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黄土高原で聞いたコーランの教え・・・中国のアラビア語学校

2014-05-17 | アジア



前回と同じく、中国ムスリム研究会編「中国ムスリムを知るための60章」の中の松本ますみ氏の著作をご紹介します。

リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。


                  *****


                 (引用ここから)


「黄土高原で聞いたアラビア語・・民間のアラビア語学校」


「学ぶことはムスリム・ムスリマ(イスラム女性)の使命」とは、ハディースに伝えられる言葉である。

アッラーがなぜ人を地上に存在せしめ、人にどのような命令を授けているのかを知るために、アッラーが予言者ムハンマドにアラビア語で預けた「コーラン」の内容をアラビア語で知ることは欠かせない。


モスクに付属するアラビア語学校は、イスラームの内容も教える。

ここはアラビア語とともにイスラームの世界観、倫理観を教える人間教育、人格教育の場となっている。

それのみならず、ムスリム意識を養い、連帯意識を養う場でもある。


現在、中国・西北地方(寧夏・甘粛・青海・内モンゴル)や西南地方(雲南)を中心に、多くの民間のアラビア語学校が存在する。

民間学校の修業年限は4年が多い。

また北京をはじめとして各地に「イスラーム教経学院」という名称の「中国イスラーム教協会」が運営する公認アラビア語学校もある。

「イスラーム教経学院」は、高度の宗教指導者を養成するエリート校として、敬虔なムスリム青少年の垂涎の的である。

これらは4年~5年の修業年限である。




中国では、アラビア語教育は16世紀ごろから、「経堂」というモスク付属の学院で系統的に行われていた。

中国ムスリムが多く学んだのは、アラビア語、ペルシア語と、高度なイスラーム神智学であった。


その一方で、「経堂」では漢語の読み書きはほとんど教えられなかった。

この「経堂」は、20世紀初の近代化の波の中で批判の矢面に立たされることになる。

批判を行った近代イスラーム知識人が危惧したのは、母語の漢語の読み書きもできず、精神修養のことや難解な哲学ばかり論じ、国家や科学について教えないのでは、これからの時代、ムスリムは中国で生き残っていけないのではないかということであった。


1920年代には、これら近代イスラーム知識人が、近代的アラビア語学校を作り始めた。

これらの学校では近代的イスラーム学と共に、漢語の読み書きと、科学、政治、法律などを教える世俗教育と宗教教育を融合させたカリキュラムが備えられていた。

1930年代から1940年代には、この種の近代的学校がとくに沿海地方や西南地方のイスラーム教育のトレンドとなった。

もちろん同時並行的に伝統的な経堂教育は、各地のモスクで依然として続けられていた。

1949年の中華人民共和国の成立後しばらくは、中国共産党は既存のアラビア語学校に手をつけることはなかった。

しかし1957~1958年の反右派闘争、1959年の「チベット動乱」を契機とする反宗教キャンペーンのあおりを受け、1976年の文化大革命の終息まで中国のイスラーム界全体は大打撃を受けた。

信仰に従うこと、ムスリムであることが全否定されたのである。


その反動もあって、1979年の改革開放後、宗教狂熱が高まる中、各地でモスクが再建された。

前述の公認の「イスラーム教経学院」のほとんどは1980年代に開学し、多くの優秀なムスリム学生を集めるようになった。

しかし公認の「イスラーム教経学院」だけでは、多数の入学希望者をさばききることはできなかった。
学歴の条件が厳しかったからである。

学歴・学力が足りないムスリムのイスラーム教育への渇望を満たしたのが、民間のアラビア語学校である。

民間のアラビア語学校は、アホンや退職民族幹部といった地域の実力者が中心となって設立に動き、1980年代にジャマーアにでき始めた。

経費は、喜捨で賄われた。

年を追うごとに入学希望者を増やし、中には立派な校舎と寄宿舎を持つまでに成長した学校もある。


                (引用ここまで)

(写真は同書より・アラビア語のコーラン)

                 *****


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