国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

昭和33年10月7日 第30回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号から抜粋 第1話

2023-05-06 09:35:16 | 国鉄関連_国会審議

現在、以下のサイトで、新潟闘争に関する記事を連載しているのですが、それと連動して当時の衆議院 社会労働委員会の議事録を抜粋して解説を加えていきたいと思います。

国労内で民同右派による分裂運動(新潟闘争前) - 日本国有鉄道労働運動史【鉄労視点】

なお、議事録自体は非常に長いので、複数回に分けてアップさせていただきます。

特に社会労働委員会ですので、国鉄以外(郵政省)などとの比較も含めてのお話になることを最初にお断りしておきます。

 

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議事録【抜粋】衆議院 社会労働委員会

昭和三十三年十月七日(火曜日)
    午前十一時六分開議
 出席委員
   委員長 園田  直君
   理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君
   理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君
   理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君
   理事 滝井 義高君
      加藤鐐五郎君    川崎 秀二君
      河野 孝子君    齋藤 邦吉君
      志賀健次郎君    田邉 國男君
      中村三之丞君    中山 マサ君
      二階堂 進君    古川 丈吉君
      柳谷清三郎君    山田 彌一君
      亘  四郎君    赤松  勇君
      伊藤よし子君    大原  亨君
      岡本 隆一君    河野  正君
      多賀谷真稔君    堤 ツルヨ君
      中村 英男君    八木 一男君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣        倉石 忠雄君
 出席政府委員
        厚生政務次官         池田 清志君
        労働政務次官         生田 宏一君
        労働事務官
        (大臣官房長)        澁谷 直藏君
        労働事務官
        (労政局長)         亀井  光君
        労働基準監督官
        (労働基準局長)       堀  秀夫君
        労働事務官
        (職業安定局長)       百田 正弘君
 委員外の出席者
        郵政事務官
        (大臣官房人事部長)     佐方 信博君
        日本国有鉄道総裁       十河 信二君
        日本国有鉄道副総裁      小倉 俊夫君
        日本国有鉄道常務理事     吾孫子 豊君
        専  門  員        川井 章知君
    —————————————
本日の会議に付した案件
 労働関係の基本施策に関する件
 台風第二十二号による罹災者の実情について、
 派遣委員より報告聴取

○園田委員長 これより会議を開きます。
 先般台風第二十二号による罹災者の実情調査のため、現地に委員を派遣いたしたのでありますが、この際各班の派遣委員より順次報告を承わることにいたします。第一班、河野孝子君。

注:昭和32年9月26日から27日未明に掛けて静岡県伊豆半島付近に上陸した台風22号で、「狩野川台風」と言う名称がつけられている。この台風ににより静岡県の狩野川は10余箇所で決壊、氾濫したといことで、その現地調査の報告が続きます。

国鉄にあっても、甚大な被害があり、弊サイト「国鉄があった時代」では以下のように記述されています。

台風22号で国鉄線マヒ 9/26

夜半関東南部に上陸、27日早朝にかけ鹿島灘から太平洋に抜けたが、国鉄では、釧路から福知山まで16管理局1,522吽にのぼる被害をうけた
鶴見川の氾濫により27日夕刻まで不通だった東海道をはじめ、東京を起点とする全幹線がストップ、東京近郊の国電も私鉄もそのほとんどが機能を失い一大混乱をきたした

伊豆箱根鉄道 狩野川台風直撃により被害を受けたが10日で復旧 9/26

以下 中略

 台風被害についての記述が続きますので、労働運動の所まで省略させていただきます。

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以下では、労度運動に関する議題を振られているのですが、昭和30年代は非常に多くの労働運動が行われていた時代であり、その中心をなしていたので総評であり、特に官公労と公務員の労働組合にその傾向が顕著と言えます。

以下では、日教組が勤務評定反対闘争に反対することへの総評及び日教組に対する苦言がなされているのですが、こうした事例を考えるとき、単純に対組合と言う視点で考えるのではなく、その当時の状況というものも十分理解していないといけないわけですが。

