国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

日本国有鉄道新線建設補助特例措置法案について

2014-08-17 12:03:38 | 国鉄関連_国会審議
昭和36年の日本国有鉄道新線建設補助特例措置法案について、書かせていただこうと思います。

終戦から16年、講和条約の発効から9年、国内道路事情は変わらず、まだまだ未舗装の道路もちょっと路地に入れば未舗装の道があったものです。
わたしが小学生に入った昭和42年でも、一部の道では未舗装のままとなっており雨の日などは車が跳ね上げる泥で服が汚れるなんてことは当たり前、そんな時代でしたから、それより8年ほど前はかなりの地域でそういった未舗装の道路もあったのではないかと推測できます。
当然のことながら、貨物輸送も旅客輸送も、陸上輸送に関しては国鉄の独占であり、終戦直後の物資にナイナイ尽くしで大幅赤字だった国鉄は、独占輸送のおかげもあって、昭和30年代には黒字決算を続けることとなり、昭和35年度の決算を会計検査院の資料から引用させていただきますと。

 昭和35年度決算についてみると、営業損益は81億6946万余円の利益、営業外損益は27億0121万余円の損失で、差引き54億6824万余円の純利益を計上している。これを前年度の営業利益27億9115万余円、営業外利益6億7424万余円計純利益34億6539万余円に比べると、営業利益において53億7831万余円の増加、営業外利益において33億7545万余円の減少で、純利益においては20億0285万余円の増加となっている。
 営業利益が増加したのは、経済の好況を反映して輸送量において旅客8.5%、貨物7.8%が増加したなどのため、営業収入は4074億6858万余円となって396億7409万余円10.7%が増加したのに対し、一方、営業経費は3992億9911万余円となり、342億9577万余円9.3%の増加にとどまったことによるものである。経費増加のおもなものは人件費200億8265万余円、利子及び債務取扱諸費62億3715万余円である。

おり、毎年黒字決算を続けるとともに、積極的に設備の改良などに投入する原資を得ていたことがわかります。
当時の国鉄は、晩年のお荷物ではなく間違いなく、日本経済の牽引車としての役割を果たしていたといえます。

そんな中でも、当時からローカル線の建設は幹線の培養線的性格はあるとしても、さほど儲からない路線はその後国鉄の経営的には負担になると考えたのでしょうか。
昭和35年3月22日に開通した指宿枕崎線(山川~西頴娃間) については、基準運賃の1.75倍の運賃設定を図りました、その後この運賃制度は、日本国有鉄道新線建設補助特例措置法が制定されたことで、廃止となっているのですが。

日本国有鉄道新線建設補助特例措置法と言う法律ですが、かなり酷いもので、昭和36年から40年までの時限立法なのですが、建設費の補助ではなく建設に伴う利子相当分を補給するというものでした。
当然のことながら、建設は引き続き自前なんです。

そのうえ、法律では、営業開始後、利益が出たら利益が出た分だけ補助金を減らすという、国鉄には、相当不利な内容なんです。しかし、当時の国鉄は、国の経済発展を支えているという自負がありましたので、こうした条件を受け入れたのだと思います。

以下に、当時の国会審議(衆議院本会議)の内容と、法案をアップさせていただきます。

 日程第一 日本国有鉄道新線建設
  補助特別措置法案(内閣提出)
○議長(清瀬一郎君) 日程第一、日本国有鉄道新線建設補助特例措置法案を議題といたします。
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。運輸委員長三池信君。〔報告書は会議録追録に掲載〕
  〔三池信君登壇〕
○三池信君 ただいま議題となりました日本国有鉄道新線建設補助特別措置法案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、本法案の趣旨を簡単に申し上げますと、御承知のごとく、国鉄の新線建設は、鉄道建設審議会の議を経て、公正かつ合理的に検討の上、鉄道敷設法別表に掲げる予定鉄道線路のうちから順次建設されておりますが、何分にも、これらの新線は、開業後も長期にわたり赤字であり、これが国鉄経営上大きな負担となっておる実情であります。
 本法案は、当面、国鉄の経営上の負担を軽減し、その経営の健全化に資するため、政府は、昭和三十五年度以降の建設に要した資金につき、その利子相当分を限度として、昭和三十六年度から四十年度までの間に限り補助することができることといたし、昭和三十六年度においては三億八百七十五万円の新線建設費補助金を計上いたしております。
 本法案は、去る二月二十八日本委員会に付託され、次いで、三月三日政府より提案理由の説明を聴取し、自来、五回にわたって質疑を行ない、慎重審議をいたしましたが、その詳細は会議録をごらん願います。
 かくて、五月十六日、有田喜一委員より、附則を「この法律は、公布の日から施行する。」に改める旨の修正動議が提出され、修正案並びに原案について討論に入りましたところ、自由民主党を代表して高橋清一郎委員、日本社会党を代表して久保三郎委員、民主社会党を代表して内海清委員より、それぞれ次のような希望を付して賛成の意見が述べられました。
 すなわち、公共的性格を持つ国鉄としては、国民経済の発展、地方資源の開発、交通経路の整備上、新線の建設は当然であるが、一方、また、多数の赤字路線が国鉄経営上の大きな負担となっていること、及び、現在の施設に対する輸送力増強が必須かつ緊要であること等を参酌して、その計画決定にあたっては、正確な調査の上、慎重に考慮を払うべきである。なお、一たび決定の上、実施の段階にあたっては、政府の一段の助成措置を要望いたしております。
 かくして、修正案並びに修正部分を除く原案について採決の結果、本法案は全会一致をもって修正議決すべきものと議決いたした次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
 日程第二 機械類賦払信用保険特別会計法案(内閣提出)
 日程第三 企業資本充実のための資産再評価等の特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(清瀬一郎君) 日程第二、機械類賦払信用保険特別会計法案、日程第三、企業資本充実のための資産再評価等の特別措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事鴨田宗一君。



法律第百十七号(昭三六・六・七)

  ◎日本国有鉄道新線建設補助特別措置法

1 政府は、日本国有鉄道に対し、昭和三十六年度から昭和四十年度までにおいて、日本国有鉄道が昭和三十五年度以降当該年度の前年度までに鉄道敷設法(大正十一年法律第三十七号)別表に掲げる予定鉄道線路の建設に要した資金について、運輸省令で定めるところにより計算して得た当該年度の前年度分の利子の額に相当する額の範囲内において、予算で定めるところにより補助することができる。

2 前項の規定による補助(以下「新線建設補助」という。)に係る予定鉄道線路について、営業の開始後、運職省令で定めるところにより計算して得た利益を生じた場合は、その利益の額に相当する額を翌年度の新線建設補助に係る前項の利子の額から控除するものとする。

3 日本国有鉄道は、前項の場合において、その利益が当該線路につき最初に新線建設補助が行なわれた年度から起算して十五年度以内に生じたときは、その翌年度において、政府に対し、その利益の額の二分の一を下らない金額を、運輸省令で定めるところにより計算して得た当該線路に係る新線建設補助の額の合計額に相当すると認められる額に達するまで還付しなければならない。

4 運輸大臣は、前三項の運輸省令を定めようとするときは、大蔵大臣と協議するものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。

(大蔵・運輸・内閣総理大臣署名) 

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