国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

昭和33年10月7日 第30回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号から抜粋 第3話

2023-06-03 23:30:49 | 国鉄関連_国会審議

今回も、引き続き昭和33年10月7日開催の、社会労働委員会のは無しから抜粋させていただきます。

ここで、注目すべきは全逓も動労や国労と同じように解雇者を専従役員としており、それに対して当局も団交拒否を貫いており、昭和30年初めの頃は、組合に対する当局の力も強く、良い意味での緊張関係は有ったかと思われます。
なお、当時は全電通(現在のNTT労組)も全逓と共に強力な闘争を行っていました。

その辺の事情も考慮しながら私見を含め述べさせていただこうと思います。

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今回も、国鉄関係の話が出てこないのですが、一連の流れの中で官公労と呼ばれた郵政の問題を取り上げていますので、広い意味での労働運動という視点でご覧いただきたいと思います。

郵便の遅配の原因は、順法闘争という名のサポタージュ、そして非常勤職員に仕事を教えないという二つの要素

郵便配達は、私も経験があるのでよくわかるのですが、仕事としては正直単純というと語弊がありますが、考えるよりも慣れろの業務です。
一つの町名をいくつかの配達区に分けてその区を徹底的に回らせる。
そうして、徐々に配達区を広げて行く。これを「通区」というのですが、代替一つの班で10個くらいに町名を区分しており、最低でも三区程度回れることが要求されるというものでした。
かくいう私は、完全に当時はやる気もない職員でしたので、積極的に通区を覚える気も無く、ただひたすら一つの区だけを回っていたものです。
以上は余談ですが。

配達というのは、時には同じ住所が並んでいる場合もあり、昭和30年代では現在のように「○丁目○番○号」と行った新住所区分ではないので、自ずと家毎に覚えるような形となりますので、熟練した配達員でないと中々スムーズに配達できないわけです。

そうした、熟練職員が管理者や、新たに雇用した非常勤職員に配達先の住所を教えなければどうなるか。
もう、付近まで行って誰かに聞きながら配達する・・・みたいなことになる訳ですが、実際にそのような事例が起こってしまうわけです。

これを見ますと、全逓は当局が団交に応じないから、自分たちも36条協定を拒否していると主張しており、それに対して当局は、解雇者が専従役員をして居るからだと発言しています。

この例は機労(後の動労)が専従役員を解雇者にしたことと同じ理由(解雇者を違法ストの首謀者として解雇しようにも解雇処分できない。職員としての実態がないわけですから)であり、同様に国労でもこの方法で解雇者を専従役員にしたわけです。国労の場合は規模も大きいこともあり、当局は組合費の徴収などの24条協定の破棄で対抗することとなりましたが、この辺の話しは又別の機会にでもお話をさせていただきます。

以下は、国会での答弁の様子です。

○大坪委員 前略・・・・、新聞によりますと、組合側は責任は当局にある、当局が団交に応じないからだ、というようなことを言っておる。この点は一体どうなのですか。もちろん拒否されておるだろうと思う。私は大体わかっておる。わかっておるが、これを天下に声明するくらいの気持で、この問題に対する郵政当局の見解なり立場なりをここで一つはっきり言っていただきたい。
○佐方説明員 先ほど申し上げましたように、解雇された三役を再選いたしてきておりますので、われわれとしては団体交渉を拒否しておる。これに対して組合は三六協定の拒否をしてきておる。三六協定を拒否いたしますならば、必要な場合には非常勤者を用いて処理していけば業務の運行はできるわけでございます。にもかかわりませず業務の運行を阻害するような、たとえば非常勤者に仕事を教えないとか、あるいは所定の勤務時間中に平常よりも能率を落した仕事をするということになりますと、決してそのことはわれわれの責任あるいは政府の責任という問題ではなく、やはりまじめに働いてもらうということを怠っておる側にあるだろうと思うわけでございます。

更に、この後もこうした違法状態を全逓幹部が行っていることに対して非常に危惧を持っています。
少なくとも、国鉄では昭和32年の新潟闘争等の様子を見ているわけですので、公労法四条三項を無視した行為を厳しく指摘しています。