昭和27年の講和条約にあって、全面講和か部分講和かで世論が分断した時期であり、これにより所属する組合にあっても、考え方を相違する人はそれぞれ己が信じる組合に参集することとなりました。更に、勤務評定反対闘争は次第に、本来の目的から離れて、「勤評は戦争への一里塚」と言う言葉に代表されるように、政治的要素の具として扱われることもでていることも知る必要があろうかと思われます。

ここで質問している大坪委員は、内務省出身。警保局を経て第37代島根県知事、大阪府警察局長、第28代長野県知事を経て公職追放、昭和30年に初当選したとされていますが、ここで指摘しているように、組合に対しては非常に厳しい論調で、モッブ(モブ)として、日教組を非難しています。

特に以下のように傍線を引いたところは、今後も重要な要素ではないかと思ってしまうわけです。

最近労働組合等の行われます実力行使の方法というものは、労使の間において世上認めらるべき正常と称してよろしい程度の実力行使のらちをはるかに逸脱して、他人に迷惑をかけるというような事柄が常だと言っていいくらいなされている。だれであっても、正当防衛とか緊急避難の場合はともかくでありましょうが、自分の権利を行使する上に当って第三者の法益を侵害していいということはない、それは許されないということは一般原則といわなければならぬ

ただ、こうした違法と言える闘争が日教組に限らず、国鉄・郵政・電電にあっても同様に行われる下地が出来上がっていくことになります。

特に国鉄の場合は列車を止めると言う行為は当時、殆どの代替機関を持たない時代に有っては死活問題であり、特に貨物輸送が止まると言うことは経済が止まるわけです。

こうした事実に対して、労働大臣に質問をしているわけですが、当時の政治家の考え方を総括すれば、以下のような大臣の発言は非常に含蓄があるものと言えますし、総評と対する形で同盟が誕生するのは、ある意味では当然であったのかも知れません。

少し長いですが、全文引用します。

後日本の労働組合運動はだんだん落ちついて参っておる傾向にあると存じますが、なお一部には御指摘のようないろいろな好ましからざる風潮がございます。ことに先ほどお話のように、学校の先生の講習会に労働組合に籍を置いておる人々が出かけていって、そして不法な行為をなされておるということは、これはやはり道義心、教養、品性の問題だと思うのです。ああいうばかなことをやっておることによって、日本の労働組合運動の発展のために害があっても少しも益はないし、ことに外国人からばかにされる動機を作るだけでありまして、私ども健全なる日本の労働運動の発展を期待しておる者から見てまことに遺憾千万であります。従ってやむを得ない不法な行為をする者は、それぞれの法に従って処断をすると同時に、私どもとしてはやはりまだ未熟なお互いの民主主義でありますから、みんなが反省すると同時に、やはり労働運動などをやられる人及びこれを指導する立場におられる人に向っては、できるだけの機会を見つけて、たとえば労働協会などというものはそういう理想から出発いたしたのでありますが、日本人全体が民主主義に習熟する、このことはやはり英国でも長い間国内における闘争をやった結果、ああいうような落ちついた、自分から身につけた民主主義を体得しておるのでありますから、やはり労働行政を担当いたしておる者の立場から申しますと、締めくくるべきところはきつく締めくくる用意と腹を持ちながら、やはりあたたかい目でできるだけ反省を求めて指導していく、こういうゆっくりした気持をもってかかっていかなければいけないのじゃないかと私どもは考えております。ことに大ぜいの組織労働者及び未組織労働者の大部分は、決して破壊的なものの考え方を持っておる人ではないのでありまして、あるいは職業的に、あるいは何かためにせんとする考えで、朴訥な、まじめな労働省を扇動しようとするような職業革命家みたいな者もあるかもしれません。しかしそういう者については、これは警戒をしなければなりませんし、そういう人々は労働者の敵であるということを労働者自身に自覚をしてもらう。従ってこれは長い目でゆっくり腰を落ちつけてやっていくべきだと思うのであります。日本の労働運動も、そういう面から見ますと、だんだん安定を取り戻してきておると思いますが、要は日本人全体が民主主義に対して、より多く反省と自覚を持っていくように仕向けていく、これがやはり大事なことであると思います。

