北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

なぜ原発のため、ふるさとを追われる訓練をする?

2015-11-23 | 志賀原発
稼働中の志賀2号機が震度6強の地震に見舞われ、原子炉冷却機能を喪失し、放射能が放出された。
そんな想定で今日(11月23日)、志賀原発の原子力防災訓練が実施された。
3.11後としては4回目の訓練となる。

   

原子力防災訓練に対する私たちの基本的なスタンスはさよなら志賀原発ネットワークとして11月11日に県に対して申し入れを行った通りだ。

   

再稼働を想定とした訓練はおかしい、ましてや原発直下の活断層の存在否定できずと専門家の評価が一致する中である。
このような訓練に対してはしっかり抗議しなければならない。

と同時に、過酷事故が起きたって逃げられるなんていう「新たな安全神話」をつくるような訓練の実態もしっかり暴かなければならない。
そこで石川県平和運動センターと社民党石川県連合、社民党自治体議員団は約60人の体制でオフサイトセンターやスクリーニングポイント、住民避難など訓練全般について調査行動をおこない、あわせて避難対象地区の住民の皆さんに原発防災や志賀原発についてのアンケートも実施した(これは1992年の第1回訓練から続けている)。

   

訓練の問題点やアンケート結果については後日、報告書をまとめるのでお待ちいただきたいが、私が調査を担当したオフサイトセンターについての印象を一点だけ、今日は書いておきたい。

昨年の訓練とは較にならない程のあまりに緊張感のない訓練だった。
昨年の訓練は志賀原発としては初めての国主催の二日がかりの訓練。原子力規制委員会の委員だけでなく国会議員も、さらにIAEAの関係の海外からの視察者も含め多くの参観者が見守る中で実施された。副大臣も現地入りし現場の最前線で指揮を執る役回りだ。
訓練内容も、通信連絡訓練を除いては、はじめてブラインド訓練が導入され、関係者の緊張感はかなりのレベル。
多々問題点のある訓練ではあったが、初めてピーンと張りつめた空気を実感できた訓練だった。
だが、多くの参観者が帰り、そして副大臣も東京へ引き上げた途端、一気に訓練会場の空気が緩んだいった。



県主催に戻った今回の訓練は最初から最後までこの緩んだ空気のままだった。
様々な理由はあろうが、私が指摘したいのは県のトップの姿勢だ。
県主催の訓練でありながら谷本知事の姿は最初から最後までオフサイトセンターではみられなかった。テレビ会議にすら登場しない。
聞けば志賀町の在宅要援護者の避難会場となった武道館と特別養護老人ホームはまなす園の2か所を回り、参加者にねぎらいの言葉をかけていたとのこと。
訓練のシナリオとは全く関係ない行動だ。
30キロ圏の氷見市を抱える富山県の石井知事がテレビ会議を通じて原子力災害合同対策協議会に参加しているのに、これは一体どうしたことか。
県の現地対策本部長としてオフサイトセンターで指揮を執るはずの竹中副知事も1時間程度いただけで姿が見えなくなってしまった。
誤解ないよう言うが、知事や副知事の視線がないから職員が緩んだのではない。知事・副知事の姿勢が緩んでいるから全体が緩んでいるのである。
と、私は思う。



たかが発電の一手段に過ぎない原発、しかも志賀原発は4年8か月もの間、発電すらおこなっていない。直下の活断層の存在が否定できず、今後も再稼働の見通しすらない。
そんな志賀原発だが、停止中であっても活断層の上に使用済核燃料や新燃料がいまだに存在している。
まさにいま現在もこんな原発のために住民はふるさとを追われる危険に晒されているのに、この現状を放置して再稼働を想定した訓練を実施るする、しかもこんな緩んだ訓練とはなんたることか。

