「少しだけ、アスランくんとお話してもいい?」
「僕は?」
「そうね。これで遊んでいて?」
アディは棚に置いてあったルービックキューブをキラに差し出す。
「一面を同じ色にするの。できるかしら?」
「やってみる」
4色のキューブを受け取って、キラはうんうん唸りながら色を合わせていく。
その隙に、アディはアスランを見た。
「状態は、いいとは言えません」
「深刻なんですか?」
「生い立ちと、16歳からいままでの経緯。それがあまりに重すぎます」
多くの犠牲の元に、ただ学者の「完全」を求める心のままに作られたキラ。
その力のせいで負うことになった責任と重圧。
「貴方と過ごした9年間だけが、彼の救いになっています」
「・・・俺?」
「貴方がいること。それだけが、彼を生かしています」
重たいこと言ってごめんなさい。
アディが言うと、アスランは笑って
「イザークには、キラがこうなったのは俺のせいだと言われてきました」
「貴方がいるから不調を訴えられる。そういう意味です」
どうやら彼女はイザークと私的な付き合いがあるらしい。
「連合、オーブ、ザフト。三軍を股にかけたのは、彼だけでしょうね」
「機密もなにもあったものじゃありません」
「オーブで与えられた准将の座。ザフトでの隊長の席。彼は、ほんとうは管理職が苦手でしょう?」
「責任逃れが特技でした」
宿題を終わらせてないことを責めれば、「アスランが教えてくれないから」と返していたキラ。
「とにかく、今は体調管理が先です。栄養剤と睡眠剤、あと、精神安定剤を出します」
それから胃薬と頭痛薬も。
「薬嫌いなんですけどね」
「飲ませてやってください、旦那さん?」
「了解しました」
くすくす笑いあっていると。
「できた!」
えっ とアスランがキラに向き直れば。
「できたよ! みどり!」
キラが格闘していたキューブの一面が、緑で揃えられていた。
「どうして緑なんだ?」
訊けば
「アスランの色だから」
そう言うキラは、もう大人のキラに戻っていた。
「なにか食べていこうか」
会計を済ませ、薬を受け取れば、時刻は昼食の時間を過ぎていた。
なにか食べたいものあるか?
訊けばキラは車に乗り込み
「おなかすいてない」
とそっけなく返す。
「そういうわけにもいかないだろ。パフェ食べるか?」
「パフェ?」
「苺の乗ったパフェ。人気店だけど、平日だから空いてると思うよ」
昼食にするにはどうかと思うが、今はキラに「食べる習慣」をつけさせるのが先だ。
キラの手は冷たすぎる。
カロリーと熱量は同義語なのだと、アスランは身を持って知った。
「ルナマリアとメイリンが、お奨めだって言ってたんだ。行く?」
あの二人のお墨付きなら、外れることはまずない。
「・・・いく」
甘い誘惑にしぶしぶとキラが頷く。
アスランはエンジンをかけて、車を走らせた。
キラは苺のパフェを、アスランはサンドイッチとコーヒーで軽く食事をすませ、どこか行きたいところはあるかと訊けば
「おもちゃ屋さん」
意外な返事が返ってきた。
「おもちゃ?」
「さっきのやつ、欲しい」
ルービックキューブに、どうやらキラはハマったらしい。
あれは集中力を養うにもいいし と考えて、おもちゃ屋に入った。
三色と四色、どちらにするか散々悩んで、難易度の高い四色にした。
流行のキャラクターグッズなどを見て、近くの本屋でぶらぶらとして。
さらに足を伸ばして冬物の服を何点か買って、気がつけば夕時。
昼食があれだったので、さすがに夕食はまともなものを食べさせたい。
いくら栄養剤を出されているとはいえ、そもそも栄養は食物で摂取するのが普通だ。薬に頼りすぎるのはよくない。
「キラ。夕飯は食べろよ」
「うー」
「うーじゃない。オムライス作ろうか」
ぴく とキラが反応する。
「ふわふわとろとろの卵で。ディアッカに作り方前に聞いたんだ」
「なんでディアッカ?」
「あいつ、あれで料理上手なんだよ」
完全に家政婦だよな と笑えば、キラも「似合う」と笑う。
「デミソース? ケチャップ?」
「ケチャップ!」
「ちゃんと食べろよ」
「にんじん入れないでね」
「だからー」