ここに書かれているように、労働運動に対する考え方をしっかりと持つことが重要だと思うのですが、少なくとも政府も労働運動を育てていくべきという考え方を持っている事が理解できるかと思います。

又、それを受けて大坪委員は以下のように、大臣の答弁に対して意見を述べていますので、再び引用したいと思います。

ただいま倉石労働大臣は、今総評等の行なっておるような非合法的な多くのやり方は、日本の労働組合の発展のために害があって益がないと思う、国際的にもいかがなものであろうというようなお話でありますが、私も全く同感であります。私があえてここでこの点について大臣の御所見を伺ったのは、私も、日本の労働組合運動が世界の各国から笑われないような、いわゆるいつまでたっても幼稚だ、子供だという批判を受けないような健全な発展を期待すればこそのことであります。ごく最近の新聞紙で私は見たのでありますが、全労会議が運動方針案というものをまとめたということが出ております。これを一応通覧いたしますと、私どもは……(「お気に召したか」と呼ぶ者あり)お気に召します。(笑声)これならばどこの国に行っても??ソ連や中共に行ったらこれでもちょっと弾圧を受けますが、その他の民主的自由主義の国々に行ったらこういうものならまず正常なる労働組合運動として納得されるであろうと思うのであります。どうも社会党の諸君から不正常ないろいろのやじが飛んでおりますが、これをノーと言われるのであるか、しからば総評のやっている奇矯過激な労働運動をよしとされるのであるか、その点を私は非常に疑わざるを得ないのでありますけれども、私どもは、せめて全労会議が取り上げようとしておるこのような運動方針であれば世人も納得するし、われわれも了承することができる、こう思うのであります。

と言った具合で、総評の運動は日本の労働組合の発展のためには害があって益がないとバッサリ切り捨てているのは印象的です。

ここまで見て、当時の労働運動に関する政府の考え方、そして、当時の世相と言うものについて少しだけ触れさせていただくことが出来ました。
なお、今回は、国鉄の話題ではありませんが、関連する一連の話しの一環としてご覧いただければ幸いです。

以下は、議事録から抜粋したものです。

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○園田委員長 次に労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 前回労働大臣より説明を聴取いたしましたので、直ちに質疑を行いたいと存じます。大坪保雄君。

