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マンガ・アニメの発信力と日本文化(3)相対主義

2010年12月20日 | マンガ・アニメの発信力の理由
再び、マンガ・アニメの発信力と日本文化のユニークさとの関係の話題に戻ろう。前回、③子ども文化と大人文化の融合という項目まで論じた。

①生命と無生命、人間と他の生き物を明確に区別しない文化、アニミズム的、多神教的な文化が現代になお息づき、それが作品に反映する
②小さくかわいいもの、子どもらしい純粋無垢さに高い価値を置く「かわいい」文化の魅力
③子ども文化と大人文化の明確な区別がなく、連続的ないし融合している
④宗教やイデオロギーによる制約がない自由な発想と表現と相対主義的な価値観
⑤民族や言語、階級などによって分断されない巨大で知的な庶民を基盤にする

今回は、④と「日本文化のユニークさ」四項目との関係についてだが、日本文化に見られる相対主義的な価値観については何か所かで多少は触れてきた。たとえば次のようなエントリーなどだ。

世界カワイイ革命(2)
日本文化のユニークさ07:正義の神はいらない
日本文化のユニークさ13:マンガ・アニメと中空構造の日本文化

このような絶対的なイデオロギーを嫌う日本文化とマンガ・アニメの関係は、増田悦佐が『日本型ヒーローが世界を救う!』のなかで論じている。

著者によれば、日本のマンガ・アニメの特徴は、集団的英雄像と善悪を相対化する視点だという。現実は、たったひとりの英雄が大衆の無気力や妨害をはねのけて巨悪と対決するおとぎ話ではない。また戦争状態にある集団同士は、一方が完全に正義を体現し、他方は完全に悪を体現するなどということはありえない。そのような相対的な現実を日本のアニメが語り始めた。

日本のアニメ・マンガは、人類全体にとっての優れた無形の財産を形成しつつある。それらが世界に発するメッセージは、「善と悪」、「敵と味方」といった二元論に振りまわされない物語展開の中に隠されているという。その素晴らしい実例が、『EMOTION the Best GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 [DVD]』だという。そのラストシーンで草薙素子は、悪役人形つかいの提案を受け入れて、一体化していく。

日本のマンガには、たとえば『らんま1/2 (少年サンデーコミックス)』など、男性と女性の役割がコロコロと入れ替わることをネタにした名作が多い。この役割転換の発想は、戦争での敵・味方を相対化する視点につながるという。

この自由自在の視点の転換が、知識人主導型の社会(アメリカなど)では危険思想に感じられ、脅威になっているのではないかという。そういえば、アメリカン・ヒーローが一方的に正義を振りかざすのは、アメリカの国際社会での態度に似ているかもしれない。同じことは最近の中国にも当てはまるだろう。

では、このような日本のマンガ・アニメの特徴が、「日本文化のユニークさ」四項目とどのようにつながるのか。これについては、次回ゆっくり論じよう。

《関連図書》
★『世界カワイイ革命 (PHP新書)
★『ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)
★『日本の曖昧力 (PHP新書)

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