途中マーケットに寄って材料を買って。
昔ならキラはお菓子コーナーに一直線だったが、今はそれもない。
にんじんやピーマンを見ては顔をしかめるところは変わっていなかったが。
確実に、キラの中で何かが変わっていた。
キラを完全に甘やかす覚悟を決めたアスランは、キラのための極小のオムライスからにんじんを外した。
風呂にも入れてやろうと思ったら、さすがに羞恥心はまだ残っているらしく、激しく拒絶された。
キラが風呂に入っている間に、アスランは通信でイザークを呼び出す。
おもちゃ屋でついでに買ったシャボン玉で遊んでいるキラは、当分出てこないだろう。
『行ったか』
通信に出たイザークは、簡潔に話を進める。挨拶もなにもなしだ。
「変わった人でおどろいた。だが、腕はいいな」
『彼女の両親と母上が知り合いでな。俺は小さいころから世話になっている』
「なんというか、いい母親を見ている気分だったよ」
『で、どうなんだ』
イザークの問いに、アスランは表情を曇らせ
「よくない」
簡潔に答える。
「出されたのは、精神安定剤、睡眠剤、栄養剤、胃薬に頭痛薬。どれも強いものばかりだ」
『栄養なぞ、点滴すれば早い話だろう』
「カウンセリングの都合上、精神を子供に戻したんだ。キラは昔から注射針を怖がったから・・・」
『ガキだな』
「ガキに戻したんだよ」
鼻で笑うイザークに、アスランは続ける。
「来週、もう一度行く。経過報告と、本格的なカウンセリング、治療に入る」
『仕事の方は気にするな』
「処理上必要かと思って、診断書も貰ってきた。明日、そっちに持っていく」
『また雑務が増えるのか。やれやれだ』
「俺のほうも、できるだけキラにあわせる」
管理職はこういう融通が利いて便利だ と笑えば、イザークは「職権乱用だ」と笑った。
『あー、アディに会ってきたか』
そのとき、通信画面にディアッカが割り込んだ。
エプロン姿が妙に似合っている。アスランは笑いを噛み殺した。
『ディアッカ、邪魔だ』
『いいだろ。メシできたぜ』
『ああ』
この二人の夫婦のようなやり取りをみるのは、なぜか笑えてしまう。
『美人だろ、アディ』
「ああ、絶世の美女だな」
『ほんとに女だったらなー、口説くんだけど』
「彼女はおまえなんかに堕ちないと思うぞ」
『なんかって言うな。堕ちたイザークに失礼だろ』
『誰が堕ちたかぁ!!』
真顔のディアッカに、イザークが吠えた。
『とにかく明日は一日執務室にいる! 診断書はそのとき持ってこい! 俺はメシだ!』
「こんな時間に食うと太るぞ」
『いや、こいつもっと太ったほうがいい。腕とか足とか細っこいんだ』
『なんの話だ!!』
切るぞ! とイザークが切れて、通信を一方的に切った。
本当に夫婦みたいだな と思う。
どちらが夫でどちらが妻かは置いておいて。
さて と時計を見れば、キラが風呂に入って随分経っていた。
のぼせているんじゃないだろな。
心配になって、脱衣所から声をかける。
「キラ、長すぎるぞ」
「もうちょっとー」
のぼせているわけではなさそうだ。
「もうちょっとじゃな・・・うわ!?」
風呂のドアを開ければ、そこはシャボン玉だらけだった。
「キラ、やりすぎ・・・」
「あはは、おもしろくって」
掃除が大変だ とアスランはキラからシャボン玉の器具を取り上げる。
「もう上がれ。俺が入れないだろ」
「はーい」
言われるままに上がって、脱衣所にいるアスランに
「えっち。出てって」
と吐き捨てる。
これは大人のキラだ。
しかたなく脱衣所から出て、リビングで待てば、ドライヤーを持ったキラが
「髪乾かして」
とあどけない顔で言う。
一瞬また子供返りしたのかと思ったが、その表情は20歳のキラのものだった。
キラを座らせ、髪を乾かしてやって。
先にベッドに行ってろ と風呂に入ってから寝室に行くと。
ルービックキューブに熱中しているキラがいた。
それも取り上げ、半ば無理やり薬を飲ませて。
寝かしつけると、薬の効果か、キラは一時間もしないうちに寝息を立て始めた。
戦いの始まりだった。
更新遅くなりました。
何ゆえルービックキューブかというと。
