、全滅できればそれはそれでいいだろう。が、上陸地点を変えてくることになるし、空挺部隊が全滅するということは強力な敵部隊が展開しているということになるので、新たな空爆やミサイル攻撃等を呼び寄せることになるだろう。

なので、日本が「MLRSを配備しているから」とか「クラスター攻撃による面制圧能力があるから」とかいう、夢物語をいくら言ってみたところで、現実にその能力を発揮する場面なんてのはほぼやってこない。あるとしても、こっそりどこかに隠しておいて、敵部隊が上陸を終えた後で、どこかのキャンプ地とかに集結して油断しているようなところに、ワンチャンスでぶち込むくらいなものだろう。それができたとしても、「大勢には影響がない」程度の戦果でしかないだろう。数百人とか死傷者を出せるかもしれないが、敵主力部隊を壊滅できる程度に活躍できるようなものじゃない。


本当に「本土決戦」という考え方をするのであれば、市街地戦とか山岳戦とかで、あまり姿を見せずに攻撃を繰り返すような戦い方しかないだろう。圧倒的な戦力差があることは明白なので(米軍や多国籍軍さえ手出し不可能かそれらを排除可能なくらい、ということらしいので)、正面攻撃はほぼ無駄である。相手側にとって難しいのは、上陸作戦を実現することではなく、制圧戦に勝利することだ。沖縄戦でも、上陸前の攻撃は凄まじいものであった。艦砲射撃やロケット弾攻撃、支援火力による攻撃は、徹底して行われた。上陸そのものが困難だったわけではない。むしろ上陸後の抵抗を排除するのに、長い時間と多大な犠牲を出したのだから。結局は地上戦になってからの掃討戦が一番困難なのだ。イラク戦争だって、アフガンだって同じだ。
なので、歩兵の携行兵器で強力なものが一番効果的だ。移動が簡単だし、隠れられるし、どこに装備されていて、どの程度配備されているか、ということが敵側には中々判り難いからだ。元々正規戦闘員じゃなくても、少し経験を積ませれば、志願兵程度の錬度の低い兵力でも使えるし。MLRSや戦車が仮にあっても、志願兵には操作が難しいよ。

本土決戦というなら、「いつ、どこで、どんなふうに」攻撃されるか判らない、というのが一番効果があると思うけど。日本の地形としては山岳地帯が多く、市街地も多いので、歩兵戦力に手を焼く、ということになるだろう。そうまでして、日本を占領して、一体何の得があるというのだろうか?日本人を奴隷にでもして、農業でもさせるのか?(笑)破壊しつくされた都市に、何の価値を求める?犠牲を払う割りには、得るものなんてないとしか思えないけど。


もしも自分が世界征服可能な軍事力を持つ王だとして、国際的に孤立しようが経済封鎖されようが「そんなの関係ねー」というくらい強いとして、英米軍やその他多国籍軍を苦もなく打ち破れて、日本に上陸作戦を行って占領したいか、ということ、全然そうは思わないだろうね。こんなちっぽけな島国なんていらねー、としか思えないけど。普通は資源がゴッソリあるとか、何かの富を独り占めできるとか、そういう特別な理由でもなけりゃ、支配する意味なんかないもん。日本を支配することを考えるだけなら、上陸するなんて面倒なことをせずに、ミサイル攻撃で少々脅かして、後は完全に海上封鎖を実行すればいいだけだ。すると、放っておいても、日本側から交渉を望んでくるに決まっている。強力な軍事力があるのだから、海上封鎖するだけなら簡単だし、海と空の物資移動を完全停止させれば、日本は死んだも同然だ。

昔から、兵糧攻めというのがあるでしょ。城塞都市だの強力な城だの、攻撃すると攻撃側に大きな被害がでるに決まっているけれど、周囲を取り囲んで外部と遮断すれば、大抵は「中の人」の方から「開城しますので助けて下さい」と言いにくると相場は決まっているもの。2年くらい完全に海上封鎖をすれば、日本はギブアップすると思うよ。で、ただ待つのではなく、時々ミサイルを少々ぶち込んで、嫌がらせをする。断続的に何処かの都市を一つずつ消滅させていけばいいだけだ。そうすると、どこかの時点で、「参りました」と白旗を揚げて、投降してくるだろう。武装解除にも応じるだろう。それから悠々と乗り込んでいけばいいに決まっている。
実際に、日本はそうして無条件降伏を受け入れたではないか。

本土決戦に至る前に降伏を選ぶのであれば、意味のない装備を増やすのは愚の骨頂ですから。金の無駄。


そういうわけで、ありもしない日本上陸作戦でのクラスター攻撃、なんて寝言みたいなことを語ってもしょうがないとしか思えない。同じ火力を別な~で用意するには…、なんてのも意味はないとしか思えないね。香車の代わりに、歩だと何個必要だと思っているんだ、とか言われても、実際の盤面で自分の思惑通りに「香車の前に飛び出して串刺しに遭ってもらいます」という戦術がそう簡単に引っ掛かるとは思われないんだもの。そんな作戦を考えても、意味ないとしか思えない。
世の中、そこまでマヌケが多いとは到底思えないのだ。

はてなブックマーク - クラスター爆弾、対戦車誘導型以外を全面廃棄へ 週刊オブイェクト

毎回文句を言う人たちが大勢いるみたいですが、それがないとどうなるっての?
クラスター爆弾が装備される前には、日本の防衛はどうだったんですか?
そもそも、持ってなかったじゃないですか。それとも、持ってないと防衛できない、と?(笑)

追記:6/1 10時半ころ

JSF氏から「決定的な違いを一つだけ」語っていただきました。わざわざウチのようなオメガ級寂びれブログの要望にお応えいただき有難うございます。

一つだけのお答えは、こちらです。
>それでは、日本の防衛をクラスター爆弾が装備される前の状態に戻しても良いのですか? それはつまり、対人地雷の復活を意味するのですが。

クラスター爆弾が装備される前の日本の防衛とは 週刊オブイェクト

軍事・防衛関連の豊富な知識を有するであろう、その道のオタクの方々とかJSF氏をもってしても、これだけしか答えられない、というものと理解いたしました。

a)以前、対人地雷を保有していた
b)クラスター爆弾の方が対人地雷よりも優れた兵器だ

この2点を示したところで、クラスター爆弾保有を肯定する理由や他の防衛手段に優先することの説明にはならないわけですが、最も答えやすい部分だけ答えたのではないかと訝りたくなりますね。
別に「クラスター爆弾が保有できないなら、対人地雷に戻すぞ、それでもいいのか」みたいな、取引に応じる必要性など全くなく、単純に「いえ、どちらもいりませんが、何か?」で終わりですね。同じ予算を使うにしても、別な使い道はあると思いますので。それに、私の根本的疑問というのが、「敵の上陸作戦に対して、地雷やクラスター爆弾で迎え撃つという本土決戦」そのものであるにも関わらず、「じゃあ対人地雷に戻していいのか」という主張が全く無効であることが理解できないのかもしれませんね。産経記事に例示されたような「本土決戦」というものが荒唐無稽だとしているのだから、対人地雷などハナっから必要がないわけで。

参考までに、「○○スレをよめ」というアドバイスはありましたが、私はどこぞの掲示板を見る余裕もなければ、それほどの物好きでも暇人でもありませんので、読むつもりなど毛頭ありません。うっかりヘンなウイルスに感染しちゃったりするのも怖いですし。