公共企業体労働関係法(現・国営企業労働関係法 法令番号:和二十三年十二月二十日法律第二百五十七号)

第四条 職員は、組合を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。但し、管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取扱う者は、組合を結成し、又はこれに加入することができない。

2 前項但書に規定する者の範囲は、政令で定める。

3 公共企業体の職員でなければ、その公共企業体の職員の組合の組合員又はその役員となることができない。

と有るように、「職員でなければ、その公共企業体の職員の組合の組合員又はその役員となることができない。」という法令違反をしているわけで、これに対して全逓を厳しくして居ることになります。

国鉄労組に倣った、全逓の解雇者を専従役員にすることを強く批判

○大坪委員 私は今の郵政当局の団体交渉拒否の態度はそれでよいと思いますが、もともと全逓もそうですが、これは国鉄あたりずいぶん改まりましたけれども、総評の指導するものは、私はこう言った方がよいと思う、それは法律無視なのです。法律を無視しよう、法律や国の権威、行政権の権威あるいは政府の権威というものを国民の目の前に失墜して示そう、そうしてそれを既成事実にしようという意図がある。これは明らかである。公労法というものは今後いろいろ改正せられる時期もあるかもしれません。あるかもしれませんが、現在は厳として国会において審議されてできたりっぱな法律なんです。その法律に掲げてある四条三項の規定というものは、これは国民、特に公労法に掲げてある事業に従事している人たちは十分知っておるし、知っておらなければならぬし、また守らなければならぬ。そうでなければ法の秩序は成り立たない。また事業の秩序が成り立たないのであります。これは昨年の国労あるいは機労の前例もあることであるから、全逓の幹部の諸君にいささかの良識があれば、こういうことをやれないはずなんです。それをあえて四条三項に違反する決議をとって、解雇された組合員を再び責任ある役員に選任をしておる。これは明らかに法律無視であります。こういう法律無視を放任しておけば、一切私どもは措置はつかなくなると思うのでありますから、団交拒否の態度を現在郵政当局がとっておられることは非常にけっこうだと私どもは思うのであります。ともすれば世の中の論議というものは非常に俗調に陥ってしまって、安易につくことを奨励する場合がある。そういう世の中の俗論に聞いて安易な措置をとるということになると、これは法律を守るべき立場にある政府当局自体が法律無視という結果に陥ると私は思う。単に全逓の幹部が法律を無視した、そのために法律の秩序が乱れ、職場の秩序が乱れているのに、安易にものを解決づけるということのためにこれを認める??表にでも裏にでも、暗にでも認める措置をとれば、政府当局自体が法律無視の結果になるのであります。この点が私は十分に考慮しておいてもらわなければならぬ点だと思います。

と有りますように、ここで国鉄では、解雇者を専従役員として置いた措置に対して、昭和32年10月には、以下のような措置を取っており。
そうした経緯も全逓は知っていたであろうにもかかわらず、こうした愚挙に出た事を強く非難しています。

ちなみに、国鉄が行った、24条協定破棄の内容は下記の通りです。

当局、組合費の控除廃止 10/23

国鉄では、支給した10月分の給与から、労基法24条に基づく「24控除に関する協定」を破棄、組合費などのチェツクオフ(控除)を止めた
10月分の給与から天引を止めたのは、本社と全国27管理局のうち23局であるが、これにより、国鉄労組は毎月約1億円近く、機関車労組は約1千万円の組合費と労慟金庫の預金、返済金および利息、定期積立金などを組合側の責任で集めなけれぱならなくなり、各分会ごとに徴収責任者をおいて集金を行つている
また一方、今度の協定破棄によつて、当局側も宿舎費、光熱費、クラブ費などの天引はできなくなったので、当日給与と一緒に納付書を交付したが、集金には約一週間かかるであろうとされている