石川県平和運動センターと社民党石川県連合、社民党自治体議員団は今回の訓練に対して下記の抗議声明を発表した。

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抗議声明


1.再稼働を想定した訓練実施に抗議する
本日午前8時から志賀原発の過酷事故を想定した原子力防災訓練が実施された。さる11月11日、私たちも参加する「さよなら志賀原発ネットワーク」が再稼働を前提とした訓練は実施しないよう申し入れたにもかかわらず、稼働中の志賀原発2号機の事故が想定されたことに対して私たちは強く抗議し、国や県、北陸電力は原子力災害への対応を抜本的に転換するようここに要求する。

2.再稼働を前提とした訓練の問題点
(1)許されない再稼働への「地ならし」
志賀原発1、2号機が停止して約4年8か月、この間に実施された4回の訓練はいずれも稼働中の志賀原発の過酷事故を想定したものである。志賀原発の再稼働は言うまでもなく北陸電力の方針であり、願望である。このような訓練を県が主導して実施することは、県も北陸電力の再稼働路線を容認、あるいは期待しているという県民へのメッセージとなる。「敷地内断層の問題の決着が最優先」という谷本知事のこれまでの発言とも矛盾するものである。
(2)向き合うべきは停止中の原発の危険性
原発は停止中であっても核燃料が存在する限り危険な施設である。使用済み核燃料プールの水位低下は現在の原子力防災計画でも「全面緊急事態」に該当し、原子炉停止中であっても全ての原子炉冷却機能の停止は過酷事故に至る。まさに今も県民は過酷事故の危険性に晒されているのであり、直面する原発の危険から県民の目をそらさせる訓練と言わざるをえない。
(3)活断層上の核燃料の移動こそ最優先の「防災」対策
加えて志賀原発直下の断層は「将来動く可能性のある活断層」だと原子力規制委員会有識者会合の専門家の認識は一致し、今月20日のピアレビュー会合でもその結論に変わりはないことが確認されている。活断層上にある核燃料を放置し、原子力災害を招くなら、それはまさに人災である。いま北陸電力や国、県に求められているのは原子力災害を未然に防止する発生源対策である。活断層の上にある使用済み燃料や新燃料を一刻も早く取り出し、乾式貯蔵キャスクで保管し、よりリスクの少ない場所で管理すべきである。

3.4回の過酷事故対策訓練で「実効性なし」は明白
  私たちは今回の訓練も含め、過去の過酷事故対策の訓練に対して毎回調査行動を実施してきた。これらの訓練を一言で評価するならば「フクシマの教訓を全く踏まえない訓練の繰り返し」である。放射線防護やヨウ素剤の服用、スクリーニングや除染体制、放射線モニタリングなど、あらゆる訓練に実効性はなく、このままでは多くの新たな被ばく者が生まれると断言せざるをえない。前回訓練から導入されたブラインド訓練も、住民の動きと連動せずにどれだけ繰り返しても、「台本を読む学芸会」から「アドリブで進行する学芸会」への変更に過ぎない。「住民の防災意識の高揚を図る」という訓練目的は、過酷事故が起きても大丈夫という新たな「安全神話づくり」の役割を担っている。このような訓練を繰り返すことは、本当の意味での県民の安全、安心の確保に逆行するものでしかない。

4.今こそ常識に立ち返れ
電気を生み出す一手段に過ぎない原発、しかも今後、稼働する可能性はほとんどないと思われる志賀原発のために多くの県民が命や暮らしを脅かされ、財産を奪われ、ふるさとを追われる危険に晒され続けている。このような異常な事態を放置し、さらには覆い隠すかのように実効性のない訓練を繰り返していることに対し、すべての原子力防災関係者に常識に立ち返ることを強く求めたい。避難させるべきは住民ではなく核燃料である。また、北陸電力に対しても、一企業の経済活動によって自らも、そして国も含め責任の取りようのない甚大かつ深刻な危険に県民を晒すことは絶対に許されないと強く訴えたい。今こそ志賀原発の廃炉を決断し、脱原発電力会社として先頭を走る選択をすべきである。

2015年11月23日
                       
石川県平和運動センター

                      
 社会民主党石川県連合

                  
社会民主党石川県連合自治体議員団会議












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