中略

○大坪委員 どうか一つよろしくお願いいたします。
 そこで、なるべく時間を少くしたいと思いますから次に入りたいと思いますが、それは労使関係の問題についてであります。最近国内の各地で行われておりますいわゆる各種の反対闘争、今日ではもう日本じゅう反対と言わなければものが通らぬというほどに反対闘争というものがいろいろのところで、いろいろの事柄について行われておる。特に今日世人の注目を引いておりますのは、御承知の日教組の勤務評定反対闘争である。さらにこれに関連して文部省が実施いたしております道徳教育のための講習会の反対闘争、あるいははなはだしきに至っては、この間は全国で学力テストを実施する、これは従来からやっているもので、今回が最後の仕上げだそうでありますが、そういうものも、私どもからすれば理由のないことでありますが、反対をやる、そしてこれを阻止することのために実力行使をやるという状況でございまして、まことに私どもは五十余年、これほど秩序の乱れた社会不安の激しい時期はなかったと思うくらいに、反対闘争が行われておるのであります。今日ではむしろこれらの事柄は治安の問題になっておるのでありますが、ここで私があえて労働大臣にこの問題について御所見を伺いたいと思いますことは、これらのいわゆる反対闘争というものが、労働組合ないしその集合体と申しますか、それによって指導され、あるいは指令され、あるいは現場で指揮されておるという点であります。労働組合の行ういろいろの労働争議行為というものは、これは憲法の保障もありますし、組合法その他において相当許されております。特に広く終戦後においては許されておりますから、何か労働組合がやることであれば、かりにそれが法律に反することである、世上一般には許されないことであるというようなものでも許されることのごとく、何か合法的なもののごとく感ぜられておるのではないか、そういうことで一般から見過されておるのではないかというような感じがいたすのであります。労働組合によりましては、非合法をあえてしてこれを合法化しようとする特別の意図を持ってやっておるものもあるような実情でありますし、そういう非合法を積み重ねてこれを合法化する、少くもそういう非合法に対して国民を不感症にする、そういうことによって既成事実を積み重ねていくという意図もある。これはもう私は確実だと思うのでありますが、そこにやはり私は問題があると思うのであります。そして今私が例にあげましたような勤評反対闘争とか、あるいは道徳教育講習反対闘争とかいうようなものは、明らかに何ら法律の根拠に基くもののない不法な、非合法なものであって、そして現実に社会の秩序を乱しておるものといわなければならぬ、そういう行動だと思うのであります。と申しますのは、たとえば日教組がやっております今日の勤評反対闘争のごときものも、これは労働条件の維持改善に関する主張なり、そのための行動なりとは言えない。どういう点から見てもそういうものとは言えない。従ってかりに日教組みずから呼号しておりますように、学校の先生方は労働者なりと見て、それらの組織している団体であるからこれを労働組合の範疇に入れるとして、そして彼らがやっておるこの勤評反対闘争というものは、しからば労働争議の範疇に入るかと申すと、これは私は入らぬと感ずる。そしてその目標としておるところは、これは明らかに政治的なる目的を持ってのことでありますから、労働争議の範疇にはもちろん入らぬし、いわゆる政治闘争として律すべきもの、こういうように思うのであります。そういうことになりますと、もちろんこれは御本人たちも、何も今の労働法による保護を受けようなどということは、おそらく考えてないかもしれませんが、しかしながら権利の主張はきわめて盛んでありますから、都合のいいところには必ず法律の保護を要求する行き方をとっておるわけであります。私どもはこの道徳教育講習会反対闘争のごときは、これはもう何ものでもない、単なるモッブ(群衆。特に、暴徒と化した群衆。)に近い。特に全学連のごとき共産党の最先端を行っている連中のモッブともいうべきもので、これは単なる騒ぎにすぎない、こう思うのでありますが、今申し上げました勤評反対闘争のごときものも、これは労働争議とか労働紛議の範疇には入らぬ明らかな政治闘争だ、労働法上の保護を何ら受くべきものでない、かように考えるのでありますが、これは先刻申しましたように、労働組合がこれを唱え、あるいは指導しないし指令してやっているのでありますから、この点についての大臣の御所見をこの機会に承れば仕合せであります。
○倉石国務大臣 ただいまお話になりました勤務評定反対運動とか道徳教育講習会反対運動といったような、今伝えられておりますような事柄は、いろいろ複雑した内容を持っておると思います。お示しのように、いわゆる日教組というものは職員団体で、労働組合員がその行われるたとえば道徳教育講習会、そういうものに出かけていっておやりになる行動が違法な行動であるならば、これは労働組合法上の保護を受けないことは当然のことであります。従って労働組合法及び憲法が保障をいたしておる労働運動というものは、それぞれ限界のあることなのでありますから、その保護を受けない違法なる行為については、他の法律によって処断されるということは当然のことであるとわれわれは解釈いたしております。