佐藤健くんが好きだからです!!(堂々)
「僕は?」
「そうね。これで遊んでいて?」
アディは棚に置いてあったルービックキューブをキラに差し出す。
「一面を同じ色にするの。できるかしら?」
「やってみる」
4色のキューブを受け取って、キラはうんうん唸りながら色を合わせていく。
その隙に、アディはアスランを見た。
「状態は、いいとは言えません」
「深刻なんですか?」
「生い立ちと、16歳からいままでの経緯。それがあまりに重すぎます」
多くの犠牲の元に、ただ学者の「完全」を求める心のままに作られたキラ。
その力のせいで負うことになった責任と重圧。
「貴方と過ごした9年間だけが、彼の救いになっています」
「・・・俺?」
「貴方がいること。それだけが、彼を生かしています」
重たいこと言ってごめんなさい。
アディが言うと、アスランは笑って
「イザークには、キラがこうなったのは俺のせいだと言われてきました」
「貴方がいるから不調を訴えられる。そういう意味です」
どうやら彼女はイザークと私的な付き合いがあるらしい。
「連合、オーブ、ザフト。三軍を股にかけたのは、彼だけでしょうね」
「機密もなにもあったものじゃありません」
「オーブで与えられた准将の座。ザフトでの隊長の席。彼は、ほんとうは管理職が苦手でしょう?」
「責任逃れが特技でした」
宿題を終わらせてないことを責めれば、「アスランが教えてくれないから」と返していたキラ。
「とにかく、今は体調管理が先です。栄養剤と睡眠剤、あと、精神安定剤を出します」
それから胃薬と頭痛薬も。
「薬嫌いなんですけどね」
「飲ませてやってください、旦那さん?」
「了解しました」
くすくす笑いあっていると。
「できた!」
えっ とアスランがキラに向き直れば。
「できたよ! みどり!」
キラが格闘していたキューブの一面が、緑で揃えられていた。
「どうして緑なんだ?」
訊けば
「アスランの色だから」
そう言うキラは、もう大人のキラに戻っていた。
「なにか食べていこうか」
会計を済ませ、薬を受け取れば、時刻は昼食の時間を過ぎていた。
なにか食べたいものあるか?
訊けばキラは車に乗り込み
「おなかすいてない」
とそっけなく返す。
「そういうわけにもいかないだろ。パフェ食べるか?」
「パフェ?」
「苺の乗ったパフェ。人気店だけど、平日だから空いてると思うよ」
昼食にするにはどうかと思うが、今はキラに「食べる習慣」をつけさせるのが先だ。
キラの手は冷たすぎる。
カロリーと熱量は同義語なのだと、アスランは身を持って知った。
「ルナマリアとメイリンが、お奨めだって言ってたんだ。行く?」
あの二人のお墨付きなら、外れることはまずない。
「・・・いく」
甘い誘惑にしぶしぶとキラが頷く。
アスランはエンジンをかけて、車を走らせた。
キラは苺のパフェを、アスランはサンドイッチとコーヒーで軽く食事をすませ、どこか行きたいところはあるかと訊けば
「おもちゃ屋さん」
意外な返事が返ってきた。
「おもちゃ?」
「さっきのやつ、欲しい」
ルービックキューブに、どうやらキラはハマったらしい。
あれは集中力を養うにもいいし と考えて、おもちゃ屋に入った。
三色と四色、どちらにするか散々悩んで、難易度の高い四色にした。
流行のキャラクターグッズなどを見て、近くの本屋でぶらぶらとして。
さらに足を伸ばして冬物の服を何点か買って、気がつけば夕時。
昼食があれだったので、さすがに夕食はまともなものを食べさせたい。
いくら栄養剤を出されているとはいえ、そもそも栄養は食物で摂取するのが普通だ。薬に頼りすぎるのはよくない。
「キラ。夕飯は食べろよ」
「うー」
「うーじゃない。オムライス作ろうか」
ぴく とキラが反応する。
「ふわふわとろとろの卵で。ディアッカに作り方前に聞いたんだ」
「なんでディアッカ?」
「あいつ、あれで料理上手なんだよ」
完全に家政婦だよな と笑えば、キラも「似合う」と笑う。
「デミソース? ケチャップ?」
「ケチャップ!」
「ちゃんと食べろよ」
「にんじん入れないでね」
「だからー」
途中マーケットに寄って材料を買って。
