たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

異質の合体の未来は <東芝 売却契約を締結 半導体子会社、日米韓連合と>などを読みながら

2017-09-29 | 企業運営のあり方

170929 異質の合体の未来は <東芝 売却契約を締結 半導体子会社、日米韓連合と>などを読みながら

 

今日は和歌山まで出かけ、帰りはこのブログを書くために高速を利用して帰ってきましたが、やはり疲れます。和歌山では大阪講演内容をライブ放映するということで出かけました。第一東京弁護士会の佐藤泉弁護士が大阪弁護士会館で、近畿弁護士連合会主催研修セミナー「廃棄物処理法のコンプライアンスについて」と題する講演をされたのです。佐藤さんはたしか20年くらい前、日弁連公害環境委員会にニューフェイスで参加したような記憶で、どこか地方で会合があったとき初めてあったと思うのです。しっかりされていて当時から廃棄物問題に強い関心をもっていたと思います。

 

その後の日弁連会合でもしっかりした見識を示され、なかなかの人だと思っていたら、すでに環境省だったか、厚労省だったか(昔は廃棄物は厚労省所管でした)、審議会の委員をされていて、その後も継続してつとめられているようです。ほんとは大阪まで出かけていって久しぶりに挨拶をしたいとも思いましたが、最近は電車に乗るのも億劫になり、環境によくない車で和歌山まで行ったのです。佐藤さんの話は、残念ながら途中寝入ってしまったのですが、起きているときは、なかなか流ちょうな話しぶりで(そういえば初めて講演を聴きました)、内容も基礎から応用まで充実していたように思います。いつか機会があったらこのブログでも取り上げたいと思います。

 

ところで、政治の世界は一緒になったかと思えば離散するの繰り返しのようにも思えます。希望の党の動きは今後どうなるのでしょう。でも人間世界の常かもしれませんし、だいたい、地球自体がそうなんですからね。おもしろいと思ったのが、東芝メモリの売却をめぐって新しく生まれた会社の名前、「パンゲア」です。一時的に合体したものの現在の五大陸等に分裂する暫定的に存在した超大陸の名前ですね。

 

希望の党もややこしい組織に映りますが、この「パンゲア」という会社自体はもちろんのこと、東芝メモリの今後、さらには東芝本体がどうなるか、ほんとややこしや、ややこしやです。

 

ともかく昨日から今日にかけて毎日ウェブサイトに何本か関連記事が掲載されていますので、それを見ながら、ちょっと考えてみたいと思います。

 

東芝 売却契約を締結 半導体子会社、日米韓連合と>では、東芝メモリ売買契約を簡潔にとらえていますので、引用します。

 

<経営再建中の東芝は28日、半導体メモリー子会社「東芝メモリ」について、米ファンドのベインキャピタルが主導し、韓国の半導体大手SKハイニックスが参加する「日米韓連合」に売却する契約を結んだ。>

 

具体的にはまず<日米韓連合は、東芝メモリ買収のための特別目的会社 (SPC)「パンゲア 」を設立。>次に、<パンゲアに対し、東芝が3505億円を再出資するほか、ベインが2120億円、東芝メモリの取引先の光学ガラスメーカー、HOYAが270億円、SKハイニックスが株式に転換できる社債などで3950億円、アップルなど米IT企業が議決権のない優先株で合計4155億円を拠出する。このほか、銀行団が6000億円を融資し、買収額は合計2兆円になる。>

 

つまり、東芝が東芝メモリを日米韓連合に単純に売却するのではないのですね。特別目的会社というのは、私が会社法問題から離れた後19986月に成立した「特定目的会社の証券発行による特定資産の流動化に関する法律(通称SPC法)」に基づいてできるようになった会社で、私には初耳でしたが、金融界では結構使われているようです。

 

ウェブ情報で調べると、特別目的会社の<特別な目的とは、資産の流動化や証券化などを指し、利益の創出を目指した通常の企業活動の目的とは異なる。企業は、保有する資産を特別目的会社に譲渡することで、資産を企業本体から切り離すことができ、特別目的会社は、譲渡された資産を証券化して資金調達に協力する。これにより、企業の財務体質の改善が期待できる。>とのこと。

