人は見たいものしか見ないし、聞きたいことしか聞かない。そして思い込みや先入観にとらわれると、なかなかそこから抜け出すことはできない。さらにいったん口にしたことは、なかなか取り消せない-。これは国にも当てはまる。
安倍晋三首相が9日、韓国を訪問して文在寅大統領と会談するのを前に、日韓間でもう30年近くも延々とわだかまっている慰安婦問題の実態について改めて考えた。会談で首相は当然ながら、問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった日韓合意の履行を迫るが、こうも話がかみ合わずにきたのはなぜか。
韓国・東亜大の崔吉城教授の著書『朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実』を読み、その一端がうかがい知れた。先の大戦中にビルマ(現ミャンマー)とシンガポールの慰安所の帳場で働いていた朝鮮人男性の日記2年分(1943~44年分)を、丹念に読み解いた内容である。同書によると、この日記には日本軍による慰安婦の強制連行など一切出てこない。崔氏は淡々と「日記には、そうした『強制連行』につながるような言葉すらない」と指摘している。
ところが韓国では、日記は「日本軍による朝鮮人女性の強制動員の決定的資料だ」とされ、「軍や警察による強制連行があった」ことの確証であるとの意見が強いのだという。崔氏はこう明言する。
「慰安婦から見る慰安業は、営業、商売であった。つまり、売春業の出稼ぎであった」
「この日記をもって、日本軍が強く関与したと主張するのは、逆に言えば、この日記を客観的に読んでいないからだ」
「本日記で見る限り、慰安婦ないし売春婦は、強制連行されてきたとは言えない」
なぜそんな日記が、韓国では強制連行の証拠として扱われているのか。特に最初から結論を決めてかかり、異論に耳を貸さない傾向がある者には、客観的事実は二の次なのだろう。
文氏は1月10日の記者会見で、日韓合意の再交渉や破棄はしないと述べつつ、日本にしつこく真実を認めることや謝罪を求めた。だが、自分たちの「偏見」や「妄想」の類いを「真実」と混同してもらいたくない。
文氏側は日韓合意について、韓国国内向けには「間違った結び目」と批判する一方で、日本政府に対しては「もう忘れて、未来志向の協力をしよう」との姿勢を示しているという。
なし崩し的に合意をなかったことにしたい文氏に対し、安倍首相としては「そうは問屋が卸さない」というところか。1月23日の産経新聞のインタビューではこう強調していた。
「国と国の合意を守って実行していくことは、普遍的な原則だ。この原則が崩されれば、国と国の約束は意味をなさなくなる。国際秩序は安定性を根底から失うことになるだろう。それを文氏に直接伝える」
実定法や国際約束より、国民感情を優先させる国との交際は面倒である。そうではあるが、日本も時には韓国のしつこさをまねて、合意履行を要求し続けることも必要なのだろう。
安倍晋三首相が9日、韓国を訪問して文在寅大統領と会談するのを前に、日韓間でもう30年近くも延々とわだかまっている慰安婦問題の実態について改めて考えた。会談で首相は当然ながら、問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった日韓合意の履行を迫るが、こうも話がかみ合わずにきたのはなぜか。
韓国・東亜大の崔吉城教授の著書『朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実』を読み、その一端がうかがい知れた。先の大戦中にビルマ(現ミャンマー)とシンガポールの慰安所の帳場で働いていた朝鮮人男性の日記2年分(1943~44年分)を、丹念に読み解いた内容である。同書によると、この日記には日本軍による慰安婦の強制連行など一切出てこない。崔氏は淡々と「日記には、そうした『強制連行』につながるような言葉すらない」と指摘している。
ところが韓国では、日記は「日本軍による朝鮮人女性の強制動員の決定的資料だ」とされ、「軍や警察による強制連行があった」ことの確証であるとの意見が強いのだという。崔氏はこう明言する。
「慰安婦から見る慰安業は、営業、商売であった。つまり、売春業の出稼ぎであった」
「この日記をもって、日本軍が強く関与したと主張するのは、逆に言えば、この日記を客観的に読んでいないからだ」
「本日記で見る限り、慰安婦ないし売春婦は、強制連行されてきたとは言えない」
なぜそんな日記が、韓国では強制連行の証拠として扱われているのか。特に最初から結論を決めてかかり、異論に耳を貸さない傾向がある者には、客観的事実は二の次なのだろう。
文氏は1月10日の記者会見で、日韓合意の再交渉や破棄はしないと述べつつ、日本にしつこく真実を認めることや謝罪を求めた。だが、自分たちの「偏見」や「妄想」の類いを「真実」と混同してもらいたくない。
文氏側は日韓合意について、韓国国内向けには「間違った結び目」と批判する一方で、日本政府に対しては「もう忘れて、未来志向の協力をしよう」との姿勢を示しているという。
なし崩し的に合意をなかったことにしたい文氏に対し、安倍首相としては「そうは問屋が卸さない」というところか。1月23日の産経新聞のインタビューではこう強調していた。
「国と国の合意を守って実行していくことは、普遍的な原則だ。この原則が崩されれば、国と国の約束は意味をなさなくなる。国際秩序は安定性を根底から失うことになるだろう。それを文氏に直接伝える」
実定法や国際約束より、国民感情を優先させる国との交際は面倒である。そうではあるが、日本も時には韓国のしつこさをまねて、合意履行を要求し続けることも必要なのだろう。