うそでしょーー・・・

最近、テレビや雑誌で舘野泉氏の名前をよく見かける。
脳溢血で倒れ、右手が麻痺したにもかかわらず
左手だけで演奏活動を再開したピアニスト。
この人の病状と活動内容をきくたびに
私は違うピアニストに思いを馳せてしまう。

スルタノフの演奏で思い出すのは、
1996年に来日した時に弾いた「熱情」。
びっくりするようなスピードで弾き始めた最終楽章、
最後に向かって加速する曲なのに
こんなに速く弾き始めちゃったちゃったら
最後まで弾ききれないんじゃないかと思ったのに
彼はスピードをゆるめることなく弾ききってしまった。
その演奏を「鬼神が乗り移ったような」とか表現すれば簡単なんだろうけど、
スルタノフには何もついていなかった。
それがスルタノフという人のピアノだった。

対照的に、「幻想即興曲」。
数種類楽譜があってどれを採るかで印象がまったく変わるこの曲に
わざと装飾音たくさんつけて、楽譜の問題なんてどうでもいいことにしてしまった。
スルタノフがこの曲を弾く時、
彼ならではのスピードも音量も出てこない。
必要以上に速くなく、静かに繊細に、
もしかしたらショパンはこんな風に弾いてほしかったんじゃないか
と思えるような弾き方をしていた。
たくさんのピアニストがこの曲を弾いているけど、
私はスルタノフの弾いたのが一番好き。

1995年のショパンコンクールでは1位なしの2位だった。
私はそのコンクールを聴きにワルシャワに行っていた。
中学生の頃から10年間、
「ポーランドに行くこと・ショパンコンクールを聴きに行くこと」が夢だった私にとって
この旅行は一生忘れられない思い出になったわけだが、
スルタノフは、その中にいる。

CDで聴いたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。
このラフマニノフを、いつかコンサートで、生で聴きたいと思っていた。

そのスルタノフが、硬膜下血腫で左半身不随になったと聞いたのは4年前だったと思う。

動く右手だけでピアノを弾き始めたという話を嬉しく聞いた。
奥様が左手のパートを弾いているという話を微笑ましく思った。
そして、舘野泉氏の回復ぶりを見て、
もしかして、スルタノフもあんなふうに(ラフマニノフは無理でも)活動再開して
また日本に来てくれるかもしれない、と思ったのだった。

昨日、ぼんやりネットサーフィンしていて
彼が亡くなったという記事が目に飛び込んできた。
アレクセイ・スルタノフ死去。
享年35歳。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 2 )
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コメント
 
 
 
素晴らしい経験 (FioriMotoko)
2005-07-12 09:48:40
初めまして。スルタノフのことでトラックバックを送らせていただきました。



スルタノフ、何度もご覧になっているんですね。



> 1995年のショパンコンクールでは1位なしの2位だった。

> 私はそのコンクールを聴きにワルシャワに行っていた。



ああ、一瞬ぼーっとしてしまいました。

素晴らしい演奏とあの熱狂を心に刻んでこられたのですね。



偉大な存在を失ってしまいました。残念でなりません。 
 
 
 
>FioriMotokoさん (かねきち)
2005-07-13 06:54:10
コメントとTBありがとうございます。

1995年のコンクールのことは、思い返すのも苦しい思い出になってしまいましたが、

この苦しさから逃れたいとは思わないのが不思議です。

あの時聴いた2番のコンチェルト、一生忘れません。
 
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追悼 アレクセイ・スルタノフ (Momento musicale)
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Unbeliavable... (Alexei Sultanov Forever)
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