 

SPC法をチェックしないと、なんともいえませんが、パンゲアがそういった会社だとして、今回設立した方式はちょっと逸脱していないのか気になりますね。東芝が出資してパンゲアという特別目的会社を作るのはいいとしても、他の会社はどうい位置づけになるのでしょう。

 

他方で、東芝がパンゲアに出資するという形で、東芝メモリを買う、しかも買収代金2兆円のうち3500億円超も出費してですから、蛸が自分の足を食べている感じになりませんかね。

 

むろん経産省の意向が入ってのことだと思うのですが、米韓の会社に主導権を握らせないように、過半数をわずかに上回る0.5%を日本企業側で握るという戦略でしょうか。本来なら、官民ファンドの産業革新機構と日本政策投資銀行が出資して議決権者にならないとおかしいのですが、WDとの仲裁判断や仮処分などで敗訴して売買がご破算になるリスクを回避しようと言うことでしょうか。

 

とはいえ、<官民ファンド・・は当面は出資しないが、東芝が議決権を行使する際に指示する権利を持つ。>というのですから、この複雑な契約構造の中に、さらに開示されていないさまざまな条件が組み込まれているのでしょう。そして<東芝はWDとの係争解決後、株式の一部を革新機構と政策投資銀行に譲る計画だ。>というのですが、その場合の譲渡条件も決まっているのでしょうかね。そのときもめなければいいですが。

 

韓国企業の位置づけも判然としません。<SKハイニックスが取得できる議決権は10年間は15%以下に制限し、経営関与を抑える。独占禁止法審査を通りやすくする狙いで、SKは東芝メモリの情報から遮断される。>とされています。しかし、<SKハイニックスが株式に転換できる社債などで3950億円>と同社が最大の資金拠出者です。独禁法審査を通りやすくするということで、こんな厳しい制約が課せられてもSKは参加したいのでしょうかね。それに議決権割合も、出資額と全然整合性がなく(まそれ自体はありうるでしょうが)、なんだか契約書の内容がどうなっているのか気になります。

 

ベインがSKの約半分程度の拠出にかかわらず、議決権割合49.9%ときわめて優遇されているように見えるのですが、なぜでしょうね。

 

半導体売却、日米韓連合と契約 WD係争、独禁法審査…再建なお課題 足並み乱れ? 記者会見中止>の記事は、上記の資金拠出の内訳を図表でわかりやすくしていますが、それ以上に、見出しの通りベイン1社が会見しようとして、キャンセルとなった経緯を見ると、どうも内情は固まっていないのかもしれません。

 

この「パンゲア」の未来予測は簡単ではないですが、<半導体メモリー市場では、世界シェア首位の韓国サムスン電子が巨額の設備投資を継続して攻勢を掛けている。東芝メモリが対抗するには本来「巨額投資を果断に進めることが不可欠」(東芝幹部)だが、足並みがそろわない日米韓連合の下、スピード経営を行えるかは分からない。>というのが実態のように思えます。

 

WDとの紛争は容易に解決できる状況にはないと思われるのです。お金のない東芝が債務超過を回避するために、打ち出の小槌になるはずの東芝メモリを売却して2兆円を獲得しないといけないはずなのに、その前に3500億円も出さないといけないのですから、これで債務超過を回避できると考える方が不思議です。WDとの紛争解決のあかつきには、官民ファンドに株式譲渡するのでしょうか、その可能性が乏しいから官民ファンドが参加しなかったのではないかと思うのですが、形勢逆転の見通しがあるのでしょうか。それに資金力がありそうなSKが転換社債の行使を制限され、10年間も議決権15%以下で、しかも情報から遮断されるのであれば、サムソン電子に対抗するような巨額の投資を継続するとは思えないですね。パンゲアもたしかに一瞬に分裂したわけではないのですが、地球時間と人間時間、しかも瞬時を争う企業競争の世界では分裂は一瞬に起こるかもしれません。

 

と不安な話ばかりでは困るので、希望の党の言葉のように、「希望」をもって合体の行方を見守りたいとは思います。

 

今日はこの辺で終わりです。