昔ならキラはお菓子コーナーに一直線だったが、今はそれもない。
にんじんやピーマンを見ては顔をしかめるところは変わっていなかったが。
確実に、キラの中で何かが変わっていた。
キラを完全に甘やかす覚悟を決めたアスランは、キラのための極小のオムライスからにんじんを外した。
風呂にも入れてやろうと思ったら、さすがに羞恥心はまだ残っているらしく、激しく拒絶された。
キラが風呂に入っている間に、アスランは通信でイザークを呼び出す。
おもちゃ屋でついでに買ったシャボン玉で遊んでいるキラは、当分出てこないだろう。
『行ったか』
通信に出たイザークは、簡潔に話を進める。挨拶もなにもなしだ。
「変わった人でおどろいた。だが、腕はいいな」
『彼女の両親と母上が知り合いでな。俺は小さいころから世話になっている』
「なんというか、いい母親を見ている気分だったよ」
『で、どうなんだ』
イザークの問いに、アスランは表情を曇らせ
「よくない」
簡潔に答える。
「出されたのは、精神安定剤、睡眠剤、栄養剤、胃薬に頭痛薬。どれも強いものばかりだ」
『栄養なぞ、点滴すれば早い話だろう』
「カウンセリングの都合上、精神を子供に戻したんだ。キラは昔から注射針を怖がったから・・・」
『ガキだな』
「ガキに戻したんだよ」
鼻で笑うイザークに、アスランは続ける。
「来週、もう一度行く。経過報告と、本格的なカウンセリング、治療に入る」
『仕事の方は気にするな』
「処理上必要かと思って、診断書も貰ってきた。明日、そっちに持っていく」
『また雑務が増えるのか。やれやれだ』
「俺のほうも、できるだけキラにあわせる」
管理職はこういう融通が利いて便利だ と笑えば、イザークは「職権乱用だ」と笑った。
『あー、アディに会ってきたか』
そのとき、通信画面にディアッカが割り込んだ。
エプロン姿が妙に似合っている。アスランは笑いを噛み殺した。
『ディアッカ、邪魔だ』
『いいだろ。メシできたぜ』
『ああ』
この二人の夫婦のようなやり取りをみるのは、なぜか笑えてしまう。
『美人だろ、アディ』
「ああ、絶世の美女だな」
『ほんとに女だったらなー、口説くんだけど』
「彼女はおまえなんかに堕ちないと思うぞ」
『なんかって言うな。堕ちたイザークに失礼だろ』
『誰が堕ちたかぁ!!』
真顔のディアッカに、イザークが吠えた。
『とにかく明日は一日執務室にいる! 診断書はそのとき持ってこい! 俺はメシだ!』
「こんな時間に食うと太るぞ」
『いや、こいつもっと太ったほうがいい。腕とか足とか細っこいんだ』
『なんの話だ!!』
切るぞ! とイザークが切れて、通信を一方的に切った。
本当に夫婦みたいだな と思う。
どちらが夫でどちらが妻かは置いておいて。
さて と時計を見れば、キラが風呂に入って随分経っていた。
のぼせているんじゃないだろな。
心配になって、脱衣所から声をかける。
「キラ、長すぎるぞ」
「もうちょっとー」
のぼせているわけではなさそうだ。
「もうちょっとじゃな・・・うわ!?」
風呂のドアを開ければ、そこはシャボン玉だらけだった。
「キラ、やりすぎ・・・」
「あはは、おもしろくって」
掃除が大変だ とアスランはキラからシャボン玉の器具を取り上げる。
「もう上がれ。俺が入れないだろ」
「はーい」
言われるままに上がって、脱衣所にいるアスランに
「えっち。出てって」
と吐き捨てる。
これは大人のキラだ。
しかたなく脱衣所から出て、リビングで待てば、ドライヤーを持ったキラが
「髪乾かして」
とあどけない顔で言う。
一瞬また子供返りしたのかと思ったが、その表情は20歳のキラのものだった。
キラを座らせ、髪を乾かしてやって。
先にベッドに行ってろ と風呂に入ってから寝室に行くと。
ルービックキューブに熱中しているキラがいた。
それも取り上げ、半ば無理やり薬を飲ませて。
寝かしつけると、薬の効果か、キラは一時間もしないうちに寝息を立て始めた。
戦いの始まりだった。
更新遅くなりました。
何ゆえルービックキューブかというと。
佐藤健くんが好きだからです!!(堂々)