結局、この措置に対しては国労は数ヶ月行ったものの白旗を揚げる形で敗北するわけですが、全逓が面子にこだわったのではないかという意味合いの発言をしているのは興味深いところではあります。

さらに。ILO条約批准を危惧することに

らに、以下のようにILO条約八十七号に関する批准を行うべきとして行動していることについても問題視しています。
ちなみに、日本では、1965年6月に批准されており、2023年現在157カ国が批准しています。

参考:ILO条約八十七号

さて、ここで言われる、ILO条約87号でもとりわけ、以下の第3条が公労法四条三項で問題になったのではないかと思われます。その条文をご覧いただこうと思います。

結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第87号)

第 三 条

1 労働者団体及び使用者団体は、その規約及び規則を作成し、自由にその代表者を選び、その管理及び活動について定め、並びにその計画を策定する権利を有する。
2 公の機関は、この権利を制限し又はこの権利の合法的な行使を妨げるようないかなる干渉をも差し控えなければならない。


特に第2項で、職員ではない専従員が組合の役員をしていることは、公労法第四条三項の。「公共企業体の職員でなければ、その公共企業体の職員の組合の組合員又はその役員となることができない。」という条文は、一項の「自由にその代表者を選び、その管理及び活動について定め、並びにその計画を策定する権利を有する」に対して権利の合法的な行使を妨げる行為であると解釈されるわけで、非常に問題視してると言えます。

以下は、再び「大坪委員」の質問を示したものです。

 ただ世上言われているところでは、全逓は最近ILO条約八十七号、これの批准促進運動をあっちこっちでやっておるわけでありますが、これが促進されて、それに伴って公労法四条三項も削除されるというような法律改正がやがてなされるであろう。従って現在の違法状態をそのまま続けて無期限定時退庁の戦術を続けておって、結局法律改正を待って、今までの違法行為を合法的なものにする、そういう作戦もあるやに伝えられておる。こういったことは一応考えられそうなことであります。どうも世の中では悪いことをしてやがて、次の皇太子様の御結婚等によって大赦や特赦を願うというような不心得者もあるのでございますが、こういう犯行者と、これは一思理が通じておるもののように思われるのであります。従ってこういうことは私は許すべきではないと思います。これは労働大臣にお伺いいたしますが、先般の本会議の席上で一応この問題については滝井先生の御質問にお答えになったのでありますが、ここでもう一ぺん、私はそういうように思うのでありますが、そういう大赦、特赦を待つ犯行者と同じような心理を持つことに力をかすようなことにならぬようにしなければならぬと思うのであります。ILO条約、これは従来から倉石労働大臣もそうでございましたし、前の石田大田もそうでございましたが、ILO条約八十七号の批准については、労働問題懇談会の結論待ちだということが言われております。その小委員会が一応結論を出して、公労法四条三項はILO条約八十七号に抵触するようだという結論を出したようでありますが、それが新聞紙上に発表されましたがために、もうすぐにでもILO条約は批准され、四条三項は削除されなければならぬ、やがて削除されるであろう、こういう感じを持っておる者が国内に相当あったのではないか、そういう期待を今のような大赦、特赦待ちのような人たちが持っておるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、この点について重ねてでありますが、労働大臣の御見解を伺いたいと思います。

国鉄と同じ官公労としての動きとして、見ていければ幸いです。

続く

 

