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地熱発電がシカトされる理由 原発代替エネルギーの切り札ゆえである
先ずは、原発再稼働に関する朝日新聞の世論調査を読んでいただこう。読売のホワイトデー贈答調査よりは数段信頼できるデータが見られる。(笑)
≪ 原発再開「反対」が57% 朝日新聞世論調査
朝日新聞社が10、11日に実施した全国定例世論調査(電話)によると、定期検査で停止中の原発の運転を再開することに57%が反対し、賛成の 27%を大きく上回った。原発に対する政府の安全対策については「信頼していない」という人が80%に上った。
原発の再開賛否は、男女の違いが目立つ。男性は賛成41%、反対47%とそれほど賛否の差がないのに対し、女性は賛成15%、反対67%で差が大きい。
現在稼働中の原発は、全国で2基。原発の停止による経済への影響を「心配している」人は、「大いに」と「ある程度」を合わせて75%に達したが、こうした人たちでも運転再開に賛成は31%にとどまり、反対54%の方が上回った。≫(朝日新聞)
この原発再稼働に関する調査で注目すべきは、男女の原発に対する許容度だ。この調査記事からは判らないのだが、男女の性差とか社会性の違いと簡単に論じるのは間違いだろう。筆者の推測だが、男性は原発を電力と位置づけ、女性は原発を放射能と位置づけている違いから生まれた結果だと考える。最近、日本における原子力発電に対する国民の目は、“電力”と“放射能”と云う概念に色分けされ受けとめられている。
原発再稼働容認派の人々は、原発村で既得権益を得ている人々を除くと、多くは“電力不足”への懸念から、選択的に容認しているに過ぎないだろう。火力による代替電力が東電の欺瞞で“金喰い虫”にアレンジされ、17%も電力料金値上げを突きつけられれば、将来的怖さよりも、現実の利を選択するのも頷ける。ただ、あくまで留保的容認である事も考慮しておく必要がある。
この原発再稼働問題の根っ子は、日本では原発が「ベースロード電源」と位置づけられていることから起きる問題なのだ。「ベースロード電源」とは、簡単にいえば、主たる電源を何に頼るかと云う事だ。稼働し始めたら、原則発電し続ける調整困難な原子力発電をベースロードに、国家の電力政策を行ってきただけ、と云う事になる。つまり、基本電源にしてしまったので、おいそれと代替電源を用意出来ないから、再稼働なのだと言っている。謂わば、強盗の開き直りのようなものだが、停電させるぞ、料金上げるぞ、に現状の企業は弱いのである。
原発を日本の電力のベースロードにしてしまった要因を此処では語らないでおこう。兎に角、異様なほど熱心に原発立国を目指したのが我が国だが、ベースロード電源の見直しを行えば、即座に答えは返ってくる。それが将来的に枯渇する化石燃料やウランに代表される「枯渇性エネルギー」でない事は自明だろう。当然、再生可能エネルギーへのシフトは運命的に選択になっている。今揉めているのは、定期点検で全原発が停止し、直近の電力不足をどうするかと云う問題だ。議論が近視眼過ぎるのである。
直近の電力不足を避けるために、原発の再稼働を急ぐ事とで、“のど元過ぎて熱さ忘れる”ことの弊害の方が遥かに大きいに違いない。急場凌ぎの火力への依存による費用の発生は、電力会社も国民も、一定の範囲で痛みを共有するしかないのだろう。ただ、急場を乗り切った後に、何をベースロード電源にするか決定し、その開発にエネルギー関連の開発費用を注ぎ込む、強い国策決定が必要になるのだ。先ずは週刊ポストの記事を紹介しておく。
≪ 原発代替エネルギー「本命は地熱、次点は中小水力」と専門家
原発事故を受け、自然エネルギーへの転換が叫ばれている。風力発電や太陽光発電などが、代替エネルギーとしてしばしば挙げられるが、現時点で最も有望な再生可能エネルギーは「地熱発電」である。
地熱発電とは、火山活動による地熱で蒸気を発生させて発電する方法だ。現在、日本には18か所の地熱発電所があり、合計で53.5万kWの発電容量がある。揺らぎのない電力であり、火山国である日本には適した方法といえる。同じく火山国のニュージーランドやアイスランドでは主力の発電方法である。
これまでは地熱の源泉を掘り当てることが困難とされてきたが、技術の向上で縦横に掘削することができるようになり、源泉の発見率は高まっている。
課題は源泉の多くが国立公園や温泉地に存在するため、景観保護の観点から開発が困難だという点だ。逆にいえば、政治的な決断でいつでも開発できる。ポテンシャルは調査しなければわからないが、ほぼ無限大だという専門家もいるくらいで、期待度は高い。
次に有力候補とされるのは「中小水力発電」だ。大規模ダムではなく、河川や農業用水を利用して細かくエネルギーを拾い集めて発電する。 「動けといえば動かせ、止まれといえば止めることができる安定電源です。候補地が非常に多いために、発電量も無限のポテンシャルを秘めている」(安井至・東京大学名誉教授)
こちらもネックは水利権や漁業権などの既得権だから、法整備で対応が可能だ。≫(週刊ポスト2012年3月9日号)
筆者の浅学の知識からも、「ベースロード電源」は地熱発電だろうと認識している。世界でも屈指の火山を抱えている我が国は、活断層の巣窟なのだから、年中無休で地震への恐怖と共存している。3乃至4個のプレートの上に乗っている我が国土は脆弱そのものなのである。しかし、故に見事な四季があり、山があり川があり、海がある。そして豊富な海の幸山の幸に恵まれているのだ。このような脆弱にして過酷な大地と引き換えに、素晴らしい自然が与えられ、縄文からの営々たる文化を築き上げたのである。
考えてみれば、原発ほど我が国の自然環境に相応しくないものはないのだろう。チョット考えれば判る事が判らない。不思議なことだが、それも人間の不条理なのか、歴史上の悪戯なのか、此処では論ずるのをやめておこう。ただ、原発推進派は腕力にモノを言わせ、強弁の限りを尽くし、ごり押しするかもしれない。しかし、勝負はついている。もう一つ不幸にも原発事故、放射能漏れが起きれば、もう瞬時にお陀仏なのである。そんなものを生命線に、企業を存続させようという行為は愚かである。早々に悔い改める事である。
今夜は再生可能エネルギー、特に地熱が最有力だ、と云う話にとどめおくが、皆さまも再生可能エネルギー・地熱発電へ興味を抱き、少し調べてみる事をお薦めする。折角火山国家に生まれたのだ、地の利を生かし生きていく知恵こそが、今求められているのだろう。日本の企業は地熱発電の雄である。なんという皮肉だ。馬鹿馬鹿しくて声も出ない。また、この地熱発電の障壁と言われる諸問題の多くも、中央省庁の縦割り行政の弊害の典型例としても注目に値する。まさに、政治力が問われる課題である。菅直人の安直エネルギー政策でケチがついたが、毛嫌いせずに再生可能エネルギーシフトを、国家規模で大々的に行えば、10年で相当の「ベースロード電源」の見通しがつくだろう。
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