○大坪委員 私はそうでなければならぬと思うのでありますが、これは今の日教組の勤評反対闘争とか講習会反対闘争とかいうことでなしに、現実にある事業場における労働争議の場合等にも常に使われている、いわゆる実力行使の方法というものがあるのでありますが、これが世界のどこにも通用するような正常な形における労働組合の実力行使ということであれば私どもは問題ないのでありますが、これは前に、かつて労働大臣であった場合に倉石労働大臣も言われたかと思いますし、前石田労働大臣も常に言われたのでありますけれども、労使関係を正常化するということのために説得を続ける方法を講ずる、そういう方針をとっておられるようである。ところが最近労働組合等の行われます実力行使の方法というものは、労使の間において世上認めらるべき正常と称してよろしい程度の実力行使のらちをはるかに逸脱して、他人に迷惑をかけるというような事柄が常だと言っていいくらいなされている。だれであっても、正当防衛とか緊急避難の場合はともかくでありましょうが、自分の権利を行使する上に当って第三者の法益を侵害していいということはない、それは許されないということは一般原則といわなければならぬのであります。ところがそれがあえてなされておる。たとえばこれは余談になりますが、勤評反対闘争にしても、あるいは道徳講習反対闘争にしても、ある政府がやる、ある団体がやるということについて反対であるがゆえに実力をもって反対する、その実力は暴力になっている、そういうようなことをもってこれを阻止するということはとうてい許されない。従って第三者に害を及ぼす、ないし公共に被害を及ぼすということで、自然警察官の出動ということもあるわけでありますが、そうすると、これは直ちに警察官に暴行も加えるし、非難も浴びせる。私は先刻申しましたように、今日の反対闘争時代に、かりに日教組がある会合を持って、そこにいわゆる右翼というものが、日教組と主義主張を異にするがために、これは国家国民のために許すべからず、ないし反対であるということで、何らかこれらの阻止行動でもとった場合のことを想像いたしますと、これはもうおそらく警察は何をしておるというようなことで、現在と反対の論議が非常に盛んになるだろうと思うのであります。しかし他のやることについては一向問題にしないで、自分たちのやることについては常に権利を主張するというのが実情であり、そういうことが先刻申しました政治局的を持った政治闘争の範疇と見るべきような方法でやられておる。それを私が特にこの際労働大臣にお尋ねいたしておりますのは、これらの指導に当っている者が総評である??全学連等もございますが総評であるということであります。総評は九月三十日の第三回拡大幹事会でございますか、今後の闘争方針をきめたものの中を見てみますと、きわめて政治的な目的を掲げているものが多いのであります。たとえば第三次統一行動といたしまして掲げておるのを見ましても、それには最低賃金制の獲得とか、ILO条約の批准とか、日中関係の打開とか、あるいは核武装阻止とか、台湾水域からの米軍即時撤退とか、明らかに何ら労働条件に関しない政治目的を掲げておるのであります。そして傘下団体を指揮し、ないし指導して、いわゆる違法行為を重ねてやっておる。これらの事柄が世の中にたびたび繰り返されると、先刻申しましたように国民全体が不感症になるおそれがある。私はそれが一番心配であると思うのであります。こういう総評のやっている目的、ないしその目的を遂行するための各種の実力行使の処置というものは、本来労働組合のやることじゃないのだ、明らかに政治目的を掲げている政治活動なんだ、政治闘争なんだということを、やはり国民にはっきり知らしめると申しますか、訴える必要があるのじゃないか、こういう点について、労働組合関係のことを主管しておいでになる労働大臣が、労働組合の行動の規範とでも申しますか、これは先般労働次官通牒等も出たのでありますが、そういう事柄についてのたとえば声明を出されるとか、あるいは労働組合ないしその集合体に対して通牒とでもいうべきものをお出しになるとかいうようなことによって警告を発する、国民に対してもその啓蒙いわゆるPRをやるというようなことをなされたらいかがなものであろうかと私は考えるのでありますが、この点について大臣はどういうようにお考えになりますか。
