科学はおもしろいぞ!

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音の屈折現象を利用した「音の屈折レンズ」

2010-01-20 11:32:01 | 科学もろもろ
八王子市科学館の音のレンズ前回、「音のフレネルレンズ」というものをご紹介しましたが、これはフレネルレンズとは言っても、音の屈折現象を利用したものではなくて、回折現象を利用したものとご説明しました。今回、ご紹介するのは、音の屈折現象を利用して、焦点に音が集まって聞こえるようになる「音の屈折レンズ」です。
この写真は、東京の八王子市にある科学館にある「音の屈折レンズ」です。(現在展示されているかは不明)大きな風船(ラジオゾンデ用の風船)の中に炭酸ガスが詰められていて、風船を挟んで声を出してしゃべると、反対側に音が集まっているのが体験できます。これは、炭酸ガスの風船で、音が屈折しているからです。
国立科学博物館の音のレンズ同じような展示としては、右の写真のように国立科学博物館の2階でも展示されていましたが、現在はありません。
音の屈折のしくみ音は空気中を 約 340m/秒(1気圧/気温15℃の場合)の速さで進みますが、空気よりも比重の重い炭酸ガスなどの中を進むときは、速さが遅くなります。そのために、炭酸ガスと空気の境界部分で音の進む角度が変化します。これが屈折という現象です。
光も、空気中から密度の違うガラスの中に入るときに、進むスピードが変わるので、屈折するのです。
音の屈折のしくみ音の屈折について、このサイトでFlash Movieで紹介されています。

フレネルレンズというレンズ

2010-01-14 18:42:53 | 科学館はおもしろいぞ
越前岬灯台のフレネルレンズフレネルレンズというレンズがあります。(写真:敦賀海上保安庁
これは、灯台などで光を遠くまで届くように集光させるためにレンズが使われているのですが、口径が大きいので通常のレンズのように作るととても重くなってしまい、光の透過ロスも大きくなるので、写真のように三角形のプリズムのような形のリングを組み合わせて大口径レンズの働きを持たせたレンズです。
最近は透明の薄いシートに、このフレネルレンズが加工されているルーペなどもあり、老眼になってきた私も時々重宝してます。
フレネルレンズフレネルレンズこのフレネルという名前は、発明者のフランスの物理学者の名前が由来です。このフレネルレンズの仕組みは、右図のように、通常の屈折レンズをドーナツ状に切り、厚さの中央部分をカットして、屈折に有効な部分だけを残した形をしたものです。そのため、どうしても同心円の線が出てしまうので精密なレンズとしては使えません。

音のフレネルレンズこのフレネルという名前が付いた物で、科学館などの展示で「音のフレネルレンズ」(第7回「サイエンス展示・実験ショーアイディアコンテスト」入賞作品)という物があります。
これは、フレネルレンズのように同心円のリング状の板を図のように並べた物です。
この「音のフレネルレンズ」の反対側に特定の周波数のスピーカーを置いて音を出すと、計画された焦点位置に音がピンポイントで集まっているのが聞こえます。
この「音のフレネルレンズ」の設計にあたっては、使用する音の周波数や焦点位置を決めて、正確に同心円のリング状の板と隙間の部分の大きさを決めて作る必要があります。
しかしこの「音のフレネルレンズ」は、見た目は同心円状の板で構成されているので光学フレネルレンズと似ていますが、光学の屈折ではなくて、リング状の板の隙間を抜けてくる音の回折現象を利用して焦点を結ばせています。ですから、フレネルレンズとは言っても、光学レンズのフレネルレンズとは全く原理も違います。
回折レンズ先日フレネルレンズを調べていたところ、「光学レンズ」にも回折を利用した「回折レンズ」というものがあるそうです。私は初めて知りました。
この回折レンズはカメラの多層なレンズ群の中に組み込まれていて、レンズの色収差などを軽減するために使われるそうで、光学レンズに光の波長程度の細かいリング状のスジが加工されているそうです。
その後いろいろと調べてみたら、キャノンで開発した製品でした。
つまり、屈折レンズでは必ず出てくる色収差による焦点ズレを、回折レンズを使って、全く逆の色による焦点ズレを作って、そのようなレンズを重ねることによって、完全に色収差が無いレンズになっているそうです。
詳しい話は、このキャノンのページをご覧ください。
ちょっと難しい話になってしまいますが、回折現象はガラスの表面に細かい溝がいくつも刻まれている状態なのですが、その溝の感覚で、色のズレを自由に調整できるのです。
ただ、屈折レンズのように拡大縮小は出来ないので、拡大縮小の働きは屈折レンズに任せて、最後の色収差の調整部分に、回折レンズを交えて、補正するということのようです。