以下は、議事録から抜粋したものです。

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○大坪委員 私は先刻も申し上げましたように仕事が仕事でありますから、そうしてこれが不正常化になれば、直ちに国民大衆が迷惑をするのでありますから、これをすみやかに正常化するような方向に一つ郵政当局としても万全の措置を講じてもらわなければならぬ、こう思うのであります。ところが、先刻もちょっと触れましたが、新聞によりますと、組合側は責任は当局にある、当局が団交に応じないからだ、というようなことを言っておる。この点は一体どうなのですか。もちろん拒否されておるだろうと思う。私は大体わかっておる。わかっておるが、これを天下に声明するくらいの気持で、この問題に対する郵政当局の見解なり立場なりをここで一つはっきり言っていただきたい。
○佐方説明員 先ほど申し上げましたように、解雇された三役を再選いたしてきておりますので、われわれとしては団体交渉を拒否しておる。これに対して組合は三六協定の拒否をしてきておる。三六協定を拒否いたしますならば、必要な場合には非常勤者を用いて処理していけば業務の運行はできるわけでございます。にもかかわりませず業務の運行を阻害するような、たとえば非常勤者に仕事を教えないとか、あるいは所定の勤務時間中に平常よりも能率を落した仕事をするということになりますと、決してそのことはわれわれの責任あるいは政府の責任という問題ではなく、やはりまじめに働いてもらうということを怠っておる側にあるだろうと思うわけでございます。
○大坪委員 私は今の郵政当局の団体交渉拒否の態度はそれでよいと思いますが、もともと全逓もそうですが、これは国鉄あたりずいぶん改まりましたけれども、総評の指導するものは、私はこう言った方がよいと思う、それは法律無視なのです。法律を無視しよう、法律や国の権威、行政権の権威あるいは政府の権威というものを国民の目の前に失墜して示そう、そうしてそれを既成事実にしようという意図がある。これは明らかである。公労法というものは今後いろいろ改正せられる時期もあるかもしれません。あるかもしれませんが、現在は厳として国会において審議されてできたりっぱな法律なんです。その法律に掲げてある四条三項の規定というものは、これは国民、特に公労法に掲げてある事業に従事している人たちは十分知っておるし、知っておらなければならぬし、また守らなければならぬ。そうでなければ法の秩序は成り立たない。また事業の秩序が成り立たないのであります。これは昨年の国労あるいは機労の前例もあることであるから、全逓の幹部の諸君にいささかの良識があれば、こういうことをやれないはずなんです。それをあえて四条三項に違反する決議をとって、解雇された組合員を再び責任ある役員に選任をしておる。これは明らかに法律無視であります。こういう法律無視を放任しておけば、一切私どもは措置はつかなくなると思うのでありますから、団交拒否の態度を現在郵政当局がとっておられることは非常にけっこうだと私どもは思うのであります。ともすれば世の中の論議というものは非常に俗調に陥ってしまって、安易につくことを奨励する場合がある。そういう世の中の俗論に聞いて安易な措置をとるということになると、これは法律を守るべき立場にある政府当局自体が法律無視という結果に陥ると私は思う。単に全逓の幹部が法律を無視した、そのために法律の秩序が乱れ、職場の秩序が乱れているのに、安易にものを解決づけるということのためにこれを認める??表にでも裏にでも、暗にでも認める措置をとれば、政府当局自体が法律無視の結果になるのであります。この点が私は十分に考慮しておいてもらわなければならぬ点だと思います。しかし私は先刻も申し上げましたように、こういう大事な公共事業、国の事業でありますから、どうか一日も早く正常化してもらいたい。これには何としても全逓の役員あるいは全逓大衆が、行きがかりや面子というようなものにとらわれないで、国鉄や機労が良識を発揮したごとく、ここでやはり良識を発揮してもらって、特にこれときわめて深い関係のあるであろうと思われる国会議員の社会党の諸君もこういう点に一つ御協力を下すって、そして正常化に努力をされたい。昨年の秋のいわゆる国労に対する藤林あっせん案の線まで、すなわち団交態勢を作る、そういうところまで全逓の諸君が進歩してもらうということを念願してやまないのであります。どうも今日の実情は全逓の幹部三人ばかりのために法律秩序が乱され、国民が非常な迷惑をこうむっておる。従ってこれを正常化するためには、今三十ばかりの職場において三六協定が結ばれて、そこでは業務が正常に運営されておるそうでありますから、全逓の幹部の諸君が良識を発揮して反省をしてくれなければ、職場における三六協定を強力に一つ押し進められて、下部、末端から郵政業務の正常化をはかるということに努力を願うよりほか道はないのじゃないか、こういうように思います。この点についての御答弁は求めませんが、どうか一つそういう点についての御努力を願いたいと思います。


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