○倉石国務大臣 ただいまお話にありしまたように、戦後日本の労働組合運動はだんだん落ちついて参っておる傾向にあると存じますが、なお一部には御指摘のようないろいろな好ましからざる風潮がございます。ことに先ほどお話のように、学校の先生の講習会に労働組合に籍を置いておる人々が出かけていって、そして不法な行為をなされておるということは、これはやはり道義心、教養、品性の問題だと思うのです。ああいうばかなことをやっておることによって、日本の労働組合運動の発展のために害があっても少しも益はないし、ことに外国人からばかにされる動機を作るだけでありまして、私ども健全なる日本の労働運動の発展を期待しておる者から見てまことに遺憾千万であります。従ってやむを得ない不法な行為をする者は、それぞれの法に従って処断をすると同時に、私どもとしてはやはりまだ未熟なお互いの民主主義でありますから、みんなが反省すると同時に、やはり労働運動などをやられる人及びこれを指導する立場におられる人に向っては、できるだけの機会を見つけて、たとえば労働協会などというものはそういう理想から出発いたしたのでありますが、日本人全体が民主主義に習熟する、このことはやはり英国でも長い間国内における闘争をやった結果、ああいうような落ちついた、自分から身につけた民主主義を体得しておるのでありますから、やはり労働行政を担当いたしておる者の立場から申しますと、締めくくるべきところはきつく締めくくる用意と腹を持ちながら、やはりあたたかい目でできるだけ反省を求めて指導していく、こういうゆっくりした気持をもってかかっていかなければいけないのじゃないかと私どもは考えております。ことに大ぜいの組織労働者及び未組織労働者の大部分は、決して破壊的なものの考え方を持っておる人ではないのでありまして、あるいは職業的に、あるいは何かためにせんとする考えで、朴訥な、まじめな労働省を扇動しようとするような職業革命家みたいな者もあるかもしれません。しかしそういう者については、これは警戒をしなければなりませんし、そういう人々は労働者の敵であるということを労働者自身に自覚をしてもらう。従ってこれは長い目でゆっくり腰を落ちつけてやっていくべきだと思うのであります。日本の労働運動も、そういう面から見ますと、だんだん安定を取り戻してきておると思いますが、要は日本人全体が民主主義に対して、より多く反省と自覚を持っていくように仕向けていく、これがやはり大事なことであると思います。岸第二次内閣が労働政策に重点を置くと申しました一面においては、先ほどお話がありましたように、雇用、失業というような問題、日の当らない階層に属する労働者に先を楽しんで働いてもらうような、たとえば中小企業の共済制度であるとか、そういうものをやって政治に信頼感を持っていただく。同時にまた前大臣以来いわれておりました労働秩序というものを徐々に確立して、産業発展の片方のにない手である労働組合員諸君の生活を安定させると同時に、日本の産業を国際競争力を持って維持していくことのできるように推し進めていきたい、こういうような考え方が岸総理の言っておる労働政策に重点を置くということでございます。
○大坪委員 ただいま倉石労働大臣は、今総評等の行なっておるような非合法的な多くのやり方は、日本の労働組合の発展のために害があって益がないと思う、国際的にもいかがなものであろうというようなお話でありますが、私も全く同感であります。私があえてここでこの点について大臣の御所見を伺ったのは、私も、日本の労働組合運動が世界の各国から笑われないような、いわゆるいつまでたっても幼稚だ、子供だという批判を受けないような健全な発展を期待すればこそのことであります。ごく最近の新聞紙で私は見たのでありますが、全労会議が運動方針案というものをまとめたということが出ております。これを一応通覧いたしますと、私どもは……(「お気に召したか」と呼ぶ者あり)お気に召します。(笑声)これならばどこの国に行っても??ソ連や中共に行ったらこれでもちょっと弾圧を受けますが、その他の民主的自由主義の国々に行ったらこういうものならまず正常なる労働組合運動として納得されるであろうと思うのであります。どうも社会党の諸君から不正常ないろいろのやじが飛んでおりますが、これをノーと言われるのであるか、しからば総評のやっている奇矯過激な労働運動をよしとされるのであるか、その点を私は非常に疑わざるを得ないのでありますけれども、私どもは、せめて全労会議が取り上げようとしておるこのような運動方針であれば世人も納得するし、われわれも了承することができる、こう思うのであります。そういうことを心配するがために今お尋ねを申し上げたのでありますが、従来から、前大臣もそうでございましたけれども、前大臣のごときは説得大臣などと言われておったようでありますが、どうもこの説得だけでは効果が上らないように思うのでありますが、しかし、今お話のごとくこういう問題はあせってはいかぬのでありますから、時日をかして、ほんとうにわが国の労働運動もまだまだ幼稚であるなどと世界から笑われないで済むように、早く成長するように労働大臣としてもお力添えを願いたいと思います。
 そこで私は、委員長、この際最近の郵便物遅配の実情についてお尋ねしたいと思いますが、郵政省はおいでですか。

続きます。

注:モッブ(mob)

全文をご覧になる場合は、以下のURLを参照ください。

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