世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●米国のダブルスタンダードが目立った日米首脳会談 制度疲労の証明

2014年04月24日 | 日記
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
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●米国のダブルスタンダードが目立った日米首脳会談 制度疲労の証明

 物々しく始まった日米首脳会談だが、目新しい成果はなかった。当初から判っていたことだが、東証株価も「なんら新味ナシ」と云うことで、140円ほど下げて終わったようだが、特に会談が株価に影響を及ぼさなかったと言えるだろう。仮に、安倍が話す相手が、プーチンや習近平だったら、ハプニング的情報や決定が耳に飛び込んで来たりして、投資家にも刺激的だろうが、米国情報なんてものは、日がな一日バックグラウンドのように流されている日本では、刺激剤になるようなことはないと云うことだろう。

 オバマは、「アメリカは今もこれからも太平洋国家です。アメリカの安全保障と繁栄はこの地域と離すことはできません。このアジア太平洋地域において、日米同盟は礎になっています。日本がさらに多くの世界の平和に貢献してもらうことをアメリカは歓迎しております。この沖縄を含めて米軍を強化し、地元への負担を軽減し、日米はともに、この地域の紛争に対処していきます。海洋紛争は平和的に対話を続けて対処していきたいと思います。そして基本的な原則、航行の自由、国際法の遵守を求めていきます。我々は日米安全保障に対してコミットメントしていきます。この日本の施政下にある領土、尖閣諸島も含めて日米安全保障条約の第5条の適用対象となります」と発言した。

 オバマが初めて「尖閣」を口にした、と日本のマスメディアは喧伝しているようだが、既にホワイトハウスの住民らが度々口にしていることで、特にオバマが口にしたから、これで安心だと云う話じゃないだろう。クダラン目玉な話題だ。武力衝突が起きた際は米軍が防衛義務を負うことを明言した。初めてオバマが発言したことが嬉しいなんて、何なのだろう?赤ちゃんが、初めて「ママ」と発したようなはしゃぎ様である。オバマは中国への配慮も忘れず「領有権の決定的な立場は示さない」と言い、日中の領土問題には踏み込まない米政府の姿勢も同時に表している。

 ここが実はアメリカ合衆国を中心とする民主主義国家の怪しさなのだ。所謂「ダブルスタンダード」である。この「ダブルスタンダード」概念を包含する西側諸国のデモクラシーが世界各地で紛争を巻き起こし、彼方此方に火種を巻き散らかしていると云うのが現実だろう。つまり、「ダブルスタンダード」な選択を駆使していかないと、国益と外交が両立しないのが20世紀であり、21世紀にも同じ悩みが残されている、と観察すべきだ。このような「ダブルスタンダード」を抱えたものに「普遍性」を認めるセンスは笑止だ。どの面をどのように見ると「普遍的価値観」なんて言葉が飛び出すのか、理解に苦しむ。

 この「ダブルスタンダード」は、アメリカの仕組みのあらゆる面に見られる。ホワイトハウスの「普遍的価値観」と米国議会の「普遍的価値観」が異なるなんてのが良い例だが、民主主義で覇権を握り続ける事は、こういうジレンマの対応で四苦八苦すると云うことだ。現状では、中国が尖閣奪還作戦を展開した場合、このような事態への対応の為に存在するとしている沖縄基地のレゾンデートルを証明するためには、米軍が直ちに自衛隊の軍事に参加する必要がある。防衛省は“中国軍の尖閣上陸には十分対応可能”と言っているので、即刻の参戦を望まないだろうが、政府は慌てて米国政府に参戦を求めるだろう。しかし、日米安保5条の適用には、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処し行動となっているので、米議会の承認が必要になる。

 米国議会が参戦を認めるかどうかは、確率は五分五分だろう。つまり、オバマの尖閣発言の真実は50%の意味しか持たないと云うことだ。まさに「ダブルスタンダード」の象徴である。そういう意味では、ファーストトラック権限のない、ホワイトハウスには、TPPに関しても、フロマン代表と甘利の間で、不平等協定が纏まったからと云って、その協定が批准されるかどうかも五分五分なのである。ウクライナ問題の火付け役は誰なのかの議論にしても、アメリカの「ダブルスタンダード」な姿が現れている。米国内におけるオバマの政策も「ダブルスタンダード」な政策が目立ち、貧乏人の味方風な政策があると同時に、ウォール街支配マネーに寄り添う政策も実行されている。

 なぜ、こんな風な恥さらしな政治を行わないと、米国の「普遍的価値観」が維持できないのかが、実は21世紀最大の国際的課題なのだろう。自然成長と云うものが、本来の偽らざる成長であり、それ以外の成長には異質なバネを利かせないと成長力を失う現実に、我々はそろそろ気づくべきなのだ。ハロッド(オックスフォード大学)経済理論・自然成長率の理論が有名だが、これは生産年齢人口と経済成長の連関を表す経済理論だが、まさに本来の経済学における成長の概念を的確に表す。アメリカの経済学者の理論など、ハロッドの重厚な成長論に比べれば、屁のような技術論に過ぎず、ハウツーものと言っても過言ではない。日本では、このハロッド論に基づく考え方をしているのは、藻谷浩介くらいのものである。

 この基礎的経済成長論を無視した経済政策は、最終的に副作用を産みだすだけで、国家経済に恩恵を与えることはないだろう。貧乏人と金持ちがシーソーゲームをしている手助けをするような政策しか打てなくなっている西側諸国の経済事情は既成の概念で生き延びることは可能でも、目先の経済統計が改善するだけで、疾患の本質的治癒に役立つことはない。結局、経済だけの問題ではなく、あらゆるシステムが構造的疲労に陥っていることは確実で、これをガラガラポンしない限り、21世紀は一層暗いものになるだろう。その意味で、筆者は中国の習近平やロシアのプーチンに注目しているわけだが、民主主義、資本主義の制度疲労を破壊する必要悪と見做しているのだ。


 ≪ TPP、首脳会談後も閣僚協議 日米、共同文書詰め
 安倍晋三首相とオバマ米大統領は24日、東京・元赤坂の迎賓館で会談した。安倍首相は会談後の共同記者会見で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について、この日も大筋合意を目指して担当閣僚間の協議を続けることで一致したことを表明した。その上で、共同文書を発表することも確認した。オバマ氏は、尖閣諸島について日米安全保障条約が適用され、米国に防衛義務があるとの考えを明言した。
 安倍首相は会見で、TPPについて「アジア太平洋地域に大きな経済圏を作ることは日本にもアメリカにも、他のアジアの国々にも大きな利益になる。いまや日本は米国とともにTPP交渉を大きくリードしている」と指摘した。そのうえで、両首脳が交渉責任者の甘利明TPP相とフロマン米通商代表部(USTR)代表に「残された作業を決着させ、TPP交渉全体を早期に妥結させる」と指示したことを明らかにした。
 一方、オバマ氏は、日本側と自動車や農業分野について交渉をしたことを明らかにしたうえで「米国のメーカーと農家は、日本を含む市場へのアクセス が必要だ。日本にはTPPで主要な役割を果たすチャンスがある。大胆な措置をとって包括的な合意に達することができると信じている」と語った。オバマ氏は日本の「農産品、自動車の市場開放度が制限されており、解決されなければならない」と語った。
 TPPをめぐっては、日本が関税を守りたいとしている農産品5項目のうち、コメ、麦、砂糖の3項目については、関税を維持する方向が固まった。一方、牛・豚肉については、米国側が牛肉関税の原則撤廃を求めたのに対し、日本側は豪州との経済連携協定(EPA)で大筋合意した20%前後にとどめたいと要求。豚肉についても、安い豚肉ほど高い関税がかかる「差額関税制度」の存廃をめぐり主張が対立し、乳製品も調整が難航していた。
 一方、中国が領有権を主張する尖閣諸島についてオバマ氏は、「日本の施政権下にある領土、尖閣諸島も含めて(米国の日本防衛義務を定めた)日米安保条約第5条の適用対象になる」と語った。米大統領が尖閣諸島の防衛義務に言及したのは初めて。会談後に発表する共同文書でもこうした内容を盛り込む見通しだ。ただオバマ氏は、尖閣諸島の領有権については「決定的な立場は示さない」と語った。
 安倍首相は中国について、「法の支配に基づきアジアを発展させ、中国を関与させるため連携することで合意した。力による現状変更の動きに対しては明確に反対していくことで一致した」と述べ、日米で緊密に連携していくことを表明した。
 また安倍首相は集団的自衛権について、「オバマ大統領から日本が集団的自衛権行使の検討を行っていることについて、歓迎し、支持するとの立場が示された」と述べた。  北朝鮮問題では、両首脳は日米韓の連携が重要であると確認。拉致問題の解決に向けても日米が協力していくことで一致した。
 会談に先立ちオバマ氏は、皇居での歓迎行事に出席し、天皇、皇后両陛下との会見にも臨んだ。午後からは日本科学未来館(東京都江東区、毛利衛館長)を見学するほか、明治神宮(渋谷区)を訪問する。 ≫(朝日新聞デジタル)

ハロッドの思想と動態経済学
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日本評論社


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